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第二章 その出会いに、名をつけるのならば
㉑ 『別れ。そして……』
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翌日、メルエーナ達は家族総出でジェノとイルリアを見送った。
縄で縛られた件の三人を馬車に押し込めたジェノは、去り際にこちらを向いて軽く頭を下げてくれた。イルリアはにっこり微笑み、手を振ってくれた。
そして、それが最後の別れになるものだとばかりメルエーナは思っていたのだが……。
ジェノたちと別れてから十日ほど経ったある日。
とある冒険者の一行が、事の発端だった貴族様の荷を見事に発見し、その翌日から、冒険者達は続々とこの村を去っていってしまった。
そして数日後には、リムロ村はいつもどおりの平穏さを取り戻した。
そしてまた普段の日常が始まる。
メルエーナは、平和だが刺激のないこの生活を、これからもずっと続けていくのだと、少し物悲しく思っていた。
だが、それから数日後のことだった。
「メル。お父さんとも話し合ったのだけれど、私達は、貴女を他所に料理修行に出そうと思っているわ」
夕食の後片付けが終わった後の家族の団らんの最中に、突然、母のリアラがそんな話をメルエーナに打ち明けた。
最初は意味が分からなかった。
それが、あまりにも突然のことだったから。
「期間は二年間。場所は、このエルマイラム王国の首都であるナイムの街。そこに私の昔の職場の後輩がいるの。彼女の所で修行をさせてもらうつもりよ」
リアラは真剣な表情で一方的に条件を口にしたが、唖然とするメルエーナを見て、微笑みかける。
「メル。貴女も十六歳。あと二年経ったら大人の仲間入りをしなければいけない。でも、私達が一緒だと、貴女は心のどこかで私達に頼ってしまうでしょうし、私達もつい甘やかしてしまうわ。
でも、それではいけないのよ。貴女も、いつかはお母さんになるのだから。都会での生活と料理をしっかりと学んでもらいたいの」
「おっ、お母さん。私……この村を出てもいいんですか?」
母の言葉の意味を理解し、メルエーナは体を歓喜で震わせる。
「ええ。もちろん。と言うよりも、出て行きたくないと言っても追い出すわよ。だから、覚悟を決めて、しっかり花嫁修業をしてきなさい!」
リアラはそう言って力強く微笑む。
「だけどな、メル。どうしても行きたくないのなら、行かなくても良いんだぞ。都会は危険だ。この間のような悪い男達がたくさんいて……」
「あ・な・た。このことはあれだけしっかりと話し合いましたよね? それとも、新婚時代のように私と二人で生活することに、なにかご不満でも?」
コーリスは、娘が村を出て生活することに反対のようだが、強い妻に押し切られて、結局口を噤んだ。
「お母さん。ありがとうございます。私、ジェノさんとイルリアさんに出会ってから、ずっと、この村を出て学びたいって思っていたんです……」
メルエーナは感極まって涙をこぼす。
「ふっふっふっ。そんな事、お母さんはとっくにお見通しだったわよ。でも、ごめんなさいね。本当ならもっと早くに貴女を村の外に出して勉強させてあげたかったんだけれど、お金の都合がつかなくて……」
リアラは申し訳無さそうな顔をするが、メルエーナは首を横に振る。
この村からナイムの街まではかなり距離がある。その旅費だけでもかなりの金額になることは想像に難くない。
その上生活費までとなると、おいそれと用意できる金額でないことくらいはメルエーナも理解していた。
「お父さんとお母さんが、頑張ってくれていたこと分かっています。私のために、ずっと……。本当に、ありがとうございます」
メルエーナは、涙ながらに優しい両親に心から感謝をする。
「メル。なれない都会での生活で戸惑うこともたくさんあると思うけれど、心配しないで。貴女は、私とお父さんが育てた自慢の娘。きっとどんなことも乗り越えられるわ」
リアラは立ち上がって、涙が止まらないメルエーナを抱きしめる。
そして、諸々の準備を終えたメルエーナが、生まれて初めて村を出たのは、それから一ヶ月後のことだった。
◇
リムロ村を出て、乗り合い馬車に揺られること五日。
いよいよ眼前に見えてきたナイムの街のあまりの大きさに、メルエーナは目を大きく見開く。
村を旅立ってからというもの、少し大きな町に着いただけで驚いていたメルエーナだったが、それらがまるで比較にならないほど、ナイムの街は巨大だった。
森の動物避けに、リムロ村の周りにも木でできた柵はあったが、この街では、それを何十と積み重ねたくらいの高さの石の壁が広範囲を囲っている。
一体どれだけの大きさなのか、見当もつかない。
「う~ん。いつ見ても圧巻よね。流石は首都だわ」
付き添いで来てくれたリアラが、乗合馬車の窓から見える景色に気圧されるメルエーナの横で、そんな感想を口にする。
「メル。今回は私が付き添ったけれど、帰ってくる時には、私を当てにしては駄目よ」
外の景色に目を奪われていたメルエーナは、リアラのその言葉に居住まいを正す。
「はい。お母さん。きちんと一人でできるようになってみせます」
今回の旅行の間は、母が全て手続きをしてくれた。だが、いつまでもそれに甘えているわけにはいかない。
そうメルエーナは思ったのだが……。
「違うわよ! 私が言いたいのは、帰ってくるときには、きちんと貴女のことを守ってくれる、素敵な男の人と帰ってきなさいと言っているのよ!」
他の乗客がいるので、声は大きくなかったが、リアラはそんなとんでもないことを口にする。
「分かっているの? ナイムの街には、ジェノ君も暮らしているのよ。あの時はあまりにも時間がなかったけれど、今回は違うわ。しっかりとアプローチをして、素敵な婿を手に入れるのよ!」
「むっ、婿って。そんな……。話が飛躍しすぎです……」
メルエーナは頬を赤らめ、胸元の首飾りに手を伸ばす。
けれど、あの日別れてからというもの、ずっと気なっていた。
あの人のことが。ジェノという自分と同い年の男性のことが。
ジェノに初めて会ったあの時に、どうして自分は懐かしいと感じたのだろう?
どうしてあの人は、この首飾りに刻まれた文字を読めるのだろう?
未だにその理由がわからない。
「そっ、それに、ジェノさんがあの街で暮らしているとはいっても、ものすごく沢山の人達があの街にはいるんですよね? それならば、会う機会なんてそうそうあるものでは……」
声に出して事実を口にすると、何故か胸が痛くなってしまう。
どうしてだろう? 体調が悪い訳でもないのに。
「……そうね。でも、会える可能性はゼロではないわよ」
リアラの言葉に、メルエーナは「はい」と小さく頷く。
やがて、乗合馬車は門を超えてナイムの街に入る。
石畳が敷き詰められた道路に、メルエーナは驚き、そして疑問を抱いた。
自分の住んでいた村と比較して、あまりにも土がなさすぎる。
いったいこの街は、どこで畑を作って食べ物を作っているのだろう?
そんな疑問を母に尋ねようと思ったメルエーナだったが、それよりも早くに、停留所に到着してしまった。
「着いたみたいね。メル。忘れ物をしないようにね」
「はい。分かっています」
メルエーナは大きなカバンを手に持ち、母と一緒に馬車を降りた。
石に囲まれた街並み。少し先には海もある。
何から何まで、リムロ村とは違う。
けれど、これから二年間。この街が自分の暮らしていく場所になる。
今後のことを考えると、少し不安になってしまったが、メルエーナは気持ちを切り替えて、リアラに付いて歩く。
「久しぶりね、バルネア」
ほんの少し歩いた所で、リアラは足を止めて、金色の髪を後ろで纏めた若い女性に話しかけた。
「えっ? こっ、この人が……バルネアさん?」
メルエーナは小さな声だったが、思わずそう口に出してしまった
母の話では、母より五つ下の女性ということだったが、目の前の女性はそれ以上に若く、二十代と言われても納得してしまうだろう。
それに、すごく人当たりの良さそうな温和な女性にしか思えなくて、この人が名うての料理人だとは思えない。
勝手な想像だが、もっと気難しそうで威圧感のある女性を思い浮かべていたメルエーナは、ただただ驚くしかなかった。
「お久しぶりです、リアラ先輩。遠いところをよく来て下さいましたね」
優しい声でバルネアは言い、笑顔を浮かべる。そして、メルエーナの方を向いてまた微笑む。
「貴女がメルちゃんね。流石先輩の娘さんね。こんなに可愛い女の子は、この街でも珍しいわ」
温かな笑顔を向けられて、一瞬言葉に詰まったメルエーナだったが、
「初めまして。メルエーナと申します。どうかよろしくお願い致します」
すぐに我に返り、慇懃にそう挨拶を返す。
「ふっ、ふ~ん。可愛いでしょう? 私の娘ですもの、当然よね」
そんな娘の頑張りを台無しにする母の得意げな姿に、メルエーナは苦笑するしかなかった。
けれど、バルネアは気にした様子もなく、「そうですね」と穏やかに微笑む。
メルエーナは、いよいよこの女性が名うての料理人には見えなくなってきてしまう。
しかしここで、メルエーナを驚かせることが起こった。
「お久しぶりです。リアラさん。長旅、お疲れさまでした」
聞き覚えのある声が聞こえた。
もう一度会いたいと思っていた、男の人の声が確かに聞こえた。
声の方に目をやると、黒髪の背の高い少年が、母から荷物を受け取って肩に担いでいた。
「えっ? えっ? ジェノさん……」
メルエーナは思わず間の抜けた声を上げてしまう。
「久しぶりだな、メルエーナ」
ジェノは相変わらず無愛想な表情のまま、そう挨拶を返してきた。
一体何が何だか全く分からず、ただただ困惑するメルエーナ。
そんな彼女に、リアラがわざとらしくポンと手を叩いた。
「あら。そういえば言っていなかったわね。貴女はこれから、このバルネアの家で暮らすのよ。ジェノ君と一緒にね」
全く悪気のない笑顔で、リアラはそんな驚きの事実を口にするのだった。
縄で縛られた件の三人を馬車に押し込めたジェノは、去り際にこちらを向いて軽く頭を下げてくれた。イルリアはにっこり微笑み、手を振ってくれた。
そして、それが最後の別れになるものだとばかりメルエーナは思っていたのだが……。
ジェノたちと別れてから十日ほど経ったある日。
とある冒険者の一行が、事の発端だった貴族様の荷を見事に発見し、その翌日から、冒険者達は続々とこの村を去っていってしまった。
そして数日後には、リムロ村はいつもどおりの平穏さを取り戻した。
そしてまた普段の日常が始まる。
メルエーナは、平和だが刺激のないこの生活を、これからもずっと続けていくのだと、少し物悲しく思っていた。
だが、それから数日後のことだった。
「メル。お父さんとも話し合ったのだけれど、私達は、貴女を他所に料理修行に出そうと思っているわ」
夕食の後片付けが終わった後の家族の団らんの最中に、突然、母のリアラがそんな話をメルエーナに打ち明けた。
最初は意味が分からなかった。
それが、あまりにも突然のことだったから。
「期間は二年間。場所は、このエルマイラム王国の首都であるナイムの街。そこに私の昔の職場の後輩がいるの。彼女の所で修行をさせてもらうつもりよ」
リアラは真剣な表情で一方的に条件を口にしたが、唖然とするメルエーナを見て、微笑みかける。
「メル。貴女も十六歳。あと二年経ったら大人の仲間入りをしなければいけない。でも、私達が一緒だと、貴女は心のどこかで私達に頼ってしまうでしょうし、私達もつい甘やかしてしまうわ。
でも、それではいけないのよ。貴女も、いつかはお母さんになるのだから。都会での生活と料理をしっかりと学んでもらいたいの」
「おっ、お母さん。私……この村を出てもいいんですか?」
母の言葉の意味を理解し、メルエーナは体を歓喜で震わせる。
「ええ。もちろん。と言うよりも、出て行きたくないと言っても追い出すわよ。だから、覚悟を決めて、しっかり花嫁修業をしてきなさい!」
リアラはそう言って力強く微笑む。
「だけどな、メル。どうしても行きたくないのなら、行かなくても良いんだぞ。都会は危険だ。この間のような悪い男達がたくさんいて……」
「あ・な・た。このことはあれだけしっかりと話し合いましたよね? それとも、新婚時代のように私と二人で生活することに、なにかご不満でも?」
コーリスは、娘が村を出て生活することに反対のようだが、強い妻に押し切られて、結局口を噤んだ。
「お母さん。ありがとうございます。私、ジェノさんとイルリアさんに出会ってから、ずっと、この村を出て学びたいって思っていたんです……」
メルエーナは感極まって涙をこぼす。
「ふっふっふっ。そんな事、お母さんはとっくにお見通しだったわよ。でも、ごめんなさいね。本当ならもっと早くに貴女を村の外に出して勉強させてあげたかったんだけれど、お金の都合がつかなくて……」
リアラは申し訳無さそうな顔をするが、メルエーナは首を横に振る。
この村からナイムの街まではかなり距離がある。その旅費だけでもかなりの金額になることは想像に難くない。
その上生活費までとなると、おいそれと用意できる金額でないことくらいはメルエーナも理解していた。
「お父さんとお母さんが、頑張ってくれていたこと分かっています。私のために、ずっと……。本当に、ありがとうございます」
メルエーナは、涙ながらに優しい両親に心から感謝をする。
「メル。なれない都会での生活で戸惑うこともたくさんあると思うけれど、心配しないで。貴女は、私とお父さんが育てた自慢の娘。きっとどんなことも乗り越えられるわ」
リアラは立ち上がって、涙が止まらないメルエーナを抱きしめる。
そして、諸々の準備を終えたメルエーナが、生まれて初めて村を出たのは、それから一ヶ月後のことだった。
◇
リムロ村を出て、乗り合い馬車に揺られること五日。
いよいよ眼前に見えてきたナイムの街のあまりの大きさに、メルエーナは目を大きく見開く。
村を旅立ってからというもの、少し大きな町に着いただけで驚いていたメルエーナだったが、それらがまるで比較にならないほど、ナイムの街は巨大だった。
森の動物避けに、リムロ村の周りにも木でできた柵はあったが、この街では、それを何十と積み重ねたくらいの高さの石の壁が広範囲を囲っている。
一体どれだけの大きさなのか、見当もつかない。
「う~ん。いつ見ても圧巻よね。流石は首都だわ」
付き添いで来てくれたリアラが、乗合馬車の窓から見える景色に気圧されるメルエーナの横で、そんな感想を口にする。
「メル。今回は私が付き添ったけれど、帰ってくる時には、私を当てにしては駄目よ」
外の景色に目を奪われていたメルエーナは、リアラのその言葉に居住まいを正す。
「はい。お母さん。きちんと一人でできるようになってみせます」
今回の旅行の間は、母が全て手続きをしてくれた。だが、いつまでもそれに甘えているわけにはいかない。
そうメルエーナは思ったのだが……。
「違うわよ! 私が言いたいのは、帰ってくるときには、きちんと貴女のことを守ってくれる、素敵な男の人と帰ってきなさいと言っているのよ!」
他の乗客がいるので、声は大きくなかったが、リアラはそんなとんでもないことを口にする。
「分かっているの? ナイムの街には、ジェノ君も暮らしているのよ。あの時はあまりにも時間がなかったけれど、今回は違うわ。しっかりとアプローチをして、素敵な婿を手に入れるのよ!」
「むっ、婿って。そんな……。話が飛躍しすぎです……」
メルエーナは頬を赤らめ、胸元の首飾りに手を伸ばす。
けれど、あの日別れてからというもの、ずっと気なっていた。
あの人のことが。ジェノという自分と同い年の男性のことが。
ジェノに初めて会ったあの時に、どうして自分は懐かしいと感じたのだろう?
どうしてあの人は、この首飾りに刻まれた文字を読めるのだろう?
未だにその理由がわからない。
「そっ、それに、ジェノさんがあの街で暮らしているとはいっても、ものすごく沢山の人達があの街にはいるんですよね? それならば、会う機会なんてそうそうあるものでは……」
声に出して事実を口にすると、何故か胸が痛くなってしまう。
どうしてだろう? 体調が悪い訳でもないのに。
「……そうね。でも、会える可能性はゼロではないわよ」
リアラの言葉に、メルエーナは「はい」と小さく頷く。
やがて、乗合馬車は門を超えてナイムの街に入る。
石畳が敷き詰められた道路に、メルエーナは驚き、そして疑問を抱いた。
自分の住んでいた村と比較して、あまりにも土がなさすぎる。
いったいこの街は、どこで畑を作って食べ物を作っているのだろう?
そんな疑問を母に尋ねようと思ったメルエーナだったが、それよりも早くに、停留所に到着してしまった。
「着いたみたいね。メル。忘れ物をしないようにね」
「はい。分かっています」
メルエーナは大きなカバンを手に持ち、母と一緒に馬車を降りた。
石に囲まれた街並み。少し先には海もある。
何から何まで、リムロ村とは違う。
けれど、これから二年間。この街が自分の暮らしていく場所になる。
今後のことを考えると、少し不安になってしまったが、メルエーナは気持ちを切り替えて、リアラに付いて歩く。
「久しぶりね、バルネア」
ほんの少し歩いた所で、リアラは足を止めて、金色の髪を後ろで纏めた若い女性に話しかけた。
「えっ? こっ、この人が……バルネアさん?」
メルエーナは小さな声だったが、思わずそう口に出してしまった
母の話では、母より五つ下の女性ということだったが、目の前の女性はそれ以上に若く、二十代と言われても納得してしまうだろう。
それに、すごく人当たりの良さそうな温和な女性にしか思えなくて、この人が名うての料理人だとは思えない。
勝手な想像だが、もっと気難しそうで威圧感のある女性を思い浮かべていたメルエーナは、ただただ驚くしかなかった。
「お久しぶりです、リアラ先輩。遠いところをよく来て下さいましたね」
優しい声でバルネアは言い、笑顔を浮かべる。そして、メルエーナの方を向いてまた微笑む。
「貴女がメルちゃんね。流石先輩の娘さんね。こんなに可愛い女の子は、この街でも珍しいわ」
温かな笑顔を向けられて、一瞬言葉に詰まったメルエーナだったが、
「初めまして。メルエーナと申します。どうかよろしくお願い致します」
すぐに我に返り、慇懃にそう挨拶を返す。
「ふっ、ふ~ん。可愛いでしょう? 私の娘ですもの、当然よね」
そんな娘の頑張りを台無しにする母の得意げな姿に、メルエーナは苦笑するしかなかった。
けれど、バルネアは気にした様子もなく、「そうですね」と穏やかに微笑む。
メルエーナは、いよいよこの女性が名うての料理人には見えなくなってきてしまう。
しかしここで、メルエーナを驚かせることが起こった。
「お久しぶりです。リアラさん。長旅、お疲れさまでした」
聞き覚えのある声が聞こえた。
もう一度会いたいと思っていた、男の人の声が確かに聞こえた。
声の方に目をやると、黒髪の背の高い少年が、母から荷物を受け取って肩に担いでいた。
「えっ? えっ? ジェノさん……」
メルエーナは思わず間の抜けた声を上げてしまう。
「久しぶりだな、メルエーナ」
ジェノは相変わらず無愛想な表情のまま、そう挨拶を返してきた。
一体何が何だか全く分からず、ただただ困惑するメルエーナ。
そんな彼女に、リアラがわざとらしくポンと手を叩いた。
「あら。そういえば言っていなかったわね。貴女はこれから、このバルネアの家で暮らすのよ。ジェノ君と一緒にね」
全く悪気のない笑顔で、リアラはそんな驚きの事実を口にするのだった。
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