真巨人転生~腹ペコ娘は美味しい物が食べたい~

秋刀魚妹子

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第87話 報告と仲間割れ

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 聖王国王城、玉座の間にて――

 「おぉ!  勇者カズキよ、よくぞ魔王になる亜人の娘を討伐した! そなたこそ、我が聖王国の英雄で有る!」

 聖王は無駄に豪華な玉座に座り、偉そうにカズキ達を労っていた。

 (はぁー……ウンポのくそ野郎とやっと離れられたと思ったら。 そうだっだ、この国王との謁見が有ったな)

 カズキは内心でため息をつきながらも、外面は笑顔で接する。

 「いえ、仲間に恵まれ何とか達成できました。 全ては仲間のお陰です」

 (んな訳ねぇだろ、馬鹿か。 俺とマヒルだけの手柄だよ。 でも、一応は仲間だからな……此処はコレが正解だろ)

 カズキが仲間のお陰だと言ったら、後方から早速調子に乗った声が聞こえ始める。

 「……せやな。うん、せやせや」

 「まーね。 この聖女様が居たお陰ね」

 (コソコソと話しても俺にはしっかり聞こえてんだよ! レベル幾つだと思ってんだこの野郎!)

 カズキは眉を引くつかせながらも、笑顔を崩さないように努めていた。

 (あの声は、リュウトとユズキだな。 リュウトはまだしも、ユズキは亜人達から金巻き上げて治療しただけじゃねぇか! 何でそんなに調子に乗れるの? 逆に不思議だよ!)

 「ほっほっほ、さすが勇者よ。 仲間を想うその気持ち、素晴らしい事じゃ。 どれ、何か褒美を取らせよう。 今後も使命達成の為に頑張ってもらわんといけんからのぉ、何でも言ってくれ」

 カズキは笑顔のまま、つい即答してしまいそうになった言葉を慌てて飲み込む。

 (じゃあ、死んで。 って、いやいや、ダメだダメだ! 冷静になれ俺。 幾ら嫌いなおっさんでも、今殺すのは不味い)

 一度深呼吸し、カズキは改めて口を開いた。

 「有りがたきお言葉、では叶うなら当面休暇を頂きたく存じます。 今回の作戦で、私も仲間も大きく疲労しました。 なぁに、後残るは脆弱な他国と貧弱な亜人共の制圧のみです。 ゆるりと休んでからでも、使命は果たせましょう」

 カズキの返答に後方の仲間達から黄色い声が上がる。

 (ふん、嬉しかろう嬉しかろう。 この2年間は、ほぼ休み無しでレベル上げしてたからな。 山場は終わったんだ、少しはゆっくりさせろ)

 「ふむ、確かにこの2年間は激務で有ったな。 よし、では1年間の休暇を与えよう。 ゆっくりと休み、1年後に始める布教攻勢に備えて欲しい」

 (ちっ、偉そうに。 しかし、世界征服を布教攻勢とは耳障りの良い言葉だな。 まぁいい、創造神オリジン様の使命を果たす為にも今はゆっくり休むとしよう)

 カズキは本心を隠したまま聖王に頭を下げた。

 「はっ! 過分なる休暇、感謝します。 では、魔王の首を献上致しますので御確認の程お願いします。 リュウト、首を」

 カズキが合図をすると、1番後ろから大きな袋を担いだリュウトがやって来た。

 「へいへい、よっっこらしょ!」

 リュウトが聖王の前に首を置く。

 首だけで途轍もない重さがある為、置いた衝撃で玉座の間が揺れた。

 「ひっ! ご、ごごご苦労! 確認は此方で行おう。 勇者殿達は、自室にて休まれよ。 夜には祝賀会といこうではないか」

 「はっ! では、失礼します」

 (祝賀会か、興味は無いが俺がこの国を乗っ取る時の為に貴族共に顔を売るのも悪くはあるまい)

 玉座の間を退出すると、仲間達の顔には疲労が濃く見える。

 (早めに解散してやるとするか)

 「よし、じゃあ皆。 1度各自室前の会議室に集合して今後の話しをするぞ」

 雑に返事をする仲間達を引き連れ、カズキ達は自室のある階へと移動する。

 仲間と打ち合わせを良くする会議室に入ると、其処には留守番をさせたアズキが座って待っていた。

 「おっす、お疲れ」

 「おっす、じゃないアズキ。 何してんだ」

 「ふん、何処に居ようと私の勝手だろ? で? 本当に殺したのかい? 2歳の女の子を」

 アズキから本気の殺気がカズキ達へと向けられ、仲間達がざわつく。

 「アズキ……何のつもりだ?」

 カズキは腰の剣に手をかけながら、アズキに問う。

 「他の皆も全員揃ってるみたいだし丁度良いね。 皆、私の話しを聞いて」

 「はぁ? いきなり殺気放ってくる奴の話しなんか誰が聞くか。 なぁ? 皆」

 カズキは剣に手をかけたまま、後ろの仲間へと問い掛けた。

 「え? 別に聞いたげたらいいじゃん、カズキのケチー!」

 (うるせー、このエセ聖女が!)

 「アズキが留守番をしている時に、何か有ったなら聞くべきだろ? カズキ」

 (コジロウ、お前はミカとアズキが仲良しだから肩持ってるだけだよね?)

 「わ、私もアズキちゃんの話し、聞くべきだと思う」

 (うーん……ミカはアズキと友達だから甘いんだろ?)

 「なははは、まぁそんなにカリカリせんと。 話しぐらい聞いたろうや!」

 (エセ関西弁のリュウトに言われるとむしろ聞きたくなくなるな!)

 「僕は……どうでもいい。 早く自室で魔法の研究したい」

 (ルウ……お前は何時でもぶれないよな)

 「やっほー! アズキさん久し振りぃ~、どうしてそんな怖いお顔してるの? ほら、笑顔笑顔! アイドルは笑顔が命だよ?! キラッ☆」

 (お前はお前で、どうしてぶれないの? 話し聞いてた? しかも、アズキはアイドルじゃねぇし! 更に言うとヒカリ、お前もアイドルじゃないからね!?)

 「ふむふむ……アズキ殿の真剣な眼差し。 余程の事が有ったと見受けますぞ! カズキ氏、仲間に殺気を向けた件は一旦置いて話しを聞くべきかと」

 (オタフクは、ヒカリが絡まないと本当に常識人だよな。 そっか、話し聞くべきかな?)

 「ん~っと、カズキ君。 早く話して、早く自室に戻れば……ね?」

 (よし聞こう、今すぐ聞こう、マヒルは可愛いなぁ!)
 「よし聞こう、今すぐ聞こう、マヒルは可愛いなぁ!」

 マヒルに腕を掴まれたカズキはだらしない顔で答えた。 それを見た仲間達はドン引きであった。
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