真巨人転生~腹ペコ娘は美味しい物が食べたい~

秋刀魚妹子

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第102話 捕食者から逃げ惑う魔物達

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 城壁を回り込むと大破した門に大猪達がなだれ込み、街の中へと押し寄せていた。

 かなりの数が既に街に入ったのだろう。 城壁の上から街に向かってゴブリンの射手達が懸命に弓矢を射っているのが上から見えた。

 石造りの街並みの間に有る、門から繋がる大通りにゴブリン達と一緒に戦闘しているモロの姿も確認出来る。 大猪の上に飛び上がり、鋭利な爪で無双していた。

 そして、破られた門の近くには大猪達の渋滞が出来ており足下には多くのスライム達がぷるぷるしている。

 クウネルにとっては無害な美味しいジュースだが、それ以外の生き物にとってはあの酸はかなりやっかいだろう。

 大猪よりも、スライム達が街に侵入した方が危険かもしれない。

 「やばたにえんじゃん! とりあえず、壊された門を塞がなきゃ!」

 門に殺到している大猪達をドロップキックで吹き飛ばし、スライム達を手でなぎ払う。

 「ふんっ! 邪魔邪魔ー! 土魔法! 固まれー!」

 素手で土を盛り上げ、土魔法で門を塞ぎ固くした。 しかし、これぐらいでは直ぐに突破されるだろう。

 「早く大猪達を追い払わなきゃ。 モロー! 門は塞いだからねー! 外の魔物達は私が追い払うから、そっちは頼んだよー!」

 城壁の外から街に向かって叫ぶと、直ぐにモロからの返事が届いた。

 「アオーーーンッ! 任せくれ!」

 クウネルが街に入り大猪と乱闘を開始すれば、一瞬でゴブリンの王国は滅亡するだろう。 

 モロの遠吠えを聞き届けたクウネルは、街の外にいる数千の大群に集中する。

 「よし、頼んだよモロ! さーて、覚悟しろスライム君達と大猪共! おっと、大猪だけ鑑定しとくか。 ほい、鑑定!」

 ステータス画面

 種族 ジャイアント ボア

 年齢 23

 レベル 100

 HP 1920/2200

 FP 320/600

 攻撃力 3000

 防御力 1500

 知力 10

 速力 1300

 スキル 魔物殺し. 魔物喰い. 逃亡者

 魔法 無し

 戦技 突進Lv9

 状態異常 精神異常 混乱 恐怖

 「ほーん、結構強いのね。 でも、ステータスが少し高いけど代わりにスキルも戦技も無いに等しいじゃん。 しかも、知力が10!? 馬鹿やん! 巨人よりも脳筋やん! って、痛ぁ!」

 大猪のステータスを確認していると、突進して来た大猪がクウネルの脛に直撃する。

 「ダメージは全然入ってないけど、脛は痛いでしょうがぁぁぁぁぁ!」

 大猪を鷲掴みにして、遠くの山にぶん投げる。

 「ブヒィィィィィッ?!」

 幼い頃に見た大猪はとても大きく見えたが、今のクウネルには手のひらで鷲掴みに出来るサイズだ。

 あり得ない光景に、他の大猪達は動きを止めて呆然と空を見上げている。 同胞が軽々と投げ飛ばされたのが衝撃だったのだろう。

 その隙にスライム達がクウネルに酸を一斉に吐くが、残念ながらクウネルには効かない。

 「ごくごくごく、ぷはぁー! うまい!  赤色のスライムはライムなサイダー味だ!」

 口を開き、クウネルは酸を喉を鳴らして全て飲み干す。 それにも大猪達はドン引きである。

 「ん~、黄色のスライムはデ○ビタやね。 どれも美味しいけど、今はこれ以上時間は掛けられない……残念」

 酸が効かない事に気付いたスライム達がプルプルと慌て出すが、時すでに遅しである。

 「ふははははっ! 今更気付いても遅いよーん! ドリンクバーご馳走さまでした! じゃあ、行きまーす!」

 クウネルは足下に集まっていた色とりどりのスライム達を鷲掴み、口に放り込んで咀嚼した。

 「ピギュー!?」 「「「「ピギュー!」」」」

 「ぷはー! さぁ、次は誰からかなぁ?」

 「「「「「プ……プギュー!」」」」」

 クウネルが悪い顔でニッコリ笑うと、まだ大勢いたスライム達はプヨプヨと逃げ始めた。

 「おし、スライム君達はこれで良いね。 後は大猪達か……うーん、美味しいのかな?」

  «――告。 検索中でス――解。 ジャイアントボアの肉ハ、焼くカ煮込まナいと不味クて食用にハ向きませン»

 「ありがとう鑑定さん。 なら、今は料理してる暇無いから……引き千切るか」

 クウネルは噛み殺すのを断念し、再起動し突進をして来た大猪を鷲掴みにして見せつけるように引き千切った。

 「ブヒィィィ?! ブヒィィィィィィィ………ブギッ!?」

 「さぁ……次は誰がこうなりたいのかなぁ? けーけっけっけっけっけ!」

 わざとらしく恐怖を与えるように引き千切った大猪を目の前に投げ、次の獲物を探すように踏み出した。

 「「「「「「「「「「「「ブヒィィィィィィィ!」」」」」」」」」」」」

 それだけで、数千は居た大猪達はパニックを起こし一目散に逃げ出した。 操られていた精神異常を生存本能が上回って逃亡する事を選んだのだろう。

 「 にしし、成功成功。 でも、我ながらさっきの笑い方は無いね」

 反省していると街の中から勝鬨が聞こえた。 どうやら、モロ達も侵入した大猪達を駆除できたようだ。

 「ふー、何とかなったべ。 結果オーライ結果オーライ! あれ? でも、何か忘れてるような……」

 「アオーーンッ! クウネル、すまないが怪我人の治療を頼むー!」

 「おっと、モロが呼んでる。 ごめーん、袋回収したら直ぐに行くから案内してーー!」

 クウネルは袋を回収しに、最初の門へと走るのであった。
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