真巨人転生~腹ペコ娘は美味しい物が食べたい~

秋刀魚妹子

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第180話 ゴブリンの恩返し

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 「あ、キュウベイー!」

 クウネルがゴブリン汁を平らげたタイミングでキュウベイが何やら長い布に包まれた物を引きずって戻って来た。

 「姉御、すいやせん遅くなりました」

 キュウベイの側には年寄りゴブリン達が追従しており、鷹の族長が前へと進み出る。

 「キュウベイの主よ。 これは……諸々の恩返しだと思って受け取れ」   

 素っ気なく話す鷹の族長にクウネルは苦笑いで答える。

 「あはは……えっと、何かくれるってこと?」

 「その通りじゃ、クウネル殿。 儂が守れなかった街跡地の奪還、王都襲撃からの防衛、我等ゴブリンは本当にお主に世話になった。 どうか、受け取って欲しい」

 (えぇ~? いや、街跡地奪還はともかく王都防衛したのはアイツだし。 ん~……くれる何かによっては断りたいかも)

 クウネルが首を傾げていると、長老が布を剥ぎ取った。

 そして、クウネルは目を見開いて驚く。

 「え!? コレって……もしかして!!」

 布が取られ、露わになったのは巨人のクウネルが使える程に巨大なハルバードだった。

 それも、クウネルはそのハルバードを知っている。

 「そうですよ、女神様。 えっと、前にお借りした皮袋の底にバラバラでしたが入っていた物を回収し鍛冶長や他の族長達が協力して復元しました。 ふふ、ちょっと大きさは違いますが」

 癒やしの族長が補足し、一緒に同行していた鍛冶ゴブリン達が自慢気に頷く。

 「姉御、どうぞ手にとってみてくだせい!」

 キュウベイに請われ、クウネルは恐る恐るハルバードを手に取り、目の前に立てた。

 それは、悪夢の誕生日に両親がくれたハルバードそのものである。

 「お父さん、お母さんがくれたハルバードと同じだ……あの日、着地した時にバラバラになってたのに。 うっ……うぅぅぅぅぅ! うわぁぁぁぁぁん!!」

 「姉御……」

 クウネルは立てたハルバードを抱きしめて泣いた。

 大粒の涙が地面へと滴り落ち、クウネルは泣き続けた。

 ◆◇◆

 「ギヌ、やれやれ大きな泣き虫の女神様には困ったもんだね」

 「ギガ!? ちょっ、シャーマンの婆さん! でも、落ち着いたようで何よりです。 大丈夫ですか? 女神様」

 暫く泣き続けたクウネルはようやく泣き止み、嬉しそうにハルバードをずっと抱きしめている。

 「えへへ……ありがとう。 もう大丈夫だよ」

 クウネルはハルバードを眺め、母エルザから貰ったときに言われた言葉を思い出す。

 (武器は誰かを傷つける為じゃなく、自分や誰かを守る為に振るいなさい……か。 お母さん……私、ちゃんと約束守るから。 自分と誰かを守る為に振るう。 私に優しくしてくれるキュウベイやゴブリン達を守りたい。 でも……ごめんなさい。 復讐だけはさせてね。 でも、きっと……お母さんもお父さんも怒るよね)

 ハルバードを握る手に力が入る。

 今はまだコントロール出来るが、時折クウネルの内側からマグマの様なドロドロとした怒りや憎しみが溢れそうになるのだ。

 「大丈夫。 まだ、大丈夫」

 クウネルは自分に言い聞かせる様にして立ち上がった。

 「ギギ、良い顔をするじゃないか。 黒髪だろうが、赤髪だろうが儂等ゴブリンは変わらん。 旅に出ても、終わったら帰って来るんじゃろ?」

 「ギガ、シャーマンの婆さんの言う通りです女神様。 どんな旅になろうとも、ゴブリン達は女神様をお待ちしております」

 「あはは、ありがとう。 アイツとは違うって思ったんだけど、私もゴブリンの皆が好きになっちゃった。 全部終わったら……帰って来るよ。 今日直ぐに出るわけじゃないと思うから、またね。 お婆ちゃん達」

 クウネルは2匹の年老いたゴブリン達に笑いかけ、そしてハルバードを手にキュウベイを探した。

 すると、焚き火の側でモロと一緒に居るキュウベイを発見する。

 「あ、姉御! 落ち着きやしたか? シャーマンの族長殿と癒やしの族長殿からそっとしとく様に言われやして……お側を離れてすいやせん」

 「んーん、ありがとうキュウベイ。 あ、もしかしてモロから聞いた?」

 「へい! 勿論、俺も同行させていただきやす!」

 「ガウ! キュウベイも大賛成だったよクウネル。 じゃあ、明日には出るかい?」

 クウネルはキュウベイが当たり前に付いてきてくれる事に嬉しさで頬が熱くなるのを感じていた。

 (えへへ……嬉しいな。 ずっとキュウベイと一緒に居られたら良いのに……。 でも、分かってる。 どこかのタイミングでまたアイツに身体を乗っ取られる。 それまでに出来る事をしなくちゃ)

 「うん、明日には出よっか。 キュウベイ、王都に帰ろう」

 決意を新たにしたクウネルはハルバードを手に王都へと戻るのであった。
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