真巨人転生~腹ペコ娘は美味しい物が食べたい~

秋刀魚妹子

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第58話 森狼王フォレストウルフキング

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 「ぎゃあぁぁぁぁ! 狼が喋ったぁぁ?! しかも、フォレストクイーンの旦那さんじゃね?! 私が焼き殺したフォレストウルフの王様じゃね!? 滅茶苦茶ピンチじゃん!!」

 クウネルは襲われたらどうしようと身構えるが、胃酸の海の中だ。 今襲われたらひとたまりもないだろう。

 クウネルが胃酸の海でワタワタしてると、フォレストウルフキングが笑い出した。 

 「グルル……はっはっはっ、そう慌てなくても大丈夫。 今の私には、君をどうこうする体力は残ってないからね」

 フォレストウルフキングをよく見ると、無事な足は1本しか無い。  右前足以外は胃酸の海で溶ける魔物と同じ様に爛れていた。 恐らく飛竜の胃に収まってから日にちが経っているのだろう。

 「グル……ふむ? 君は大分知性の有る魔物のようだ。 所で、君から妻や群れの匂いがするのだが……?」

 「ギクッ! 不味い、もうその話題に触れます? もう少し世間話しません? しませんか、そうですか。 背の低い森で……いきなり襲われました」

 クウネルが喋り終わると、フォレストウルフキングはゆっくりと深呼吸をしてからまた喋り出した。

 「クゥーン……そうか……妻は無事だったか。 良かった……。 妻と群れが君を襲ったのは、自然の摂理だ。 君が私の群れを殺したのも……ね?」

 目を細めて見つめられたクウネルは冷や汗をかきながらも、正直に告白する。

 「あっれー? 何でバレたのー?」

 「グルル……はっはっはっ、匂いで色々と分かるのさ。 しかし、君は正直者だね。 言っただろ、自然の摂理だと。 誇り高き森狼は、狩りに命を賭け失敗すれば死ぬ。 我々はそう生きてきた。 君を責めることは無いよ。 ふむ、そろそろ其処から上がってきてはどうだい?」

 クウネルは本当に敵意が無い事を確かめ、安堵のため息を吐いた。 少し警戒心を緩めながら、泳いで近付く。

 「えー? そっちに行っていきなり襲ったりしない?」

 「クフクフ……大丈夫、危害は加えようがないからね」

 そう言って、フォレストウルフキングは痛々しい足をクウネルに見せる。

 「もう、そんな事言われたら上がるしかないじゃん! よっこら……しょーいち!」

 クウネルは溶けかけの魔物の上に這い上がり、身体の異変に気付く。
 
 「って、ぎゃあぁぁぁぁ?!! 服が! 私の服が溶けてる! ダメダメダメダメダメダメ! NG! 全裸はNG何で! 事務所NG何で!! ……あ、私事務所入ってないわ。 オーケー、オーケー! 全部は溶けてないから、セーフだから。 いいね?  わかった?!」

 独り言を盛大に呟くクウネルに、フォレストウルフキングは心配そうなに唸る。

 「クゥーン? いったいどうしたんだい?」

 「何でもないよ! コンチクショウ!! それより、貴方は何で喋れるの? 奥さんは喋って無かったけど」

 「グゥ? ふむ、質問の意図が分からぬが答えよう。 私は2足型に変身する事が出来る。  妻や群れの皆は2足型種達の言語は喋れない、恐らくこれは私だけの特技のような物だ。 君も2足型種の言語を用いているのだから、2足型に変身出来る私が喋るのは何も不思議では無いだろ?」
 
 フォレストウルフキングの説明を聞くが、色々と意味が分からない。

 2足型種という言葉自体が初耳であり、そもそもクウネル自身はこの世界の言葉は日本語やエセ英語が普及している物だと思い込んでいた。 また1つ、この世界の奇妙な謎に気付きクウネルは首を傾げる。

 「グルル? ふむ……何やら聞きたい事が沢山有るようだが、聞いた所で消化される未来しか無いのでは余り意味は無いんじゃないのかい?」

 「いや、まぁそうなんですけどね。 でも私は消化されないし……かと言って飛竜を喰い殺す算段も付かないしな~」

 クウネルが聞こえない大きさの声で独り言を呟いていると、絶望したと勘違いしたのかフォレストウルフキングが笑い始めた。

 「クフクフ、君が何故飛竜に喰われたかは知らないが……飲み込まれたら最後さ。 じわじわと消化されるしか無い、私のようにね」

 生き延びる事を諦めた瞳をしたフォレストウルフキングはクウネルを諭すように話す。

 「いや、だから私は消化されないってば。 何で分からないの? あ、私が小声で呟いてるからか……てへっ」

 クウネルはフォレストウルフキングの前に徐ろに座り、真剣な顔で告げた。

 「私はこの飛竜を喰い殺すから、死なないよ」

 「ガァッ!? クフクフ! やはり、君は面白い。 どうやって、この巨大な飛竜を喰い殺すんだい? 少しづつ、中から喰うと? はっはっはっ!」

 笑い出したフォレストウルフキングにクウネルはキレた。

 「はぁん!? 私に喧嘩売ってんのかコラァ! 私の歯力見せてやんよ!」

 魔物の上を走り、胃壁におもいっきり噛み付いた。

 「ガッブゥゥゥゥ!! ミチ ミチ ミチ ブチッ!」

 フォレストウルフキングは、口をあんぐりと空けて放心している。

 「モチャモチャ、ふむごほ! むこごむ!!」

 フォレストウルフキングに指を差しながら何かを叫ぶが、残念ながら何を言っているのか理解するのは不可能である。

 「グル? ……え? 何て?」
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