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第五章 邂逅は、波乱とともに
⑪ 『早朝の出会い』
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イルリアは指定の時間よりもだいぶ早くに<パニヨン>にやってきた。
ここのところ何かとバタバタしていたので、旅の出発前にメルエーナとバルネアの二人と話でもしようと考えてのことだった。
だが、まだ集合時間一時間前だというのに、<パニヨン>の入り口に立つ二人の人影が見えた。
一人はジェノと同じくらい背が高い茶色髪の眼鏡の若い男性。そしてもう一人は、この暑い中、フードを頭から被った不審人物だった。
(あの二人が……)
ジェノから聞いていた、冒険者見習いの資格を買った二人とは彼らのことで間違いないだろう。イルリアはそう判断すると、臆することなく二人に話しかけることにする。
「おはようございます。今日も暑いですね」
差し障りのない挨拶を口にすると、二人の人物は振り返り、眼鏡の男性がニッコリと微笑んだ。
「おはようございます。そうですね、暑いですね」
初対面の感想は、優しい雰囲気の男性と言った感じだ。だが、油断はできないとイルリアは気を引き締める。
「あっ……」
思わずイルリアの口から感嘆の声が漏れた。
それは、もう一人の人物がフードを取ったから。
200文字以上70000文字以内
文字数(空白・改行含む):2207字
文字数(空白・改行含まない):2102字
フードの下から現れたのは、まるで美の女神を具現化したかのような金色の髪の美しい少女だった。
「マリア様。早朝とは言え、人の目がありますから」
眼鏡の男性がフードを取ったことを窘めるが、マリアと呼ばれたイルリアと同年代くらいの少女は、不服そうな視線を彼に向ける。
「セレクト先生。人にご挨拶をする際にこんなものを被ったままでいるわけにはいきません。それに、少しは今日の気温を考えて下さい」
マリアの顔には大粒の汗が浮かんでいる。
確かにこの暑い中、フードを被せられるのは拷問に近い。でも、セレクトと呼ばれた男性の気持ちもよく分かってしまう。
あまりにもこのマリアという女性は綺麗過ぎる。故に、否が応でも人の注目を集めてしまうのだ。
マリアは、コホンと小さく咳払いをし、こちらをまっすぐに見つめて微笑みかけてくる。
その僅かな動作だけで、彼女の美貌は見たものを魅了する。
「私は、マリアと申します。失礼ですが、ジェノのお仲間の冒険者見習いの方でよろしいでしょうか?」
優雅な所作で尋ねてくるマリアに気圧されながらも、イルリアも負けじと笑みを浮かべる。
「はい。イルリアと申します。どうかよろしくお願い致します」
そう答えると、マリアは「はい。よろしくお願いい致します」と返してくれた。
「申し遅れました。私はセレクト。魔法使いをしております」
セレクトも優雅に挨拶をしてくる。その堂に入った姿に、彼ら二人は平民ではないことは明らかだった。
魔法使いだというセレクトのことも気になるが、それ以上に、やはりマリアの事が気になる。
本当にありえないと思ってしまうほど美しい。それに、動きやすく線が出にくい服を選んで身につけているようだが、その抜群のプロポーションの良さがまるで隠せていない。
セレクトが顔を隠そうとする理由が痛いほど分かってしまうが、生憎と本人はその事に気がついていないようだ。
(それに、この娘、アイツのことを気軽にジェノって呼び捨てに……)
マリアとジェノの関係はよく分からないが、メルエーナに強力なライバルが現れたのではないかと危惧してしまう。
ついまじまじとマリアを見つめてしまったが、どうやら向こうもこちらに興味があるようで、頭から足先までを見られてしまう。
「あっ、すみません。女性の方とは聞いていたのですが、こんなに素敵な方とは思わなかったものですから」
マリアはそう言って慌てて謝罪をしてくる。
こんな常軌を逸した美女に言われても嫌味にしか思えないが、マリアの気取らない物言いは悪くないとイルリアは思った。
「まぁ、暑い中外で立ち話もなんですので、裏口に回って入れてもらいましょう。水分を取らないと、マリアさんが倒れてしまいそうですし」
「ああっ、それは助かります。もう喉がカラカラなんです」
イルリアの軽口に気分を害することなく、マリアは礼にっこり微笑む。
うん。この態度だけで判断するのは危険だが、やはり悪い人間には思えない。
「本当に助かります。マリア様が早く行こうと言ってきかなかったものですから、こんなに早く店に着いてしまい、声を掛けて良いのか分からず困っていたのです」
「あっ、そういう事を言いますか、セレクト先生。先生の言いつけを守って、ずぅ~っと私は宿から出ないようにしていたんですよ。それがようやく外に出れる時が来たんですから、少々気が逸るのは仕方がないことではないですか!」
セレクトの言葉に、マリアが心外だとばかりに文句を言う。
きっとこのやり取りはわざとなのだとイルリアは理解していた。
けれど、この行為の裏に隠されているのは、人に取り入ろうとするのではなく、早く打ち解けて仲良くなりたいという気持ちの表れに思えた。
欲のために自分に寄ってくる人間を嫌っていうほど見てきたイルリアには、それが分かったのだ。
(メル、また苦労しそうね……)
物怖じしてしまいそうな美貌を持つにも関わらず、初対面の人間に好感を抱かせるマリアの魅力に感服しながらも、イルリアは親友の苦労が増えそうだなぁと気の毒に思うのだった。
ここのところ何かとバタバタしていたので、旅の出発前にメルエーナとバルネアの二人と話でもしようと考えてのことだった。
だが、まだ集合時間一時間前だというのに、<パニヨン>の入り口に立つ二人の人影が見えた。
一人はジェノと同じくらい背が高い茶色髪の眼鏡の若い男性。そしてもう一人は、この暑い中、フードを頭から被った不審人物だった。
(あの二人が……)
ジェノから聞いていた、冒険者見習いの資格を買った二人とは彼らのことで間違いないだろう。イルリアはそう判断すると、臆することなく二人に話しかけることにする。
「おはようございます。今日も暑いですね」
差し障りのない挨拶を口にすると、二人の人物は振り返り、眼鏡の男性がニッコリと微笑んだ。
「おはようございます。そうですね、暑いですね」
初対面の感想は、優しい雰囲気の男性と言った感じだ。だが、油断はできないとイルリアは気を引き締める。
「あっ……」
思わずイルリアの口から感嘆の声が漏れた。
それは、もう一人の人物がフードを取ったから。
200文字以上70000文字以内
文字数(空白・改行含む):2207字
文字数(空白・改行含まない):2102字
フードの下から現れたのは、まるで美の女神を具現化したかのような金色の髪の美しい少女だった。
「マリア様。早朝とは言え、人の目がありますから」
眼鏡の男性がフードを取ったことを窘めるが、マリアと呼ばれたイルリアと同年代くらいの少女は、不服そうな視線を彼に向ける。
「セレクト先生。人にご挨拶をする際にこんなものを被ったままでいるわけにはいきません。それに、少しは今日の気温を考えて下さい」
マリアの顔には大粒の汗が浮かんでいる。
確かにこの暑い中、フードを被せられるのは拷問に近い。でも、セレクトと呼ばれた男性の気持ちもよく分かってしまう。
あまりにもこのマリアという女性は綺麗過ぎる。故に、否が応でも人の注目を集めてしまうのだ。
マリアは、コホンと小さく咳払いをし、こちらをまっすぐに見つめて微笑みかけてくる。
その僅かな動作だけで、彼女の美貌は見たものを魅了する。
「私は、マリアと申します。失礼ですが、ジェノのお仲間の冒険者見習いの方でよろしいでしょうか?」
優雅な所作で尋ねてくるマリアに気圧されながらも、イルリアも負けじと笑みを浮かべる。
「はい。イルリアと申します。どうかよろしくお願い致します」
そう答えると、マリアは「はい。よろしくお願いい致します」と返してくれた。
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魔法使いだというセレクトのことも気になるが、それ以上に、やはりマリアの事が気になる。
本当にありえないと思ってしまうほど美しい。それに、動きやすく線が出にくい服を選んで身につけているようだが、その抜群のプロポーションの良さがまるで隠せていない。
セレクトが顔を隠そうとする理由が痛いほど分かってしまうが、生憎と本人はその事に気がついていないようだ。
(それに、この娘、アイツのことを気軽にジェノって呼び捨てに……)
マリアとジェノの関係はよく分からないが、メルエーナに強力なライバルが現れたのではないかと危惧してしまう。
ついまじまじとマリアを見つめてしまったが、どうやら向こうもこちらに興味があるようで、頭から足先までを見られてしまう。
「あっ、すみません。女性の方とは聞いていたのですが、こんなに素敵な方とは思わなかったものですから」
マリアはそう言って慌てて謝罪をしてくる。
こんな常軌を逸した美女に言われても嫌味にしか思えないが、マリアの気取らない物言いは悪くないとイルリアは思った。
「まぁ、暑い中外で立ち話もなんですので、裏口に回って入れてもらいましょう。水分を取らないと、マリアさんが倒れてしまいそうですし」
「ああっ、それは助かります。もう喉がカラカラなんです」
イルリアの軽口に気分を害することなく、マリアは礼にっこり微笑む。
うん。この態度だけで判断するのは危険だが、やはり悪い人間には思えない。
「本当に助かります。マリア様が早く行こうと言ってきかなかったものですから、こんなに早く店に着いてしまい、声を掛けて良いのか分からず困っていたのです」
「あっ、そういう事を言いますか、セレクト先生。先生の言いつけを守って、ずぅ~っと私は宿から出ないようにしていたんですよ。それがようやく外に出れる時が来たんですから、少々気が逸るのは仕方がないことではないですか!」
セレクトの言葉に、マリアが心外だとばかりに文句を言う。
きっとこのやり取りはわざとなのだとイルリアは理解していた。
けれど、この行為の裏に隠されているのは、人に取り入ろうとするのではなく、早く打ち解けて仲良くなりたいという気持ちの表れに思えた。
欲のために自分に寄ってくる人間を嫌っていうほど見てきたイルリアには、それが分かったのだ。
(メル、また苦労しそうね……)
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