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第159話 赤髪の馬鹿たれ
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「お母さん、キュウベイがヤバい! 早く助けに戻らなきゃ!! 早く!」
テレビには苦しむキュウベイが映っており、黒い何かが腕を覆う様に広がり始めた。
「えぇ?! まだ向こうには戻れないわよ? 今戻ったらクウちゃん死んじゃうし……ちょっと待って、お母さんがなんとかしてみるから」
暴食の邪神はリモコンを手に取りテレビに向ける。
「本当に?! お願い、お母さんキュウベイを助けて! 大切な身内何だよ!!」
暴食の邪神がリモコンで操作すると、テレビの場面が巻き戻り始めた。
巻き戻すと、赤髪のクウネルがゾンビ狼に噛まれている場面が現れる。
「あー……かなり不味いわね。 あの娘も死体化の呪い受けてる……。 えっと~、確かあの世界に元々アンデッドは居ないけど呪いはあるのよね。 なら、呪いに効く薬にそんなに違いはない筈……うん、よし! クウちゃん、待っててね」
暴食の邪神がスマホを取り出し、なにやら打ち始めた。
待っていると、テレビの画面は元に戻り赤髪の声が聴こえる。
『キュウベイ……。 思い出した……あの優しい瞳。 死に別れる前の……お祖父ちゃんや、お父さんお母さんと同じ優しい瞳。 守りたい物の為なら、死んでもいいって本当に思ってる瞳だ』
泣きそうな赤髪のクウネルの声に、クウネルはテレビに張り付いて怒る。
「キュウベイの馬鹿たれ、赤髪の私は危険だって言っておいたのにそれでも関係無く守ろうとしたのか。 ぬぉぉぉぉ! 赤髪の私、根性見せて! 今キュウベイを死なせたら、あの時と同じだよ!」
自分の声が届くことは無いと悟りながらも、クウネルはテレビの画面に叫ぶ。
『やだ、やだよ! 私を大切に思ってくれる人を失うのはもう嫌だ! 嫌だ!!』
「諦めるな! 考えて、考えて足掻いて!!」
『どうしたらいい? 何が出来る?』
「そうだよ! 諦めずに考えて!!」
クウネルがハラハラしながら見ていると、キュウベイの側に居た癒しの族長が立ち上がった。
『ギガ……分かったわ、呪いよ。それもかなり強い呪い。効果が有るのは……聖木の葉だけど希少だから手持ちには無いの。急いで探さないと、青い葉を探して!』
「お!! 癒しの族長さんナイス! お母さんは……まだ難しい顔でスマホ触ってるのか。 スマホを離したり近付けたりしてる……。 え? お母さん老眼?」
『聖木の葉? 聞いた事ない! 偽者の中で見てた時もそんな名前の葉は聞いた事ない』
「うん、私もそんな葉は知らないよ! HELP! 鑑定さん、どこ行ったのー!」
ゴブリン兵士達が辺りを探し始めているが、そんなに簡単に見つかるのか疑問だ。
「あぁ! キュウベイの侵食が酷いよ! 赤髪の私と侵食の速度が全然違う。 このままじゃ、赤髪の私より先にキュウベイが死んじゃうよ。 お母さん早く!」
「待ってねー! お母さん、クウネルちゃん以外にメール打つの苦手なのよ~」
「い! そ! い! でぇぇぇ?!」
クウネルが暴食の邪神にキレていると、テレビから赤髪の悲痛な声が聞こえる。
『鑑定、鑑定! ごめんなさい、ごめんなさい、助けて、どうしたらいい? どうしたらキュウベイを助けれる?!』
「え!? 鑑定さん、そっちに居るの?! じゃあ、もっと早く頼れよ赤髪の私ー!」
『――ステータスを確認し、該当する状態異常を鑑定して下さい。 そうすれば、データが更新され対策が打てます。 早く!』
「おぉ! さすが鑑定さん! さすかんだね! ……え?」
赤髪のクウネルがステータスを確認している場面をテレビ越しに見たクウネルは驚愕した。
「赤髪の私、職業がバグってる! 種族は……女巨神? なんでだ? 私と赤髪は別人なのか? 暴食関係のスキルも軒並み無いし、鑑定さんからLvが消えてる。 加護もバグってる女神の恩恵に変わってるし、ステータスも私の半分ぐらいか?」
クウネルは記憶を辿り、自身と違い過ぎる赤髪のステータスに首を傾げる。
「訳が分からない。 確か、鑑定さんは私と赤髪は同一人物だって言ってたのにな。 いや、今はそんな事はいい! 早く! 死体化の呪いを鑑定して赤髪の私!」
『鑑定!』
「よっしゃー!」
「クウネルちゃん、送れたわよー!」
「お母さんナイスタイミング!!」
『死体化の呪い 生きとし生ける者全てを恨み憎む呪い この呪いを受けし――ガガガガピーーーーーーーーーー!!
突然けたたましい異音がスピーカーから流れ、クウネルは思わず耳を塞いだ。
「鑑定さん!? お母さん、これ大丈夫なの?!」
«――鑑定のLvが不足している為表示出来ませんでした。 緊急措置を発動 データの更新を確認……これは!? この死体化の呪いもアンデッド同様、この世界には該当例無し 何故この世界に……いえ、後です。 データを分析――照合……判明»
『うぐぐぐ、早く! 早く!! キュウベイが、キュウベイが死んじゃう!』
赤髪のクウネルもかなりの激痛なのだろう。 苦痛にのたうち回る声が痛々しい。
「でもキュウベイが死にそうなのは赤髪の私のせいだからね!? なんで初めから鑑定さん頼らなかったのよ、この馬鹿赤髪ー!」
«確かに聖木の葉が効果有り、しかし既存の呪いに効果は有るものの、この呪いに効果が有るかは不明――ガガガガ――新たなるデータを暴食の邪神より受信――確認。 マンドラゴラと調合する事で確実に治せる? 検証――確認、聖木の葉とマンドラゴラを調合した薬を服用して下さい»
鑑定の的確な分析により、解決策が提示されクウネルは飛び跳ねて喜んだ。
「鑑定さん、さすがー!」
『暴食の邪神!? いや、今はどうでもいい! その聖木の葉は何処に生えてるの!?』
«――生息地域を検索。 発見――クウネルが落ちてきた背の低い森に生息してます。 背の低いゴブリン達でも採取は容易でしょう。 向かって右を真っ直ぐです。 知識の有る族長を向かわせて下さい»
クウネルは聞き覚えのある森を思い出し手を叩く。
「ほえ? あぁ~、私が落ちたあの背の低い森か! スライムだらけの変な森だったけど、そんな木が生えてたんだね~」
『声が出ない……でも、伝えなきゃ! キュウベイがキュウベイ死んじゃう』
赤髪のクウネルが拳を握り締め、何とか声を絞り出す。
「そうだ! 赤髪の私! 気合いだぁぁぁぁ!」
「ちょっ、クウちゃん! そのテレビ高かったから、まだ分割払いしてるからー!」
暴食の邪神が懇願している事に白熱しているクウネルは気付く事はなく、掴み掛かったままのテレビがミシミシと悲鳴を上げる。
――っていう所に生えてるから、早く! 急いで! がほっ!』
『ギガ、分かりました! 私より知識有る女神様を信じましょう。 皆、急いで!』
兵士達が癒しの族長を担いで駆けて行く。
「大丈夫かな……確か、下級兵って一番弱いんだよね。 魔物に遭遇したら終わりじゃね? が、頑張れー! ゴブリン兵士達ーー!!」
その間にもキュウベイの侵食は進み、既に首から下は真っ黒に変色していた。 今も痛みに苦しんでいる。
それも、キュウベイは死ぬ程の痛みの最中。 赤髪のクウネルに心配を掛けまいと呻き声も上げずに耐えていた。
そんな姿を見ながら赤髪のクウネルは歯を食いしばる。
『私が、私が早く鑑定に頼ってたら、初めから鑑定してたらこんな事にならなかったのに。 私のせいだ! 私のせいだ!』
「そうだよ! 本当にそうだよ!? 反省しよ?」
『私はもう死んでもいい、私を大切にしてくれる人が死ぬぐらいなら助からなくてもいい! アスカガルドになんて行けなくてもいい! 巨神様、助けて! お願い、お婆ちゃん達、間に合って!!』
怒りや憎しみの存在だと思っていた赤髪の祈りに、クウネルは画面越しに呟いた。
「赤髪の私……いや、死んだら私も死ぬんですけど?」
クウネルは再度テレビに掴みかかり叫ぶ。
「諦めるなぁぁぁぁ!! お願いぃぃぃ! 癒しの族長達、間に合ってぇぇぇぇぇ!」
「クウちゃぁぁぁぁぁぁぁん?!」
テレビには苦しむキュウベイが映っており、黒い何かが腕を覆う様に広がり始めた。
「えぇ?! まだ向こうには戻れないわよ? 今戻ったらクウちゃん死んじゃうし……ちょっと待って、お母さんがなんとかしてみるから」
暴食の邪神はリモコンを手に取りテレビに向ける。
「本当に?! お願い、お母さんキュウベイを助けて! 大切な身内何だよ!!」
暴食の邪神がリモコンで操作すると、テレビの場面が巻き戻り始めた。
巻き戻すと、赤髪のクウネルがゾンビ狼に噛まれている場面が現れる。
「あー……かなり不味いわね。 あの娘も死体化の呪い受けてる……。 えっと~、確かあの世界に元々アンデッドは居ないけど呪いはあるのよね。 なら、呪いに効く薬にそんなに違いはない筈……うん、よし! クウちゃん、待っててね」
暴食の邪神がスマホを取り出し、なにやら打ち始めた。
待っていると、テレビの画面は元に戻り赤髪の声が聴こえる。
『キュウベイ……。 思い出した……あの優しい瞳。 死に別れる前の……お祖父ちゃんや、お父さんお母さんと同じ優しい瞳。 守りたい物の為なら、死んでもいいって本当に思ってる瞳だ』
泣きそうな赤髪のクウネルの声に、クウネルはテレビに張り付いて怒る。
「キュウベイの馬鹿たれ、赤髪の私は危険だって言っておいたのにそれでも関係無く守ろうとしたのか。 ぬぉぉぉぉ! 赤髪の私、根性見せて! 今キュウベイを死なせたら、あの時と同じだよ!」
自分の声が届くことは無いと悟りながらも、クウネルはテレビの画面に叫ぶ。
『やだ、やだよ! 私を大切に思ってくれる人を失うのはもう嫌だ! 嫌だ!!』
「諦めるな! 考えて、考えて足掻いて!!」
『どうしたらいい? 何が出来る?』
「そうだよ! 諦めずに考えて!!」
クウネルがハラハラしながら見ていると、キュウベイの側に居た癒しの族長が立ち上がった。
『ギガ……分かったわ、呪いよ。それもかなり強い呪い。効果が有るのは……聖木の葉だけど希少だから手持ちには無いの。急いで探さないと、青い葉を探して!』
「お!! 癒しの族長さんナイス! お母さんは……まだ難しい顔でスマホ触ってるのか。 スマホを離したり近付けたりしてる……。 え? お母さん老眼?」
『聖木の葉? 聞いた事ない! 偽者の中で見てた時もそんな名前の葉は聞いた事ない』
「うん、私もそんな葉は知らないよ! HELP! 鑑定さん、どこ行ったのー!」
ゴブリン兵士達が辺りを探し始めているが、そんなに簡単に見つかるのか疑問だ。
「あぁ! キュウベイの侵食が酷いよ! 赤髪の私と侵食の速度が全然違う。 このままじゃ、赤髪の私より先にキュウベイが死んじゃうよ。 お母さん早く!」
「待ってねー! お母さん、クウネルちゃん以外にメール打つの苦手なのよ~」
「い! そ! い! でぇぇぇ?!」
クウネルが暴食の邪神にキレていると、テレビから赤髪の悲痛な声が聞こえる。
『鑑定、鑑定! ごめんなさい、ごめんなさい、助けて、どうしたらいい? どうしたらキュウベイを助けれる?!』
「え!? 鑑定さん、そっちに居るの?! じゃあ、もっと早く頼れよ赤髪の私ー!」
『――ステータスを確認し、該当する状態異常を鑑定して下さい。 そうすれば、データが更新され対策が打てます。 早く!』
「おぉ! さすが鑑定さん! さすかんだね! ……え?」
赤髪のクウネルがステータスを確認している場面をテレビ越しに見たクウネルは驚愕した。
「赤髪の私、職業がバグってる! 種族は……女巨神? なんでだ? 私と赤髪は別人なのか? 暴食関係のスキルも軒並み無いし、鑑定さんからLvが消えてる。 加護もバグってる女神の恩恵に変わってるし、ステータスも私の半分ぐらいか?」
クウネルは記憶を辿り、自身と違い過ぎる赤髪のステータスに首を傾げる。
「訳が分からない。 確か、鑑定さんは私と赤髪は同一人物だって言ってたのにな。 いや、今はそんな事はいい! 早く! 死体化の呪いを鑑定して赤髪の私!」
『鑑定!』
「よっしゃー!」
「クウネルちゃん、送れたわよー!」
「お母さんナイスタイミング!!」
『死体化の呪い 生きとし生ける者全てを恨み憎む呪い この呪いを受けし――ガガガガピーーーーーーーーーー!!
突然けたたましい異音がスピーカーから流れ、クウネルは思わず耳を塞いだ。
「鑑定さん!? お母さん、これ大丈夫なの?!」
«――鑑定のLvが不足している為表示出来ませんでした。 緊急措置を発動 データの更新を確認……これは!? この死体化の呪いもアンデッド同様、この世界には該当例無し 何故この世界に……いえ、後です。 データを分析――照合……判明»
『うぐぐぐ、早く! 早く!! キュウベイが、キュウベイが死んじゃう!』
赤髪のクウネルもかなりの激痛なのだろう。 苦痛にのたうち回る声が痛々しい。
「でもキュウベイが死にそうなのは赤髪の私のせいだからね!? なんで初めから鑑定さん頼らなかったのよ、この馬鹿赤髪ー!」
«確かに聖木の葉が効果有り、しかし既存の呪いに効果は有るものの、この呪いに効果が有るかは不明――ガガガガ――新たなるデータを暴食の邪神より受信――確認。 マンドラゴラと調合する事で確実に治せる? 検証――確認、聖木の葉とマンドラゴラを調合した薬を服用して下さい»
鑑定の的確な分析により、解決策が提示されクウネルは飛び跳ねて喜んだ。
「鑑定さん、さすがー!」
『暴食の邪神!? いや、今はどうでもいい! その聖木の葉は何処に生えてるの!?』
«――生息地域を検索。 発見――クウネルが落ちてきた背の低い森に生息してます。 背の低いゴブリン達でも採取は容易でしょう。 向かって右を真っ直ぐです。 知識の有る族長を向かわせて下さい»
クウネルは聞き覚えのある森を思い出し手を叩く。
「ほえ? あぁ~、私が落ちたあの背の低い森か! スライムだらけの変な森だったけど、そんな木が生えてたんだね~」
『声が出ない……でも、伝えなきゃ! キュウベイがキュウベイ死んじゃう』
赤髪のクウネルが拳を握り締め、何とか声を絞り出す。
「そうだ! 赤髪の私! 気合いだぁぁぁぁ!」
「ちょっ、クウちゃん! そのテレビ高かったから、まだ分割払いしてるからー!」
暴食の邪神が懇願している事に白熱しているクウネルは気付く事はなく、掴み掛かったままのテレビがミシミシと悲鳴を上げる。
――っていう所に生えてるから、早く! 急いで! がほっ!』
『ギガ、分かりました! 私より知識有る女神様を信じましょう。 皆、急いで!』
兵士達が癒しの族長を担いで駆けて行く。
「大丈夫かな……確か、下級兵って一番弱いんだよね。 魔物に遭遇したら終わりじゃね? が、頑張れー! ゴブリン兵士達ーー!!」
その間にもキュウベイの侵食は進み、既に首から下は真っ黒に変色していた。 今も痛みに苦しんでいる。
それも、キュウベイは死ぬ程の痛みの最中。 赤髪のクウネルに心配を掛けまいと呻き声も上げずに耐えていた。
そんな姿を見ながら赤髪のクウネルは歯を食いしばる。
『私が、私が早く鑑定に頼ってたら、初めから鑑定してたらこんな事にならなかったのに。 私のせいだ! 私のせいだ!』
「そうだよ! 本当にそうだよ!? 反省しよ?」
『私はもう死んでもいい、私を大切にしてくれる人が死ぬぐらいなら助からなくてもいい! アスカガルドになんて行けなくてもいい! 巨神様、助けて! お願い、お婆ちゃん達、間に合って!!』
怒りや憎しみの存在だと思っていた赤髪の祈りに、クウネルは画面越しに呟いた。
「赤髪の私……いや、死んだら私も死ぬんですけど?」
クウネルは再度テレビに掴みかかり叫ぶ。
「諦めるなぁぁぁぁ!! お願いぃぃぃ! 癒しの族長達、間に合ってぇぇぇぇぇ!」
「クウちゃぁぁぁぁぁぁぁん?!」
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