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28、イライラ

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ざまぁみろ!?

「なによ。大きい声で私の目を見て言ってみたら!?」

七海くんの本を上から奪い取ってキッと睨むと「ちょっと、ページわかんなくなるでしょ」とあくまでも冷静に見上げられた。

本を奪い返そうとする長い手を避けて自分の席に座ると、七海くんは大きくため息をつく。

一応、読んでいたページに人差し指を挟んでいたけど、そのため息にムカッとして指を抜く。

「あっ」

ギロっと睨まれても私は知らない。

人がイライラしてるときに、余計にイライラさせるようなこと言うからじゃない。

机の中に本をつっこんで私は前を向いた。

「みーなーちゃん!おはよ!」

その声で、今隣に天使が舞い降りたことを察す。

「夏帆ちゃん!おはよう!」

相も変わらず美人でかわいくって、少しだけ癒された。

「健太と喧嘩したんだってー?」

「....なんで知ってるの?」

「さっき健太から聞いたの!」

健太ってばこんなすぐ広めるなんて。

嬉嬉として微笑む夏帆ちゃんに、少しだけイラついて唇を噛む。

なんにも楽しいことなんかじゃないのに。

どうしてこんなにもイライラするんだろう。

「その話、あんまり広めないでね」

「んー。広めないよぉ」

「うん。よろしくね」

念を押すように顔を見つめてみたけれど、夏帆ちゃんはちゃんと約束してくれるタイプの子ではないみたいだった。

夏帆ちゃんがスキップしながら席に着くと、ここぞとばかりに七海くんが横に立つ。

「ねえ、本」

手のひらを出して本を催促する七海くんは少し焦っているようで、おもしろかった。

私のストレス発散に付き合ってもらおう、と無視して前を向く。

七海くんはまた大きくため息をついて、私の机の中に腕を突っ込もうとするようにしゃがんだ。

反射的に体を机にぴたっとくっつけると、途中まで侵入して本を探していた七海くんの腕が私のお腹にフィットする。

「きゃっ」

七海くんは私をジロっと睨んで腕を素早く抜いた。

「みなちゃんがやったのに俺が加害者なわけ?」

本を掴み損ねたのと私が叫んだので、ずいぶん不機嫌そうに席に着いた。

それと同時に担任が教室に入ってきた。

「今日はみんなにいいことがあるぞ!」

輝く頭を存分に見せつけながら、お菓子の缶を出して教卓の上に置く。

おかしを貰えるのかとクラス一同ワクワクし始めたところで、「今日は席替えだ!」と缶の蓋を開けると中には紙で作ったくじが入っていた。


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