真巨人転生~腹ペコ娘は美味しい物が食べたい~

秋刀魚妹子

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第157話  黒髪のクウネル

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 ◆黒髪のクウネルSide◆

 「あれ? ……知ってる天井だ」

 クウネルは目を覚ますと、見知った天井が視界に入った。

 「私、どうしたんだっけ……? よっこらしょーいち!」

 床に敷いた布団から身体を起こし、周囲を見渡す。

 「うん、やっぱり良く知ってる部屋だ」

 山のように積まれたラノベと漫画本、棚から溢れてるゲームソフト、小さな机にはゲーミングPC。

 そして、ずっと干していない布団。

 クウネルが中学校に通う3年間、1人で住んでいた家だ。

 「んん?? 高校の寮にぶちこまれた時に、部屋の物も家も全部売られた筈だよね? どういう事? んー、分かんない。 とりあえず……ラノベ読んで落ち着こう!」

 考えるのが面倒臭くなったクウネルは側に積んであったラノベ小説を手に取り、再度布団に転んだ。

 「お、これ懐かしい!! かぁー! これこれ! くはぁー!」
 
 ◆◇◆

 ――数時間後。

 「ふー、堪能した。 いやぁ、本読むのなんて久し振りだったよ。 だって……だって? あ、そうだ!」

 シリーズ丸々読み終えたクウネルは布団から飛び起き、転生した記憶を思い出した。

 「私、巨人に転生したんじゃん! ……なんで、家の中に入れるの? 私の身体の大きさから考えて……おろ? 小さい」

 自身の身体を触り、巨人だった記憶と違い過ぎる身体にクウネルは悲鳴を上げた。

 「Noooooo!! 身体が、小さい! あんなに豊満だった胸もスモール! どして!?」

 着ている服も、クウネルが転生前まで着ていた高校の制服だった。 その頃は身長が低すぎてサイズが合わず、自分だけオーダーメイドだった事を思い出して悶絶する。

 「何がどうなってるのさ! 鑑定さん!? HELP! Help me!! 鑑定えもーーーーん!」

 しかし、クウネルの懇願にも鑑定からの返答は無かった。

 「……ほえ? 鑑定さん……? どして、応答しないとですか?」

 クウネルは相棒から返答が無い異常事態に、直前まで何があったのかを思い出し始める。

 「待てよ……確か癒しの族長達と巨木の森に行ったのよ。 で~、マンドラゴラ抜き~の、骨のワイバーンに襲われ~の、逃がした族長達が戻ってき~の、焦って骨のアンデッドワイバーンを食べたんだよね。 うんうん、思い出してきたぞ」

 しかし、思い出した場面の後が分からずに首を捻る、

 「……で? あ~……体調が悪くなって、鑑定さん以外の声が聞こえて~、でも完食はした筈だから皆は無事なのかな?? 結局なんでここに居るの? ん~……分かんないし、とりあえず……ゲームしよう!」

 クウネルは全てを放りだしパソコンへと向かった。

 「いや、ほら、夢かも知んないし、巨人に戻ったらゲーム出来ないしさ。 少し、少しだけだから~。 おぉぉぉ! このPCも久し振りだぁー! 滅茶苦茶やってたネトゲまだ運営頑張ってるかな? ワクワク~!」

 中学生以来のネットゲームに心を躍らせていると、鍵が開く音が聞こえクウネルは飛び退き部屋の扉に耳を当てる。

 「ん!? さっきの音は玄関の鍵が開いた音だよね」
 
 クウネルは恐る恐る部屋の扉を開ける。

 この家は二階建ての一軒家で、現在クウネルが何故か居たのが二階の自室だ。 クウネルの記憶では、二階に部屋は三部屋あった筈であり当時はこの部屋以外は空き部屋だった。

 しかし、廊下から見た残りの二部屋の扉には誰かが使っている形跡が残っていた。

 「見たことのない飾りが掛けてあるのと、傷だらけの扉か。 ……ん~、記憶にないぞ? 住んでたの私1人だったからね。 確か一階も最低限の家具しか置いて無かった筈だし、盗みに入る人なんて居ないと思うんだけど……?」

 クウネルは知っている家の違和感を不気味に思いながら階段へと進む。

 「これ……本当に何なの? 夢?? 私は確かに巨人に転生したし、そもそもこの家はもうずっと前に売却されてる。 ……でも、あの部屋は確かに私の部屋だったんだよな~」

 疑問は尽きないが、優先すべきは侵入者の確認だと慎重に階段に近付いた。

 「パタパタ ガサガサ ドサッ!」

 一階の廊下から歩く音と、ビニール袋の音が聞こえる。

 「本当に誰だ?」

 音を立てないように階段を下りると、居間の方から声が聞こえた。

 「あら! クウちゃんからメールと干し肉届いてるー! 良かったぁ、お母さん嫌われたのかとずっと不安だったのよねー。 早くメール返信しなきゃー♪」

 聞こえてきたのはとても若い女性の声だった。 しかし、独り言の内容を聞く限りクウネルは身に覚えがあるとしたら一人しか居ない。

 「凄く若い子の声なんですけど……もしかして、マザー?」

 廊下を進み、居間に人影が見えた。

 其処には長い黒髪でセーラー服着てる若い女性が、買い物袋をテーブルに置いて何やらスマホを触っている。

 ちなみに、クウネルはそのテーブルに見覚えは無い。 この家に暮らしている時は基本的に二階の自室で食事をし引きこもっていたからだ。

 そんな知らないテーブルの上には山のように干し肉が乗っており、その干し肉には見覚えがあった。

 「あの干し肉、私がお母さんに送ったヤツだ。 あ~、お腹空いた」

 小声で喋っていると、唐突にクウネルの腹の虫が鳴り出す。

 「グギュルルルルルルル~! やっべ、バレるバレる!」

 クウネルのお腹の音がリビングに響き渡った。

 「あー! あの娘、また逃げ出してる! そろそろヤバいとは思ってたけど、直ぐに連れ戻さないと……あ、え? クウ……ちゃん?」
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