うつしよの波 ~波およぎ兼光異伝~

春疾風

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豊臣秀次の章

第二話 秀次事件

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 七月十日。秀次は僅かな供回りを連れ、高野山へと向かっていた。一行に木村重茲は居ない。彼は秀次の重臣として、山崎の屋敷に謹慎を命ぜられていた。
 誰も彼も、一言も言葉を発することが無い。葬列かと見まごう程陰鬱とした一行に、けたたましい蝉の声が降る。
 高野山の麓には渡しがある。その渡船場に僧が立っていた。いや、確かに風体こそ僧であるが、その体躯ははおおよそ僧に似つかわしくない巨漢であった。秀次も体格は良い方である。しかし、僧はその秀次より頭一つ分は高い。
「関白様」
 僧が口を開いた。聞き覚えのある声だ。秀次は記憶を辿り、一人の男に行きついた。
「そなた……藤堂高虎か?」
 藤堂高虎。豊臣秀長、そして秀長の養子となった豊臣秀保に仕えていた男である。秀長たっての願いで秀保の後見人となっていた高虎とは、秀次は幾度となく顔を合わせる機会があった。
「高野より供奉に参りました」
「そうか。そなた、今は山に入っておったな」
「秀長様には大恩が御座いました。結局御存命のうちには何もお返しできませんでしたが……。ゆえに、御養子の秀保様を盛り立てていこうと誓っておりましたがそれも叶わず……菩提を弔うため入山致しました」
 秀保が亡くなると、高虎は元結を切り高野山へ出家していた。
「せめて、秀保様の兄君である関白様の護送だけでもと参上仕りました次第で御座います」
「秀保も……良き家臣を持ったな」
 目を細め、柔和な顔で秀次は言った。高虎が感極まり俯く。
「いえ、それがしなど……」
「だが高虎。私は、叶うならそなたには山を下りて欲しいのだ」
「なにゆえ……」
 高虎は顔を上げ秀次を見つめる。
「そなたの才は、俗世でこそ活きるものだ。才を天下に活かすことこそ、秀長叔父上や秀保への何よりの供養であろう」
 その秀次の言に、高虎の胸は沸きたつように熱を帯びた。
 ああ、関白様は。この方は。このお方の心こそ、真に天下に必要なものだと言うに。
 されど高虎は、その言葉を口にすることは出来なかった。誰も、太閤殿下の意に背くことなど出来ないのだ。
「勿体無きお言葉に御座います……」
 ただその言葉を、口にすることだけができた。

 山へ登る、人の群れ。高虎と秀次、そして秀次の供回りらが高野山へ向かう。
 徒歩である。高野山へ上るには下乗しなければならない。賎も貴も、この道では平等であった。
「関白様、その櫃の中身は?」
 歩みながら高虎が問う。供回りらは櫃を背負っていた。俗世を捨て、高野山へ入るにしては少々物々しい装いである。
 長年戦場に居た高虎である。櫃の中身が日用品の類でないことは肌で感じられた。
「……刀だよ」
 秀次が重々しく口を開く。
「……高野山は殺生を禁じております」
 まさか関白様に限ってその様な事はないだろうが――理解してはいたが、高虎は反射的にそう返した。
「刀で誰かを斬ろうというのではない。これは武士としての矜持、己への責なのだ」
「責?」
 秀次の目が、沈む。思い出したくはない、しかし忘れてはならぬことを思い返した表情であった。
「長久手のいくさ
 高虎は、その言葉で全てを察した。
 小牧長久手の戦。この戦の指揮官であった秀次は、その戦闘で味方にして武名も名高い池田恒興と森長可を喪ってしまったのである。
 殿下が私の事を信用なされないのも、その所為かも知れないな。
 秀次は下を向き、自嘲気味に笑った。天下取りの大事な戦で、信長公の旧臣を自分の所為で失ったのだ。最後の一線で私を信用出来ぬのも詮無き事だろう、と。
 無論、秀次のみの責では無いだろう。しかし、指揮官であるからには責は負わねばならない。この豊臣秀次という男はそれほどまでに篤実であった。
「私は、決して忘れない。彼らのことを、武士としてのありかたを。……例え何者になろうとも」
 そう言って秀次は顔を上げた。真っ直ぐな、ただ真っ直ぐな瞳であった。

 七月十四日。秀吉の元より遣わされた使者らが秀次の元を訪れた。
 高野山青巌寺。秀吉の母、つまり秀次の祖母・なかを弔うため秀吉が建立したこの寺院を、秀次は居住の地として与えられていた。
 その青巌寺は今、兵士たちに取り囲まれている。流石に鎧甲冑ではないが、みな帯刀している。警備と言うには物々しい。なぜならば、彼らの視線は一様に堂内へと注がれていたからである。堂内でただならぬ事態が起こっていることは想像に難くない。
 西空に傾いた夕日が青巌寺の一室を染め上げる。その光は不自然なまでに、赤い。
「今、何と申した」
 上座に座する秀次は、重々しい声で言った。普段の温和さなど欠片も感じられない、張り詰めた気を纏っている。もう随分と闇に落ちた室内で、その目だけが光を放っていた。
「太閤殿下より、木村常陸守重茲殿への切腹が申し付けられました。明日、十五日に腹を召されると」
 秀次と相対する使者の一人――福島正則は太く、しかしよく通る声で言った。その表情は暗くて窺い知ることはできない。
 正則のすぐ後ろには若者と老人、二人の男が坐している。福原長堯と池田秀雄。いずれも秀吉の命で高野山に使者として使わされていた。
 外の兵士らと違い、使者らは帯刀していない。しかし、その後方には鞘に入れられた槍を持つ小姓が坐していた。事が起こればいつでも構えられる算段なのだろう。
 これより伝えることは関白様に激昂されても致し方ない。使者として伏見を発ったときより正則はそう覚悟していた。
「私が山に入れば全て収まるのではなかったか。なにゆえ重茲が腹を切らねばならぬ」
 無論、使者である正則に伝えても詮無いことである。しかし、秀次はそう吐き捨てねばならなかった。
「全ては太閤殿下の御心ゆえ……」
「重茲が、私を庇い続けていた故か」
 その問いに、正則は答えなかった。否、答えられなかった。何故木村重茲が切腹を申し付けられたのか。その解を知るのは秀吉以外には居まい。その秀吉も、決して口を開きはしないだろう。
「……其が使わされた由は、もう一つ御座います」
 話題を変えるかのように正則が言った。
「申せ」
「恐らく、この書状にあるものかと」
 正則は懐より書状を出し、秀次へと渡す。秀次は書状を受け取ると封を開き、控えていた少年に言った。
「万作、灯りを」
 その少年――不破万作はすっと下がり、直ぐに手に灯りを持ち秀次の横へ控えた。その動作はこの様な張り詰めた場にあっても流麗で美しい。
 ぼうっと揺らめく炎。その灯で秀次は書状に目を通した。

  秀次高野山住山之儀付被仰出条々

 秀次を高野山に在住させるための命令、といったところであろう。
 太閤殿下は、私には腹を切らせる心算は無いらしい。重茲に切腹を命じておいて勝手なことだ、と秀次は諦観の混じった表情を浮かべる。
 続く一文に目を通す。

  一、召仕候者、侍十人、此内坊主・台所人共、下人・小者・下男共五人、
  都合十五人可為候、此外小者一切不可有之候、

 秀次の供回りの人数についての命。入山した貴人への処置としては妥当であろう。
 しかれども、その後に続く一文から秀次は目を離すことが出来なかった。

  然共、ほつたい黒衣之上ハ、上下共刀・脇差不可帯之事

 しかしながら、出家した身なのだから、刀や短刀を帯びてはならない。
 確かに、秀吉は秀次には腹を切らせる心算は無かった。だが。
 刀は、秀次の武士としての最後の矜持であった。己が過去を、散っていった者たちを忘れぬため。なればこそ、高野にあっても刀を手放さなかったのである。
 それを、殿下は、太閤殿下は。
 私の誇りまで奪おうというのか。

 夜。正則らに宿坊を取るよう言い渡し、秀次は青巌寺の一室で瞑目していた。側には万作が何も言わずただ座っている。秀次の手には刀――遠き日、秀俊に愛刀だと語っていた備前長船兼光がある。
 正則らは明日午の刻に訪れると言い、堂を後にした。恐らく、その際刀を受け取り下山する算段なのであろう。
 その時が、兼光らとの別れの時となるのだろうか。
 別れか。
 ふと、秀次はある男のことを思い出した。己が謀叛を疑われた時、ただ一人声高に反論した男。木村重茲のことを。
 その男も明日、死ぬ。あの男は、最後まで私の潔白を叫んでくれていたのだろうか。
 何故。ふと、その言葉が浮かぶ。何故、あの男が死なねばならぬのか。有りもしない、謀叛という罪状で。私を謀叛人と断ずるのであれば、私さえ腹を切れば良かったのではないか。
 私がこのまま高野に留まり、あの書状の命に従えば、罪を認めることになる。それでは、それでは……。私のために死んでいった家臣たちに申し訳が立たぬ。
 私は。無実だ。無実ゆえに、私は。
「万作、そなたらは山を降りろ」
 唐突に秀次が口を開いた。決意を秘めたかのような重々しい声である。
「なにゆえ……」
 澄んだ静かな声で万作が聞き返す。
「命にもあっただろう、供回りを減らせと。それに、そなたら若い衆がこのまま朽ちるのは惜しい」
「この不破万作、最期まで関白様の御供仕ると決めております。高野まで付き従った者は皆、同じ志で御座います」
 真っ直ぐな瞳で万作が秀次を見つめる。
「必ず御供致します。……如何様な場であろうとも」
「……そうか」
 最早秀次から言うことなど何も無かった。彼らは秀次に仕えること、いや、仕え続けることこそが誇りなのだ。なればせめて、彼らの想いも遂げさせたい。
 兼光、どうか私の誇りを守ってくれ。
 秀次は、手にした備前長船兼光をただ見つめていた。

 七月十五日、巳の刻。
 青巌寺・柳の間。その襖に雪の積もった柳が描かれていることから、この一室はそう呼ばれていた。その柳の間に、秀次と家臣達は居た。
 山本主殿。山田三十郎。不破万作。雀部重政。虎巌玄隆。そして豊臣秀次。
 正確には虎巌玄隆は家臣ではない。東福寺の僧である。高野には秀次らと共にではなく、十三日に参上した。秀次には良く目を掛けており、秀次の決意を聞いた玄隆はせめて冥土の案内にと、この場に居たのである。
 皆、一様に襖絵の雪の如き白い装束を纏っている。
「皆……よく此処まで付いて来てくれた」
 秀次は穏やかに、優しい声で居並ぶ者たちに伝えた。
「此処まで、ではありませぬ。これからも、で御座います」
 誰ともなく、そう言った。他の家臣らも一様にうなずく。
「本当に、私は良き臣を持ったな。本当に……」
 秀次は熱を帯びた目頭を押さえ、俯いた。
 紙で包まれ名を墨書された短刀が三方に乗せられ、それぞれの前に置かれてゆく
 国吉。厚籐四郎。鎬籐四郎。村雲。正宗。国次。いずれも秀次が蒐集しゅうしゅうしていた名刀である。
 山本主殿は国吉で。山田三十郎は厚籐四郎で。不破万作は鎬籐四郎で。虎巌玄隆は村雲で。各々が腹を召していった。
 最後に、雀部重政と秀次だけが残された。秀次は肌脱ぎになり、正宗の短刀を腹に押し当てる。その後ろに、備前長船兼光を構えた重政が立つ。
 彼岸と此岸の境に立った故か、秀次の感覚は研ぎ澄まされていた。刃が、重政の手が、僅かに震えている。これより主君の玉の緒を断とうというのだ。無理も無い。
「どうした、重政。早く討て」
 静かに、明瞭に、秀次は言葉を紡ぐ。意を決したように、重政が備前長船兼光を振りかぶる。最早その手は震えていない。
 秀次が最期に思い返したのは、秀俊の事であった。
 秀勝も、秀保も、弟たちはもう居ない。恐らくは私の子らもいずれ……。其れでも、其れでも。秀俊。お前だけは。
 生きてくれ。
 龍が、紅く染まった。

 息せききった男が、正則の控えていた間の襖を空け放った。その男の言を聞いた正則は、血相を変え部屋を飛び出す。
 青巌寺へと、はしる。柳の間へ駆け込む。
 赤。朱。紅。雪が、紅く染まっている。
 そして、横たえられた六の屍。その屍の一つに僧が寄り添い、経をあげていた。
 枕経。
「関白……様……」
 掠れる声で正則が呻く。力を失った身体がその場に崩れた。
 ふと、経をあげるのを止め、僧は正則の方へ顔を向けた。
「高虎殿、これは……」
 正則は僧――高虎に絞り出したような声で問う。
「関白様は、供回りの方々と共に死出の旅路へ付かれました」
 高虎はそれだけを言い、また経を上げ始めた。
 何故、何故。まだ死んではならぬお方であったのに。正則はただ、崩れ落ち嗚咽を漏らすのみであった。
 斯くして、秀次と彼に殉じた者たちの遺骸は高野の僧らによって手厚く葬られた。
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