真巨人転生~腹ペコ娘は美味しい物が食べたい~

秋刀魚妹子

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第131話 初めての眷属は忠義者

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 「オホンッ! ゴブリン弓兵長、君の忠義を受け取るよ。 私に仕えることを許します!」

 クウネルの言葉に弓兵長は歓喜し、その場で跪いた。

 「ギガッ! 本当でございますか!? あ、ありがとうございます! 生涯をかけて尽くします!」

 「おっと、待って待って。 ただし! 条件が有ります」

 「ギガガ、なんなりと!」

 クウネルは弓兵長を覗き込みながら、真剣な顔で想いを伝える。

 「私はちょっと前に家族を、大切な人達を全て失ったから……友達や知り合った人達が死ぬが凄く怖い。 だから……お願い。 私に仕えるなら、身内になるなら……私より先に死なないで」

 クウネルにとって、これだけは絶対に譲れない事であった。

 赤髪のクウネルならば、その様な事を気にすることなく全てを憎むのかもしれない。 だが、友を得た黒髪のクウネルは友や知り合った者達の幸せを願わずにはいられないのだ。

 弓兵長は立ち上がり、泣きそうな顔で覗き込む主に応える。

 「ギ! お約束致します。 絶対に死にません! 主であるクウネル様に命の危機有らば、死なず必ずお守り致します!」

 弓兵長の言葉に嬉しくなったクウネルは微笑んだ。

 「うん、うん! よし、じゃあ今から君は私の身内だ!」

 «――クウネルより、眷属の承認を検知。 対象にシステム適用を開始――完了。 おめでとうございます、クウネル»

 直後、脳内に鑑定の声が響いた。

 「……鑑定さん?」

 «――選択。 新たに眷属となるゴブリンの名前を決めて下さい。 また、変異する際に眷属主であるクウネルのステータスを分け与える事が可能です。 分け与えますか? 分け与えると選択した場合、幾ら分け与えるかは選べません»

 「え? えぇ!? いきなり言われても……。 それに、ステータスを分け与えると魔法とか諸々も減るの?」

 «――否定。 いえ、分け与えるのは各ステータスの数値のみです。 スキル、魔法、戦技、加護はクウネルのものです»

 一瞬悩んだが、クウネルは直ぐに決断した。

 「あー、うん……それなら分け与えたげて。 生き残る確率が上がるなら、全然良いよ。 それと、名前かー……ごめん。 もう少し考えさせて」

 «――了解。 これより、変異が始まります»

 鑑定の声が止んだ後、弓兵長の身体からボキボキと軋む音が響き渡った。

 「ギ!? あ、あが! 身体が、身体が熱い! 力が、この力はクウネル様の!? あがががががが! ぐぉぉぉっ!」

 弓兵長の身体がへしゃげたり膨張したりと、かなりヤバイ光景にクウネルはパニックだ。

 「ぎゃあぁぁぁぁ! ちょっと鑑定さん!? これ、大丈夫? さっき死ぬなって言ったばっかりなんですけど!? これが変異なの!?」

 「ギギャァァァァァァッ! ボキッボキボキボキ! ベコンッ! ゴキッ!」

 暫くすると、弓兵長の身体から蒸気が吹き出しクウネルの視界を塞いだ。

 「はぁ……はぁ……これは何が起きたのですか? クウネル様」

 次に視界が晴れた先には、小さなゴブリンは居なかった。

 身長は2mを越え、全身の筋肉が脈打ち、黒髪がツルツルだった頭部からフサフサと生えている。

 けっしてイケメンでは無いゴブリンの顔立ちが、普通の男性の顔に変わり、緑色の肌と尖った耳が無ければ人間の大男だと言われても違和感が無い程だ。

 「おー! すげー!! 格好いいよ、キュウベイ」

 「へ? へぇ、格好いいですか? あれ? 何か視界が高いです。 ……ん? クウネル様、さっき私の事をなんと?」

 キュウベイは変異した違和感に戸惑っていたが、クウネルが自身を呼んだ名前に気付き顔を上げた。

 「私の眷属になったんだから、私が名前決めないといけないんだってさ。 だから頑張って急いで考えた。 弓を得意とし、優秀な兵でもある。 だから、君の名前は弓兵《キュウベイ》だ! どう? ダメ? ダメだったら変えるけど」

 キュウベイは突然身体を震わし、その場で泣き始めた。

 「って、なんで!? そんなに気に入らなかった?」

 「いえ、いえ! 違うんです。 ずっと、ずっと名前が欲しかったんです。 それを……生涯仕えたい御方からこんなに早く頂けるなんて! 嬉しくて、嬉しくて! 本当にありがとうございやす。 キュウベイ、この名前を生涯大切に致しやす!」

 余りの喜びっぷりに、クウネルは微笑みながらも天を仰ぐ。 そして、キュウベイに聞こえない声量で呟く。

 「うわぁぁぁぁ、実は結構単純に考えただけなのにめっちゃ喜んでる! ダメだ、やっぱり変えようなんて言える雰囲気じゃない! 待てよ? キュウベイって良い名前じゃね? うん、本人も気に入ってるんだし……結果オーライ!」

 自分には名付けのセンスがあるのだと再認識したクウネルは、気を取り直した。

 «――苦笑。 クウネルのセンスは分かりませんが、キュウベイのステータスを鑑定する事を推奨»

 「あ、そうだね。 キュウベイ、諸々の話はまた今度するから。 ほい、鑑定!」

 ステータス画面

 «魔物から亜人への変異を確認。ステータス画面表示を変更»

 名前 弓兵《キュウベイ》(変異)

 年齢 20

 職業 暴食の弓兵(変異)

 種族 暴食の眷属(変異)

 レベル 1210(上限突破)

 HP 403000/403000

 FP 25600/25600

 攻撃力 303300

 防御力 91500

 知力 37000

 速力 281200

 スキル 遠視Lv3. 魔物殺し. 統率Lv6. 連携LvMax. 暴食の眷属(new). 種族を越えし者(new). 亜神に近づきし者(new)

 魔法 無し

 戦技 狙撃Lv8. 速射LvMax. 暴食の矢(new)

 状態異常 狂信者(new)

 「うおっ! すげぇ! 滅茶苦茶強いやんキュウベイ! さすが、私の眷属だね! もう絶対死なんやん。 あれ? キュウベイ……ゴブリン辞めた?」
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