真巨人転生~腹ペコ娘は美味しい物が食べたい~

秋刀魚妹子

文字の大きさ
51 / 247

第49話 暴食の始まりとサバイバル

しおりを挟む
 「いったぁっ!?」

 激痛に叩き起こされ、地面に倒れたクウネルが見たのは知らない景色だった。 

 「綺麗な青空だー。 ん? 待って待って、何でこんな森に私倒れてたんだっけ……って、頭いっっったぁーい! あ~、思い出しましたよ」

 クウネルは身体を起こし、自身が着地したクレーターとバラバラになった鎧や武器を見た。

 「そうそう、亜人達の裏切りと元クラスメイトのチート達と再開して……両親も、祖父も殺されたんだ。 で~、母のスキルで魔の森奥地に飛ばされたんだよね? ……あれ? ……ん? 今……家族の事私、何て呼んだ?」

 クウネルは自身の発言に違和感を感じ、考える。

 「前は何て呼んでた? 私は……クウ? クウネル? いや、私はクウネル。 そう、クウネル。 喰は、狩人喰は前世の名前だよね」

 痛む頭と戦いながら、必死に現世の思い出を振り返った。

 「前世の祖父の事もちゃんと覚えてる。 巨人生の家族の事もちゃんと覚えてるし、思い出もちゃんと有る。 確か、亜人も元クラスメイトもこの世界全ても、全部全部、憎くて殺したくて仕方無かった筈。 筈なのに……今は怒りも憎しみも感じない? 何だこの感覚、凄く気持ち悪い。 気を失う前に……誰かと話したよね? 誰と……?」

 クウネルは考えれば考える程に違和感が強くなるのを感じていた。

 「ダメだ、考えが纏まらない。 身体の中に、大きな穴が出来たみたいで凄く気持ち悪い」

 クウネルは何とか立ち上り、再度周りを見渡す。

 大きなクレーターに近付き、ボロボロになったハルバートと鎧の破片を拾った。

 「んー、流石に武器と鎧は駄目か。 残ってるのも外しておこう」

 クウネルは残っていたチェーンメールの鎧を外し、一箇所に破片を集める。

 「ふー、少し身軽になったぞ」

 クウネルの装備は赤色のシャツに紺色のズボン、無事だったガントレットと脛当に皮のブーツのみである。

 クレーター以外は森しか見えず、3メートルのクウネルより少し高い木々が周囲を覆っていた。 そして移動しようと思った時、何かの匂いに気付く。

 「くんくんくん……あ~、良い匂い? なんだろう、何処かで嗅いだ美味しそうな匂いがする~」

 クウネルは地面に出来ていた血溜まりに鼻を近付け、自身の血では無いことを確認した。

 「これ……誰の血だ? まぁ、私は無事だし……血だけなら気にしなくてもいっか。 さて、どうしよっかー。 村にも帰れないし、ラスボスな祖父でも住めない魔の森でサバイバルするの? 無理じゃね? あれ? やっぱり何か変だ。 祖父、祖父、祖父? 此処で目覚める前は、何て呼んでた? 何で思い出せない? 記憶に、思い出に穴が有る……気がする。 そうだ、一度自分のステータスを確認しとこう! ステータスオープ……ッ!?」

 クウネルがステータスを表示しようと試みた瞬間、味わった事の無い空腹感がクウネルを襲った。

 「……が……はっ!? 何だこれ、お腹が……お腹が空いてるの? いや、そんなレベルじゃない。 痛い、痛い痛い痛い。 今まで、こんなに空腹になった事何て無いっ!  痛い痛い、何か食べなきゃ。すぐに食べなきゃ!」

 クウネルまだ重い身体を無理矢理動かし、森の中に入り食べ物を探す。 その間にも、ゴキュルルルとお腹から鳴ってはいけない程の轟音が響く。 その音が激しくなる度に、死が近付くのを感じる。

 「不味い不味い不味い! 死ぬ死ぬ死ぬ!!」

 木々を掻き分け、闇雲に進み続ける。 すると、スキル気配察知に反応があった。

 「あ! こっちか! 何でも良い、何でも食べてやる! 食べなきゃ死ぬ!!!」

 遂に、腹の虫がゴギゴギッと異音を立て始め激しい痛みにクウネルは顔を顰めながら走る。

 「はぁ……はぁ……ぁがっ! 後少し、後少しで見える……見えた!!」

 森の少し平地になっている場所に、青くて丸い水饅頭みたいなのが沢山跳ねているのを目視したクウネルは躊躇せずに飛び掛かった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

【完結】悪役に転生したのにメインヒロインにガチ恋されている件

エース皇命
ファンタジー
 前世で大好きだったファンタジー大作『ロード・オブ・ザ・ヒーロー』の悪役、レッド・モルドロスに転生してしまった桐生英介。もっと努力して意義のある人生を送っておけばよかった、という後悔から、学院で他を圧倒する努力を積み重ねる。  しかし、その一生懸命な姿に、メインヒロインであるシャロットは惚れ、卒業式の日に告白してきて……。  悪役というより、むしろ真っ当に生きようと、ファンタジーの世界で生き抜いていく。  ヒロインとの恋、仲間との友情──あれ? 全然悪役じゃないんだけど! 気づけば主人公になっていた、悪役レッドの物語! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...