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第一章 『私のまほう使い』
① 『家事手伝い』
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私、アミィ=ポンティスは、自分が生まれ育ったこの村が大好きだ。
街に出かけないと、おしゃれな小物の一つも手に入らないけれど、逆にこの村でなければ手に入らないものもあるのを知っているから。
それに、私は料理が好きだ。
だから、お父さんとお母さんが頑張って繁盛させている、うちのお店を将来継ぐと決めているのだ。
でも、少しだけ……。少しだけ私にも他に夢がある。
それは、運命的な出会いをしてみたいということ。
うちのお母さんはこの村で生まれ育ったらしいけれど、お父さんは違う。
お父さんは、近くの街で料理人として修行をしていたときに、うちのお母さんに出会い、一目惚れをしてしまったというのだ。
そして、お父さんはお母さんに何度も熱烈に自分の想いを伝えて、結婚したのだという。
その話をお母さんから聞いて、私は羨ましいと思った。
そして、いつか自分にもそんな素敵な人が現れてくれないかと思うようになったんだ。
でも、なかなかそんな出会いなんてあるものではないことも分かっている。
だから、それは叶うのならば叶って欲しい程度の思いに過ぎなかった。
……あの人に出会うまでは。
『魔法使いの家事手伝い』
私たちの住むライネス村の夏は終わって、少しずつ涼しくなってきている。
これからは実りの秋が来るのだ。
そんな過ごしやすい気温の中を歩き、村の外れにある小屋に私は今朝もやってきた。
けっして立派とは言えないその小屋は、昔、小麦を粉にするために使っていたのらしい。
かなり古い建物なので、外見はボロボロだが中は綺麗に直されていて、雨風を防ぐことはできるし、テーブルやイスなどはそろっている。もちろん調理道具も。
私は、今日も朝からこの小屋にやってくると、預かっているカギで入り口を静かに開けて、目的の場所に向かう。
さて、まずは手洗い場でしっかりと手を洗う。
これから食べ物にさわるのだから当然だ。もっとも、私のような一人前のレディはいつも清潔であることに気を使っている。
フワッフワッのこの金色の髪の毛は、いつも手入れが行き届いていて、男の子たちにも評判なのはもちろん、女の子たちにも、『いいなぁ、アミィちゃんは』と言われる程で、私の自慢。
そして私のトレードマークでもありお気に入りでもある、右側のサイドテールとそれをまとめる青色の可愛いシュシュがいいアクセントになっているはずだ。
「さてと、それでは作りましょうか!」
台所にやってきた私は、愛用のピンクの可愛いエプロンを身につけると、すぐに調理に取りかかる。
とは言っても、相変わらずこの小屋の保管庫には食材が少ない。
まったく。私のような可愛くてしっかり者のお嫁さん候補が居なかったら、どうするつもりなのだろうか。
「もう。アゼルったらいい加減なんだから」
私はそんな文句を言いながらも、お母さんが持たせてくれた、じゃがいも、にんじん、たまねぎ、そしてブタのお肉を大きなカバンから取り出す。
お野菜は皮をむいて手ごろな大きさに切っていく。たまねぎが目に染みてなみだが出てきても負けないのだ!
オナベに油を引き、切ったお肉と野菜を加えて火にかける。
私が火を使って調理していると、アゼルは心配するが、私から言わせると、アゼルの方がよっぽど危ないと思う。
炒めたたまねぎが透明になってきたら、いったん火を止める。そしてここで小麦粉の出番だ。
料理は手順をしっかりしないと、すぐに美味しくなくなってしまう。だから、私はしっかり手順通りに料理を進めていく。
だんだん楽しくなってきて、私は鼻歌交じりに料理を続けるが、決して手を抜いたりはしない。そう、手を抜くなんて、私の中に流れる料理人の血が許さない!
さらにおナベに牛乳と水を加えて、再び火にかける。そしてとろみが付くまでしっかりと混ぜる。
「さて、煮込んでいる間に、もう使わない調理用具を……」
火を弱火にした私は、使った包丁やまな板をしっかり洗う。そしてそれからはサラダの準備も忘れない。
時間配分をしっかりとし、いくつもの作業をムダなくする。これが出来るレディというものなのです。
程よく煮込まれてきたおナベの様子を見て、水を加えるなどの調整をし、塩コショウで味を整えていく。
「うん。朝からこんなに美味しいシチューを食べられるなんて、アゼルは幸せものよね」
我ながら美味しく出来た朝食に満足すると、家から持ってきたパンも加えて、居間のテーブルにキレイに料理を並べていく。
シチューの白い色とパンの茶色だけではさびしいが、ここに緑豊かなレタスとミニトマトの赤が加わることで料理全体が華やかになるのだ。
「……アミィ……。君は、今日も来たんだ……」
私が自分の作品に満足していると、部屋から、赤色の髪で、ほっそりとした男の人が出てきた。年は私の八歳上の十八歳らしいけれど、頼りなさそうな雰囲気のせいか、もっと幼く見える。
「むぅ! 何よ、その言い方! 私のような可愛い女の子に、毎朝、食事を作ってもらえるっていうのに」
一生懸命に料理をしたのに、文句を言われるのは心外だ!
「いや、その、料理を作ってくれたり、掃除をしてくれたりの家事手伝いは本当にありがたいけれど、君はまだ子供とはいえ女の子なんだから、男の人の家に毎朝通っているのは問題だと思うんだよ」
「大丈夫よ! お父さんとお母さんからも、しっかり胃ぶくろをつかんできなさいって言われているもん!」
そう。私はもうこの人の、アゼルのお嫁さんになると決めている。そして、うちの家族はそれにみんな賛成してくれているのだ。
「あっ、相変わらずすごいよね。君のご家族って……」
アゼルは何故かつかれたような顔をして、大きなため息をつく。まったく、失礼な話だ。
「ほらっ、とっとと手と顔を洗ってきて! 早く朝ごはんを食べないと、またバイトにおくれるよ」
「うん、それはたしかにそうだね」
アゼルは私に言われたまま手洗い場に向かおうとしたんだけれど、私に近づくと、
「ああ、ごめん。朝のあいさつがまだだったね。おはよう、アミィ」
そう言って微笑んだ。
私はその優しい笑顔に少しびっくりしながらも、うれしくなって満面の笑顔で、「おはよう、アゼル」と返す。
この人が私の運命の人!
私が大好きなアゼルなのだ!
街に出かけないと、おしゃれな小物の一つも手に入らないけれど、逆にこの村でなければ手に入らないものもあるのを知っているから。
それに、私は料理が好きだ。
だから、お父さんとお母さんが頑張って繁盛させている、うちのお店を将来継ぐと決めているのだ。
でも、少しだけ……。少しだけ私にも他に夢がある。
それは、運命的な出会いをしてみたいということ。
うちのお母さんはこの村で生まれ育ったらしいけれど、お父さんは違う。
お父さんは、近くの街で料理人として修行をしていたときに、うちのお母さんに出会い、一目惚れをしてしまったというのだ。
そして、お父さんはお母さんに何度も熱烈に自分の想いを伝えて、結婚したのだという。
その話をお母さんから聞いて、私は羨ましいと思った。
そして、いつか自分にもそんな素敵な人が現れてくれないかと思うようになったんだ。
でも、なかなかそんな出会いなんてあるものではないことも分かっている。
だから、それは叶うのならば叶って欲しい程度の思いに過ぎなかった。
……あの人に出会うまでは。
『魔法使いの家事手伝い』
私たちの住むライネス村の夏は終わって、少しずつ涼しくなってきている。
これからは実りの秋が来るのだ。
そんな過ごしやすい気温の中を歩き、村の外れにある小屋に私は今朝もやってきた。
けっして立派とは言えないその小屋は、昔、小麦を粉にするために使っていたのらしい。
かなり古い建物なので、外見はボロボロだが中は綺麗に直されていて、雨風を防ぐことはできるし、テーブルやイスなどはそろっている。もちろん調理道具も。
私は、今日も朝からこの小屋にやってくると、預かっているカギで入り口を静かに開けて、目的の場所に向かう。
さて、まずは手洗い場でしっかりと手を洗う。
これから食べ物にさわるのだから当然だ。もっとも、私のような一人前のレディはいつも清潔であることに気を使っている。
フワッフワッのこの金色の髪の毛は、いつも手入れが行き届いていて、男の子たちにも評判なのはもちろん、女の子たちにも、『いいなぁ、アミィちゃんは』と言われる程で、私の自慢。
そして私のトレードマークでもありお気に入りでもある、右側のサイドテールとそれをまとめる青色の可愛いシュシュがいいアクセントになっているはずだ。
「さてと、それでは作りましょうか!」
台所にやってきた私は、愛用のピンクの可愛いエプロンを身につけると、すぐに調理に取りかかる。
とは言っても、相変わらずこの小屋の保管庫には食材が少ない。
まったく。私のような可愛くてしっかり者のお嫁さん候補が居なかったら、どうするつもりなのだろうか。
「もう。アゼルったらいい加減なんだから」
私はそんな文句を言いながらも、お母さんが持たせてくれた、じゃがいも、にんじん、たまねぎ、そしてブタのお肉を大きなカバンから取り出す。
お野菜は皮をむいて手ごろな大きさに切っていく。たまねぎが目に染みてなみだが出てきても負けないのだ!
オナベに油を引き、切ったお肉と野菜を加えて火にかける。
私が火を使って調理していると、アゼルは心配するが、私から言わせると、アゼルの方がよっぽど危ないと思う。
炒めたたまねぎが透明になってきたら、いったん火を止める。そしてここで小麦粉の出番だ。
料理は手順をしっかりしないと、すぐに美味しくなくなってしまう。だから、私はしっかり手順通りに料理を進めていく。
だんだん楽しくなってきて、私は鼻歌交じりに料理を続けるが、決して手を抜いたりはしない。そう、手を抜くなんて、私の中に流れる料理人の血が許さない!
さらにおナベに牛乳と水を加えて、再び火にかける。そしてとろみが付くまでしっかりと混ぜる。
「さて、煮込んでいる間に、もう使わない調理用具を……」
火を弱火にした私は、使った包丁やまな板をしっかり洗う。そしてそれからはサラダの準備も忘れない。
時間配分をしっかりとし、いくつもの作業をムダなくする。これが出来るレディというものなのです。
程よく煮込まれてきたおナベの様子を見て、水を加えるなどの調整をし、塩コショウで味を整えていく。
「うん。朝からこんなに美味しいシチューを食べられるなんて、アゼルは幸せものよね」
我ながら美味しく出来た朝食に満足すると、家から持ってきたパンも加えて、居間のテーブルにキレイに料理を並べていく。
シチューの白い色とパンの茶色だけではさびしいが、ここに緑豊かなレタスとミニトマトの赤が加わることで料理全体が華やかになるのだ。
「……アミィ……。君は、今日も来たんだ……」
私が自分の作品に満足していると、部屋から、赤色の髪で、ほっそりとした男の人が出てきた。年は私の八歳上の十八歳らしいけれど、頼りなさそうな雰囲気のせいか、もっと幼く見える。
「むぅ! 何よ、その言い方! 私のような可愛い女の子に、毎朝、食事を作ってもらえるっていうのに」
一生懸命に料理をしたのに、文句を言われるのは心外だ!
「いや、その、料理を作ってくれたり、掃除をしてくれたりの家事手伝いは本当にありがたいけれど、君はまだ子供とはいえ女の子なんだから、男の人の家に毎朝通っているのは問題だと思うんだよ」
「大丈夫よ! お父さんとお母さんからも、しっかり胃ぶくろをつかんできなさいって言われているもん!」
そう。私はもうこの人の、アゼルのお嫁さんになると決めている。そして、うちの家族はそれにみんな賛成してくれているのだ。
「あっ、相変わらずすごいよね。君のご家族って……」
アゼルは何故かつかれたような顔をして、大きなため息をつく。まったく、失礼な話だ。
「ほらっ、とっとと手と顔を洗ってきて! 早く朝ごはんを食べないと、またバイトにおくれるよ」
「うん、それはたしかにそうだね」
アゼルは私に言われたまま手洗い場に向かおうとしたんだけれど、私に近づくと、
「ああ、ごめん。朝のあいさつがまだだったね。おはよう、アミィ」
そう言って微笑んだ。
私はその優しい笑顔に少しびっくりしながらも、うれしくなって満面の笑顔で、「おはよう、アゼル」と返す。
この人が私の運命の人!
私が大好きなアゼルなのだ!
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