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2章〜フォレスト王国王都〜

閑話、今度こそ護るよ、母様。

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「母様、見つけた」

 

 僕はほんの少し前に、もうこの世にいない人の魔力を感じてその魔力の発源体を探していた。

 そして、見つけた。記憶が無くても、顔が違っても、間違える筈がない。

 

 あの時、僕はこの地を護るだけで精一杯だった。母様も、父様も、助ける事が出来なかった。

 全てが終わった後僕は呆然とし、そして涙した。


 何で?どうして?誰が悪い?


 それしか考えられなかった。

 だけど答えは最初からあったんだ。

 誰も悪く無い。

 これしか言えない。

 だからこそ、自分の無力さに涙した。

 破壊の力から、僕の護る地意外護ろうとしたらこの地も無へと返っていたのは理解している。

 だから?だからなんだと言うんだ!!

 「大切なものを護りきれなった」これが全てで。

 
 それからは、ただ我武者らだった。

 もう無力な自分にならないようにと力を付け、この残った大切なものを護る事だけを考えていた。

 僕の力はあの若い神達以上だ。


 そして。

 またこの世に母様を見つけた。

 ああ、こんなに嬉しい事は初めてだ。

 今度こそ、護る。たとえ母様の方が力が強くても、強さだけで安心しては駄目だと僕はもう知っている。


 だから僕はコノキナーマージャを母様ーーリティア様に着けた。

 それにしても何故コノキナーマージャという名前なんだろうね、このきのこ。こんなに可愛らしいのに。

 ……あれ?もしかしてコノキナーマージャ、嫌がられている?

 確認しなきゃ。


 
 中々目覚めないから心配で顔を近づけた。その時、ちょうど母様、いやリティア様が目をぱっちりと開けた。

「だ、誰ーーーーーー!?!?」

 驚き顔も可愛い。可愛いけど。

「あ、起きたのですね、リティア様」

 やっぱり何も憶えていないんだ、と分かる。

「リティア様、あの木は僕の本体なのです。僕は世界樹と呼ばれています」
「そうなんだ!……じゃあ何故私はその世界樹の前に居るの?」
「精神だけで貴方様をお呼びさせていただいたのですよ」

 話せて嬉しいのに。なのに、話せば話す程、悲しくなる。いつの間にか悲しいという感情が表情に出ていたらしい。

「どうしたの?」
「なんでもないですよ?」

 すぐニッコーーッと笑って誤魔化した。

 あ、そうそう。も聞かないと。

「リティア様、コノキナーマージャ、迷惑でしたか?」
「…………」
「め、迷惑だったんですね」

 何も言わないリティア様を見て悟ってしまった。あ、これも地味に悲しい。

「で、でもっ!体力魔力両方回復出来る優れものですよ?」
「……ところ構わず生えてこなければ、まあ?」
「じゃあそうします!役立てるよう時を見計らいます!なので嫌わないで下さい!!」

 バッ!

 少し押し付けがましい気が自分でもしたけどこの際しょうがない。


 土下座!


 若干引かれている気がしないでもないけどリティア様の居た国ではこれが最上位の礼だと知ったからこれしかない!と思って……。

「嫌わないから時と場合は選んでね……」
「はい!」


 良かった!本っっ当に良かった!!これで堂々とリティア様を観察できるっ!!


「ありがとうございました。リティア様と話せて良かったです。おやすみなさい」
「私も貴方に会えて良かったよ」
「おやすみなさい」

 今度こそ、幸せになれるようにお手伝いします。

 
 全力で。

 自己満足?ああ、そうだよ。ただ僕は僕の心に従うまで。

 もう自分の無力さに涙しないように。後悔しないようにーーーーーー

 
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