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第2章 隠された王女
(3)ディタとの出会い
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「ハワード、エリオル、ここです」
通された部屋はふたり部屋でも結構大きく、立派な作りがしてあった。
「おい、これ客間じゃないのか? こんな立派な部屋じゃなくてもいいんだが」
ハワードが戸惑った表情を見せる。
「何を言ってるんですか? ハワードとエリオルは大切なお客様です。
この部屋を好きに使ってください。ちなみに私の部屋が隣にあるので、困ったことがありましたら、何なりとお申し付けください」
キールの言葉にハワードは苦笑する。
「キール、それも全て計算の内だろう? 相変わらず抜け目がねえな、まあいい。お前が隣なら次の日、どうするか?
ふたりで会議しなくても、三人で会議しようぜ」
「ええ、分かりました。では、とりあえず今日は、ゆっくりとお休みください。いろいろとお疲れになったでしょうから」
「サンキュー、恩にきるよ」
ニコニコ顔で言ったキールは部屋を出て行く。
ふたりでそれを見送ってから、ハワードは奥の部屋にある少し大きめのベッドにゴロンと横になる。
「エリオル、来いよ。結構、気持ちいいぞ」
まるで子どもの様に言うハワードに、少しだけ笑みを浮かべる。
「ハワード、子どもみたいだ」
そういってエリオルもベッドに横になる。
クッションはなかなかいい。
「ホントだ。気持ちいい。ラミンナ国よりいいな」
「そうだな。計らずも恩を売ったおかげで、結構いいかもな。
幸か不幸かライアス王子はお前にぞっこんだし、エリオルお前が嫌じゃなきゃ、俺は本気でこのまましばらくここにいてもいいと思っているぜ」
ハワードの言うことは理解出来る。
心配要素がなかったら、どんなに楽だろうか。
「ハワード、だけどあいつの護衛剣士なんかになったら、今度はあいつに迷惑がかかる。結局、オレの居場所はどこにあるんだろうな?」
雲を掴むよりも難しい。
自分という存在は何のためにあるのか?
いらない存在なら、いっそ早い段階で始末してくれたらよかったのに。
少なくともこうして悩む手間は省けたのに。
「バカ、お前の居場所はここにある。いつだって俺の側にな。
だからお前はお前の生きたいように生きればいい。
どんな状況に追い込まれても、俺が何とかしてやるさ。
さすがにお前は高貴すぎて、結婚は出来ねーが、俺の一生をかけて仕えてやるよ。安心して、思うままに動けばいい」
「ハワード、ありがとう。本当にいつもありがとう」
ハワードの優しさに何度救われたことだろうか?
オレはこの人にどんな恩返しができるだろう?
きっと納得できる恩返しなどできない気がする。
「まあ、何はともあれ、早いとこゾルクの件をかたづけないとな」
「だよね。それはそれで大変そうだけど」
エリオルが呟いた時、ノックの音がする。
「はい」
「ハワード、エリオルお腹すいたでしょう?
食事を持ってきました。入ってもいいですか?」
「ああ、すまねえ。どうぞ」
キールの扉越しの声にハワードが返事する。
そういえば、食事のことなんてすっかり忘れていた。
キールが扉を開けるが、ふたりは奥の部屋にいるので、入ってすぐの部屋が当然、もぬけの殻で女官たちはこれ幸いと机の上にたくさんご馳走を並べていく。
「わりい、少し横になってた」
ハワードが奥の部屋から顔をだし、エリオルもそれに続く。
「すみません。さすがに疲れたですよね。今日は気力も体力も使っただろうから、たくさん食べさせてやってくれとライアス様に言われましたので、お持ちしました。
もっとも、ラミンナ国にいらした方にとって、これが美味しいのかどうかは分かりませんが」
砂漠の地の食べ物と水が豊富で作物に困ることなど無かった国とでは、必然的に食べ物は違ってくる。
「ライアス王子によろしく言っといてくれ。別に俺たちを特別扱いする必要はねーし、お前が一番俺の性格を知ってるだろうが。
寝床と食いもんさえ食わしてくれりゃあ、文句はねーよ」
「ハワード、分かりました。でもこれは主の命令なので。
エリオル、我が主は本当に貴方のことを気に入った様です。
貴方が今までどんな人生を歩んでこられたのかは分かりかねますが、ゾルクの件が片づいたら、本気で考えてもらえないでしょうか?」
キールの問いかけは優しい。
けれど、エリオルの心は頑ななままだ。
「悪い、今はとりあえず、ゾルクのことに集中したい。ラミンナ様には心配かけたくなくて話を合せたが、オレは貴方の王子の護衛剣士をするほど、大した剣士ではない」
「そんなことはないです。ゾルクと戦える時点で、十分に合格だと思いますが。私たちが信用出来ませんか?
無理もないですね。この状況で信用してくれという方がおこがましいというものですね」
キールは少しだけ、寂しげな表情をした。それでもすぐに表情を元に戻すとニッコリと笑う。
「今の言葉はお忘れください。私が勝手に言ったことですから」
女官たちの運搬が終わる。机の上にはビックリするくらいたくさん食べものが並んでいる。食べきれるかどうかの不安がよぎる。
「どうでもいいけど、これ全部食べられるか?」
「全部、お召し上がりにならなくても大丈夫です。分量もわざと多めに作成していますので。ごゆっくりお食べください。
後で女官たちがお皿を下げにまいりますが、お疲れでしたら奥の部屋でお休み下さって結構です。明日は朝、お迎えにあがります」
静かな口調で淡々と語るキールに疑問が湧いたハワード。
「おい、キール。別に迎えに来てくれなくていいぞ。
謁見の間なら自分たちで行けるし。お前はそもそも、いろいろと忙しいんだろうが」
「ハワード、そんなに気にしてくれなくても、大丈夫です。
それに行くのは謁見の間ではなく、王と王妃様がいらっしゃる隠室です。特に王妃様はどうしてもエリオルと話がしたいとおっしゃっているので。すみません。おふたりとも苦手かとは思いますが、我慢してください」
ひどく申し訳なさそうな口調のキールに怒るわけにもいかない。
「やれやれ、王族ってのはなんでこう、面倒にできているんだろうな。
まあ、双対国だし、仕方ないか。分かった。お前を困らすわけにもいかねえし。キール、お前もちゃんと休めよ」
ハワードは諦めた様子でそう言った。
「はい、ありがとうございます。おふたりも。
それでは私はこれで失礼致します」
キールが部屋を出ていって、ふたりして椅子に腰掛ける。
「そういやあ、今日は昼飯も食ってなかったな。エリオル、せっかくだから、しっかりと食えよ」
「ああ、だけどハワード、寝る前に食べ過ぎると太るっていってたじゃないか。身軽じゃないとこの剣は扱えない」
いかにもまじめなエリオルの声を聞きながら、ハワードは笑顔になる。
「なんだ、そんなことか。一回くらい大丈夫だ。今日はふたりして動き過ぎたからな。しっかりと食え。
太る以前に動けなくなったら意味無いだろう?」
いったハワードは干し肉をエリオルに手渡す。
エリオルはそれを素直に受け取ると口に運んだ。
その様子を見届けてから、ハワードは自分も食べ始める。
「それにしても、多いよな。本当にご苦労なこった」
ハワードはしみじみと呟きながらも、食べる手は止めない。
勢いに任せてここまで来てはしまったものの、実際にこの先、自分たちの居場所が必ずしもここではないかもしれないことに一抹の不安を抱きつつ、それでも一応にホッとするハワードとエリオルだった。
翌朝
眠っているエリオルの心の奥で、その声がする。
「エメラ様、御目覚メクダサイ。剣士ノ広場ニゾルクガ出現シヨウトシテイマス」
本当の自分に向けられる声。同時に身体全体で殺気を強く感じる。
あまりの気持ち悪さに、すぐに目が覚める。
まだ陽が昇るには早い時間だろうか?
「ハワード、起きてくれ!」
隣で眠っているハワードに声をかける。
「うん、どうした? こんなに朝早く」
半分寝ぼけているハワードに静かなトーンで言う。
「ゾルクが剣士の広場に出現しようとしている」
「何、相手も結構なせっかちだな。よし、すぐに行こう。
あっ、その前にキールだけには声をかけて行く。すぐ隣だしな。
この時間帯、剣士たちはもう練習しているかもしれねえな」
結構年上の割にハワードの動きは機敏だった。
それは動きだけではなく、頭の回転の方もかなりよく動く。
「キール、キール起きているか?」
すぐに部屋を飛び出すと、隣のキールの部屋をたたく。
「ハワード、何かありましたか?」
すぐに扉は開いて、キールが顔を出す。
「ゾルクだ。時間がない。俺とエリオルはこのまま、剣士の広場に行く」
「えっ、今度は剣士の広場ですか? 分かりました。すぐにライアス様にお知らせして後を追います」
「分かった。よし、エリオルいくぞ!」
ハワードの声に頷くエリオル。
ハワードの手を取ると、ふたりの姿はかき消すように消える。
その様子を見届けてから、キールは急いで駆け出す。
剣士の広場ではすでにパニックになっていた。
まだ若い剣士の卵の青年や少年が二~三人で一斉に切りかかっていた。目をつかない限り、殺すことが出来ないが、それを知らないため、切りかかって逆にゾルクを悪い意味で刺激していた。
「お前ら、何やってるんだ。さっさと殺してしまわんか!」
少し大柄な男が苛立って叫んでいる。
「ホーゼス先生、無理です。切っても、切ってもすぐに元に戻り・・・・・・うわーっ!!」
黒い触手が話す青年の身体を捕らえて溶かす。
あっという間に次々と生徒の身体が消えていく。
「バカ! 何やらせてるんだ。お前、教師のくせに、生徒を皆殺しにする気か?」
エリオルが激怒して叫ぶ。
突然現れたエリオルとハワードに、ホーゼスと呼ばれた教師は一瞬固まる。
「お前ら、誰だ? どこから来た?」
エリオルはそんなホーゼスの問いを無視すると残像に変化する。
「みんなどけろ!」
大声で叫んで、ゾルクの瞳に同時に剣を突き刺す。
ゾルクの断末魔を聞きながら、更に叫ぶエリオル。
「なるべく遠くに逃げろ!」
次の瞬間、触手が激しく蠢きながら、エリオルに襲いかかっていく。
エリオルはその触手をもの凄い速さで切り落としながらも、周りに散った生徒たちの動きを見ていた。
その時、ひとりの小さな少年が足をもつれさせて転ぶ。
その身体には明らかに不釣り合いな大きな剣を腰にさしていた。
とっさにその少年の元へと方向転換のエリオル。軽々と片手でその少年を抱き抱えると身体を踊らせる。
触手の攻撃は容赦ないが、寸前のところで上手くかわしていた。
「ハワード、このチビ頼む!」
ハワードに向けて少年の身体を投げ渡す。普通あり得なさそうだが、少年の身体は狙い通り、ハワードの胸の中に吸い込まれて落ちる。
「OKだ。おい大丈夫か? こんな身体に合わない剣なんか持っているからだぞ」
ブツブツと言いながらすぐ側に下ろしてやるハワード。
少年はエリオルをビックリした顔で見つめている。
「凄い! なんであんなに早く動くことができるんですか?」
当然の問いかけに苦笑するハワード。
その少し後ろでホーゼスが苦虫をかみつぶしたような顔をしている。
「あいつは人の何十倍も何百倍も剣の稽古をしたからな。努力は裏切らない。いつか実を結ぶ。まあ、努力のやり方にもよるがな」
皮肉を込めて呟いて、ハワードはエリオルの合図よりもワンテンポ速く動き始める。
それは正に絶妙のタイミングで電流がゾルクを捕らえていた。
エリオルは何も言わずハワードに笑みを向けた。
少し離れたあちらこちらで、剣士の卵らしき人物たちがビックリした様子でその光景を見つめていた。
エリオルは何事もなかったかのように、ゆっくりと剣を鞘におさめる。
その姿に周囲から一斉に拍手がわき起こる。
「なんだ、もう終わったのか。相変わらず、さすがの腕だな」
ほんの少しだけ呑気な声が聞こえて、ライアス王子が姿を現した。
側にキールも控えていた。
「なんだ、手加減した方がよかったのか?
でもまあ、あまりにギャラリーが多かったからな。どう考えてもこっちが不利だったし、何人死んだか分からんが、かわいそうなことをしてしまった。もう少し早く着ければよかったんだが」
ハワードの言葉に一瞬、ライアスが表情を曇らせる。
「そうか、まあ仕方ないか。お前たちはいつも的確な判断でがんばってくれているよ。ありがとう」
この王子はプライドがあるのか、ないのか?
平気でふたりに頭を下げた。キールはそれを分かった上で、同じ様に頭を下げる。
その様子に周りにいた剣士の卵たちも、まるで倣うかのように頭を下げていく。
かなり異質な状況にハワードが慌てる。
「おい、よせよ。俺たちはやるべき事をしたまでの話だ。
褒められる言われはない。第一、俺らを褒めても何も出ないぞ」
「あはは、ハワードは本当に面白いな。これ以上何か出してもらおうとは思っていないよ。ただ、礼節は基本中の基本だからな」
そこまで喋って、ハッと気が付く。
「あっ、忘れてた。ホーゼス教官、紹介が遅くなった。このふたりは俺が新しく雇った剣士と魔術師だ」
後ろに控えていたホーゼスに声をかけるライアス。
「ライアス様、相変わらず物好きな・・・・・・。そっちの仮面の男は混血種じゃないですか。漆黒の髪に翡翠色の瞳なんて見た事ない」
偏見がありありと分かる口調に、ライアスの口調が変化する。
「だから? 何が言いたい? 言っとくが、お前なんかより、何十倍も役に立ってくれる頼もしい仲間だが。
自分の立場を理解してないようだが、今回の件、全てはお前の責任だよな?
安易に剣士の卵たちを戦わせたんだろう。結果死なせた。これは紛れもない事実だ。少しは自分の罪について考えるんだな」
それまでとは打って変わって、見た事もないような、冷たい目、冷たい口調で言うライアス。
その場の空気が一斉に凍り付く。
「ライアス王子、オレは別に構わない。迫害には慣れている。
それより、次は城の中に出るかも知れないぞ。
他の人たちの準備は?」
「大丈夫、もうすぐここに来る」
「そうか、ありがとう」
ホーゼスはふたりの会話を聞きながら、唇をかみしめる。
その表情は屈辱にまみれていた。
ハワードはそんなホーゼスに近づくと提案をする。
「あんたどんだけ偉い人物か知らないが、剣士を本当に育てたいなら、こんなチビに大きな剣はやめた方がいいぜ。
悪いがこれは基本的なことだ。身体に合った重さと大きさの剣を持たせてやらんとさっきみたいなことになる。
自分の身を守るための剣がマイナス要素を含んでいたら、何にもならない」
忠告は果たして、ホーゼスに届いたのか?
ホーゼスは何も言わずに踵を返すと去って行く。
「俺、悪りーこといっちまったかな?」
「いや、あいつにはいい薬だ。それより、本当に城の中に出る可能性があるのか?」
問いかけにエリオルが答える。
「ああ、もしかしたら、お前か王様が狙われているのかもな」
ひどく冷静な声で結構怖いことを平気で口にするエリオル。
意外とそれが、美しい外見とマッチしていたりする。
「そうか、俺はまあいいとしても、父上はなあ。政務も多いし、国の内外からの客への対応も多いしな。
まあ、とにかく、昨日の予定通り、二つの班に分かれて見回りしてみてくれ」
そうこう言っているうちに、アーメル・キルシュ・ネビィスが合流すべくやって来た。
「本当にここに現れたの?」
アーメルの問いかけにライアスが頷きを返す。
「剣士の卵、ざっと見て、三分の一は死んだかな?」
辺りにバラバラと残っている人数をざっと数えてライアスは言った。
「仕方ないわね。で、私たちは予定通りでいいの?」
「ああ、今から班に分かれて見回り頼む」
ライアスの言葉にアーメルは提案する。
「じゃあ、エリオル、キール。私たちは外に近い、農民エリアを行動してみる?」
ふたりはすぐに提案を黙認した。
それが分かるとハワードが口を開く。
「そうか、なら俺たちは城の中だ。エリオル、ヤバくなったらすぐに俺に気を飛ばせよ」
念押しするハワードに大きく頷きを返すエリオル。
「よし、じゃあ行こうぜハワード」
キルシュが元気よくいって、城の中へと戻り始める。
ハワードとネビィスが大人しくその後に続く。
それを見届けてからエリオルはふたりに目配せすると、反対の農民エリアの方へと歩いて行く。
歩きながらエリオルは意識を集中させて邪悪な気を追う。
深層心理下の相棒には今のところ変化はない。
ライアスはそんなエリオルが見えなくなるまでしっかりと見送ってから、ゆっくりと城の中に戻っていく。
「エリオルどう?」
アーメルはためらいがちに声をかける。
声をかけても良いものか迷ったあげく、それでも声をかけることにした。
「今のところは何も感じないが。普段、農民エリアの者たちは薬草を干して、石でアクセサリーを作っているのか?」
「ええ、まあ大体はそうね。ここ本当に雨は降らないし、水は少ないし、よくこの大きさの国が成り立っていると感心さえするわよ」
アーメルの言い様に、キールが苦笑する。
「アーメル、その言い様は・・・・・・本当のことだからいいですけど。
アーメル貴方がいたガリアーノ国よりも、エリオル貴方がいたラミンナ国よりも大変な場所ということだけは確かですが。
まあ、それなりの生き方ってのがありますから。
私はこの地が大好きですし、ここで共に生きている人たちは大切だと思っています」
まるでふたりに言い聞かせるように語るキールに、エリオルは大きく頷きを返した。
「あのー、すみません」
後ろから、少年のかわいい声がする。
「なんだ、ようやく声をかける気になったんだ。
ずっとついて来ていたから、どうするのかと思ったけど」
アーメルの言い方に少年がビックリした表情で固まる。
「アーメル、そんなにいじめないでくださいよ。エリオルだって殺気がないことが分かっていたから、そのままにしておいたんだろうし。
で、私たちに何か用ですか?」
キールの問いに少年は、真っ直ぐにエリオルを見つめる。
「お願いです! 僕に剣を教えてください。僕は貴方のように強くなりたい!」
真剣な眼差しから、嘘は見えないが。
「悪いがオレはここに長くいるかどうか分からない。それに強い剣士になりたいなら、オレではなくてハワードに言ってみることだな。
オレに剣を教えたのはハワードだから。残念ながらオレ自身は、人に剣士としてのいろはを教えたことはない」
冷たい口調は変わらずで、でもその瞳には優しさが含まれていた。
少年は少しだけうつむいて、その後シャンとエリオルを見つめ返す。
「ここにいらっしゃる間だけで構いません。お仕事のお邪魔になるなら夜だけでいいです。ほんの少しの時間でいいですから、僕に貴方の剣を教えてください。お願いします」
深々と下げる頭がグラリとかしぐ。
とっさにエリオルは少年の腕を引っ掴む。
「どうでもいいが、この剣は捨てろ! お前には重すぎる。
オレみたいに閉ざされた空間で生きるならともかく、たちまち剣士の卵として剣士の広場で剣の腕を磨くなら、こんなに大きな剣は不要だ」
いちいち最もな意見を述べるエリオル。
「でも・・・・・・」
「あの教官が怖いか? 大丈夫だ。あの教官は大したことない。
とりあえず、お前に代わりの剣をやろう」
エリオルはそう言うと、自分の懐から白い紙切れを数枚引っ張り出す。そして、まるで品定めをするかのように見比べる。
その中から一枚選ぶと右手の手のひらに乗せ、念を込めるとフーッと息を吹きかけた。
すると紙切れはアッという間に、少し小ぶりな剣へと変化した。
「これを。ここで素振りをしてみろ。今までとは全然違うことが分かるだろう」
いわゆる式神用の紙で作成した剣は軽くて、扱う者に同調する性質がある。今の少年にはベストな剣と言えるだろう。
エリオルから剣を受け取った少年は、言われるままに素振りをしてみる。
「凄い! なんて軽いんだ。まるで手の一部になったみたいだ」
驚きの声と同時に少年が心から感動しているのがよく分かる。
「アーメル、キルシュは自分で剣を作っているんだよな?」
自分に向けて投げられた月刃刀は三日月の形をした特注品だった。
赤い髪に紫の瞳はラバット国民。ラバット国は別名武器の国。
「ええ、よく分かったわね。ああ見えて、手先はとっても器用なのよ。
どんな武器でも大抵のものは作ってくれるわよ」
アーメルの言葉に少しだけ考える仕草をしたエリオルは、自分の中で納得したのか、頷くと少年を見つめる。
「とにかくその剣で、しばらく剣士の広場に行って、剣の腕を磨いてみろ。で、お前、名前は?」
「あっ、すみません。ディタ・キュンメルといいます」
「ディタか。エリオル・リアスだ。ディタ、今日はこのまま大人しく城へと戻るんだ。いいな?」
さすがに剣までもらって、まだついていくとは言えず、断念した。
「はい、エリオル様、ありがとうございました」
深々と頭を下げるディタ。今度は身体がかしぐこともない。
ディタは嬉しそうな表情を見せると、そのまま城の方へと戻って行く。
「かわいいわよね。私にもあったんだけど。あんな純粋な時代が」
羨ましそうに呟くアーメルにキールは苦笑する。
「あっ、キール。バカにしてるでしょう? 言っとくけど本当にあったのよそんな時代が」
「はいはい。分かりました。とにかく仕事に戻りましょう。
エリオル、すみません。随分と横道にそれてしまいましたね」
キールがエリオルにすまなさそうな瞳を向ける。
エリオルはディタから取り上げた剣を片手で弄びながら「いや」と一言。そのままその剣で素振りを始める。
その動きはまるで何かの舞いをしているかのように美しく、流れるような動きだった。
「なんて綺麗なの。地面が砂の上ってことを忘れてしまうくらいだわ」
アーメルが思わず感嘆の声を上げる。
その声に、エリオルはハッとした様子で動きを止める。
無意識の行動だったことは明らかだったが、アーメルが残念そうな顔をする。
「つい、余計なことをした。もう少し、砂漠に近い方まで出てみるか?」
「えー、もうやめちゃうの。すごく素敵だったのに」
本来の仕事を口にするエリオル。すごく残念で仕方なさそうなアーメルの声。
「エリオル、ライアス様が落ち込んだ時は、ぜひ、その舞いを見せてあげてください。きっとすぐに元気になられると思いますよ。
エリオル、貴方はもっと自分に自信を持ってください。
貴方は素晴らしい剣士であり、本当は誰よりも優しい人ですよ」
キールの言葉にエリオルは戸惑いの表情を浮かべる。
今まで他の誰かにそんな風に言われたことなどなかった。
「エリオル、貴方はもう十分、私たちの仲間なのよ。もっと頼って頂戴。私ができることはなんでもしてあげるわ。
私たちは三人で一つのチームでしょ?」
アーメルの問いかけにエリオルは頷いた。
「ふたりとも、ありがとう」
エリオルがそういった瞬間、神経に何かが触れる。
心の中にささやき声がして、画像が浮かび上がる。
「エメラ様、モウ少シ先ノ砂漠ノ真ン中デ、ゾルクノ気配ガシマス。
旅人ガ一人、前方カラヤッテキマス」
それはかなり最悪な事態を告げていた。
「キール、アーメル。もう少し先でゾルクの出現だ。まずいことに旅人が一人巻き込まれそうだ。急ぐぞ!」
エリオルの声にふたりは大きく頷くと駆け出す。
エリオルの速さにふたりはとても追いつけないが、エリオルは構わず先へと駆けて行く。
砂が強風に煽られたかのように逆巻いている。
その砂の間から赤い目が見え隠れしている。
大きな茶色のフードを着た旅人が、その先で立ち尽くしていた。
エリオルはその旅人の前へと身体を踊らせる。
「おい、ゆっくりと下がれ」
ディタの持っていた剣を構えると、後ろに庇った旅人に声をかけるエリオル。
「だけど、あれは」
まだ若そうな声の主が何かを言いかけた時、アーメルの声が響く。
「エリオル!」
「目だ、赤い目を狙え!」
「OK!」
腰から引き抜いた武器は一瞬で伸びて、三又の槍となる。
「行くわよ!」
アーメルの動きに合せて、エリオルは身体を踊らせると、ふたりともほぼ同時に槍と剣を突き立てる。
「アーメル、触手に触れるなよ! 全部切り落とすぞ」
シュルシュルとたくさんの触手が蠢いて、ふたりを狙う。
アーメルは思ったよりも数倍早く動いて、的確に触手を切り落としていく。
キールは旅人の肩に手を触れると、自分の身体の後ろへと庇う。
「エリオル、いつでもいいですよ。合図をください」
キールは短剣を身構えると、エリオルに叫ぶ。
「キール、頼む!」
すぐにエリオルの声が響いて、キールはその力を発動させる。
「稲妻よ、我が元へ来たれ。かの者に戒めを!」
強力な稲妻がゾルクを包み込むと、その身体を小さく、小さく変えていく。ハワードに負けていない強力な力。
あっという間に全ては消え去った。
「やったわね」
アーメルの嬉しそうな声を聞きながら、エリオルは旅人へと近づく。
「大丈夫か?」
「はい、ありがとうございました」
「タムール国に行くのか?」
「ハイ、仕事で」
エリオルは少し考えると、アーメルに話しかける。
「アーメル、すまないがこの人をタムール国まで送ってやってくれ」
エリオルの言葉にアーメルは不思議そうに問いかける。
「いいけど、エリオルはどうするの?」
「オレはもう少し砂漠を見てから帰ろうと思う。
上手く言えないんだが、妙な気配がする。ゾルクではないが、何だかとても気になる」
「分かりました。では、エリオル。私は貴方についていきます。
アーメルはこの方を連れて、先に城に戻っていてください。
ついでにハワードたちにこの事を伝えといてくれませんか?」
キールはとっさに判断するとそう言った。
「OK、分かったわ。エリオル、キール、気をつけてね」
アーメルは即座に理解すると、軽い口調で返事する。
「それじゃあ、貴方は私と一緒に」
「はい、本当にありがとうございました」
エリオルに深々と頭を下げると、フードの主はそのままアーメルの後に続く。
「じゃあ、エリオル、行きましょう」
キールに促され、エリオルはそのまま、砂漠へと出る。
神経を集中させる。
まるで主張しているかの様な気がひとつある。
ただ、それは明らかにゾルクではない。
禍々しい邪気は感じない。
けれど妙に感に触る。
これは、オレと似たような力か・・・・・・あるいは。
「エリオル、大丈夫ですか? 無理はしないでください。私がハワードに殺されますから」
冗談交じりに言うキールに思わず笑みを浮かべるエリオル。
「大丈夫だ。そんなにやわじゃない。もう少し先にいるんだが、さっきから全く動かない。邪気じゃない気をずっと放っている。
まるで誰かに、見つけてもらいたいかの様に」
「それって、わざとそこにいるってことですよね?」
キールの問いに頷くものの、何かが引っかかっていて気持ち悪い。
何に引っかかるのか、分からないもどかしさに支配される。
「とにかく、正体が知りたい。このままだと気持ち悪い」
エリオルはそう言うと、更に足を進める。
キールは何も言わず、そんなエリオルに付きあって歩く。
しばらく歩くとビックリするような風景に変化する。
砂ばかりの砂漠の中に緑色の空間が広がっている。
「オアシスですね。でも、こんなところにあるはずないんですが」
キールの呟きの意味はエリオルにも分かる。
昨日、この辺は通って帰った場所だからだ。
「おっ、客か? 思ったのと違うな」
緑色の空間の奥から声がする。
程なくその声の主がゆっくりと近づいてくる。
キラキラと銀色の光が目に写る。
「うそ! 魔境国の人? エリオルこの人が?」
その人物は白銀色の長い髪に漆黒の瞳、尖った耳に口元には牙。
身体つきも少し大ぶりでがっちりとしていて、ワイルドな印象だった。
キールの問いかけに首を振るエリオル。
「ゾルクの元じゃない、そんな禍々しさはない。だけど・・・・・・」
気になることを表現出来なくて、押し黙るエリオル。
「へえー、えらい美人がきたもんだな。俺の放つ気を辿ってきたのか?」
相手の問いかけに、エリオルは答えに詰まる。その通りではあるのだが、あっさり答えることが果たして合っているのか?
その様子を見て、ニヤッと笑うとさりげなく自己紹介した。
「俺の名はガールダー・スルン」
「ガールダー・スルンって確か!?」
キールが言うより先にエリオルがボソッと呟く。
「ガイネスの王」
ガイネスすなわち、魔境国の現在の王様だ。
正体が分かったことで、エリオルの中にある違和感の正体も分かった。遙か昔、実の父親が言っていた友人の話。
同じような力が側にあると、ひどく違和感を感じてしまうらしい。
「よく知ってるな。お前は?」
「オレはエリオル・リアス。魔境獣ゾルクを倒す為にタムール国の王子に雇われた剣士だ」
「ふん、エリオルか。剣士ね・・・・・・」
いぶかしげな様子でいったガールダーが、そのままエリオルの元へと歩み寄る。
その翡翠色の瞳をまじまじと覗き込むと、何かを見つけてニッコリと微笑む。そして次の瞬間、ためらうことなくエリオルの身体を抱き締める。
思わずビックリして見つめるキールの先で、ガールダーはエリオルの耳元で何かを囁やいた。
それに対して、エリオルは顔色ひとつ変えることなく、ガールダーを見つめ返した。
そんなエリオルの様子をガールダーは楽しそうに見つめる。
「本当にかわいいな、お前は。フッフッフ、あいつが目の中に入れても痛くないというのがよく分かる」
あいつとはおそらく父のことだろう。しかし、目に入れても痛くないというのは間違いだろう。そんな愛情を受けたことなど一度もない。
「どうやら、目的は同じ様だ。ゾルクを操っているのはガーリオ・イグア。魔境国で呪術師をしていた。俺の気に気が付けば来ると思ったんだが、ちょっとあから様過ぎたか?」
別にたいして気にした様子もなくそう言うと、あっさりとエリオルを解放する。
「俺はお前が気に入った。ゾルクの件が片づくまでの間、我が半身魔境獣・ガーリャをお前に貸そう。その代わり、ゾルクもガーリオ・イグアも完全に仕留めてくれ。
俺は魔境国へと戻る。一時的にオアシスを作ったが、ここは暑くて身がもたない。ただでさえ空気も気候も違うのだからな。後はお前に任せる」
そう言うと、右手でパチンと弾く仕草をした。
次の瞬間、真っ黒い身体の結構大きな獣が姿を顕す。
その身体は黒ひょうで瞳は黄金。銀色の角に背中には白い翼。
その神々しい姿に息を飲む。
「ガーリャト申シマス」
短く言って、エリオルの側にちょこんとお座りする。
見てくれよりも意外にかわいい。
「こんな凄い獣、オレに託されても困る。第一、お前が本当に王様なら、この獣はお前の身体の一部だろう?
そんなのを他の人間に預けたりしちゃあダメだろう」
一応の正論を言ってみるエリオル。
「別に、お前になら構わない。ガーリャを通してこの目で事の成り行きも見えるし、お前のやりたいようにすればいい。
口出しする気はない。他に聞きたいことは?」
「つまりオレに選択権はないということか?」
やんわりと断ろうとしているにも関わらず、乗ってこないガールダーにエリオルは問いかける。
「まあ、そういうことだな。俺に見込まれたのを不運だと思って諦めろ。だが、喜べ! ガーリャは手足のように働いてくれるだろう」
遊ばれているとしか思えないこの場面。
こっちにはもう一ぴき既にいると分かった上でよこそうとするあたり、何を考えているのかサッパリ分からない。
それとも相反する力が必要という意味か?
何にしても何を言っても無駄だと気付いたエリオルは無言でため息をつく。
それまでふたりのやり取りを見ていたキールは当然のように、エリオルに問いかける。
「エリオル、貴方いったい何者なんですか?」
魔境国の王様の心を短時間で動かす。
それは思ったとて、簡単なことではないはずだ。
「・・・・・・」
当然のごとく、喋りたくないエリオルは無言を通す。
「知りたいか?」
ガールダーが楽しそうにキールに問いかける。
いたずらっ子のような表情に、エリオルはきつい表情で睨みつける。
「そんなに睨むな。美人が台無しだ。別に俺が喋らなくてもいずれ刻がくれば分かるさ、嫌でもな」
予言めいた口調もあまりいい気はしない。
実際、ガールダーの言っていることが正しいとしても、それを他人にとやかく言われたくはない。
「今回、それほど難しいとの見解ですか?」
とりあえずエリオルはそこだけハッキリさせておきたかった。
「いや、ガーリャだけで十分な案件と見ているが」
問いかけの意味は理解してくれたらしい。
「そもそも、そっちは使用不可だろう?」
よくご存じで。
本当の自分を知られると言うことは、そう言うことなのか?
つまりガールダーは、偶然出会ったことをいいことに、親友の子どもを安全に守るための策略を立てたということらしい。
ありがたいというか迷惑というか・・・・・・複雑な心境だ。
「ほう、あいつに似て、頭もいいんだ」
心の中はさすがに読めないだろうが、考えに当たりをつけたのか、ガールダーはそういうとニッコリと笑う。
「じゃあ、俺は行く。こいつのこと頼む」
最初から最後までマイペースを貫いたガールダーは、そのままかき消すように姿を消した。
「マイペースな方でしたね。ライアス様も相当なマイペースですが、彼は間違いなくライアス様よりも上ですね」
キールの口調にエリオルは複雑な表情を浮かべる。
「でも、まあ、ライアス様なら褒めて下さるかもしれませんよ。
なんせ、おみやげが魔境獣。しかも王様の半身となれば力も相当なものでしょうから」
キールの言葉をエリオルはすぐに否定する。
「そんな簡単な話じゃない。ライアスの元には聖霊獣がいる。
相反する獣が同時に存在する時、何が起きるんだろうか?
変に力が爆発してお前たちの国を滅ぼすことになってもいけないだろう?」
「なるほど、エリオルが言っていたのってそのことですか。
でも、変なこと言ってましたよね?
ひとつは使用不可って、ライアス様の聖霊獣の力は使えないってことでしょうか?」
まあ、意味はかなり違うが、使えないのは事実だ。
「相反する力は併用不可なんだろうな。
というわけで、ガーリャ貴方には大人しくしていて欲しい」
傍らの獣に問いかける。
ガーリャはまるでじゃれつくかのように、エリオルに近づき身体を擦りつけると言った。
「我ガ存在ヺ深ク考エナクテイイ。貴女ノ気二沿ワナイ事ハシナイ。
私ハアクマデ影。貴女ガ望ムナラ、側デタダ見守ッテイヨウ。
ソウ、誰ニモ知ラレヌヨウニ」
「ありがとう、非常に助かるよ」
エリオルはガーリャの頭を撫でながら、短く言った。
「キール城へ戻ろう。ハワードたちの方、どうなっているかな?」
「分かりました。では、帰るとしましょう。エリオル、体調は大丈夫ですか?」
エリオルの体調をえらく気にする様子に、エリオルは微笑みを向ける。
「大丈夫、あの気の原因が分かったから。疑問も解けたし、後はガーリオを見つけることが出来ればいいんだが」
「そうですね。でも、くれぐれも無理だけはしないようにしてくださいね」
キールはそれでもエリオルに釘を刺す。
まるでハワードみたいだとエリオルは思う。
ハワードはいつも暴走しがちな心を引き留めてくれた。
「分かっている。行こう」
「はい」
こうしてふたりと一ぴきは、砂漠をタムール国へと戻り始めた。
通された部屋はふたり部屋でも結構大きく、立派な作りがしてあった。
「おい、これ客間じゃないのか? こんな立派な部屋じゃなくてもいいんだが」
ハワードが戸惑った表情を見せる。
「何を言ってるんですか? ハワードとエリオルは大切なお客様です。
この部屋を好きに使ってください。ちなみに私の部屋が隣にあるので、困ったことがありましたら、何なりとお申し付けください」
キールの言葉にハワードは苦笑する。
「キール、それも全て計算の内だろう? 相変わらず抜け目がねえな、まあいい。お前が隣なら次の日、どうするか?
ふたりで会議しなくても、三人で会議しようぜ」
「ええ、分かりました。では、とりあえず今日は、ゆっくりとお休みください。いろいろとお疲れになったでしょうから」
「サンキュー、恩にきるよ」
ニコニコ顔で言ったキールは部屋を出て行く。
ふたりでそれを見送ってから、ハワードは奥の部屋にある少し大きめのベッドにゴロンと横になる。
「エリオル、来いよ。結構、気持ちいいぞ」
まるで子どもの様に言うハワードに、少しだけ笑みを浮かべる。
「ハワード、子どもみたいだ」
そういってエリオルもベッドに横になる。
クッションはなかなかいい。
「ホントだ。気持ちいい。ラミンナ国よりいいな」
「そうだな。計らずも恩を売ったおかげで、結構いいかもな。
幸か不幸かライアス王子はお前にぞっこんだし、エリオルお前が嫌じゃなきゃ、俺は本気でこのまましばらくここにいてもいいと思っているぜ」
ハワードの言うことは理解出来る。
心配要素がなかったら、どんなに楽だろうか。
「ハワード、だけどあいつの護衛剣士なんかになったら、今度はあいつに迷惑がかかる。結局、オレの居場所はどこにあるんだろうな?」
雲を掴むよりも難しい。
自分という存在は何のためにあるのか?
いらない存在なら、いっそ早い段階で始末してくれたらよかったのに。
少なくともこうして悩む手間は省けたのに。
「バカ、お前の居場所はここにある。いつだって俺の側にな。
だからお前はお前の生きたいように生きればいい。
どんな状況に追い込まれても、俺が何とかしてやるさ。
さすがにお前は高貴すぎて、結婚は出来ねーが、俺の一生をかけて仕えてやるよ。安心して、思うままに動けばいい」
「ハワード、ありがとう。本当にいつもありがとう」
ハワードの優しさに何度救われたことだろうか?
オレはこの人にどんな恩返しができるだろう?
きっと納得できる恩返しなどできない気がする。
「まあ、何はともあれ、早いとこゾルクの件をかたづけないとな」
「だよね。それはそれで大変そうだけど」
エリオルが呟いた時、ノックの音がする。
「はい」
「ハワード、エリオルお腹すいたでしょう?
食事を持ってきました。入ってもいいですか?」
「ああ、すまねえ。どうぞ」
キールの扉越しの声にハワードが返事する。
そういえば、食事のことなんてすっかり忘れていた。
キールが扉を開けるが、ふたりは奥の部屋にいるので、入ってすぐの部屋が当然、もぬけの殻で女官たちはこれ幸いと机の上にたくさんご馳走を並べていく。
「わりい、少し横になってた」
ハワードが奥の部屋から顔をだし、エリオルもそれに続く。
「すみません。さすがに疲れたですよね。今日は気力も体力も使っただろうから、たくさん食べさせてやってくれとライアス様に言われましたので、お持ちしました。
もっとも、ラミンナ国にいらした方にとって、これが美味しいのかどうかは分かりませんが」
砂漠の地の食べ物と水が豊富で作物に困ることなど無かった国とでは、必然的に食べ物は違ってくる。
「ライアス王子によろしく言っといてくれ。別に俺たちを特別扱いする必要はねーし、お前が一番俺の性格を知ってるだろうが。
寝床と食いもんさえ食わしてくれりゃあ、文句はねーよ」
「ハワード、分かりました。でもこれは主の命令なので。
エリオル、我が主は本当に貴方のことを気に入った様です。
貴方が今までどんな人生を歩んでこられたのかは分かりかねますが、ゾルクの件が片づいたら、本気で考えてもらえないでしょうか?」
キールの問いかけは優しい。
けれど、エリオルの心は頑ななままだ。
「悪い、今はとりあえず、ゾルクのことに集中したい。ラミンナ様には心配かけたくなくて話を合せたが、オレは貴方の王子の護衛剣士をするほど、大した剣士ではない」
「そんなことはないです。ゾルクと戦える時点で、十分に合格だと思いますが。私たちが信用出来ませんか?
無理もないですね。この状況で信用してくれという方がおこがましいというものですね」
キールは少しだけ、寂しげな表情をした。それでもすぐに表情を元に戻すとニッコリと笑う。
「今の言葉はお忘れください。私が勝手に言ったことですから」
女官たちの運搬が終わる。机の上にはビックリするくらいたくさん食べものが並んでいる。食べきれるかどうかの不安がよぎる。
「どうでもいいけど、これ全部食べられるか?」
「全部、お召し上がりにならなくても大丈夫です。分量もわざと多めに作成していますので。ごゆっくりお食べください。
後で女官たちがお皿を下げにまいりますが、お疲れでしたら奥の部屋でお休み下さって結構です。明日は朝、お迎えにあがります」
静かな口調で淡々と語るキールに疑問が湧いたハワード。
「おい、キール。別に迎えに来てくれなくていいぞ。
謁見の間なら自分たちで行けるし。お前はそもそも、いろいろと忙しいんだろうが」
「ハワード、そんなに気にしてくれなくても、大丈夫です。
それに行くのは謁見の間ではなく、王と王妃様がいらっしゃる隠室です。特に王妃様はどうしてもエリオルと話がしたいとおっしゃっているので。すみません。おふたりとも苦手かとは思いますが、我慢してください」
ひどく申し訳なさそうな口調のキールに怒るわけにもいかない。
「やれやれ、王族ってのはなんでこう、面倒にできているんだろうな。
まあ、双対国だし、仕方ないか。分かった。お前を困らすわけにもいかねえし。キール、お前もちゃんと休めよ」
ハワードは諦めた様子でそう言った。
「はい、ありがとうございます。おふたりも。
それでは私はこれで失礼致します」
キールが部屋を出ていって、ふたりして椅子に腰掛ける。
「そういやあ、今日は昼飯も食ってなかったな。エリオル、せっかくだから、しっかりと食えよ」
「ああ、だけどハワード、寝る前に食べ過ぎると太るっていってたじゃないか。身軽じゃないとこの剣は扱えない」
いかにもまじめなエリオルの声を聞きながら、ハワードは笑顔になる。
「なんだ、そんなことか。一回くらい大丈夫だ。今日はふたりして動き過ぎたからな。しっかりと食え。
太る以前に動けなくなったら意味無いだろう?」
いったハワードは干し肉をエリオルに手渡す。
エリオルはそれを素直に受け取ると口に運んだ。
その様子を見届けてから、ハワードは自分も食べ始める。
「それにしても、多いよな。本当にご苦労なこった」
ハワードはしみじみと呟きながらも、食べる手は止めない。
勢いに任せてここまで来てはしまったものの、実際にこの先、自分たちの居場所が必ずしもここではないかもしれないことに一抹の不安を抱きつつ、それでも一応にホッとするハワードとエリオルだった。
翌朝
眠っているエリオルの心の奥で、その声がする。
「エメラ様、御目覚メクダサイ。剣士ノ広場ニゾルクガ出現シヨウトシテイマス」
本当の自分に向けられる声。同時に身体全体で殺気を強く感じる。
あまりの気持ち悪さに、すぐに目が覚める。
まだ陽が昇るには早い時間だろうか?
「ハワード、起きてくれ!」
隣で眠っているハワードに声をかける。
「うん、どうした? こんなに朝早く」
半分寝ぼけているハワードに静かなトーンで言う。
「ゾルクが剣士の広場に出現しようとしている」
「何、相手も結構なせっかちだな。よし、すぐに行こう。
あっ、その前にキールだけには声をかけて行く。すぐ隣だしな。
この時間帯、剣士たちはもう練習しているかもしれねえな」
結構年上の割にハワードの動きは機敏だった。
それは動きだけではなく、頭の回転の方もかなりよく動く。
「キール、キール起きているか?」
すぐに部屋を飛び出すと、隣のキールの部屋をたたく。
「ハワード、何かありましたか?」
すぐに扉は開いて、キールが顔を出す。
「ゾルクだ。時間がない。俺とエリオルはこのまま、剣士の広場に行く」
「えっ、今度は剣士の広場ですか? 分かりました。すぐにライアス様にお知らせして後を追います」
「分かった。よし、エリオルいくぞ!」
ハワードの声に頷くエリオル。
ハワードの手を取ると、ふたりの姿はかき消すように消える。
その様子を見届けてから、キールは急いで駆け出す。
剣士の広場ではすでにパニックになっていた。
まだ若い剣士の卵の青年や少年が二~三人で一斉に切りかかっていた。目をつかない限り、殺すことが出来ないが、それを知らないため、切りかかって逆にゾルクを悪い意味で刺激していた。
「お前ら、何やってるんだ。さっさと殺してしまわんか!」
少し大柄な男が苛立って叫んでいる。
「ホーゼス先生、無理です。切っても、切ってもすぐに元に戻り・・・・・・うわーっ!!」
黒い触手が話す青年の身体を捕らえて溶かす。
あっという間に次々と生徒の身体が消えていく。
「バカ! 何やらせてるんだ。お前、教師のくせに、生徒を皆殺しにする気か?」
エリオルが激怒して叫ぶ。
突然現れたエリオルとハワードに、ホーゼスと呼ばれた教師は一瞬固まる。
「お前ら、誰だ? どこから来た?」
エリオルはそんなホーゼスの問いを無視すると残像に変化する。
「みんなどけろ!」
大声で叫んで、ゾルクの瞳に同時に剣を突き刺す。
ゾルクの断末魔を聞きながら、更に叫ぶエリオル。
「なるべく遠くに逃げろ!」
次の瞬間、触手が激しく蠢きながら、エリオルに襲いかかっていく。
エリオルはその触手をもの凄い速さで切り落としながらも、周りに散った生徒たちの動きを見ていた。
その時、ひとりの小さな少年が足をもつれさせて転ぶ。
その身体には明らかに不釣り合いな大きな剣を腰にさしていた。
とっさにその少年の元へと方向転換のエリオル。軽々と片手でその少年を抱き抱えると身体を踊らせる。
触手の攻撃は容赦ないが、寸前のところで上手くかわしていた。
「ハワード、このチビ頼む!」
ハワードに向けて少年の身体を投げ渡す。普通あり得なさそうだが、少年の身体は狙い通り、ハワードの胸の中に吸い込まれて落ちる。
「OKだ。おい大丈夫か? こんな身体に合わない剣なんか持っているからだぞ」
ブツブツと言いながらすぐ側に下ろしてやるハワード。
少年はエリオルをビックリした顔で見つめている。
「凄い! なんであんなに早く動くことができるんですか?」
当然の問いかけに苦笑するハワード。
その少し後ろでホーゼスが苦虫をかみつぶしたような顔をしている。
「あいつは人の何十倍も何百倍も剣の稽古をしたからな。努力は裏切らない。いつか実を結ぶ。まあ、努力のやり方にもよるがな」
皮肉を込めて呟いて、ハワードはエリオルの合図よりもワンテンポ速く動き始める。
それは正に絶妙のタイミングで電流がゾルクを捕らえていた。
エリオルは何も言わずハワードに笑みを向けた。
少し離れたあちらこちらで、剣士の卵らしき人物たちがビックリした様子でその光景を見つめていた。
エリオルは何事もなかったかのように、ゆっくりと剣を鞘におさめる。
その姿に周囲から一斉に拍手がわき起こる。
「なんだ、もう終わったのか。相変わらず、さすがの腕だな」
ほんの少しだけ呑気な声が聞こえて、ライアス王子が姿を現した。
側にキールも控えていた。
「なんだ、手加減した方がよかったのか?
でもまあ、あまりにギャラリーが多かったからな。どう考えてもこっちが不利だったし、何人死んだか分からんが、かわいそうなことをしてしまった。もう少し早く着ければよかったんだが」
ハワードの言葉に一瞬、ライアスが表情を曇らせる。
「そうか、まあ仕方ないか。お前たちはいつも的確な判断でがんばってくれているよ。ありがとう」
この王子はプライドがあるのか、ないのか?
平気でふたりに頭を下げた。キールはそれを分かった上で、同じ様に頭を下げる。
その様子に周りにいた剣士の卵たちも、まるで倣うかのように頭を下げていく。
かなり異質な状況にハワードが慌てる。
「おい、よせよ。俺たちはやるべき事をしたまでの話だ。
褒められる言われはない。第一、俺らを褒めても何も出ないぞ」
「あはは、ハワードは本当に面白いな。これ以上何か出してもらおうとは思っていないよ。ただ、礼節は基本中の基本だからな」
そこまで喋って、ハッと気が付く。
「あっ、忘れてた。ホーゼス教官、紹介が遅くなった。このふたりは俺が新しく雇った剣士と魔術師だ」
後ろに控えていたホーゼスに声をかけるライアス。
「ライアス様、相変わらず物好きな・・・・・・。そっちの仮面の男は混血種じゃないですか。漆黒の髪に翡翠色の瞳なんて見た事ない」
偏見がありありと分かる口調に、ライアスの口調が変化する。
「だから? 何が言いたい? 言っとくが、お前なんかより、何十倍も役に立ってくれる頼もしい仲間だが。
自分の立場を理解してないようだが、今回の件、全てはお前の責任だよな?
安易に剣士の卵たちを戦わせたんだろう。結果死なせた。これは紛れもない事実だ。少しは自分の罪について考えるんだな」
それまでとは打って変わって、見た事もないような、冷たい目、冷たい口調で言うライアス。
その場の空気が一斉に凍り付く。
「ライアス王子、オレは別に構わない。迫害には慣れている。
それより、次は城の中に出るかも知れないぞ。
他の人たちの準備は?」
「大丈夫、もうすぐここに来る」
「そうか、ありがとう」
ホーゼスはふたりの会話を聞きながら、唇をかみしめる。
その表情は屈辱にまみれていた。
ハワードはそんなホーゼスに近づくと提案をする。
「あんたどんだけ偉い人物か知らないが、剣士を本当に育てたいなら、こんなチビに大きな剣はやめた方がいいぜ。
悪いがこれは基本的なことだ。身体に合った重さと大きさの剣を持たせてやらんとさっきみたいなことになる。
自分の身を守るための剣がマイナス要素を含んでいたら、何にもならない」
忠告は果たして、ホーゼスに届いたのか?
ホーゼスは何も言わずに踵を返すと去って行く。
「俺、悪りーこといっちまったかな?」
「いや、あいつにはいい薬だ。それより、本当に城の中に出る可能性があるのか?」
問いかけにエリオルが答える。
「ああ、もしかしたら、お前か王様が狙われているのかもな」
ひどく冷静な声で結構怖いことを平気で口にするエリオル。
意外とそれが、美しい外見とマッチしていたりする。
「そうか、俺はまあいいとしても、父上はなあ。政務も多いし、国の内外からの客への対応も多いしな。
まあ、とにかく、昨日の予定通り、二つの班に分かれて見回りしてみてくれ」
そうこう言っているうちに、アーメル・キルシュ・ネビィスが合流すべくやって来た。
「本当にここに現れたの?」
アーメルの問いかけにライアスが頷きを返す。
「剣士の卵、ざっと見て、三分の一は死んだかな?」
辺りにバラバラと残っている人数をざっと数えてライアスは言った。
「仕方ないわね。で、私たちは予定通りでいいの?」
「ああ、今から班に分かれて見回り頼む」
ライアスの言葉にアーメルは提案する。
「じゃあ、エリオル、キール。私たちは外に近い、農民エリアを行動してみる?」
ふたりはすぐに提案を黙認した。
それが分かるとハワードが口を開く。
「そうか、なら俺たちは城の中だ。エリオル、ヤバくなったらすぐに俺に気を飛ばせよ」
念押しするハワードに大きく頷きを返すエリオル。
「よし、じゃあ行こうぜハワード」
キルシュが元気よくいって、城の中へと戻り始める。
ハワードとネビィスが大人しくその後に続く。
それを見届けてからエリオルはふたりに目配せすると、反対の農民エリアの方へと歩いて行く。
歩きながらエリオルは意識を集中させて邪悪な気を追う。
深層心理下の相棒には今のところ変化はない。
ライアスはそんなエリオルが見えなくなるまでしっかりと見送ってから、ゆっくりと城の中に戻っていく。
「エリオルどう?」
アーメルはためらいがちに声をかける。
声をかけても良いものか迷ったあげく、それでも声をかけることにした。
「今のところは何も感じないが。普段、農民エリアの者たちは薬草を干して、石でアクセサリーを作っているのか?」
「ええ、まあ大体はそうね。ここ本当に雨は降らないし、水は少ないし、よくこの大きさの国が成り立っていると感心さえするわよ」
アーメルの言い様に、キールが苦笑する。
「アーメル、その言い様は・・・・・・本当のことだからいいですけど。
アーメル貴方がいたガリアーノ国よりも、エリオル貴方がいたラミンナ国よりも大変な場所ということだけは確かですが。
まあ、それなりの生き方ってのがありますから。
私はこの地が大好きですし、ここで共に生きている人たちは大切だと思っています」
まるでふたりに言い聞かせるように語るキールに、エリオルは大きく頷きを返した。
「あのー、すみません」
後ろから、少年のかわいい声がする。
「なんだ、ようやく声をかける気になったんだ。
ずっとついて来ていたから、どうするのかと思ったけど」
アーメルの言い方に少年がビックリした表情で固まる。
「アーメル、そんなにいじめないでくださいよ。エリオルだって殺気がないことが分かっていたから、そのままにしておいたんだろうし。
で、私たちに何か用ですか?」
キールの問いに少年は、真っ直ぐにエリオルを見つめる。
「お願いです! 僕に剣を教えてください。僕は貴方のように強くなりたい!」
真剣な眼差しから、嘘は見えないが。
「悪いがオレはここに長くいるかどうか分からない。それに強い剣士になりたいなら、オレではなくてハワードに言ってみることだな。
オレに剣を教えたのはハワードだから。残念ながらオレ自身は、人に剣士としてのいろはを教えたことはない」
冷たい口調は変わらずで、でもその瞳には優しさが含まれていた。
少年は少しだけうつむいて、その後シャンとエリオルを見つめ返す。
「ここにいらっしゃる間だけで構いません。お仕事のお邪魔になるなら夜だけでいいです。ほんの少しの時間でいいですから、僕に貴方の剣を教えてください。お願いします」
深々と下げる頭がグラリとかしぐ。
とっさにエリオルは少年の腕を引っ掴む。
「どうでもいいが、この剣は捨てろ! お前には重すぎる。
オレみたいに閉ざされた空間で生きるならともかく、たちまち剣士の卵として剣士の広場で剣の腕を磨くなら、こんなに大きな剣は不要だ」
いちいち最もな意見を述べるエリオル。
「でも・・・・・・」
「あの教官が怖いか? 大丈夫だ。あの教官は大したことない。
とりあえず、お前に代わりの剣をやろう」
エリオルはそう言うと、自分の懐から白い紙切れを数枚引っ張り出す。そして、まるで品定めをするかのように見比べる。
その中から一枚選ぶと右手の手のひらに乗せ、念を込めるとフーッと息を吹きかけた。
すると紙切れはアッという間に、少し小ぶりな剣へと変化した。
「これを。ここで素振りをしてみろ。今までとは全然違うことが分かるだろう」
いわゆる式神用の紙で作成した剣は軽くて、扱う者に同調する性質がある。今の少年にはベストな剣と言えるだろう。
エリオルから剣を受け取った少年は、言われるままに素振りをしてみる。
「凄い! なんて軽いんだ。まるで手の一部になったみたいだ」
驚きの声と同時に少年が心から感動しているのがよく分かる。
「アーメル、キルシュは自分で剣を作っているんだよな?」
自分に向けて投げられた月刃刀は三日月の形をした特注品だった。
赤い髪に紫の瞳はラバット国民。ラバット国は別名武器の国。
「ええ、よく分かったわね。ああ見えて、手先はとっても器用なのよ。
どんな武器でも大抵のものは作ってくれるわよ」
アーメルの言葉に少しだけ考える仕草をしたエリオルは、自分の中で納得したのか、頷くと少年を見つめる。
「とにかくその剣で、しばらく剣士の広場に行って、剣の腕を磨いてみろ。で、お前、名前は?」
「あっ、すみません。ディタ・キュンメルといいます」
「ディタか。エリオル・リアスだ。ディタ、今日はこのまま大人しく城へと戻るんだ。いいな?」
さすがに剣までもらって、まだついていくとは言えず、断念した。
「はい、エリオル様、ありがとうございました」
深々と頭を下げるディタ。今度は身体がかしぐこともない。
ディタは嬉しそうな表情を見せると、そのまま城の方へと戻って行く。
「かわいいわよね。私にもあったんだけど。あんな純粋な時代が」
羨ましそうに呟くアーメルにキールは苦笑する。
「あっ、キール。バカにしてるでしょう? 言っとくけど本当にあったのよそんな時代が」
「はいはい。分かりました。とにかく仕事に戻りましょう。
エリオル、すみません。随分と横道にそれてしまいましたね」
キールがエリオルにすまなさそうな瞳を向ける。
エリオルはディタから取り上げた剣を片手で弄びながら「いや」と一言。そのままその剣で素振りを始める。
その動きはまるで何かの舞いをしているかのように美しく、流れるような動きだった。
「なんて綺麗なの。地面が砂の上ってことを忘れてしまうくらいだわ」
アーメルが思わず感嘆の声を上げる。
その声に、エリオルはハッとした様子で動きを止める。
無意識の行動だったことは明らかだったが、アーメルが残念そうな顔をする。
「つい、余計なことをした。もう少し、砂漠に近い方まで出てみるか?」
「えー、もうやめちゃうの。すごく素敵だったのに」
本来の仕事を口にするエリオル。すごく残念で仕方なさそうなアーメルの声。
「エリオル、ライアス様が落ち込んだ時は、ぜひ、その舞いを見せてあげてください。きっとすぐに元気になられると思いますよ。
エリオル、貴方はもっと自分に自信を持ってください。
貴方は素晴らしい剣士であり、本当は誰よりも優しい人ですよ」
キールの言葉にエリオルは戸惑いの表情を浮かべる。
今まで他の誰かにそんな風に言われたことなどなかった。
「エリオル、貴方はもう十分、私たちの仲間なのよ。もっと頼って頂戴。私ができることはなんでもしてあげるわ。
私たちは三人で一つのチームでしょ?」
アーメルの問いかけにエリオルは頷いた。
「ふたりとも、ありがとう」
エリオルがそういった瞬間、神経に何かが触れる。
心の中にささやき声がして、画像が浮かび上がる。
「エメラ様、モウ少シ先ノ砂漠ノ真ン中デ、ゾルクノ気配ガシマス。
旅人ガ一人、前方カラヤッテキマス」
それはかなり最悪な事態を告げていた。
「キール、アーメル。もう少し先でゾルクの出現だ。まずいことに旅人が一人巻き込まれそうだ。急ぐぞ!」
エリオルの声にふたりは大きく頷くと駆け出す。
エリオルの速さにふたりはとても追いつけないが、エリオルは構わず先へと駆けて行く。
砂が強風に煽られたかのように逆巻いている。
その砂の間から赤い目が見え隠れしている。
大きな茶色のフードを着た旅人が、その先で立ち尽くしていた。
エリオルはその旅人の前へと身体を踊らせる。
「おい、ゆっくりと下がれ」
ディタの持っていた剣を構えると、後ろに庇った旅人に声をかけるエリオル。
「だけど、あれは」
まだ若そうな声の主が何かを言いかけた時、アーメルの声が響く。
「エリオル!」
「目だ、赤い目を狙え!」
「OK!」
腰から引き抜いた武器は一瞬で伸びて、三又の槍となる。
「行くわよ!」
アーメルの動きに合せて、エリオルは身体を踊らせると、ふたりともほぼ同時に槍と剣を突き立てる。
「アーメル、触手に触れるなよ! 全部切り落とすぞ」
シュルシュルとたくさんの触手が蠢いて、ふたりを狙う。
アーメルは思ったよりも数倍早く動いて、的確に触手を切り落としていく。
キールは旅人の肩に手を触れると、自分の身体の後ろへと庇う。
「エリオル、いつでもいいですよ。合図をください」
キールは短剣を身構えると、エリオルに叫ぶ。
「キール、頼む!」
すぐにエリオルの声が響いて、キールはその力を発動させる。
「稲妻よ、我が元へ来たれ。かの者に戒めを!」
強力な稲妻がゾルクを包み込むと、その身体を小さく、小さく変えていく。ハワードに負けていない強力な力。
あっという間に全ては消え去った。
「やったわね」
アーメルの嬉しそうな声を聞きながら、エリオルは旅人へと近づく。
「大丈夫か?」
「はい、ありがとうございました」
「タムール国に行くのか?」
「ハイ、仕事で」
エリオルは少し考えると、アーメルに話しかける。
「アーメル、すまないがこの人をタムール国まで送ってやってくれ」
エリオルの言葉にアーメルは不思議そうに問いかける。
「いいけど、エリオルはどうするの?」
「オレはもう少し砂漠を見てから帰ろうと思う。
上手く言えないんだが、妙な気配がする。ゾルクではないが、何だかとても気になる」
「分かりました。では、エリオル。私は貴方についていきます。
アーメルはこの方を連れて、先に城に戻っていてください。
ついでにハワードたちにこの事を伝えといてくれませんか?」
キールはとっさに判断するとそう言った。
「OK、分かったわ。エリオル、キール、気をつけてね」
アーメルは即座に理解すると、軽い口調で返事する。
「それじゃあ、貴方は私と一緒に」
「はい、本当にありがとうございました」
エリオルに深々と頭を下げると、フードの主はそのままアーメルの後に続く。
「じゃあ、エリオル、行きましょう」
キールに促され、エリオルはそのまま、砂漠へと出る。
神経を集中させる。
まるで主張しているかの様な気がひとつある。
ただ、それは明らかにゾルクではない。
禍々しい邪気は感じない。
けれど妙に感に触る。
これは、オレと似たような力か・・・・・・あるいは。
「エリオル、大丈夫ですか? 無理はしないでください。私がハワードに殺されますから」
冗談交じりに言うキールに思わず笑みを浮かべるエリオル。
「大丈夫だ。そんなにやわじゃない。もう少し先にいるんだが、さっきから全く動かない。邪気じゃない気をずっと放っている。
まるで誰かに、見つけてもらいたいかの様に」
「それって、わざとそこにいるってことですよね?」
キールの問いに頷くものの、何かが引っかかっていて気持ち悪い。
何に引っかかるのか、分からないもどかしさに支配される。
「とにかく、正体が知りたい。このままだと気持ち悪い」
エリオルはそう言うと、更に足を進める。
キールは何も言わず、そんなエリオルに付きあって歩く。
しばらく歩くとビックリするような風景に変化する。
砂ばかりの砂漠の中に緑色の空間が広がっている。
「オアシスですね。でも、こんなところにあるはずないんですが」
キールの呟きの意味はエリオルにも分かる。
昨日、この辺は通って帰った場所だからだ。
「おっ、客か? 思ったのと違うな」
緑色の空間の奥から声がする。
程なくその声の主がゆっくりと近づいてくる。
キラキラと銀色の光が目に写る。
「うそ! 魔境国の人? エリオルこの人が?」
その人物は白銀色の長い髪に漆黒の瞳、尖った耳に口元には牙。
身体つきも少し大ぶりでがっちりとしていて、ワイルドな印象だった。
キールの問いかけに首を振るエリオル。
「ゾルクの元じゃない、そんな禍々しさはない。だけど・・・・・・」
気になることを表現出来なくて、押し黙るエリオル。
「へえー、えらい美人がきたもんだな。俺の放つ気を辿ってきたのか?」
相手の問いかけに、エリオルは答えに詰まる。その通りではあるのだが、あっさり答えることが果たして合っているのか?
その様子を見て、ニヤッと笑うとさりげなく自己紹介した。
「俺の名はガールダー・スルン」
「ガールダー・スルンって確か!?」
キールが言うより先にエリオルがボソッと呟く。
「ガイネスの王」
ガイネスすなわち、魔境国の現在の王様だ。
正体が分かったことで、エリオルの中にある違和感の正体も分かった。遙か昔、実の父親が言っていた友人の話。
同じような力が側にあると、ひどく違和感を感じてしまうらしい。
「よく知ってるな。お前は?」
「オレはエリオル・リアス。魔境獣ゾルクを倒す為にタムール国の王子に雇われた剣士だ」
「ふん、エリオルか。剣士ね・・・・・・」
いぶかしげな様子でいったガールダーが、そのままエリオルの元へと歩み寄る。
その翡翠色の瞳をまじまじと覗き込むと、何かを見つけてニッコリと微笑む。そして次の瞬間、ためらうことなくエリオルの身体を抱き締める。
思わずビックリして見つめるキールの先で、ガールダーはエリオルの耳元で何かを囁やいた。
それに対して、エリオルは顔色ひとつ変えることなく、ガールダーを見つめ返した。
そんなエリオルの様子をガールダーは楽しそうに見つめる。
「本当にかわいいな、お前は。フッフッフ、あいつが目の中に入れても痛くないというのがよく分かる」
あいつとはおそらく父のことだろう。しかし、目に入れても痛くないというのは間違いだろう。そんな愛情を受けたことなど一度もない。
「どうやら、目的は同じ様だ。ゾルクを操っているのはガーリオ・イグア。魔境国で呪術師をしていた。俺の気に気が付けば来ると思ったんだが、ちょっとあから様過ぎたか?」
別にたいして気にした様子もなくそう言うと、あっさりとエリオルを解放する。
「俺はお前が気に入った。ゾルクの件が片づくまでの間、我が半身魔境獣・ガーリャをお前に貸そう。その代わり、ゾルクもガーリオ・イグアも完全に仕留めてくれ。
俺は魔境国へと戻る。一時的にオアシスを作ったが、ここは暑くて身がもたない。ただでさえ空気も気候も違うのだからな。後はお前に任せる」
そう言うと、右手でパチンと弾く仕草をした。
次の瞬間、真っ黒い身体の結構大きな獣が姿を顕す。
その身体は黒ひょうで瞳は黄金。銀色の角に背中には白い翼。
その神々しい姿に息を飲む。
「ガーリャト申シマス」
短く言って、エリオルの側にちょこんとお座りする。
見てくれよりも意外にかわいい。
「こんな凄い獣、オレに託されても困る。第一、お前が本当に王様なら、この獣はお前の身体の一部だろう?
そんなのを他の人間に預けたりしちゃあダメだろう」
一応の正論を言ってみるエリオル。
「別に、お前になら構わない。ガーリャを通してこの目で事の成り行きも見えるし、お前のやりたいようにすればいい。
口出しする気はない。他に聞きたいことは?」
「つまりオレに選択権はないということか?」
やんわりと断ろうとしているにも関わらず、乗ってこないガールダーにエリオルは問いかける。
「まあ、そういうことだな。俺に見込まれたのを不運だと思って諦めろ。だが、喜べ! ガーリャは手足のように働いてくれるだろう」
遊ばれているとしか思えないこの場面。
こっちにはもう一ぴき既にいると分かった上でよこそうとするあたり、何を考えているのかサッパリ分からない。
それとも相反する力が必要という意味か?
何にしても何を言っても無駄だと気付いたエリオルは無言でため息をつく。
それまでふたりのやり取りを見ていたキールは当然のように、エリオルに問いかける。
「エリオル、貴方いったい何者なんですか?」
魔境国の王様の心を短時間で動かす。
それは思ったとて、簡単なことではないはずだ。
「・・・・・・」
当然のごとく、喋りたくないエリオルは無言を通す。
「知りたいか?」
ガールダーが楽しそうにキールに問いかける。
いたずらっ子のような表情に、エリオルはきつい表情で睨みつける。
「そんなに睨むな。美人が台無しだ。別に俺が喋らなくてもいずれ刻がくれば分かるさ、嫌でもな」
予言めいた口調もあまりいい気はしない。
実際、ガールダーの言っていることが正しいとしても、それを他人にとやかく言われたくはない。
「今回、それほど難しいとの見解ですか?」
とりあえずエリオルはそこだけハッキリさせておきたかった。
「いや、ガーリャだけで十分な案件と見ているが」
問いかけの意味は理解してくれたらしい。
「そもそも、そっちは使用不可だろう?」
よくご存じで。
本当の自分を知られると言うことは、そう言うことなのか?
つまりガールダーは、偶然出会ったことをいいことに、親友の子どもを安全に守るための策略を立てたということらしい。
ありがたいというか迷惑というか・・・・・・複雑な心境だ。
「ほう、あいつに似て、頭もいいんだ」
心の中はさすがに読めないだろうが、考えに当たりをつけたのか、ガールダーはそういうとニッコリと笑う。
「じゃあ、俺は行く。こいつのこと頼む」
最初から最後までマイペースを貫いたガールダーは、そのままかき消すように姿を消した。
「マイペースな方でしたね。ライアス様も相当なマイペースですが、彼は間違いなくライアス様よりも上ですね」
キールの口調にエリオルは複雑な表情を浮かべる。
「でも、まあ、ライアス様なら褒めて下さるかもしれませんよ。
なんせ、おみやげが魔境獣。しかも王様の半身となれば力も相当なものでしょうから」
キールの言葉をエリオルはすぐに否定する。
「そんな簡単な話じゃない。ライアスの元には聖霊獣がいる。
相反する獣が同時に存在する時、何が起きるんだろうか?
変に力が爆発してお前たちの国を滅ぼすことになってもいけないだろう?」
「なるほど、エリオルが言っていたのってそのことですか。
でも、変なこと言ってましたよね?
ひとつは使用不可って、ライアス様の聖霊獣の力は使えないってことでしょうか?」
まあ、意味はかなり違うが、使えないのは事実だ。
「相反する力は併用不可なんだろうな。
というわけで、ガーリャ貴方には大人しくしていて欲しい」
傍らの獣に問いかける。
ガーリャはまるでじゃれつくかのように、エリオルに近づき身体を擦りつけると言った。
「我ガ存在ヺ深ク考エナクテイイ。貴女ノ気二沿ワナイ事ハシナイ。
私ハアクマデ影。貴女ガ望ムナラ、側デタダ見守ッテイヨウ。
ソウ、誰ニモ知ラレヌヨウニ」
「ありがとう、非常に助かるよ」
エリオルはガーリャの頭を撫でながら、短く言った。
「キール城へ戻ろう。ハワードたちの方、どうなっているかな?」
「分かりました。では、帰るとしましょう。エリオル、体調は大丈夫ですか?」
エリオルの体調をえらく気にする様子に、エリオルは微笑みを向ける。
「大丈夫、あの気の原因が分かったから。疑問も解けたし、後はガーリオを見つけることが出来ればいいんだが」
「そうですね。でも、くれぐれも無理だけはしないようにしてくださいね」
キールはそれでもエリオルに釘を刺す。
まるでハワードみたいだとエリオルは思う。
ハワードはいつも暴走しがちな心を引き留めてくれた。
「分かっている。行こう」
「はい」
こうしてふたりと一ぴきは、砂漠をタムール国へと戻り始めた。
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