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第74話 念願の服と悪夢
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あれからクウネルは獲物を担いだまま、モロと共に隠れ家の洞窟の前へと戻って来ていた。
そして、正座し怒るモロの説教を聞いている。
「モロ何でそんなに怒るのさー」
「アオンッ!? そりゃ、怒るさ! さっきも言ったけど! あの水場は、この辺で唯一の水場なんだよ! 無くなったら、縄張りで暮らせないじゃないか! 」
至極当然なモロの意見に、クウネルは思わず納得し頷く。
「そもそもどうやったら、あの大きな池が消えるのさ。 友は何したの? 遅いなーって思って、心配だから様子を見に行ったら池が消えていてびっくりしたよ! しかも、これまでに水場に向かった私の群れを何匹も殺した魔物を狩ってるし!」
「ん~……秘密」
「クゥン……そうかい。 まぁ、秘密は誰にでもあるよね。 色々言ったけど、群れの仇を討ってくれてありがとう。 私が行くと、いつも池の底に逃げて倒せなかったんだ」
モロはクウネルの言葉に何かを察し、深くは聞かなかった。
「別に良いよ、お腹減ってたからね~。 モロ達も食べるでしょ?」
「ワフッ! 良いのかい?」
説教を聞きながら準備しておいた丸太製のまな板に鰐を載せ、手刀で解体する。
「まずは、ワニ皮を剥ごう。 んー、財布作ったら儲からないかな? まぁ、作る技術も無いしそもそもこの世界でお金見たこと無いな。 ズボンにも出来ないし……捨てるか」
鰐の皮を剥がし、その辺に投げ捨てる。
「さてさて~、内蔵を掻き出してっと。 前爺に教わった、ジビエの捌き方でだいたい何とかなるもんだね。 前世の祖父よ、ありがとう。 もうお墓参りにも行けないけど、許してね」
クウネルの独り言にモロも馴れてきたのか、適当に聞き流しながら鰐肉を涎を垂らして見つめている。
「お待たせ~、コレぐらいで足りるかな?」
クウネルは手刀で鰐肉を切り分け、大きなモモ肉モロの前に積んだ。
「クゥン! クウネルが狩った獲物なのにすまない。 助かるよ、妻と成狼に肉を食べさせたかったんだ」
モロは嬉しそうにモモ肉を口に咥え、洞窟へと運び始める。
「手際よく解体も済んだし、鰐肉焼いて食うか」
馴れた手つきでキャンプファイヤーを準備し、焼き肉を開始する。 夜だからか、モロ達は洞窟の中に入ったまま食事している様だ。 嬉しそうに鰐肉を食べる子狼達の声が聞こえる。
「そして、また私はお外で1人さ! でも、寂しい代わりに山の洞窟と私のナイスで格好いい小屋がキャンプファイヤーの灯りに照らされていて何か凄く良い感じ。 エモいってやつだ」
枝に突き刺した鰐肉から脂が滴り、香ばしい香りが鼻をくすぐる。
「おっ? 焼けたぞ~! いただきます! ガブゥッ! もちゃ もちゃ もちゃ もちゃ……ゴクンッ。 うん、味的には鶏肉に近いかな。 いや、美味しいのよ? ただ、飛竜王のお肉を堪能した後だからな~」
クウネルはブツブツも鰐肉の批評をしながら頬張る。
「もちゃ もちゃ もちゃ。 あー疲れた、長い1日だったな。 ん? この気配はモロかな?」
洞窟から誰かが出て来る気配がし、クウネルは洞窟を見た。 すると、2足歩行で歩くモロが大きな箱を持って出て来る所だった。
その見た目は、人狼という名が相応しいだろう。
骨格も変形し、人間と同じ様に歩いて来た。
「おぉ!? モロが2足歩行してる?! 狼のまま人間になったような見た目じゃん! そうか、これが言ってた2足型に変身できるってやつなのね。 格好いい!」
「クフクフ、そんなに褒められたら照れるよクウネル。 待たせたね、これを身に付けてみてくれ。 私からの礼だ」
モロはクウネルの手のひらに大きな箱を置く。
「ありがとう~! でも、その……ちょっと小さいかも」
クウネルが指先で箱を開けると、中には黒色の革製のチューブトップとショートパンツに銀色の毛皮をあしらったコートが入っていた。 どう見ても女性用の服一式であり、以前に誰かが使っていた物なのか少し古ぼけていた。
「凄くかっこいい~! これって、誰かが着てたの?」
「クゥン、そうさ。 死んだ私の母が着ていた。 母いわく、それは神狼と呼ばれた伝説の狼の毛皮を上級魔法で縫い合わさって作られたらしい。 嘘かどうかは分からないけどね。 でも、着る対象に合わせて大きさが変わるから本当だと思うよ」
「えぇ!? そんな大事なの貰っていいの?」
「ガウッ! 勿論さ! さぁ、手のひらに乗せて装着と叫んでみてくれ」
クウネルはモロの言う通り手のひらに服一式を乗せ叫んだ。
「装着!!」
すると、手のひらから眩い光が放たれ次の瞬間にはクウネルの身体に巨大化した神狼の服が装着されていた。
「ふぉぉーー!? かっこいいーーーー!!」
「クフクフ、うん良く似合ってるよ。 私の母もきっと喜んでる」
「モロ……ありがとう。 大事にするね」
[ガァッ! 喜んでもらえて良かったさ。 さぁ、今日はもう遅い。 色々と聞きたい事も有るだろうが、もう寝るとしよう」
「うん、ありがとう。お休み、モロ」
「クゥン……あぁ、お休みクウネル」
モロは2足歩行のまま、洞窟へと戻って行った。
「えへへ、嬉しいな。 よし、明日も頑張って生き抜くとしますか!」
キャンプファイヤーの火を一息で消し、自分で建てた立派な家に入り横になる。
「あー、疲れたぁ。 鰐肉でお腹も膨れたし、たくさん水も飲んだし、モロに服貰えたし……ふぁ~! ダメだ、眠い……意識が保てない、お休みなさーい」
◆◇◆
――クウネルが意識を飛ばし、時が暫し経った頃。
寝ているクウネルの黒髪が突如真っ赤に染まり、閉じていた両目を見開いた。
髪と同じく黒目だった筈の両目も、深紅に染まっている。
むくりと起き上がり、何かを呟き始めた。
「憎い……憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い。 この世界に生きる全てが、生き物が、お祖父ちゃんを裏切った亜人が、お父さんとお母さんを殺したアイツらが、憎い!! 殺す殺す殺す殺す殺してやるぅっ!!」
そして、正座し怒るモロの説教を聞いている。
「モロ何でそんなに怒るのさー」
「アオンッ!? そりゃ、怒るさ! さっきも言ったけど! あの水場は、この辺で唯一の水場なんだよ! 無くなったら、縄張りで暮らせないじゃないか! 」
至極当然なモロの意見に、クウネルは思わず納得し頷く。
「そもそもどうやったら、あの大きな池が消えるのさ。 友は何したの? 遅いなーって思って、心配だから様子を見に行ったら池が消えていてびっくりしたよ! しかも、これまでに水場に向かった私の群れを何匹も殺した魔物を狩ってるし!」
「ん~……秘密」
「クゥン……そうかい。 まぁ、秘密は誰にでもあるよね。 色々言ったけど、群れの仇を討ってくれてありがとう。 私が行くと、いつも池の底に逃げて倒せなかったんだ」
モロはクウネルの言葉に何かを察し、深くは聞かなかった。
「別に良いよ、お腹減ってたからね~。 モロ達も食べるでしょ?」
「ワフッ! 良いのかい?」
説教を聞きながら準備しておいた丸太製のまな板に鰐を載せ、手刀で解体する。
「まずは、ワニ皮を剥ごう。 んー、財布作ったら儲からないかな? まぁ、作る技術も無いしそもそもこの世界でお金見たこと無いな。 ズボンにも出来ないし……捨てるか」
鰐の皮を剥がし、その辺に投げ捨てる。
「さてさて~、内蔵を掻き出してっと。 前爺に教わった、ジビエの捌き方でだいたい何とかなるもんだね。 前世の祖父よ、ありがとう。 もうお墓参りにも行けないけど、許してね」
クウネルの独り言にモロも馴れてきたのか、適当に聞き流しながら鰐肉を涎を垂らして見つめている。
「お待たせ~、コレぐらいで足りるかな?」
クウネルは手刀で鰐肉を切り分け、大きなモモ肉モロの前に積んだ。
「クゥン! クウネルが狩った獲物なのにすまない。 助かるよ、妻と成狼に肉を食べさせたかったんだ」
モロは嬉しそうにモモ肉を口に咥え、洞窟へと運び始める。
「手際よく解体も済んだし、鰐肉焼いて食うか」
馴れた手つきでキャンプファイヤーを準備し、焼き肉を開始する。 夜だからか、モロ達は洞窟の中に入ったまま食事している様だ。 嬉しそうに鰐肉を食べる子狼達の声が聞こえる。
「そして、また私はお外で1人さ! でも、寂しい代わりに山の洞窟と私のナイスで格好いい小屋がキャンプファイヤーの灯りに照らされていて何か凄く良い感じ。 エモいってやつだ」
枝に突き刺した鰐肉から脂が滴り、香ばしい香りが鼻をくすぐる。
「おっ? 焼けたぞ~! いただきます! ガブゥッ! もちゃ もちゃ もちゃ もちゃ……ゴクンッ。 うん、味的には鶏肉に近いかな。 いや、美味しいのよ? ただ、飛竜王のお肉を堪能した後だからな~」
クウネルはブツブツも鰐肉の批評をしながら頬張る。
「もちゃ もちゃ もちゃ。 あー疲れた、長い1日だったな。 ん? この気配はモロかな?」
洞窟から誰かが出て来る気配がし、クウネルは洞窟を見た。 すると、2足歩行で歩くモロが大きな箱を持って出て来る所だった。
その見た目は、人狼という名が相応しいだろう。
骨格も変形し、人間と同じ様に歩いて来た。
「おぉ!? モロが2足歩行してる?! 狼のまま人間になったような見た目じゃん! そうか、これが言ってた2足型に変身できるってやつなのね。 格好いい!」
「クフクフ、そんなに褒められたら照れるよクウネル。 待たせたね、これを身に付けてみてくれ。 私からの礼だ」
モロはクウネルの手のひらに大きな箱を置く。
「ありがとう~! でも、その……ちょっと小さいかも」
クウネルが指先で箱を開けると、中には黒色の革製のチューブトップとショートパンツに銀色の毛皮をあしらったコートが入っていた。 どう見ても女性用の服一式であり、以前に誰かが使っていた物なのか少し古ぼけていた。
「凄くかっこいい~! これって、誰かが着てたの?」
「クゥン、そうさ。 死んだ私の母が着ていた。 母いわく、それは神狼と呼ばれた伝説の狼の毛皮を上級魔法で縫い合わさって作られたらしい。 嘘かどうかは分からないけどね。 でも、着る対象に合わせて大きさが変わるから本当だと思うよ」
「えぇ!? そんな大事なの貰っていいの?」
「ガウッ! 勿論さ! さぁ、手のひらに乗せて装着と叫んでみてくれ」
クウネルはモロの言う通り手のひらに服一式を乗せ叫んだ。
「装着!!」
すると、手のひらから眩い光が放たれ次の瞬間にはクウネルの身体に巨大化した神狼の服が装着されていた。
「ふぉぉーー!? かっこいいーーーー!!」
「クフクフ、うん良く似合ってるよ。 私の母もきっと喜んでる」
「モロ……ありがとう。 大事にするね」
[ガァッ! 喜んでもらえて良かったさ。 さぁ、今日はもう遅い。 色々と聞きたい事も有るだろうが、もう寝るとしよう」
「うん、ありがとう。お休み、モロ」
「クゥン……あぁ、お休みクウネル」
モロは2足歩行のまま、洞窟へと戻って行った。
「えへへ、嬉しいな。 よし、明日も頑張って生き抜くとしますか!」
キャンプファイヤーの火を一息で消し、自分で建てた立派な家に入り横になる。
「あー、疲れたぁ。 鰐肉でお腹も膨れたし、たくさん水も飲んだし、モロに服貰えたし……ふぁ~! ダメだ、眠い……意識が保てない、お休みなさーい」
◆◇◆
――クウネルが意識を飛ばし、時が暫し経った頃。
寝ているクウネルの黒髪が突如真っ赤に染まり、閉じていた両目を見開いた。
髪と同じく黒目だった筈の両目も、深紅に染まっている。
むくりと起き上がり、何かを呟き始めた。
「憎い……憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い。 この世界に生きる全てが、生き物が、お祖父ちゃんを裏切った亜人が、お父さんとお母さんを殺したアイツらが、憎い!! 殺す殺す殺す殺す殺してやるぅっ!!」
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