131 / 247
第127話 クイーンとの積もった会話
しおりを挟む
クウネルはフラフラになりながらも、何とかゴブリン王国の街に帰って来ていた。
と言っても、瓦礫だらけで街の面影は無いが。
街には収まりきらない程のゴブリン達が、各々好き勝手に焚き火をして休んでいた。 焚き火では地竜のミンチ肉が焼かれており、非常に食欲を増す香ばしい匂いが漂っている。
「ゴクリ……いや、いかんいかん。 あれはゴブリンさん達のご飯だからね。 えっと……状況を見るにモロが王様と長老さんの間に入って上手くやったのかな?」
クウネルがゴブリン王に伝えていた事も功をなしたのか、特に争いも無くとても平和な光景である。
「そのモロは何処だろう?」
クウネルは周囲を見渡しながら、ゴブリン達を踏まない様に気を付けて進む。
クウネルに気付いたゴブリン達は一斉に手を合わせて拝み始め、やっぱりこれはゴブリン流の挨拶なんだと思い込んだクウネルは笑顔で会釈する。
後にこの時の行動を後悔するのだが、今のクウネルには知る由もない。
「んー、気配察知は反応が有りすぎて使い物にならんね」
クウネルは行く先々にいるゴブリン達と挨拶を交わしながら、キョロキョロと辺りを見渡し歩き続けた。
「あ! あれモロじゃね?」
すると、街の外れに数千匹程の森狼達が集まっており、その中央にモロと少し身体の大きな森狼が戦っているのが見えた。
遠目に見る限り、本気の殺し合いという訳では無く何やら森狼達は大興奮で吠えている。
殺し合いというより、ボス同士の縄張り争いのように見えた。
クウネルは邪魔しないよう、こっそりと近付く。
「アウン? あら、クウネル戻ったのね。 お帰りなさい」
「うぁっ!? あー、奥さんか。 びっくりしたー!」
クウネルは、いきなり足下から声を掛けられ飛び跳ねた。 声のした方を見ると草原にモロの妻であるクイーンが子狼達と座っていた。
「あぶなー、チビ達踏んでないよね? それと、奥さんはここで何してるの? 後、モロもアレは何してるの?」
「クフクフ、夫が……王として返り咲く為の決闘よ。 相手は、ゴブリン達を護衛していた森狼達の長。 まぁ、私の夫とは違って森狼王では無いから格下ね。 あ、私は子狼達のお世話よ。 群れの森狼2匹は決闘を見学させてるの……見るだけでも得るものがあるから」
クイーンはとてと穏やかな口調でクウネルと会話する。 そんなやり取りに、クウネルは何処か緊張し苦笑いを浮かべた。
「そっか……あはは、なんだろう。 改めてモロの奥さんと話せるってなったら、なんか緊張するな」
「クフ、私もよ……クウネル。 初めて会った時は本当にごめんなさい。 あの時は……もう、後がなかったの」
クイーンの言葉にクウネルは記憶を呼び起こし、草原へと座り込んだ。
「あぁー、そうだね。 確か、待ち伏せにあって襲われたんだよね。 でも、私もあの時に森狼殺しちゃったしなー。 私こそごめんね。 数が減ってた森狼達を更に減らしちゃったんだもん。 あの2匹も私を恨んでるよねー」
クイーンは、クウネルの話を優しく目を細めて聞いていたがゆっくりと口を開いた。
「クゥン……クウネル、この子狼達の言葉は分かる? 分かるなら、聞いてみて」
「ほえ? うん、分かった。 ……確か、話そうと思った相手とは会話出来るんだっけ? 鑑定さん」
«――概ね正解です»
「オッケー!」
クウネルは、自身の指先程の大きさしか無い子狼達に話しかけた。
「はぁい、元気かな? えっと、私の言葉は分かる?」
クウネルが話し掛けると、子狼達は目を丸くして足下で走り回り始めた。
「アンッ! わかるー!」 「アンッ! アンッ! クウネルだー!」 「クゥン、クウネルすきー!」 「アウン! おにくー、おにくちょーだーい!」
尻尾を振りながら走り回る子狼達にクウネルは戸惑い慌てる。
「わ! わわわ! 怖い怖い! 潰す潰す潰す!! 待って待って! 落ち着いて! 分かった、またお肉持ってくるから!」
「「「「アオーン! わーい!」」」」
クウネルの言葉に喜ぶ子狼達を見て、クウネルは何とも言えない顔で微笑む。
「クフクフ……ふふっ、ね? この子狼達は貴女を恨んでなんかいないわ。 残りの2匹の成狼もね。 むしろ、感謝してる。 私も、ね」
クイーンは本心からクウネルに感謝し、微笑んだ。
「んー、ありがとう。 でも、まだ少し複雑な気持ちだよー」
クウネルは嬉しい反面、本心から喜ぶことは出来なかった。 それは罪悪感なのか、混乱なのかはクウネル自身でも分からない。
だが、今はその感情はきっと時間が解決してくれると思い込むしか無いのだろう。
「ガァッ! クウネル、ほら終わったわよ。 当然、私の夫の勝ちね」
クイーンの視線を追うと、森狼達の中央ではモロが勝鬨の遠吠えを上げていた。
と言っても、瓦礫だらけで街の面影は無いが。
街には収まりきらない程のゴブリン達が、各々好き勝手に焚き火をして休んでいた。 焚き火では地竜のミンチ肉が焼かれており、非常に食欲を増す香ばしい匂いが漂っている。
「ゴクリ……いや、いかんいかん。 あれはゴブリンさん達のご飯だからね。 えっと……状況を見るにモロが王様と長老さんの間に入って上手くやったのかな?」
クウネルがゴブリン王に伝えていた事も功をなしたのか、特に争いも無くとても平和な光景である。
「そのモロは何処だろう?」
クウネルは周囲を見渡しながら、ゴブリン達を踏まない様に気を付けて進む。
クウネルに気付いたゴブリン達は一斉に手を合わせて拝み始め、やっぱりこれはゴブリン流の挨拶なんだと思い込んだクウネルは笑顔で会釈する。
後にこの時の行動を後悔するのだが、今のクウネルには知る由もない。
「んー、気配察知は反応が有りすぎて使い物にならんね」
クウネルは行く先々にいるゴブリン達と挨拶を交わしながら、キョロキョロと辺りを見渡し歩き続けた。
「あ! あれモロじゃね?」
すると、街の外れに数千匹程の森狼達が集まっており、その中央にモロと少し身体の大きな森狼が戦っているのが見えた。
遠目に見る限り、本気の殺し合いという訳では無く何やら森狼達は大興奮で吠えている。
殺し合いというより、ボス同士の縄張り争いのように見えた。
クウネルは邪魔しないよう、こっそりと近付く。
「アウン? あら、クウネル戻ったのね。 お帰りなさい」
「うぁっ!? あー、奥さんか。 びっくりしたー!」
クウネルは、いきなり足下から声を掛けられ飛び跳ねた。 声のした方を見ると草原にモロの妻であるクイーンが子狼達と座っていた。
「あぶなー、チビ達踏んでないよね? それと、奥さんはここで何してるの? 後、モロもアレは何してるの?」
「クフクフ、夫が……王として返り咲く為の決闘よ。 相手は、ゴブリン達を護衛していた森狼達の長。 まぁ、私の夫とは違って森狼王では無いから格下ね。 あ、私は子狼達のお世話よ。 群れの森狼2匹は決闘を見学させてるの……見るだけでも得るものがあるから」
クイーンはとてと穏やかな口調でクウネルと会話する。 そんなやり取りに、クウネルは何処か緊張し苦笑いを浮かべた。
「そっか……あはは、なんだろう。 改めてモロの奥さんと話せるってなったら、なんか緊張するな」
「クフ、私もよ……クウネル。 初めて会った時は本当にごめんなさい。 あの時は……もう、後がなかったの」
クイーンの言葉にクウネルは記憶を呼び起こし、草原へと座り込んだ。
「あぁー、そうだね。 確か、待ち伏せにあって襲われたんだよね。 でも、私もあの時に森狼殺しちゃったしなー。 私こそごめんね。 数が減ってた森狼達を更に減らしちゃったんだもん。 あの2匹も私を恨んでるよねー」
クイーンは、クウネルの話を優しく目を細めて聞いていたがゆっくりと口を開いた。
「クゥン……クウネル、この子狼達の言葉は分かる? 分かるなら、聞いてみて」
「ほえ? うん、分かった。 ……確か、話そうと思った相手とは会話出来るんだっけ? 鑑定さん」
«――概ね正解です»
「オッケー!」
クウネルは、自身の指先程の大きさしか無い子狼達に話しかけた。
「はぁい、元気かな? えっと、私の言葉は分かる?」
クウネルが話し掛けると、子狼達は目を丸くして足下で走り回り始めた。
「アンッ! わかるー!」 「アンッ! アンッ! クウネルだー!」 「クゥン、クウネルすきー!」 「アウン! おにくー、おにくちょーだーい!」
尻尾を振りながら走り回る子狼達にクウネルは戸惑い慌てる。
「わ! わわわ! 怖い怖い! 潰す潰す潰す!! 待って待って! 落ち着いて! 分かった、またお肉持ってくるから!」
「「「「アオーン! わーい!」」」」
クウネルの言葉に喜ぶ子狼達を見て、クウネルは何とも言えない顔で微笑む。
「クフクフ……ふふっ、ね? この子狼達は貴女を恨んでなんかいないわ。 残りの2匹の成狼もね。 むしろ、感謝してる。 私も、ね」
クイーンは本心からクウネルに感謝し、微笑んだ。
「んー、ありがとう。 でも、まだ少し複雑な気持ちだよー」
クウネルは嬉しい反面、本心から喜ぶことは出来なかった。 それは罪悪感なのか、混乱なのかはクウネル自身でも分からない。
だが、今はその感情はきっと時間が解決してくれると思い込むしか無いのだろう。
「ガァッ! クウネル、ほら終わったわよ。 当然、私の夫の勝ちね」
クイーンの視線を追うと、森狼達の中央ではモロが勝鬨の遠吠えを上げていた。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
【完結】悪役に転生したのにメインヒロインにガチ恋されている件
エース皇命
ファンタジー
前世で大好きだったファンタジー大作『ロード・オブ・ザ・ヒーロー』の悪役、レッド・モルドロスに転生してしまった桐生英介。もっと努力して意義のある人生を送っておけばよかった、という後悔から、学院で他を圧倒する努力を積み重ねる。
しかし、その一生懸命な姿に、メインヒロインであるシャロットは惚れ、卒業式の日に告白してきて……。
悪役というより、むしろ真っ当に生きようと、ファンタジーの世界で生き抜いていく。
ヒロインとの恋、仲間との友情──あれ? 全然悪役じゃないんだけど! 気づけば主人公になっていた、悪役レッドの物語!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる