困ったことにあなたが好きみたい。

神木カロ

文字の大きさ
28 / 47

28、イライラ

しおりを挟む
ざまぁみろ!?

「なによ。大きい声で私の目を見て言ってみたら!?」

七海くんの本を上から奪い取ってキッと睨むと「ちょっと、ページわかんなくなるでしょ」とあくまでも冷静に見上げられた。

本を奪い返そうとする長い手を避けて自分の席に座ると、七海くんは大きくため息をつく。

一応、読んでいたページに人差し指を挟んでいたけど、そのため息にムカッとして指を抜く。

「あっ」

ギロっと睨まれても私は知らない。

人がイライラしてるときに、余計にイライラさせるようなこと言うからじゃない。

机の中に本をつっこんで私は前を向いた。

「みーなーちゃん!おはよ!」

その声で、今隣に天使が舞い降りたことを察す。

「夏帆ちゃん!おはよう!」

相も変わらず美人でかわいくって、少しだけ癒された。

「健太と喧嘩したんだってー?」

「....なんで知ってるの?」

「さっき健太から聞いたの!」

健太ってばこんなすぐ広めるなんて。

嬉嬉として微笑む夏帆ちゃんに、少しだけイラついて唇を噛む。

なんにも楽しいことなんかじゃないのに。

どうしてこんなにもイライラするんだろう。

「その話、あんまり広めないでね」

「んー。広めないよぉ」

「うん。よろしくね」

念を押すように顔を見つめてみたけれど、夏帆ちゃんはちゃんと約束してくれるタイプの子ではないみたいだった。

夏帆ちゃんがスキップしながら席に着くと、ここぞとばかりに七海くんが横に立つ。

「ねえ、本」

手のひらを出して本を催促する七海くんは少し焦っているようで、おもしろかった。

私のストレス発散に付き合ってもらおう、と無視して前を向く。

七海くんはまた大きくため息をついて、私の机の中に腕を突っ込もうとするようにしゃがんだ。

反射的に体を机にぴたっとくっつけると、途中まで侵入して本を探していた七海くんの腕が私のお腹にフィットする。

「きゃっ」

七海くんは私をジロっと睨んで腕を素早く抜いた。

「みなちゃんがやったのに俺が加害者なわけ?」

本を掴み損ねたのと私が叫んだので、ずいぶん不機嫌そうに席に着いた。

それと同時に担任が教室に入ってきた。

「今日はみんなにいいことがあるぞ!」

輝く頭を存分に見せつけながら、お菓子の缶を出して教卓の上に置く。

おかしを貰えるのかとクラス一同ワクワクし始めたところで、「今日は席替えだ!」と缶の蓋を開けると中には紙で作ったくじが入っていた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

盗み聞き

凛子
恋愛
あ、そういうこと。

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...