プロミステイク ~俺と彼女の中二病的恋愛遊戯~

阿津沼一成

文字の大きさ
16 / 28
第1章 スプリング×ビギニング

第16話 アネ トノ ヨル

しおりを挟む
「デュフフフ・・・・リンたん、かわういよリンた~ん」

リビングのテレビ画面に映し出されたアニメの幼女に、姉さんは犯罪者すれすれのヤバい視線を送る

ソファで隣に座った俺は、そんな姉さんに生暖かい視線を送る

今まで何回も繰り返した俺達姉弟の日常だ

ちなみに姉さんの格好はというとグレーのスエット上下に頭には前髪が邪魔にならないようにつけた、飾りのない黒いプラスチックのカチューシャ、後ろ髪はゴムで纏めた状態にしてある

ハッキリ言って全く色気のない格好だ

よくマンガやラノベなんかで姉キャラが半裸でうろうろして、主人公が『姉さん、ちゃんと服を着てくれよ』なんてセリフを吐いたりするが、ウチに関してはそんな事は一度もない

下着姿はおろか、下着そのものに関しても俺は一度も見たことはなかった

姉さんはいつものブラコン発言に反して非常にガードは固いのだ

おそらく姉さんはブラコンキャラを演出しているだけで、真性のブラコンてわけじゃないのだと思う

まあ、そのおかげで俺の方も安心して、こうして姉さんと二人だけの夜でも隣に座っていられる

万が一にも迫られたらシャレにならないからな

血が繋がってない姉弟だからって、ベタな昼ドラみたいな展開は真っ平御免だ

画面に映し出されたアニメは一話分終了し、次回予告になった

「姉さん、何か飲む?姉さんの好きな炭酸とかも買ってあるけど?」

「ほんとぉ?アリガトけーくん、気がきくねえ」

姉さんはリモコンのポーズボタンを押しながらそう言った

冷蔵庫から炭酸のボトルと、自分用のほうじ茶のボトルを取り出し、グラスをひとつ持ってリビングに戻る

俺はボトルからラッパ飲みだが、姉さんはグラスに注いで飲むのだ

行儀がどうとかではなく、こうした方が香りがより楽しめるらしい

ボトルを開けグラスに注ぐと、この炭酸独特の香りが立ち上る

「アリガトけーくん。じゃいただきます」

姉さんは俺からグラスを受け取ると、ぐびぐびと一気に半分くらいまで飲み、ぷはーと息を吐いた

「くはぁー、この味、堪らんのお。この『20種以上のフルーツフレーバー』の中には絶対、大麻入ってると思うわ」

「・・・入ってたら麻薬取締法違反だろ」

「でも、ぐたいてきな名前書いてないって事は、ぜったい後ろめたいせーぶんが入ってるんだよ」

そんなボケとツッコミの後、姉さんが一時停止を解除し再びアニメが再開される

『わたし、狸里璃野 鈴 (りりりのりん)、暮霧林小学校の4年生。ある日出会ったタヌキみたいなぬいぐるみは実は異世界からきた妖精だったの』

『僕の名前はトロッキィ。この世界とは別の世界、〈コミン・テルン〉からやってきたんだ。悪いやつらがこの世界を狙ってる。リンちゃん、魔法の力でぼくといっしょに戦って』

『わたし、魔法少女になってこの世界を守ります』

なんつーかツッコミどころ満載だな・・・

姉さんの付き合いで、さして興味の無い作品を見るときは頭の中でツッコミながら見るのが常だ

頭の中で、というのがポイントで決して口に出してはいけない

こういった作品を好んで見る方々は自分が好きな作品をけなされた時 (けなしてるつもりはないんだが・・・)のキレっぷりはハンパない

俺は泣きながら土下座し謝罪するのは二度と御免だ

画面の中ではオープニングが始まっている

ポップな曲調に乗せてちょっとイカれた歌詞の唄が流れる

姉さんが曲に合わせて身体を揺するが見ないことにした

このアニメの正式なタイトルは『魔法のマジカルウィッチ スタア☆リン』

『魔法』と『マジカル』と『ウィッチ』って意味被ってないか?

『スタアリン』てネーミングもどうかと思う

主人公の女の子の名前は狸里璃野 鈴・・・りりりのりんて・・・

小学4年生で通ってる小学校の名前は暮霧林 (くれむりん)小学校

私立か公立か知らんが音の響きがなんかイヤだ

おなじみのマスコットキャラは、なんかタヌキに似たぬいぐるみで名前は『トロッキィ』

普段は帽子に化けて主人公の頭の上に乗っているんだが、これって軽く校則違反なんじゃないだろうか?

その帽子もロシア人が被ってそうなモコモコしたもので、おまけにタヌキの尻尾がついている

服装が半袖にミニスカなのに季節感メチャクチャだ

そしてミニスカから伸びる足には、タヌキをイメージしてるのか茶色と黒の縞ニーソ

・・・よかった、何の性的魅力も感じない

縞ニーソならなんでもいいわけじゃないみたいだな

そもそも俺はつるぺたなんかには興味はない

どちらかといえば女の子の胸はふくよかな方が好みなのだ

理想をいうなら園崎くらいの・・・って、なんでここで園崎の名前が出てくるんだよ

画面だ画面に集中しろ

画面の中では敵が現れ友達が操られている

主人公は魔法のアイテムと呪文で変身

光に包まれ、着ている服が弾け飛び一度全裸になる主人公

「うほーッ!!つるぺたキター!!」

姉さんが奇声を上げるが俺は何も聞こえないふりをする

変身したあとのコスチュームは全身真っ赤、髪まで真っ赤になっている

顔や声はそのままなのに友達たちは誰も気が付かないのはお約束だ

手にした魔法の武器は二つ、それぞれの手にひとつずつ違う形のアイテムで、片方はハンマーのようなもの、もう片方は三日月型に持ち手がついた形の物だ

そのアイテムを×の字に合わせ必殺技を発現させる

おかしいな・・・どっかで見たことあるような錯覚を覚えるカタチだ

真っ赤な光の帯が敵を包み込み消えると、その姿は元の友達に戻っていた

操っていた敵の幹部が負け惜しみを言って逃げていく

みんな元に戻って大団円だ

ワンパターンと言ってしまえばそれまでだが、それだけに安心して見ていられる

こういった子供向けの作品は老人向けの時代劇といっしょで、奇をてらったりってのは必要無いのだ

王道、基本、定番、テンプレ、ステレオタイプ

それは悪いものじゃない

まあ、通して見たかぎり設定はともかくストーリーは定番で、まあ悪くない出来だと思う


壁の時計を見ると3時近い

不意に肩に重みを感じ、横を見ると姉さんが俺にもたれ掛かっていた

「姉さん?」

俺は困惑した声を漏らす

「けーくん・・・あたしね、もうこれ以上、限界みたい・・・」

とろんとした目をした姉さんが俺にそう言った

「ゴメンね、けーくん・・・。あたし、あたし・・・、もう、我慢出来ないの」

「そ、そんな・・・ダメだよ、姉さん」

・・・オチは分かってるんだが姉さんに合わせてそんなセリフを吐いた。棒読みで

「けーくん、あたし、もう、もう・・・・・・おやぷみー、ぐー」

そんなセリフと共に、姉さんはソッコー寝た

やれやれ、相変わらずスイッチが切れたみたいに寝る人だ

自分で誘っといてこれだもんな

「すうすう・・・」

姉さんは無防備に寝ている

やれやれ、姉弟とはいえ血が繋がってない男女なんだからな

俺がムラムラきて間違いでも起こしたら、とか考えないんだろうか?

だがまあ、それだけ信用されてるってことなんだろうし、それがわかってるからこそ、その信頼を裏切らないためにも俺自身歯止めがきく

正直、胸を少し触るくらいなら・・・とか、思わない訳じゃないんだからな

でも、園崎に対してはどうなんだと考えると・・・自信がない

今朝のような状況が再び起こった時、俺は歯止めがきくのか?

日に日に園崎とは親密になっていくが、彼女が俺に求めているのは友情のはずだ

俺はそれに応えられるのか?

男女の間に友情は存在しないって聞いたことがある

園崎が俺を信頼してくれてるのをいいことに、いつか不埒な真似をしてしまうんじゃないか?

・・・園崎がお腹をさすっていたことについては忘れよう

いくら考えても本当の理由なんて解らないし、まさか本人に聞くわけにもいかない

問題は俺自身だ

俺は園崎の不用意な色気にだいぶ戸惑っている

彼女は俺を親友と慕ってくれるが、俺の方はそんな目ではとても見れない

なにしろとびきり可愛らしい外見した女の子なんだから

不意に委員長から言われた忠告が耳に甦る

『園崎さんとは少し距離を置いたほうがいいと思うけど』

そうすべきなのかな・・・





・・・・・・・・・・・・・・・・無理!!

あの園崎がそれを許すとは到底思えない

そもそもどうやって?

同じクラスで席も隣同士なのに

逆に園崎が離れていくように促すのは?

園崎に嫌われるような事をすれば・・・



あれ?

いま俺、嫌われたくないって思った?

まあ、そうだよな

誰だって女の子からわざわざ嫌われたい奴なんかいない

相手が園崎だからって事じゃなく・・・そうだろ?

俺はどうしたらいい?

「くしゅっ」

姉さんが小さなくしゃみをする

そんなに寒くもないがさすがに何もかけずに寝たら風邪をひくかも知れない

なにか掛けてやらなきゃ

俺は一度自分の部屋に戻り、押し入れの中から冬に使ってる毛布を出し、再びリビングへと下りた

そっと姉さんの身体に毛布をかける

「うーん、むにゃむにゃ・・・他の女のにおいがする」

「!!」

心臓が止まるかと思った

「ね、寝言か?どんな夢見てんだよ・・・」

毛布に園崎の匂いがついてるのかと錯覚して肝が冷えた

この毛布は使ってなかったんだからそんなはずはない

やれやれ、俺ももう寝よう

まだつけっぱなしになっていたテレビを消すためリモコンを手にする

『あなたはそれでいいの!?それで幸せなの!?お願い、自分の本当の気持ちに気付いて!!』

画面の中でヒロインの少女が叫んでいた

自分の本当の気持ち・・・か

俺の本当の気持ち

園崎に対して抱いてる本当の気持ち

ただの性的な欲望なんだろうか・・・それとも

解らない

ただはっきり言えることは・・・

いつも振り回されて、迷惑してるはずなんだけど・・・・

あいつと一緒にいると・・・なぜかとても楽しいんだ

(つづく)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

処理中です...