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納得した
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ルルーシェは侍女に髪を結われる己の姿をまじまじと眺め、ふと思い出した。
(あ、私ヒロインだわ)
と。
ルルーシェは、前世の記憶を思い出したからといって熱を出さなかったし、違う人格になって周囲を困らせたりもしなかった。
まぁ、前世と今世の記憶が少しごっちゃごちゃにはなったが。
ルルーシェは緩くウェーブを描く美しい黄金の髪を持っていて、今は白い花の可愛らしいバレッタが付けられている。
瞳は桜でとても可愛らしいと持て囃される。
目はくりりと大きく、睫毛は長い上に何もせずとも上を向く。
唇はぷっくらと。
頬は常に愛らしいピンク色。
(こんなに神に愛された容姿、そりゃヒロインなら当たり前か)
ルルーシェは鏡の中の自分を眺めながら憂う。
(何でヒロインなの!そして憂う姿が様になってしまう自分がヤダ!!)
ルルーシェはヒロインになんて興味はない。
むしろ反吐が出る。
ルルーシェは、この世界の原作である「王子に溺愛され、愛に溺れてしまいそうで困ってます」を愛読していた。
しかしそれはヒロインとヒーローの愛に心躍らせていたのではない。
ルルーシェは、悪役令嬢ライラを目当てに読んでいたのだ。
ストレートな漆黒の闇は何にも染まらぬ意志のようで素敵。
真っ赤な瞳は常に冷静な彼女の胸の内に潜む熱情のようでうっとりとする。
真っ赤なルージュの塗られた唇は全てを魅了し、愚かなものを喰らいそうでずっと見ていられる。
吊り目は彼女の意志の強さを表しているようで愛おしい。
(要するに、全てがドストライク!最高っ!!)
ルルーシェは、ライラの筋の通った決して曲げられることのない意志の強さが大好きだ。
人は自分では持てないモノに憧憬を抱く。
その対象がルルーシェには悪役令嬢なのだというだけ。
ヒロインは意志が弱く、周りに流され、なのに愛される。
そんな存在が、ルルーシェは嫌いで嫌いで仕方ない。
だというのに、「ルルーシェ」はヒロインだ。
こんな非情があるだろうか。
此処にあった。
ルルーシェは頭を抱えて低く唸る。
ルルーシェは可憐な声なので実際はそこまで低い音ではないのだが、そこは気持ちだ。
眉間に皺を寄せ苦悩する姿は、人払いしてあるからいいものの、侍女がいたらこれまでとの落差に悲鳴をあげるほどに酷い。
しかしがばりと顔を上げたルルーシェは、笑顔に満ち溢れていた。
「そうだ、キャラ変すればいいじゃない!!」
ルルーシェは我ながら名案だと明るく頷く。
原作は好きではない。
ただライラが己の好みドストライクだったから読んでいただけで、原作そのものに思い入れがないのだ。
だからルルーシェがこれまで読んできた原作厨の主人公のように、「原作に忠実に」なんて思わない。
全く、これっぽっちも。
(勿論、この世界は好き。だって小説と現実は別物だから。そもそも私が前世の記憶を思い出した時点で原作とは相違してるんだし)
うんうんと頷く。
「原作なんてクソ喰らえ」
うふふふと笑いが漏れる。
問題が解決した今、ルルーシェの機嫌は最高にいい。
「おやルルーシェ、今日の君は大人のようだね。可愛いよ」
「そうなの、お父様!明日から私お姉様でしょう?だから私、自分を変えるのよ」
「そうかい。それはえらいね」
ルルーシェの父であるラカーシェはしゃがみ込み、温かい目でルルーシェの頭を撫でる。
そんな行為、今世では当たり前にしてもらっていたのに、前世を思い出して少しむず痒くなってしまった。
前世ではもらえなかった無償の愛。
今の当たり前は当たり前ではなく、昔のルルーシェが求めていたもの。
はにかみ、目を瞑る瞼の裏に映像が流れる。
「お母さん、お父さん、これどうぞ」
「まぁ、九十二点?」
母の声は褒めるものではなく、含まれるものは落胆で。
「百点、取れるだろう」
父の言葉は蔑みで。
その瞳には「娘」という名の、己の「道具」が映っていた。
娘は冷えきった手をぎゅうぎゅうと握り込み、ただその時間を耐えているのみ。
決して言い返さず、決して口答えせず。
「ルルーシェ?」
「……ん、なぁに、お父様」
「どうかした?」
「んーん、寝そうだった」
「ふはっ、全く。まだまだ大人には遠いなぁ、ルルーシェは」
「そんなことないわ!」
ラカーシェの声に含まれるものは蜂蜜たっぷりの愛情で。
その瞳はルルーシェに愛おしいと訴えかけ、そしてしっかりとルルーシェ自身を映している。
こんなに贅沢なことはない。
(なのに今までの私は、そうだとは知らなかった。…………知れてよかった。とってもとっても嬉しいなぁ)
ルルーシェは前世を思い出す前の自身は嫌いだが、ラカーシェのことは変わらず大好きだ。
こうして、変わってしまったルルーシェに気がついていないはずがないのに、愛してくれる父が。
ルルーシェの理想の親が、今世の親であったことがたまらなく嬉しい。
「お姉様になるルルーシェ、明日は早起きできるかい?弟は明日の午前中に来るんだよ」
「そうなの!?ええ、勿論できるわ!」
自信満々に、胸を張ってラカーシェに言う。
ルルーシェはご飯を食べながら考える。
(なんだか私、幼くなってない?)
先程のラカーシェとのやり取りの幼さは演技ではないのだ。
前世の記憶を思い出す前のルルーシェよりは精神年齢は上だ。
思考力の高さからそれは確か。
しかし、前世よりは幼いのも確か。
ちょうど今と昔を足して割ったくらいだろうか。
(なんだろう、困りはしないんだけど…………違和感がすごい)
いっそのことどちらかに振り切っていたら違和感がなかったのに。
今と昔が合わさって、混ぜられて、それを基に新しく「私」が造られたという感覚はなれなくて少し気分が悪い。
美味しいご飯は全て食べきったが。
(まぁ、キャラ変するって決めたし。新しい方がやりやすいでしょ)
ルルーシェは前世の意思と今世の愛情で、これまでのどちらのルルーシュよりも少し、強くなった。
(あ、私ヒロインだわ)
と。
ルルーシェは、前世の記憶を思い出したからといって熱を出さなかったし、違う人格になって周囲を困らせたりもしなかった。
まぁ、前世と今世の記憶が少しごっちゃごちゃにはなったが。
ルルーシェは緩くウェーブを描く美しい黄金の髪を持っていて、今は白い花の可愛らしいバレッタが付けられている。
瞳は桜でとても可愛らしいと持て囃される。
目はくりりと大きく、睫毛は長い上に何もせずとも上を向く。
唇はぷっくらと。
頬は常に愛らしいピンク色。
(こんなに神に愛された容姿、そりゃヒロインなら当たり前か)
ルルーシェは鏡の中の自分を眺めながら憂う。
(何でヒロインなの!そして憂う姿が様になってしまう自分がヤダ!!)
ルルーシェはヒロインになんて興味はない。
むしろ反吐が出る。
ルルーシェは、この世界の原作である「王子に溺愛され、愛に溺れてしまいそうで困ってます」を愛読していた。
しかしそれはヒロインとヒーローの愛に心躍らせていたのではない。
ルルーシェは、悪役令嬢ライラを目当てに読んでいたのだ。
ストレートな漆黒の闇は何にも染まらぬ意志のようで素敵。
真っ赤な瞳は常に冷静な彼女の胸の内に潜む熱情のようでうっとりとする。
真っ赤なルージュの塗られた唇は全てを魅了し、愚かなものを喰らいそうでずっと見ていられる。
吊り目は彼女の意志の強さを表しているようで愛おしい。
(要するに、全てがドストライク!最高っ!!)
ルルーシェは、ライラの筋の通った決して曲げられることのない意志の強さが大好きだ。
人は自分では持てないモノに憧憬を抱く。
その対象がルルーシェには悪役令嬢なのだというだけ。
ヒロインは意志が弱く、周りに流され、なのに愛される。
そんな存在が、ルルーシェは嫌いで嫌いで仕方ない。
だというのに、「ルルーシェ」はヒロインだ。
こんな非情があるだろうか。
此処にあった。
ルルーシェは頭を抱えて低く唸る。
ルルーシェは可憐な声なので実際はそこまで低い音ではないのだが、そこは気持ちだ。
眉間に皺を寄せ苦悩する姿は、人払いしてあるからいいものの、侍女がいたらこれまでとの落差に悲鳴をあげるほどに酷い。
しかしがばりと顔を上げたルルーシェは、笑顔に満ち溢れていた。
「そうだ、キャラ変すればいいじゃない!!」
ルルーシェは我ながら名案だと明るく頷く。
原作は好きではない。
ただライラが己の好みドストライクだったから読んでいただけで、原作そのものに思い入れがないのだ。
だからルルーシェがこれまで読んできた原作厨の主人公のように、「原作に忠実に」なんて思わない。
全く、これっぽっちも。
(勿論、この世界は好き。だって小説と現実は別物だから。そもそも私が前世の記憶を思い出した時点で原作とは相違してるんだし)
うんうんと頷く。
「原作なんてクソ喰らえ」
うふふふと笑いが漏れる。
問題が解決した今、ルルーシェの機嫌は最高にいい。
「おやルルーシェ、今日の君は大人のようだね。可愛いよ」
「そうなの、お父様!明日から私お姉様でしょう?だから私、自分を変えるのよ」
「そうかい。それはえらいね」
ルルーシェの父であるラカーシェはしゃがみ込み、温かい目でルルーシェの頭を撫でる。
そんな行為、今世では当たり前にしてもらっていたのに、前世を思い出して少しむず痒くなってしまった。
前世ではもらえなかった無償の愛。
今の当たり前は当たり前ではなく、昔のルルーシェが求めていたもの。
はにかみ、目を瞑る瞼の裏に映像が流れる。
「お母さん、お父さん、これどうぞ」
「まぁ、九十二点?」
母の声は褒めるものではなく、含まれるものは落胆で。
「百点、取れるだろう」
父の言葉は蔑みで。
その瞳には「娘」という名の、己の「道具」が映っていた。
娘は冷えきった手をぎゅうぎゅうと握り込み、ただその時間を耐えているのみ。
決して言い返さず、決して口答えせず。
「ルルーシェ?」
「……ん、なぁに、お父様」
「どうかした?」
「んーん、寝そうだった」
「ふはっ、全く。まだまだ大人には遠いなぁ、ルルーシェは」
「そんなことないわ!」
ラカーシェの声に含まれるものは蜂蜜たっぷりの愛情で。
その瞳はルルーシェに愛おしいと訴えかけ、そしてしっかりとルルーシェ自身を映している。
こんなに贅沢なことはない。
(なのに今までの私は、そうだとは知らなかった。…………知れてよかった。とってもとっても嬉しいなぁ)
ルルーシェは前世を思い出す前の自身は嫌いだが、ラカーシェのことは変わらず大好きだ。
こうして、変わってしまったルルーシェに気がついていないはずがないのに、愛してくれる父が。
ルルーシェの理想の親が、今世の親であったことがたまらなく嬉しい。
「お姉様になるルルーシェ、明日は早起きできるかい?弟は明日の午前中に来るんだよ」
「そうなの!?ええ、勿論できるわ!」
自信満々に、胸を張ってラカーシェに言う。
ルルーシェはご飯を食べながら考える。
(なんだか私、幼くなってない?)
先程のラカーシェとのやり取りの幼さは演技ではないのだ。
前世の記憶を思い出す前のルルーシェよりは精神年齢は上だ。
思考力の高さからそれは確か。
しかし、前世よりは幼いのも確か。
ちょうど今と昔を足して割ったくらいだろうか。
(なんだろう、困りはしないんだけど…………違和感がすごい)
いっそのことどちらかに振り切っていたら違和感がなかったのに。
今と昔が合わさって、混ぜられて、それを基に新しく「私」が造られたという感覚はなれなくて少し気分が悪い。
美味しいご飯は全て食べきったが。
(まぁ、キャラ変するって決めたし。新しい方がやりやすいでしょ)
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