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第132話 新たな家族
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「成る程、つまり私はもうゴブリンでは無いのですね」
キュウベイはクウネルに伝えられた鑑定結果を聞き、疑うことも無くすんなりと信じた。
「理解はっや! そして、純粋な瞳! え? この子大丈夫? 地球だったら絶対詐欺にあうよ?」
クウネルの心配を他所に、そんな事が見えるなんて流石クウネル様! と、キラキラした瞳で見上げてくるキュウベイにクウネルは苦笑いだ。
「う、うん。 キュウベイは、私の話を嘘だとは思わないの? 普通、信じないでしょ」
「いえ、滅相もないです。 クウネル様が仰ることを疑う事等ございません。 それに、お……私自身、生まれ変わった様に感じています。 身体に漲る力も、経験した事が無い程に強いですから」
キュウベイは力強く筋肉を盛り上がらせる。 変異前は小柄で、細身の身体であったが今はムキムキだ。
「そっか……あはは、ありがと。 後、私をクウネル様って呼ぶのは禁止ね。 それに、話し方も普通にする事。 私に対して無理してるでしょ? さっき、俺って言いかけてたし。 キュウベイはもう私の身内なんだから楽にいこう」
「しかし……! いえ……分かりました。 お気遣い感謝しやす。 喋りやすい口調で喋らせていただきます。 じゃあ、様付けが嫌なら何てお呼びしやしょう?」
キュウベイは普段通りの喋り方に戻し、クウネルは満足そうに頷いた。
「うわぁー、なんか任侠の漢って感じやーん! キュウベイって名前にして良かった。 似合ってる似合ってる! ん~、じゃあ……姉御なんてどう? かっこよくない?」
「姉御ですか……。 では、今後はクウネルの姉御と呼ばせていただきやす!」
跪き敬意を払うキュウベイに、クウネルは焼けた肉を木に刺して差し出す。
「うん、よろしくねー。 あ、お肉焼けたよ~! 食べよ食べよー! 上手に焼けましたー! こんがり肉だぁー! ひゃっはぁーー!」
しかし、キュウベイは差し出された巨大な肉の塊を受け取ろうとしなかった。 ゴブリンの常識では、上の者の後に食事をするのが当たり前なのだ。
「俺は姉御の後でいただきやす」
「ダーメ、そういうのはいいって言ったでしょ? 私の所に来たなら、私のルールに従ってもらうよ? ほら、食った食った!」
巨大な塊の肉をキュウベイの目の前に葉っぱを置き、その上に山盛りの肉を積み上げた。
「わっ!? ととっ、すいやせん。 じゃあ遠慮無くいただきやす! ガブッ! う、うんまーい!!」
そして、自身と同じ大きさの肉に齧り付いたキュウベイは初めて食べる竜の肉に感動し、夢中になって肉を噛み千切る。
「いひひ、でしょ? でっしょー? 私の焼き加減の絶妙さのお陰だからね! ……多分。 ほんじゃ、私もいただきまーす! ガブゥ! ミチミチミチ ブチッ! うまうま、ぁむあむ。 おいしぃーっ!」
クウネルは焼けた肉を頬張りながら、夢中で食べるキュウベイを見る。
「しっかし、本当に大きくなったねキュウベイ。 いや、まだ私と比べたら全然小さいけど普通のゴブリンからしたらキュウベイも巨人に見えるんじゃね?」
普通のゴブリンが120cm前後ぐらいだと想定すると、今のキュウベイは破格の大きさである。 ゴブリンキングと将軍ギドよりも背が高く、筋肉の鎧に包まれていた。
「んぐ、ゴクンッ! ぷはぁー! そういえばクウネルの姉御。 今日の予定は決まってるんですか?」
「今日の予定? んー、早く街の復興に取り掛からないとな~。 まずは、王様とギドさんに会いに行ってどうするか聞かなきゃ。 いや、その前に……ゴブリンの鍛冶士の所に行ってキュウベイの装備を作ってもらう。 服も何とかしなきゃね、特にパンツ」
苦笑いで答えるクウネルの様子に、キュウベイは首を傾げた。
「俺の装備ですか? 確かに、この身体になる前の装備は全部壊れちまいやしたが……ん? パンツ?」
キュウベイが自分の身体を改めてまじまじと見つめて固まった。
「うんうん、私も経験したから分かるよ」
キュウベイが着ていた以前の装備や服は、身体が巨大化した時に壊れ弾けた。 そう、今のキュウベイは当然ながら……全裸である。
キュウベイの顔色が、緑色から真っ赤に変わった。
「ぎ、ぎゃぁぁぁぁぁ! 申し訳ありませんクウネルの姉御! こんな見苦しい物を! な、なんで気付かなかったんだぁぁぁぁ!」
キュウベイは羞恥心からか、今更ながら前を隠そうと食べていた肉で隠した。
「こらこら、肉で隠さないの。 食べ物で遊んではいけませんって教わらなかったのかね。 やれやれ、別に気にしなくてもいいよ? キュウベイはもう身内だって決めたんだから、気にしない。 それに弟分のチ――姉御それ以上は勘弁を!」
とんでもない単語を言いそうになったクウネルをキュウベイは必死に制止した。 キュウベイは今にも泣きそうな顔をしている。
「やれやれ、私も今の大きさになる時に同じ経験したから分かるって話しだよ。 ん~、でも街は全壊だからゴブリンに服をお願いしても無理かな? なら、モロに聞いてみるか」
クウネルは着ている服を撫でながらある事を思い出した。
「あれ? ……そういえば地竜達との戦闘中に穴空いてたよね? 全部塞がってる……まさか、モロが言ってた神狼の毛皮を使ってる云々って本当なんじゃ……」
クウネルが思考に耽っていると、キュウベイが前を隠しながら立ち上がる。
「了解です! ちょっと、モロ殿を探しに行ってきやすね!」
「こらこら! キュウベイは見た目が大きく変わったし、全裸で瓦礫の街をモロを探して徘徊するの? 下手したら即捕まるよ? うん、私ならすぐに逮捕するね」
「し、しかし……このままでは、クウネルの姉御にご迷惑を……」
キュウベイの変な気遣いにクウネルは苦笑いだ。
「いやいや、どう考えても身内が逮捕される方が迷惑掛かるでしょ。 ちょっと私が行ってくるから待ってて」
「ありがとうございやす! では、火の番を……」
「ダメ、火の番はもういいから。 ゆっくりお肉食べててよ。 この姉御に任せなさい!」
クウネルは立ち上がり、瓦礫の街へと向かう。 後ろではキュウベイが何時までもクウネルに向かって手を振っており、その様子にクウネルは笑顔で振り返した。
「あはは、直ぐに会えるのに大げさだね」
«――敬愛。 それだけ、キュウベイはクウネルを慕っているのでしょう»
「何にもしてないのにね~。 まぁ、でも悪い気はしないかな」
友とは違う、新たな家族が増えた気がするクウネルは嬉しそうに笑うのであった。
キュウベイはクウネルに伝えられた鑑定結果を聞き、疑うことも無くすんなりと信じた。
「理解はっや! そして、純粋な瞳! え? この子大丈夫? 地球だったら絶対詐欺にあうよ?」
クウネルの心配を他所に、そんな事が見えるなんて流石クウネル様! と、キラキラした瞳で見上げてくるキュウベイにクウネルは苦笑いだ。
「う、うん。 キュウベイは、私の話を嘘だとは思わないの? 普通、信じないでしょ」
「いえ、滅相もないです。 クウネル様が仰ることを疑う事等ございません。 それに、お……私自身、生まれ変わった様に感じています。 身体に漲る力も、経験した事が無い程に強いですから」
キュウベイは力強く筋肉を盛り上がらせる。 変異前は小柄で、細身の身体であったが今はムキムキだ。
「そっか……あはは、ありがと。 後、私をクウネル様って呼ぶのは禁止ね。 それに、話し方も普通にする事。 私に対して無理してるでしょ? さっき、俺って言いかけてたし。 キュウベイはもう私の身内なんだから楽にいこう」
「しかし……! いえ……分かりました。 お気遣い感謝しやす。 喋りやすい口調で喋らせていただきます。 じゃあ、様付けが嫌なら何てお呼びしやしょう?」
キュウベイは普段通りの喋り方に戻し、クウネルは満足そうに頷いた。
「うわぁー、なんか任侠の漢って感じやーん! キュウベイって名前にして良かった。 似合ってる似合ってる! ん~、じゃあ……姉御なんてどう? かっこよくない?」
「姉御ですか……。 では、今後はクウネルの姉御と呼ばせていただきやす!」
跪き敬意を払うキュウベイに、クウネルは焼けた肉を木に刺して差し出す。
「うん、よろしくねー。 あ、お肉焼けたよ~! 食べよ食べよー! 上手に焼けましたー! こんがり肉だぁー! ひゃっはぁーー!」
しかし、キュウベイは差し出された巨大な肉の塊を受け取ろうとしなかった。 ゴブリンの常識では、上の者の後に食事をするのが当たり前なのだ。
「俺は姉御の後でいただきやす」
「ダーメ、そういうのはいいって言ったでしょ? 私の所に来たなら、私のルールに従ってもらうよ? ほら、食った食った!」
巨大な塊の肉をキュウベイの目の前に葉っぱを置き、その上に山盛りの肉を積み上げた。
「わっ!? ととっ、すいやせん。 じゃあ遠慮無くいただきやす! ガブッ! う、うんまーい!!」
そして、自身と同じ大きさの肉に齧り付いたキュウベイは初めて食べる竜の肉に感動し、夢中になって肉を噛み千切る。
「いひひ、でしょ? でっしょー? 私の焼き加減の絶妙さのお陰だからね! ……多分。 ほんじゃ、私もいただきまーす! ガブゥ! ミチミチミチ ブチッ! うまうま、ぁむあむ。 おいしぃーっ!」
クウネルは焼けた肉を頬張りながら、夢中で食べるキュウベイを見る。
「しっかし、本当に大きくなったねキュウベイ。 いや、まだ私と比べたら全然小さいけど普通のゴブリンからしたらキュウベイも巨人に見えるんじゃね?」
普通のゴブリンが120cm前後ぐらいだと想定すると、今のキュウベイは破格の大きさである。 ゴブリンキングと将軍ギドよりも背が高く、筋肉の鎧に包まれていた。
「んぐ、ゴクンッ! ぷはぁー! そういえばクウネルの姉御。 今日の予定は決まってるんですか?」
「今日の予定? んー、早く街の復興に取り掛からないとな~。 まずは、王様とギドさんに会いに行ってどうするか聞かなきゃ。 いや、その前に……ゴブリンの鍛冶士の所に行ってキュウベイの装備を作ってもらう。 服も何とかしなきゃね、特にパンツ」
苦笑いで答えるクウネルの様子に、キュウベイは首を傾げた。
「俺の装備ですか? 確かに、この身体になる前の装備は全部壊れちまいやしたが……ん? パンツ?」
キュウベイが自分の身体を改めてまじまじと見つめて固まった。
「うんうん、私も経験したから分かるよ」
キュウベイが着ていた以前の装備や服は、身体が巨大化した時に壊れ弾けた。 そう、今のキュウベイは当然ながら……全裸である。
キュウベイの顔色が、緑色から真っ赤に変わった。
「ぎ、ぎゃぁぁぁぁぁ! 申し訳ありませんクウネルの姉御! こんな見苦しい物を! な、なんで気付かなかったんだぁぁぁぁ!」
キュウベイは羞恥心からか、今更ながら前を隠そうと食べていた肉で隠した。
「こらこら、肉で隠さないの。 食べ物で遊んではいけませんって教わらなかったのかね。 やれやれ、別に気にしなくてもいいよ? キュウベイはもう身内だって決めたんだから、気にしない。 それに弟分のチ――姉御それ以上は勘弁を!」
とんでもない単語を言いそうになったクウネルをキュウベイは必死に制止した。 キュウベイは今にも泣きそうな顔をしている。
「やれやれ、私も今の大きさになる時に同じ経験したから分かるって話しだよ。 ん~、でも街は全壊だからゴブリンに服をお願いしても無理かな? なら、モロに聞いてみるか」
クウネルは着ている服を撫でながらある事を思い出した。
「あれ? ……そういえば地竜達との戦闘中に穴空いてたよね? 全部塞がってる……まさか、モロが言ってた神狼の毛皮を使ってる云々って本当なんじゃ……」
クウネルが思考に耽っていると、キュウベイが前を隠しながら立ち上がる。
「了解です! ちょっと、モロ殿を探しに行ってきやすね!」
「こらこら! キュウベイは見た目が大きく変わったし、全裸で瓦礫の街をモロを探して徘徊するの? 下手したら即捕まるよ? うん、私ならすぐに逮捕するね」
「し、しかし……このままでは、クウネルの姉御にご迷惑を……」
キュウベイの変な気遣いにクウネルは苦笑いだ。
「いやいや、どう考えても身内が逮捕される方が迷惑掛かるでしょ。 ちょっと私が行ってくるから待ってて」
「ありがとうございやす! では、火の番を……」
「ダメ、火の番はもういいから。 ゆっくりお肉食べててよ。 この姉御に任せなさい!」
クウネルは立ち上がり、瓦礫の街へと向かう。 後ろではキュウベイが何時までもクウネルに向かって手を振っており、その様子にクウネルは笑顔で振り返した。
「あはは、直ぐに会えるのに大げさだね」
«――敬愛。 それだけ、キュウベイはクウネルを慕っているのでしょう»
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