真巨人転生~腹ペコ娘は美味しい物が食べたい~

秋刀魚妹子

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第128話 森狼王の復活

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 決着がつき、周囲の数千はいる森狼達は中央のモロに向かって跪き頭を垂れた。

 それは、巨木の森を統治していた森狼王の完全復活であり数千匹の配下を得た事を示していた。 モロと戦っていた森狼も倒れてはいるが大した怪我も無く手加減をしていた事が窺える。 まさに、モロの圧勝である。

 「ははっ、モロを信じてるんだね奥さんは」

 「ガウ! 当たり前よ、だって……私の夫は誇り高き森狼の王なのだから」

 「そうだよね。 なら、新たに配下を迎えたモロは晴れて森狼達の王に復帰だね。 いや~、良かった良かった。 あ、でも私の旅は? もしかして此処から先は一人旅なの? いーやーだー! 1人で少し歩いただけで寂しくて堪らなかったのに、長期間も1人で旅とか絶対にむーりー!」

 クウネルがブツブツと文句を言っていると、其処へモロがやって来た。

 「ガウッ! やぁ、クウネル。 挨拶が遅くなってすまない、お帰り。 わっと終わったよ、待たせてすまないね私の愛しの妻よ」

 モロはクウネルに挨拶をした後、クイーンの頬を舐め始める。 森狼の愛情表現なのだろう。

 「おーおー、お熱い事ですなー! リア充は爆発すればいいのにね!」

 「クゥン? ク、クウネル?? なんの話だい?」

 「ガウ! 信じてたわ、貴方。 いえ、我等が王よ」

 「クフクフ、ありがとう。 今度こそ、新たな同胞を守ってみせるさ」

 クウネルの異世界では通用しない文句に反応する間もなく、モロとクイーンは熱い舐め合いを始め流石のクウネルもキレた。

 「すーみーまーせーーーーーん! 熱々な所ごめんね? で、新たに増えたゴブリンや森狼達はどうなるの? 王様とはどんな話になった?」

 クウネルが話しに割って入ると、クイーンは顔を真っ赤にして俯いてしまった。 モロは笑ってはいるが、毛の上からわかるほどに顔が真っ赤だ。

 「クゥン、あはは……すまないクウネル。 友とはもう全てを受け入れることで合意済みさ。 私達森狼も、これからはゴブリン王国と共に歩む事になってね。 もう……あの森では住めそうも無いからね」

 「あー、なるへそね。 まぁそうだよね……だって、モロが縄張りにしていた巨木の森には食料になる動物と魔物も居なくて暮らせないよね。 水源地も、どっかの誰かさんのせいで枯れちゃったし」

 «――疑問。 あの池を枯らしたのはクウネルでは?»

 クウネルの脳内で鑑定がツッコむが、モロとクイーンもクウネルをジト目で見つめていた。

 「残念、違いま~す! あれは、お母さんの口が全部飲み干したからお母さんのせいです!」

 «――受信。 クウネルに暴食の邪神、お母さんからメールが届いています。 表示しますか?»

 「ひえっ! 嘘です! 使ったのは私です、私が悪いです! だから、お願い今日はもう許して!」

 «――嘘です、メールは受信していません»

 「ちょっ! 鑑定さーーーーん!? 何でそんな嘘を!? っていうか、もう絶対感情あるじゃん! 確信犯やん!」

 «――冗談です。 クウネル、冗談はさておいて焼き肉をしていた場所に至急戻る事を推奨»

 「え? 何で?? いや、確かにお腹は減ってきたけども」

 「クゥン、相変わらず不思議な独り言が凄いね。 ふふ、もう気にしていないからね? それより、もう今日は夜も遅いし焼き肉をしてた場所に戻ってあげてなよ。 ふらふらなのに、初めての命令を必死に守ってたからさ」

 クウネルは鑑定とモロの言葉に嫌な汗を背筋にかく。

 「……まさか、え? 本当に言ってる?」

 モロが頷いたのを確認し、確信したクウネルは急いで焼き肉をしていた場所へと向かう。

 「うわぁー! 待って、確かに言ったけど。 それは、命令じゃなくてお願いだよーー! 直ぐに戻らなきゃ! おやすみー! モロー! 奥さーん!」

 クウネルは足元に注意しつつモロ達に手を振る。

 「クフクフ、おやすみクウネル。 観念しなよー?」

 「クゥン、おやすみなさいクウネル。 あ! 今度でいいから、私にも夫のような素敵な名前が欲しいな。 お願いねー!」

 「にびゃぁぁぁぁ! また面倒事が増えたんですけどー!? りょ、りょうかいで~す!」
 
 クウネルはゴブリン達を踏まない様に走る。

 「あ! 見えてきた!」

 クウネルが焼き肉をしていた場所では、まだ煌々と炎が夜空に向かって上がっており嫌な予感しかしない。

 「え? 本当にあれからずっと火の番してたの? 馬鹿なの? 死ぬよ!?」

 焚き火に近付くと、汗だくで瀕死の弓兵長が項垂れていた。 どうやら、火を絶やさないように薪を焚べていたのだろう。 近くには薪が沢山散乱している。

 「ぎゃあぁぁぁ! 何してんの! 死ぬよ! 水魔法! 水魔法ーー!!」

 クウネルは倒れるゴブリン弓兵長をすくい上げ焚き火から離れた場所に下ろす。 そして水を生み出し冷やした。

 「弓兵長君をもっと冷やさなきゃ! それで、えっと、鑑定さんHELP!!」

 «――確認。 脱水状態、熱中症、過労、直ぐにマンドラゴラを煎じて飲ませて下さい»

 「オーケー! 袋は……あれ? 皮袋どこやった?!」

 «――検索。 モロを観戦している際に地面に置いたままです»

 「何てこった! 直ぐに戻るからね弓兵長君! 急げーーー!!」

 クウネルは来た道を急いで戻るのであった。
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