真巨人転生~腹ペコ娘は美味しい物が食べたい~

秋刀魚妹子

文字の大きさ
77 / 247

第75話 モロVSクウネル?

しおりを挟む
 ◆モロside◆

 私は、どれだけの幸運に恵まれたのだろうか。

 隠れ家の洞窟の中で、妻と群れの仲間達が穏やかに眠りに付いているのを見て私はそう感じた。

 数日前に、突如私の国である縄張りに襲来した巨大な飛竜に敗北し食われてしまった。

 だが、幸運な事に私だけが生き残ってしまった。

 まぁ、そのお陰で新たな出会いが有ったんだけどね。

 不思議な2足型の魔物クウネルだ。黒髪で黒目の不思議な魔物。

 身体も私と同じ程の大きさだが、私の知っているトロールとは体つきも肌の色も違う。 知能もかなり高く、何よりこの過酷な森の中で生きるには優し過ぎる魔物だった。

 それに、今では巨木と同じ大きさまで突如として成長したのも意味が分からない。

 きっと秘密が沢山あるのだろう。 それでも、消化される未来に絶望し、最愛の妻と再開する事も諦めていた私に当然の様に「奥さんに会いたくないの?」と聞いてくれた。

 その優しさで私はクウネルの友になりたくなったのさ。 

 それに、秘密が有るのはお互い様だしね。

 そして、クウネルは私との約束を守り巨大な飛竜を食い殺し私を連れて脱出してくれたのだ。

 私があの御方に仕える森狼王でなければ、生涯の忠誠を誓うのだがな。

 どうやったのか聞くのが楽しみだが、何故か失っていた四肢は元通りになり、身体にあった無数の傷も全て治っていたのには本当に驚いた。

 もしや、クウネルは凄腕の魔法使いなのだろうか? いや、それは無いか。そんな高度な魔法使いなら攻撃魔法で飛竜を殺すだろう。

 ましてや、いきなり飛竜の胃袋を食い千切り美味しそうに咀嚼していたのだ。 信じられないが、事実としてそのやり方で心臓を喰ったのだろう。

 知能の有る2足型種としては信じられない行為だが、クウネルの持つ優しさだけで信頼に値する。

 妻に聞く限りだと、私が死にかけていた間クウネルは私を助けるべく恐ろしい速度で走ったり飛竜を転がしたりと謎の行動をとっていたそうだ。

 極めつけは、何かを混ぜてネバネバした物を私の口に突っ込んだら治ったと妻が言っていたが……私は何をされたのだ?

 まぁ、無事だからいいが。

 それに、クウネルに名を貰ったのも最高の幸運の1つだろう。

 大昔に死んだ誇り高き王だった父とあの御方の下で戦っていた母ですら、名は持っていなかったのだから。 名を持つのは強者の証、母が確かにそう言っていた。

 ふふ……あの御方に聞いた私の好きな種族名、森狼から取ったと聞いた時は嬉しかったなぁ。

 モロ……モロか。 いい名だ、ゴブリンの友に聞かせてやるのが今から楽しみだな。

 あ~……飛竜の肉が殆どクウネルに喰われたのは不運に入るかな? いや、狩ったクウネルに文句を言うのは筋違いだね。

 それに、子狼達には尻尾をお腹いっぱい食べさせてくれたし、固い飛竜の皮膚を剥いでくれてたのも見ていたよ。

 ……子狼達は怯えていたが。

 同胞の群れを食い消化した内蔵を生で食うのに抵抗があると伝えたら、二つ返事で口から火を吹き焼いてくれたし。

 信じられない優しさを持つ大切な友だ。

 しかし、本当に……クウネルは何者なんだろう?

 いや、何かを殺し強くなるは自然の摂理だが。 クウネルは明らかに自然の摂理から外れている様に感じる。

 巨大な飛竜を殺したとは云え、巨木程も身体は大きくなり凄まじい強者の匂いを感じた。

 まぁ、考えても仕方ない。 クウネルの正体がどうであれ、大切な友なのだ。

 おっと、考え事が過ぎた。 私もそろそろ変身を解いて、寝るとしようか……。

 飛竜が襲来した時、変身する時間が有ればもっと善戦出来たのだがね……ん? 何だ?

 スンスン……クウネル? いや、何だ……この匂いは。

 「クゥン……?」 どうしたの? あなた。

 おっと、妻が起きてしまったか。

 「クルル……フスフス」
 大丈夫、少し様子を見てくる。 何があっても群れと洞窟に居なさい。

 妻を宥めて、洞窟を出た。

 辺りはすっかり真っ暗だ。

 私の目をしても、巨木で星明かりが入らないこの森ではうっすらとしか見えない。

 洞窟の隣に有るクウネルの建てた掘っ立て小屋からバキバキと音がする。

 スンスン……何だこの匂いは。

 「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 クウネル?! いや、何かおかしい。
 匂いが、私の知っているクウネルじゃない。

 これは何だ……怒り? 深い濃い憎しみの匂いだ!

 「あぁぁぁ……憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い! この世界が……生き物が……憎いよー!」

 クウネルは掘っ立て小屋を吹き飛ばし、ゆらりと私の前に立った。

 「お前……何? 誰だ? 敵か? 生きてるなら敵だろ、そうなんだろ? 死ね死ね死ね死ね死ねぇっ! 絶対殺してやるぅー!」

 真っ暗な中でも、クウネルは寸分違わず私を狙って蹴りを放って来た。 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

【完結】悪役に転生したのにメインヒロインにガチ恋されている件

エース皇命
ファンタジー
 前世で大好きだったファンタジー大作『ロード・オブ・ザ・ヒーロー』の悪役、レッド・モルドロスに転生してしまった桐生英介。もっと努力して意義のある人生を送っておけばよかった、という後悔から、学院で他を圧倒する努力を積み重ねる。  しかし、その一生懸命な姿に、メインヒロインであるシャロットは惚れ、卒業式の日に告白してきて……。  悪役というより、むしろ真っ当に生きようと、ファンタジーの世界で生き抜いていく。  ヒロインとの恋、仲間との友情──あれ? 全然悪役じゃないんだけど! 気づけば主人公になっていた、悪役レッドの物語! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...