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2章〜フォレスト王国王都〜

蛇足、我は何も見ておらぬ!!

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 我はリティアの従魔。だからリティアの害になる者を排除するのも当然の事。

 毎晩リティアに気づかれぬようにしながら交代で行っている。

 今夜も害虫がいる。まあ結界をリティアは自分で張って寝ているから中まで入って来る事など出来ぬが念のためだ。

 リティアを起こさぬよう、害虫に気づかれぬよう、軽く気配を消して行く。


◇◆◇

 ーーピリッ。

 結界を通ったような感触がした。


 ……可笑しい。


 我はリティアの従魔となった事でリティアとの相性が通常は有り得ぬ程良い。

 だからリティアの結界を通ってこの感触は有り得ぬ。だが本当に一瞬だった。

 我にも分からぬなんて、何者だ?

 我が分からぬ者など、神か世界樹くらいだ。でも神の力では無い。前回会った時に神の力の質は覚えた。だから分かる。


 違う。

 
 似てるがな。……まあ良い。敵意は無いからな。それよりも害虫だ。

 さて、どのように嬲り殺してやろうか。結界を張るから何人たりとも邪魔する事は出来ない。

 さあ、楽しもうではないか。

 それにしてもリティアを害そうとするなど命知らずな者め。


 ああ、見つけた。

 素早く害虫に迫る。

 そして襲い掛かろうとしてーー

「が………………………………」


 うむ。我は何も見ておらぬ。見ておらぬからな!!


◇◆◇


 我が襲い掛かろうとした時、リティアに憑いているコノキナーマージャが現れ我と害虫を遮った。

 邪魔なだけだと即座に風で退かそうとしたのだが風では全く動かず、それどころか己で動いた。

 そして、害虫の悲鳴が聞こえた。


 思わず我は動きを止め無防備になるという間抜けヅラを晒した。

 だが決して我は悪くない!!

 きのこが己の意思……かは分からぬが動きなど有り得ないにも程があるだろう!?

 しかも食らったのか!?


 …….我は何も見ておらぬ。見ておらぬ。絶対に見ておらぬ。


 今日の事は無かった事にしようと気配を必死に殺して後退していたのだが、何の前触れもなくコノキナーマージャはクルリと我の方を振り向いた。


 ……これがシュールと言うヤツなのだろうな。顔では無いはずの顔の様なシミの口に血がべっとりとついていて、目力も我より強い。

 何より目が、その顔の様なシミが、『この事を誰にも言うなよ』とガンを飛ばしているのだ。

 うむ。『我は本当に何も見ておらぬから心配するな』そんな気持ちを込めてコノキナーマージャの方を向き頷いた。


 今度こそ我は少しずつ後退した。

 ある程度の距離が取れたから我はプライドを殴り捨て全力疾走した。

 我は何も見ておらぬ。我は何も見ておらぬ。我は何も見ておらぬ。我は何も見ておらぬ。

 これこそが事実で良いのだ。



 我は、初めて誰にも言えぬ秘密が出来た。

 これはリティアの為の秘密なのであって、断じて我が怖い為に秘密にするのでは無い。決してな!!

 

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