2 / 2
目覚めのち逃走
目覚めのち逃走
しおりを挟む
朝日が眩しい暖かい。そして重いし獣臭い?
その異臭と息のしづらさにハッとして胸に目が向いた。何かの顔が目の前を埋め尽くす。
「うわあああああ!!!」と叫び驚きながら上体をとび起こした。胸元にいた何かは「ニュアァッ」と小さく鳴き反動で足元までゆっくりと転がっていく。
そこにはバレーボールのような三毛猫が寝転がっていた。丸々と太ってるせいか結構な衝撃があった筈なのにイビキをかいて爆睡している。
その姿になんだか安心と同時になぜか温かい布団の謎が解けた。猫をマジマジと見たのは初めてだ。耳を澄ますと「ぷーぷー」とおかしなイビキをかいておりニヤニヤが止まらない。その丸々とした大きさと純粋無垢な寝顔は癒やしとしか言えなかった。
その束の間の癒やしは目の端に映ったやけに高そうな掛け軸とだだっ広いゴミ袋だらけの和室が現実に僕を戻した。
早くのこの屋敷を出なければ。
立ち上がり布団をたたんで猫を乗せたまま押入れに押込んだ。自分がいた痕跡はできるだけ隠したかった。そしてたくさん書類が詰め込めれたゴミ袋の間を縫うように内縁に出る。
昨日は暗くて気づかなかったが中央に小池、塀の近くに松が植えられておりコの字型に家が庭を囲んでいる日本庭園つきの豪邸だったようだ。その非日常な空間に圧倒され更に焦ってしまう。
正面の外縁の下に隠しているビショ濡れの靴を出し履こうとしゃがんだ時だった。
「おはよう。朝から日向ぼっことは元気だな。風邪はひいてないか?」と、あのお爺さんがいつの間にか隣に腰掛けてきた。
昨日と違い明るいのでバレるのではと鼓動は高鳴っていた。それでも変わらず疑う素振りは見られなかった。
「ひ、ひいてないよ。布団が暖かったおかげでね。」と孫を演じ無難な返事をする。
「そりゃあ良かった。寝る前に少し髪が濡れてるもんだったから風邪ひいたんじゃないかと思って...」。
「あ、あの僕ちょっと用事があって夕方までに帰らないと行けないんだ。今から帰ってもいいかな?」
と気持ちが先走っておかしな会話の流れになってしまったと後悔する。獅子落としが「カッコンッ...」となんとも言えない音をたてた。
「...とはいえ、まだ起きてから何も食べてないであろう?靴もビタビタに濡れてるし...それでも帰ると言うなら母さんに連絡するが...」。
マズい誰かに連絡されたら嘘がバレてしまう。
仕方なく僕は
「じゃあ、なにか食べてから行こうかな~。ちょ、ちょうどお腹も空いてたし」と話にのらざる負えなかった。
「よしっ、じゃあなにか作ってやろう。」そう言うお爺さんは立ち上がり千鳥足に台所へと向かった。とりあえずの難は逃れた。
その異臭と息のしづらさにハッとして胸に目が向いた。何かの顔が目の前を埋め尽くす。
「うわあああああ!!!」と叫び驚きながら上体をとび起こした。胸元にいた何かは「ニュアァッ」と小さく鳴き反動で足元までゆっくりと転がっていく。
そこにはバレーボールのような三毛猫が寝転がっていた。丸々と太ってるせいか結構な衝撃があった筈なのにイビキをかいて爆睡している。
その姿になんだか安心と同時になぜか温かい布団の謎が解けた。猫をマジマジと見たのは初めてだ。耳を澄ますと「ぷーぷー」とおかしなイビキをかいておりニヤニヤが止まらない。その丸々とした大きさと純粋無垢な寝顔は癒やしとしか言えなかった。
その束の間の癒やしは目の端に映ったやけに高そうな掛け軸とだだっ広いゴミ袋だらけの和室が現実に僕を戻した。
早くのこの屋敷を出なければ。
立ち上がり布団をたたんで猫を乗せたまま押入れに押込んだ。自分がいた痕跡はできるだけ隠したかった。そしてたくさん書類が詰め込めれたゴミ袋の間を縫うように内縁に出る。
昨日は暗くて気づかなかったが中央に小池、塀の近くに松が植えられておりコの字型に家が庭を囲んでいる日本庭園つきの豪邸だったようだ。その非日常な空間に圧倒され更に焦ってしまう。
正面の外縁の下に隠しているビショ濡れの靴を出し履こうとしゃがんだ時だった。
「おはよう。朝から日向ぼっことは元気だな。風邪はひいてないか?」と、あのお爺さんがいつの間にか隣に腰掛けてきた。
昨日と違い明るいのでバレるのではと鼓動は高鳴っていた。それでも変わらず疑う素振りは見られなかった。
「ひ、ひいてないよ。布団が暖かったおかげでね。」と孫を演じ無難な返事をする。
「そりゃあ良かった。寝る前に少し髪が濡れてるもんだったから風邪ひいたんじゃないかと思って...」。
「あ、あの僕ちょっと用事があって夕方までに帰らないと行けないんだ。今から帰ってもいいかな?」
と気持ちが先走っておかしな会話の流れになってしまったと後悔する。獅子落としが「カッコンッ...」となんとも言えない音をたてた。
「...とはいえ、まだ起きてから何も食べてないであろう?靴もビタビタに濡れてるし...それでも帰ると言うなら母さんに連絡するが...」。
マズい誰かに連絡されたら嘘がバレてしまう。
仕方なく僕は
「じゃあ、なにか食べてから行こうかな~。ちょ、ちょうどお腹も空いてたし」と話にのらざる負えなかった。
「よしっ、じゃあなにか作ってやろう。」そう言うお爺さんは立ち上がり千鳥足に台所へと向かった。とりあえずの難は逃れた。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
【完結】狡い人
ジュレヌク
恋愛
双子のライラは、言う。
レイラは、狡い。
レイラの功績を盗み、賞を受賞し、母の愛も全て自分のものにしたくせに、事あるごとに、レイラを責める。
双子のライラに狡いと責められ、レイラは、黙る。
口に出して言いたいことは山ほどあるのに、おし黙る。
そこには、人それぞれの『狡さ』があった。
そんな二人の関係が、ある一つの出来事で大きく変わっていく。
恋を知り、大きく羽ばたくレイラと、地に落ちていくライラ。
2人の違いは、一体なんだったのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる