困ったことにあなたが好きみたい。

神木カロ

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11、勘違い

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「七海って...」

私は、七海ちゃんを見て絶句した。




七海ちゃん...いや、『七海くん』は女子なら誰でもかっこいいと思うような顔で学ランを着て本を読んでいた。

一瞬だけ私に気がついて、またすぐに本に集中してしまう。

私が勝手に女の子だと思っていた七海ちゃんは実は男の子で、ほうっと息が出るほどかっこいい。

「どうかした?」

心配して私の顔をのぞき込む健太に、思わず笑いがこみ上げた。

「ふふ。ごめん、ちょっと勘違いしてた」

そうか。

私が、健太が他の女の子の話ばかりしていても嫉妬しなかった理由はこれだ。

無意識に七海ちゃんが健太に恋愛感情がないって気がついていたからかも。

「勘違いって?」

「ううん。なんでもないよ」

「えぇ?教えてよ」

「本当に、なんでもない」

それでも聞きたそうな顔の健太に気付かないフリをして七海くんに視線を移した。

今度は全く私を見ないけれど、ずっと気になっていた『七海ちゃん』と会えて、話してみない訳にはいかない。

「おーい、授業はじまるぞー」

突然後ろから登場した先生によって、私たちは教室に戻らなくてはならなくなってしまったけれど。













「え?もう帰っちゃったの?」

七海くんが授業が終わるなりさっさと帰ってしまったと聞かされて、とても残念な気持ちになった。

話したかったのに、なんだかすれ違っているようで。

「七海、気に入った?」

「気に入った!」

健太はその解答に満足した様子で私の手を引いて歩きだした。

「じゃあ、帰ろうか」

少し日が落ちてきて空がだんだんと赤みを帯びてくる。

「明日は終業式だね」

「来年みなと同じクラスなれなかったら職員室の窓全部割ったろうかな」

「あはっ!その時は私も手伝う!」

2人でくすくす笑いながら歩いていると、すぐに駅まで着いてしまった。

あと健太といられるのは私の最寄り駅までの四駅間だけしかない。

「なぁ、明日、俺んち来ない?」

健太がちょっと照れたような顔で私を見ていた。

「あ、いや、別に深い意味は無くて、、、弟がたぶんいるけど」

「うん、行く!」

あたふたしている健太が面白くて可愛くて私は「行く」と言った。

初めて誰かの家に行く、あのワクワクを保ったまま、あっという間にその日になっていた。



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