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第182話 攫われたモロ
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◆赤髪のクウネルside◆
「ふ~んふふ~ん♪ ふふふ~ん♪」
肩にキュウベイを乗せ、ハルバードを大事そうに持つクウネルはのんびりと旅を満喫していた。
巨人であるクウネルの歩幅は広く、既にゴブリン王国の王城すら見えない距離まで進んでいる。
何時間も歩き幾つもの森を越え、草原を歩き続けた。
(ふふん、其処らの小さな生き物とは歩幅が違うのよ。 あ、でもこれなら直ぐに着いちゃうんじゃない? ん~、もう少しゆっくり歩こうかな。 折角のキュウベイとの旅だしね。 あー楽しい! これは鼻唄も出ちゃうよ~♪)
上機嫌なクウネルは時折肩に乗るキュウベイを見つめ、幸せそうに微笑む。
因みに、モロは景色が良いからとクウネルの頭の上に乗っている。
「キュウン……ク、クウネル! 結構揺れるね……もう少しゆっくりで頼むよ!」
「自分で頭の上が良いって言ったのに……やれやれ」
草原を越えた先に見えた小さな森を雑草の様に踏み潰しながらクウネルはゆっくりと歩く。
(気配察知に反応は全然無いから、動物や魔物は踏み潰してないと思うけど……あはは、お祖父ちゃんもこんな気持ちで歩いてたのかな)
亡き祖父を想いながら進んでいると、脳内に鑑定の声が響いた。
«――クウネル、右斜め前方に魔物の反応が有ります。 注意を»
(……右斜め前方? あぁ、あの岩山か)
クウネルが視線を移すと、岩山が幾つも聳え立っているのが見えた。
キュウベイやモロからしても大きな岩山だろうが、クウネルにとっても凄まじい高さの岩山が幾つもあり奥に微かに見える岩山はクウネルよりも遥かに高かった。
(手前の岩山に居るのが鑑定の言う魔物かな? 真っ黒なカラスっぽい巨大な鳥に見えるけど……まぁ、結構距離も有るし、大丈夫でしょ)
クウネルは楽観的に判断したが、念の為に肩に乗るキュウベイに情報の共有をする。
「キュウベイ、大丈夫だと思うけどあっちの岩山に魔物が居るみたい。 一応、注意しといて」
キュウベイは直ぐ様立ち上がり、目を凝らす。
「了解しやした! あれは……恐らく八咫烏ですね。 別名では確か……ジャイアント クロウとも呼ばれると聞いた事がありやす。 竜を除くと、空を支配する恐ろしい魔物の筈です。 姉御、どうかご注意を」
(ふーん、でも竜よりは弱いんでしょ? 私は、1歳の時に飛竜と一騎討ちして勝ってるし……楽勝でしょ。 あれ? 子飛竜だったっけ?)
「ん、分かった。 面倒臭いし、戦闘は無しで行こっか」
「へい! ですが、聞いた話だと八咫烏は突如として現れ獲物を襲うそうです。 常に周囲を警戒しときやす」
「ふふ、キュウベイは頼もしいね。 よろしく~、モロも頭の上から周囲を見ておいてね~」
「ガウッ! もちろんさ! 私は鼻も効くし……ん? 空が黒く……クウネル?!」
クウネルの頭上が暗くなると同時に、けたたましい鳥の鳴き声が耳に突き刺さった。
「カァァァァァッ!! 」
「キャウンッ!? クウネルゥゥゥゥゥゥ!」
突如として疾風が頭上から吹き荒れ、クウネルはキュウベイを落とさないように支える。
「うわっ?! ……え?」
そして空を見上げると、巨大な八咫烏が巨大な岩山に向かって飛び去っていく所だった。
モロは八咫烏の3本足にがっしりと掴まれ逃げられないのか身を捩り、もがくのが見える。
(ちょっ!? 鑑定!?)
«――隠密。 遠くに見えるのは囮だったのでしょう、岩山に近づく前から既に感知され狙われていたと推測します»
「キュウベイ当てれる!?」
「当てれますが、あの高さです。 墜落するとモロ殿が危険ですぜ! 追いかけた方が無難かと思いやす!」
「もぉぉぉぉ! 折角のキュウベイとの旅なのに! 追い掛けてハルバードで真っ二つにしたら、モロも真っ二つになっちゃうよね……ちっ、あのカラスめ! 捕まえて焼き鳥にしてやるー!! 全力で走るよキュウベイ! しっかり掴まってて!」
「へい!」
クウネルは身体をしならせ、足に力を込める。
地面に足がめり込み、走り出したと同時に足下にあった森は吹き飛んだ。
「まてぇぇぇぇぇ!! このカラスがぁぁぁ! 私の友達を返せぇぇぇぇ!!」
◆◇◆
◆モロside◆
「キャイーーーン!? ちょっ、いつの間にこんな距離まで移動したのさ」
八咫烏に連れ去られたモロは景色が高速で流れる事に驚愕していた。
「グルルル! おい、私の言葉が分かるかい? 今直ぐ下ろしてくれたら、許してやらないこともないよ?」
なるべく穏やかな声で八咫烏を説得しようと試みたが。
「カァァァ! カァカァァァ!!」
結果は著しく無いようだ。
「ワフ……あ、うん。 これ伝わって無いヤツだ。 あはは、これは困ったね~。 昔、トロールの集落に行った時はこの岩山に八咫烏何ていう強い魔物は住んで無かったんだけどね」
高度はかなり高く、下の方に見える岩山が豆粒の様だ。 今抵抗し、この八咫烏を殺してもモロは凄まじい速度で地面に叩きつけられ死んでしまうだろう。
(これは……下手に動けないね)
高い空から下を見ると、クウネルが猛スピードで追って来ているのが見えた。
(ふふ、やっぱり君は優しい巨人だね。 八咫烏の目的地は……あの巨大な岩山か。 彼処の頂上に巣があるのかな?)
八咫烏は更に高度を上げ、モロの予想通り巨大な岩山の頂上に向かっているようだった。
「ガルルル……私を餌にするつもりなら、悪いが抵抗させてもらうからね」
モロは掴まれたままでも無理矢理変身し、2足型へと変わり戦闘準備を済ませる。
森狼王モロのステータスは一般的な魔物と比べてかなり高く、自身を掴んでいる八咫烏ぐらいなら本来であれば瞬殺出来るのだ。
「ガウッ! よし、着いたと同時に風魔法で八つ裂きに……あ~、これは不味いね」
しかし、モロが連れてこられた巨大な岩山の巣には、数十羽の巨大な八咫烏が涎を垂らして待っていた。
「キャウン!? クウネルー? もう着くかなーー?! 早く来てくれたら嬉しいんだけどー?」
モロの願いは虚しく、数十羽の八咫烏は涎を垂らしながら一斉に襲い掛かった。
「ふ~んふふ~ん♪ ふふふ~ん♪」
肩にキュウベイを乗せ、ハルバードを大事そうに持つクウネルはのんびりと旅を満喫していた。
巨人であるクウネルの歩幅は広く、既にゴブリン王国の王城すら見えない距離まで進んでいる。
何時間も歩き幾つもの森を越え、草原を歩き続けた。
(ふふん、其処らの小さな生き物とは歩幅が違うのよ。 あ、でもこれなら直ぐに着いちゃうんじゃない? ん~、もう少しゆっくり歩こうかな。 折角のキュウベイとの旅だしね。 あー楽しい! これは鼻唄も出ちゃうよ~♪)
上機嫌なクウネルは時折肩に乗るキュウベイを見つめ、幸せそうに微笑む。
因みに、モロは景色が良いからとクウネルの頭の上に乗っている。
「キュウン……ク、クウネル! 結構揺れるね……もう少しゆっくりで頼むよ!」
「自分で頭の上が良いって言ったのに……やれやれ」
草原を越えた先に見えた小さな森を雑草の様に踏み潰しながらクウネルはゆっくりと歩く。
(気配察知に反応は全然無いから、動物や魔物は踏み潰してないと思うけど……あはは、お祖父ちゃんもこんな気持ちで歩いてたのかな)
亡き祖父を想いながら進んでいると、脳内に鑑定の声が響いた。
«――クウネル、右斜め前方に魔物の反応が有ります。 注意を»
(……右斜め前方? あぁ、あの岩山か)
クウネルが視線を移すと、岩山が幾つも聳え立っているのが見えた。
キュウベイやモロからしても大きな岩山だろうが、クウネルにとっても凄まじい高さの岩山が幾つもあり奥に微かに見える岩山はクウネルよりも遥かに高かった。
(手前の岩山に居るのが鑑定の言う魔物かな? 真っ黒なカラスっぽい巨大な鳥に見えるけど……まぁ、結構距離も有るし、大丈夫でしょ)
クウネルは楽観的に判断したが、念の為に肩に乗るキュウベイに情報の共有をする。
「キュウベイ、大丈夫だと思うけどあっちの岩山に魔物が居るみたい。 一応、注意しといて」
キュウベイは直ぐ様立ち上がり、目を凝らす。
「了解しやした! あれは……恐らく八咫烏ですね。 別名では確か……ジャイアント クロウとも呼ばれると聞いた事がありやす。 竜を除くと、空を支配する恐ろしい魔物の筈です。 姉御、どうかご注意を」
(ふーん、でも竜よりは弱いんでしょ? 私は、1歳の時に飛竜と一騎討ちして勝ってるし……楽勝でしょ。 あれ? 子飛竜だったっけ?)
「ん、分かった。 面倒臭いし、戦闘は無しで行こっか」
「へい! ですが、聞いた話だと八咫烏は突如として現れ獲物を襲うそうです。 常に周囲を警戒しときやす」
「ふふ、キュウベイは頼もしいね。 よろしく~、モロも頭の上から周囲を見ておいてね~」
「ガウッ! もちろんさ! 私は鼻も効くし……ん? 空が黒く……クウネル?!」
クウネルの頭上が暗くなると同時に、けたたましい鳥の鳴き声が耳に突き刺さった。
「カァァァァァッ!! 」
「キャウンッ!? クウネルゥゥゥゥゥゥ!」
突如として疾風が頭上から吹き荒れ、クウネルはキュウベイを落とさないように支える。
「うわっ?! ……え?」
そして空を見上げると、巨大な八咫烏が巨大な岩山に向かって飛び去っていく所だった。
モロは八咫烏の3本足にがっしりと掴まれ逃げられないのか身を捩り、もがくのが見える。
(ちょっ!? 鑑定!?)
«――隠密。 遠くに見えるのは囮だったのでしょう、岩山に近づく前から既に感知され狙われていたと推測します»
「キュウベイ当てれる!?」
「当てれますが、あの高さです。 墜落するとモロ殿が危険ですぜ! 追いかけた方が無難かと思いやす!」
「もぉぉぉぉ! 折角のキュウベイとの旅なのに! 追い掛けてハルバードで真っ二つにしたら、モロも真っ二つになっちゃうよね……ちっ、あのカラスめ! 捕まえて焼き鳥にしてやるー!! 全力で走るよキュウベイ! しっかり掴まってて!」
「へい!」
クウネルは身体をしならせ、足に力を込める。
地面に足がめり込み、走り出したと同時に足下にあった森は吹き飛んだ。
「まてぇぇぇぇぇ!! このカラスがぁぁぁ! 私の友達を返せぇぇぇぇ!!」
◆◇◆
◆モロside◆
「キャイーーーン!? ちょっ、いつの間にこんな距離まで移動したのさ」
八咫烏に連れ去られたモロは景色が高速で流れる事に驚愕していた。
「グルルル! おい、私の言葉が分かるかい? 今直ぐ下ろしてくれたら、許してやらないこともないよ?」
なるべく穏やかな声で八咫烏を説得しようと試みたが。
「カァァァ! カァカァァァ!!」
結果は著しく無いようだ。
「ワフ……あ、うん。 これ伝わって無いヤツだ。 あはは、これは困ったね~。 昔、トロールの集落に行った時はこの岩山に八咫烏何ていう強い魔物は住んで無かったんだけどね」
高度はかなり高く、下の方に見える岩山が豆粒の様だ。 今抵抗し、この八咫烏を殺してもモロは凄まじい速度で地面に叩きつけられ死んでしまうだろう。
(これは……下手に動けないね)
高い空から下を見ると、クウネルが猛スピードで追って来ているのが見えた。
(ふふ、やっぱり君は優しい巨人だね。 八咫烏の目的地は……あの巨大な岩山か。 彼処の頂上に巣があるのかな?)
八咫烏は更に高度を上げ、モロの予想通り巨大な岩山の頂上に向かっているようだった。
「ガルルル……私を餌にするつもりなら、悪いが抵抗させてもらうからね」
モロは掴まれたままでも無理矢理変身し、2足型へと変わり戦闘準備を済ませる。
森狼王モロのステータスは一般的な魔物と比べてかなり高く、自身を掴んでいる八咫烏ぐらいなら本来であれば瞬殺出来るのだ。
「ガウッ! よし、着いたと同時に風魔法で八つ裂きに……あ~、これは不味いね」
しかし、モロが連れてこられた巨大な岩山の巣には、数十羽の巨大な八咫烏が涎を垂らして待っていた。
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