真巨人転生~腹ペコ娘は美味しい物が食べたい~

秋刀魚妹子

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第183話 焼き鳥にしてやんよ

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 ◆赤髪のクウネルSide◆

 「はっ! ほっ! やぁー!!」

 クウネルは八咫烏を追い掛け、岩山を全力でかけ登っていた。

 (さっき頂上からモロの悲鳴が聞こえた気がする。 急がないとヤバいかも……っていうか、この岩山デカ過ぎ! 上の方は霧で全然見えないし……いや、これ霧じゃなくて雲? 標高やばくない? 大丈夫そ?)

 急な斜面の岩山をクウネルはハルバードの柄を岩に突き立て、頂上を目指す。

 「キュウベイ! このまま雲に突っ込むから、頂上に着いたと同時に戦闘開始ね!」

 「へい! モロ殿が無事だと良いのですが……」

 キュウベイは大弓を構え、敵襲に備えていた。

 「大丈夫、きっと大丈夫。 気配察知は……反応が結構あるのよね。 ……多分、20羽かな?」

 «――訂正。 27羽です»

 (細かい数字まではどうでもいいよー! モロは? まだ無事なの? 私には、気配が沢山有るとしか感じられないのよ)

 «――疑問。 不可思議ですが、モロの気配に異変はありません。 まだ戦闘になっていないと推測。 直ぐに応援に行けば間に合うでしょ――危険! 2羽此方に向かって来ます!!»

 鑑定からの警告と同時に雲の中から2羽の八咫烏が鋭い爪を構えながら猛進してきた。

 「「カァァァ!!」」

 「キュウベイ敵襲!」

 視界に入ると同時にハルバードを振り抜き、キュウベイに警告する。

 「速射!! 」

 「「ガァァァァ!?」」

 クウネルが振り抜いたハルバードは八咫烏を真っ二つにし、キュウベイから正確無比に放たれた矢が残りの八咫烏の額を貫き頭部を粉砕させた。

 キュウベイに射られた1羽の八咫烏の死体が斜面を転がり落ちていく。

 「あー……焼き鳥が。 まぁ、ここに1羽あるし……後で焼いて食べよっと。 にしても、キュウベイの判断は超早かったね。 やっぱりキュウベイはカッコいいなぁ」

 クウネルはハルバードに付着した血糊を飛ばし、キュウベイは矢の数を確認する。

 「すいやせん、姉御。 倒しやしたが、もう矢を1本失いやした」

 「あ―……貫通して空に飛んでったもんね。 いいよ、まだ幾らか残ってるんでしょ? 大丈夫大丈夫~! それより、いきなりでびっくりしたね」

 (今の私はアイツみたいに食べて回復も出来ないし、なるべく負傷しないようにしなきゃな)

 「……へ、へい! 姉御に怪我が無くて良かったです」

 キュウベイの優しい笑顔を見たクウネルの心臓に見えない矢が突き刺さる。

 (くはっ! もう……もう! ……好き!!)

 «――咳払い。 クウネル、モロを助けに行くべきでは?»

 鑑定からのツッコミにクウネルは赤面し、心の中で怒った。

 (う、うるさい! だから、乙女の心を覗かないでってば! 分かってるわよ! それに、カラスの死体を鑑定しとかないといけないでしょ? 頂上に行ってから、未知の攻撃で返り討ちに合うのは嫌だからね)

 «――驚愕。 赤髪のクウネル、やはりちゃんと成長してるんですね。 何度も鑑定しろと言っていた甲斐が有りました»

 (だ、だぁー! もう、うるさい! 私の事馬鹿にしてるでしょ?! ふー……よし、鑑定!)

 ステータス画面

 種族 ジャイアント クロウ

 年齢 11

 レベル 80

 HP 0/5500

 FP 1950/2000

 攻撃力 4000

 防御力 5000

 知力 15000

 速力 18000

 スキル 飛行Lv5. 隠密Lv3. 魔物食らい. 魔物殺し. 大物食い

 魔法 風魔法Lv4

 戦技 嘴突貫Lv4. 切り裂きLv6

 状態異常 飢餓 死亡

 (……ん? なんか弱くない?)
 
 クウネルは表示された八咫烏のステータスを確認して首を傾げる。

 (この速力なら、余裕で追い付けた筈だよね? 鑑定、何か分かる?)

 «――了解。 思考中――判明。 この襲ってきた八咫烏は、モロを連れ去った八咫烏とは別の個体です»

 (うん、それはそうでしょうよ。 他には?)

 «――不明。 現在で分かる事はモロの得意な風魔法を八咫烏も使用する点です。 急がないと、モロが戦闘になれば劣勢になる恐れが有ります»

 (分かった、ありがと!)

 八咫烏のステータスが分かったクウネルは急ぎキュウベイと情報を共有する。

 「キュウベイ、この八咫烏はモロを連れ去った個体じゃない。 多分、もっと強いのが居る。 それと、風魔法を使うみたいだから用心しといてね」

 「へい! さすが姉御です、死体を見ただけでそこまで分かるなんて!!」

 「う……うん! でしょ? よーし、モロを助けに出発だー!」

 キュウベイに褒められクウネルは満更でもない様子で照れる。 実際はスキル鑑定のおかげなのだが、キュウベイに褒められるなら何でも良いやとクウネルは誤魔化した。

 «――呆れ。 貴女がそれでいいなら、いいのでは?»

 (もう、何も言って無いじゃん! 説明するのも面倒だし、時間が無いでしょ?)

 «――はぁ、了解»

 クウネルは鑑定を黙らせ、ハルバードを持ち皮袋を背負い直す。

 クウネルが仕留めた八咫烏は残念だが、今は置いていくしか手段は無く。 泣く泣く死体を岩の上に放置する。

 「くそ! そもそも皮袋が邪魔! でも秘薬玉と猪肉が詰まってるし。 置いて行くわけには行かないよね……うわーん! 私の焼き鳥が~!」

 「姉御、帰りに回収しやしょう!」

 クウネルとキュウベイは頂上を目指してまた岩山を登るのであった。
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