真巨人転生~腹ペコ娘は美味しい物が食べたい~

秋刀魚妹子

文字の大きさ
188 / 247

第182話 攫われたモロ

しおりを挟む
 ◆赤髪のクウネルside◆

 「ふ~んふふ~ん♪ ふふふ~ん♪」

 肩にキュウベイを乗せ、ハルバードを大事そうに持つクウネルはのんびりと旅を満喫していた。

 巨人であるクウネルの歩幅は広く、既にゴブリン王国の王城すら見えない距離まで進んでいる。

 何時間も歩き幾つもの森を越え、草原を歩き続けた。

 (ふふん、其処らの小さな生き物とは歩幅が違うのよ。 あ、でもこれなら直ぐに着いちゃうんじゃない? ん~、もう少しゆっくり歩こうかな。 折角のキュウベイとの旅だしね。 あー楽しい! これは鼻唄も出ちゃうよ~♪)

 上機嫌なクウネルは時折肩に乗るキュウベイを見つめ、幸せそうに微笑む。

 因みに、モロは景色が良いからとクウネルの頭の上に乗っている。

 「キュウン……ク、クウネル! 結構揺れるね……もう少しゆっくりで頼むよ!」

 「自分で頭の上が良いって言ったのに……やれやれ」

 草原を越えた先に見えた小さな森を雑草の様に踏み潰しながらクウネルはゆっくりと歩く。

 (気配察知に反応は全然無いから、動物や魔物は踏み潰してないと思うけど……あはは、お祖父ちゃんもこんな気持ちで歩いてたのかな)

 亡き祖父を想いながら進んでいると、脳内に鑑定の声が響いた。

 «――クウネル、右斜め前方に魔物の反応が有ります。 注意を»

 (……右斜め前方? あぁ、あの岩山か)

 クウネルが視線を移すと、岩山が幾つも聳え立っているのが見えた。

 キュウベイやモロからしても大きな岩山だろうが、クウネルにとっても凄まじい高さの岩山が幾つもあり奥に微かに見える岩山はクウネルよりも遥かに高かった。

 (手前の岩山に居るのが鑑定の言う魔物かな? 真っ黒なカラスっぽい巨大な鳥に見えるけど……まぁ、結構距離も有るし、大丈夫でしょ)

 クウネルは楽観的に判断したが、念の為に肩に乗るキュウベイに情報の共有をする。

 「キュウベイ、大丈夫だと思うけどあっちの岩山に魔物が居るみたい。 一応、注意しといて」

 キュウベイは直ぐ様立ち上がり、目を凝らす。

 「了解しやした! あれは……恐らく八咫烏ですね。 別名では確か……ジャイアント クロウとも呼ばれると聞いた事がありやす。 竜を除くと、空を支配する恐ろしい魔物の筈です。 姉御、どうかご注意を」

 (ふーん、でも竜よりは弱いんでしょ? 私は、1歳の時に飛竜と一騎討ちして勝ってるし……楽勝でしょ。 あれ? 子飛竜だったっけ?)

 「ん、分かった。 面倒臭いし、戦闘は無しで行こっか」

 「へい! ですが、聞いた話だと八咫烏は突如として現れ獲物を襲うそうです。 常に周囲を警戒しときやす」

 「ふふ、キュウベイは頼もしいね。 よろしく~、モロも頭の上から周囲を見ておいてね~」

 「ガウッ! もちろんさ! 私は鼻も効くし……ん? 空が黒く……クウネル?!」

 クウネルの頭上が暗くなると同時に、けたたましい鳥の鳴き声が耳に突き刺さった。

 「カァァァァァッ!! 」

 「キャウンッ!? クウネルゥゥゥゥゥゥ!」

 突如として疾風が頭上から吹き荒れ、クウネルはキュウベイを落とさないように支える。

  「うわっ?! ……え?」

 そして空を見上げると、巨大な八咫烏が巨大な岩山に向かって飛び去っていく所だった。

 モロは八咫烏の3本足にがっしりと掴まれ逃げられないのか身を捩り、もがくのが見える。

 (ちょっ!? 鑑定!?)

 «――隠密。 遠くに見えるのは囮だったのでしょう、岩山に近づく前から既に感知され狙われていたと推測します»

 「キュウベイ当てれる!?」

 「当てれますが、あの高さです。 墜落するとモロ殿が危険ですぜ! 追いかけた方が無難かと思いやす!」

 「もぉぉぉぉ! 折角のキュウベイとの旅なのに! 追い掛けてハルバードで真っ二つにしたら、モロも真っ二つになっちゃうよね……ちっ、あのカラスめ! 捕まえて焼き鳥にしてやるー!! 全力で走るよキュウベイ! しっかり掴まってて!」

 「へい!」

 クウネルは身体をしならせ、足に力を込める。

 地面に足がめり込み、走り出したと同時に足下にあった森は吹き飛んだ。

 「まてぇぇぇぇぇ!! このカラスがぁぁぁ! 私の友達を返せぇぇぇぇ!!」

 ◆◇◆

 ◆モロside◆

 「キャイーーーン!? ちょっ、いつの間にこんな距離まで移動したのさ」

 八咫烏に連れ去られたモロは景色が高速で流れる事に驚愕していた。

 「グルルル! おい、私の言葉が分かるかい? 今直ぐ下ろしてくれたら、許してやらないこともないよ?」

 なるべく穏やかな声で八咫烏を説得しようと試みたが。

 「カァァァ! カァカァァァ!!」

 結果は著しく無いようだ。

 「ワフ……あ、うん。 これ伝わって無いヤツだ。 あはは、これは困ったね~。 昔、トロールの集落に行った時はこの岩山に八咫烏何ていう強い魔物は住んで無かったんだけどね」

 高度はかなり高く、下の方に見える岩山が豆粒の様だ。 今抵抗し、この八咫烏を殺してもモロは凄まじい速度で地面に叩きつけられ死んでしまうだろう。

 (これは……下手に動けないね)

 高い空から下を見ると、クウネルが猛スピードで追って来ているのが見えた。

 (ふふ、やっぱり君は優しい巨人だね。 八咫烏の目的地は……あの巨大な岩山か。 彼処の頂上に巣があるのかな?)

 八咫烏は更に高度を上げ、モロの予想通り巨大な岩山の頂上に向かっているようだった。

 「ガルルル……私を餌にするつもりなら、悪いが抵抗させてもらうからね」

 モロは掴まれたままでも無理矢理変身し、2足型へと変わり戦闘準備を済ませる。

 森狼王モロのステータスは一般的な魔物と比べてかなり高く、自身を掴んでいる八咫烏ぐらいなら本来であれば瞬殺出来るのだ。

 「ガウッ! よし、着いたと同時に風魔法で八つ裂きに……あ~、これは不味いね」

 しかし、モロが連れてこられた巨大な岩山の巣には、数十羽の巨大な八咫烏が涎を垂らして待っていた。

 「キャウン!? クウネルー? もう着くかなーー?! 早く来てくれたら嬉しいんだけどー?」

 モロの願いは虚しく、数十羽の八咫烏は涎を垂らしながら一斉に襲い掛かった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

【完結】悪役に転生したのにメインヒロインにガチ恋されている件

エース皇命
ファンタジー
 前世で大好きだったファンタジー大作『ロード・オブ・ザ・ヒーロー』の悪役、レッド・モルドロスに転生してしまった桐生英介。もっと努力して意義のある人生を送っておけばよかった、という後悔から、学院で他を圧倒する努力を積み重ねる。  しかし、その一生懸命な姿に、メインヒロインであるシャロットは惚れ、卒業式の日に告白してきて……。  悪役というより、むしろ真っ当に生きようと、ファンタジーの世界で生き抜いていく。  ヒロインとの恋、仲間との友情──あれ? 全然悪役じゃないんだけど! 気づけば主人公になっていた、悪役レッドの物語! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...