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第190話 クウの過去話 その2
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◆黒髪のクウSide◆
「ただいま~?」
クウは壁をすり抜けて家の中に入った。
「あはは、懐かしいなぁ……本当に懐かしいなぁ」
見渡す物全てが懐かしく、寂しい。
何故なら現世の地球では、既にこの家は取り壊されて存在しないからだ。
「あらあら? まぁまぁ♪」
クウが家の中を見渡してる間、母は祖父の隣に座り何やら嬉しそうにしていた。
「なになに? お母さんどしたの?」
気付いたクウが2人に近寄ると、可愛らしい声が聞こえる。
『ぁぅー? ぁ!』
祖父が畳の上に座り、あやしていたのは赤ん坊だ。
「赤ん坊の時の私だよね……? あれ? さっきお祖父ちゃんが外から帰って来た時には抱っこしてなかったよ? どゆこと?」
クウは疑問を抱きながらも、赤ん坊を見つめる。
「かわいいな……赤ん坊の時ですら絶世の美女やん。 我ながら末恐ろしいな」
クウが自画自賛していると、祖父が深いため息を吐く。
『はぁ……アヤツめ。 突然現れたと思ったら……こんな面倒を。 全く、だから儂が何とかするまで動くなとあれ程に言っておったのにの。 あの様な戦争を起こしおって』
祖父は顔を顰め、誰かに怒っていた。
「おい爺! こんなに可愛い私を見てそれは酷くないか? ん? やるか? お?」
クウは祖父の直ぐ側に顔を近付けてキレる。
だが、これは幻であり触れる事は出来ない。
「や~ん♪ やっぱり赤ちゃんのクウちゃんも可愛いぃぃぃ~~~♪」
「ちょ、お母さん? 大丈夫? いや、抱っこ出来ないから! これ現実じゃないから!」
触れる事は出来ない筈なのだが、祖父が横抱きにしている赤ん坊を一番幻だと理解している母が必死に抱っこしようとしてるのを見てクウはツッコミを入れる。
「あはは……なにやってんだか」
実母だと判明した暴食の邪神が、血の繋がりが無いと分かった祖父から赤ん坊の頃の自分を奪おうとしている変な光景に笑いが溢れた。
「抱っこしたい! 抱っこしたいの! アース、お願い! ちょっとだけでいいからぁぁぁぁぁ!」
母は何度も挑戦し、すり抜ける度に悔しそうに顔を顰める。
『ぁぅー! ぁばー!!』
『む? なんじゃ、腹が減ったか。 ふむ……ちょっと待っておれ』
すると、赤ん坊のクウがお腹が空いたとぐずり始めた。
祖父は赤ん坊を置いて、何も無い空中を見つめる。
「え? お祖父ちゃん? 何してるのさ。 普通に怖いよ?」
「あ~、これは本体と交信中ね。 多分、何かを伝えてるのよ」
その間にも、限界がきた赤ん坊のクウが泣き出した。
『ふぇー! ふぇー!』
『これでよし。 直ぐに来るであろう、暫し待て……はて、アヤツが言っていたコヤツの名前はなんじゃったかの』
祖父は何やら考え始め、クウは祖父の言葉に驚いた。
「え……私の前世の名前はお祖父ちゃんが付けたんじゃなかったの? そう聞いたんだけど」
『そうじゃ、思い出した。 喰じゃったな。 全く……アヤツらしい名前じゃな』
祖父は何かを懐かしむように微笑み、クウは赤ん坊の側に座る母を見る。
「私の名前はお母さんが付けてくれたの?」
母は相変わらず泣きじゃくっている赤ん坊のクウから離れようとせず、優しい微笑みを浮かべていた。
「ええ……そうよ。 どんな理不尽も、摂理も敵も喰える程に逞しく育って欲しい……そう願って付けたのよ」
そう言いながら赤ん坊から視線を移し、母は赤ん坊を見ていた時と同じ優しい顔でクウを見つめる。
本当に愛されて生まれたと改めて理解したクウは頬が熱くなるのを感じ、小さな声で呟いた。
「そっか……ありがと」
「ふふ♪ 急にどうしたの?」
「んーん、なんでもないよ」
気恥ずかしい時間が少し過ぎた頃、玄関が突如として開いた。
『失礼します。 我が偉大なる地球神の指示にて馳せ参じました』
勢いよく入ってきたのは、クウの知ってる人物だった。 見た瞬間にクウの顔が青ざめ、身体がガクガクと震える。
「クウちゃん?! 大丈夫?!」
美人だが、凄く冷たい印象を与える鋭い目をした女は前世で引きこもりだったクウを無理矢理あの高校に入学させた人物にそっくりだったのだ。
「え? なんであの人がここに? 待って、待って待って! なんで!? だって、あの人は……あの人は! ふっ、ふっ、ふっ、ふっ」
止まらない身体の震えがトラウマを呼び起こす。 呼吸が早くなり、過呼吸すら起こし始めた。
「クウちゃん、落ち着いて。 大丈夫だから、大丈夫。 ゆっくり息を吸って、細く長く吐くのよ」
酷く取り乱したクウを母が優しく抱きしめ落ち着かせる。
「すー……ふー……すー……ふー……ありがとうお母さん。 もう大丈夫」
「ふふ♪ 良かった、お母さんが側に居るから何も怖くないわよ。 大丈夫」
「……うん」
あれだけ赤ん坊のクウにべったりだった母が、過呼吸を起こしたクウの下へと直ぐに駆けつけ抱きしめてくれた事にクウは母の愛を感じていた。
しかし、抱きしめられ落ち着くクウとは裏腹にクウの見えない位置から暴食の邪神は現れた女を射殺す程の形相で睨みつけているのだが、それにクウが気づく事は無い。
それは、憎しみすら感じる程の殺気だった。
『うむ、来たか。 よし、乳を出せ――ぶげらぁっ?! ボッゴォォォォンッ!!
来て早々にいきなりセクハラをした祖父が、壁を突き破って吹き飛んだ。
吹き飛ばしたのは勿論、さっき入ってきた人物である。
『上でもお伝えしましたが、セクハラですよ。 偉大なる地球神ともあろうお方が情けない……おや? この赤子は?』
『ぬぐぅ、オリジンよ! こっちの我は依代なのだ、あまり手荒にするでない!』
吹き飛ばされ、血だらけとなった祖父が戻って来た。
『はぁ……偉大なる地球神よ。 乳を出せでは無く、赤子にやるミルクを持ってこいが正解でございます』
血だらけの祖父に悪態を付きながら、何処から出したのか不明な哺乳瓶を赤ん坊の口に入れる。
『ぁぅー? ぁば!? チュパチュパ』
待ちに待ったミルクに気付いた赤ん坊のクウは勢い良く飲み始めた。 その勢いは凄まじく、その光景だけで赤ん坊が普通では無いと分かった。
『ゴキュゴキュゴキュゴキュ!』
あれだけあった哺乳瓶の中身は一瞬で空になり、まだ満足していないのか空になった哺乳瓶を徐ろに祖父へと投げ付ける。
『ぬぉ?! 喰よ、まさかまだ足りぬのか?』
『おや、まだ飲みたいのですか? やれやれ、偉大なる地球神よ。 誰のお子なのですか?』
又もや、何処から出したのか不明なお代わりのミルクを口に入れながらオリジンは祖父を問い質す。
『……言えん。 聞くでない』
しかし、祖父は顔を顰めオリジンに詮索するなと釘を刺した。
『はぁ……分かりました、聞きません。 ですが、これより先はご自身で。 我は買い置きの粉ミルクと哺乳瓶をきちんと購入して来ます』
『うむ、すまぬ。 今の儂は何も生み出せんでな』
『いえ……これも偉大なる地球神の任です』
祖父と何やら会話した後、オリジンは家を出て行く。
祖父が吹き飛ばされ際に突き破った壁は何時の間にか元通りとなり、家には祖父と2本目のミルクを飲み干してまた祖父に投げ付ける赤ん坊のクウだけとなった。
その光景を黙って見ていたクウは呟く。
「オリジン……知ってる名前だ。 でもおかしい、私の知ってるオリジンは胡散臭い爺の筈。 そう、私が巨人に転生した切っ掛けのあの創造神の名前も……オリジンだ」
「ただいま~?」
クウは壁をすり抜けて家の中に入った。
「あはは、懐かしいなぁ……本当に懐かしいなぁ」
見渡す物全てが懐かしく、寂しい。
何故なら現世の地球では、既にこの家は取り壊されて存在しないからだ。
「あらあら? まぁまぁ♪」
クウが家の中を見渡してる間、母は祖父の隣に座り何やら嬉しそうにしていた。
「なになに? お母さんどしたの?」
気付いたクウが2人に近寄ると、可愛らしい声が聞こえる。
『ぁぅー? ぁ!』
祖父が畳の上に座り、あやしていたのは赤ん坊だ。
「赤ん坊の時の私だよね……? あれ? さっきお祖父ちゃんが外から帰って来た時には抱っこしてなかったよ? どゆこと?」
クウは疑問を抱きながらも、赤ん坊を見つめる。
「かわいいな……赤ん坊の時ですら絶世の美女やん。 我ながら末恐ろしいな」
クウが自画自賛していると、祖父が深いため息を吐く。
『はぁ……アヤツめ。 突然現れたと思ったら……こんな面倒を。 全く、だから儂が何とかするまで動くなとあれ程に言っておったのにの。 あの様な戦争を起こしおって』
祖父は顔を顰め、誰かに怒っていた。
「おい爺! こんなに可愛い私を見てそれは酷くないか? ん? やるか? お?」
クウは祖父の直ぐ側に顔を近付けてキレる。
だが、これは幻であり触れる事は出来ない。
「や~ん♪ やっぱり赤ちゃんのクウちゃんも可愛いぃぃぃ~~~♪」
「ちょ、お母さん? 大丈夫? いや、抱っこ出来ないから! これ現実じゃないから!」
触れる事は出来ない筈なのだが、祖父が横抱きにしている赤ん坊を一番幻だと理解している母が必死に抱っこしようとしてるのを見てクウはツッコミを入れる。
「あはは……なにやってんだか」
実母だと判明した暴食の邪神が、血の繋がりが無いと分かった祖父から赤ん坊の頃の自分を奪おうとしている変な光景に笑いが溢れた。
「抱っこしたい! 抱っこしたいの! アース、お願い! ちょっとだけでいいからぁぁぁぁぁ!」
母は何度も挑戦し、すり抜ける度に悔しそうに顔を顰める。
『ぁぅー! ぁばー!!』
『む? なんじゃ、腹が減ったか。 ふむ……ちょっと待っておれ』
すると、赤ん坊のクウがお腹が空いたとぐずり始めた。
祖父は赤ん坊を置いて、何も無い空中を見つめる。
「え? お祖父ちゃん? 何してるのさ。 普通に怖いよ?」
「あ~、これは本体と交信中ね。 多分、何かを伝えてるのよ」
その間にも、限界がきた赤ん坊のクウが泣き出した。
『ふぇー! ふぇー!』
『これでよし。 直ぐに来るであろう、暫し待て……はて、アヤツが言っていたコヤツの名前はなんじゃったかの』
祖父は何やら考え始め、クウは祖父の言葉に驚いた。
「え……私の前世の名前はお祖父ちゃんが付けたんじゃなかったの? そう聞いたんだけど」
『そうじゃ、思い出した。 喰じゃったな。 全く……アヤツらしい名前じゃな』
祖父は何かを懐かしむように微笑み、クウは赤ん坊の側に座る母を見る。
「私の名前はお母さんが付けてくれたの?」
母は相変わらず泣きじゃくっている赤ん坊のクウから離れようとせず、優しい微笑みを浮かべていた。
「ええ……そうよ。 どんな理不尽も、摂理も敵も喰える程に逞しく育って欲しい……そう願って付けたのよ」
そう言いながら赤ん坊から視線を移し、母は赤ん坊を見ていた時と同じ優しい顔でクウを見つめる。
本当に愛されて生まれたと改めて理解したクウは頬が熱くなるのを感じ、小さな声で呟いた。
「そっか……ありがと」
「ふふ♪ 急にどうしたの?」
「んーん、なんでもないよ」
気恥ずかしい時間が少し過ぎた頃、玄関が突如として開いた。
『失礼します。 我が偉大なる地球神の指示にて馳せ参じました』
勢いよく入ってきたのは、クウの知ってる人物だった。 見た瞬間にクウの顔が青ざめ、身体がガクガクと震える。
「クウちゃん?! 大丈夫?!」
美人だが、凄く冷たい印象を与える鋭い目をした女は前世で引きこもりだったクウを無理矢理あの高校に入学させた人物にそっくりだったのだ。
「え? なんであの人がここに? 待って、待って待って! なんで!? だって、あの人は……あの人は! ふっ、ふっ、ふっ、ふっ」
止まらない身体の震えがトラウマを呼び起こす。 呼吸が早くなり、過呼吸すら起こし始めた。
「クウちゃん、落ち着いて。 大丈夫だから、大丈夫。 ゆっくり息を吸って、細く長く吐くのよ」
酷く取り乱したクウを母が優しく抱きしめ落ち着かせる。
「すー……ふー……すー……ふー……ありがとうお母さん。 もう大丈夫」
「ふふ♪ 良かった、お母さんが側に居るから何も怖くないわよ。 大丈夫」
「……うん」
あれだけ赤ん坊のクウにべったりだった母が、過呼吸を起こしたクウの下へと直ぐに駆けつけ抱きしめてくれた事にクウは母の愛を感じていた。
しかし、抱きしめられ落ち着くクウとは裏腹にクウの見えない位置から暴食の邪神は現れた女を射殺す程の形相で睨みつけているのだが、それにクウが気づく事は無い。
それは、憎しみすら感じる程の殺気だった。
『うむ、来たか。 よし、乳を出せ――ぶげらぁっ?! ボッゴォォォォンッ!!
来て早々にいきなりセクハラをした祖父が、壁を突き破って吹き飛んだ。
吹き飛ばしたのは勿論、さっき入ってきた人物である。
『上でもお伝えしましたが、セクハラですよ。 偉大なる地球神ともあろうお方が情けない……おや? この赤子は?』
『ぬぐぅ、オリジンよ! こっちの我は依代なのだ、あまり手荒にするでない!』
吹き飛ばされ、血だらけとなった祖父が戻って来た。
『はぁ……偉大なる地球神よ。 乳を出せでは無く、赤子にやるミルクを持ってこいが正解でございます』
血だらけの祖父に悪態を付きながら、何処から出したのか不明な哺乳瓶を赤ん坊の口に入れる。
『ぁぅー? ぁば!? チュパチュパ』
待ちに待ったミルクに気付いた赤ん坊のクウは勢い良く飲み始めた。 その勢いは凄まじく、その光景だけで赤ん坊が普通では無いと分かった。
『ゴキュゴキュゴキュゴキュ!』
あれだけあった哺乳瓶の中身は一瞬で空になり、まだ満足していないのか空になった哺乳瓶を徐ろに祖父へと投げ付ける。
『ぬぉ?! 喰よ、まさかまだ足りぬのか?』
『おや、まだ飲みたいのですか? やれやれ、偉大なる地球神よ。 誰のお子なのですか?』
又もや、何処から出したのか不明なお代わりのミルクを口に入れながらオリジンは祖父を問い質す。
『……言えん。 聞くでない』
しかし、祖父は顔を顰めオリジンに詮索するなと釘を刺した。
『はぁ……分かりました、聞きません。 ですが、これより先はご自身で。 我は買い置きの粉ミルクと哺乳瓶をきちんと購入して来ます』
『うむ、すまぬ。 今の儂は何も生み出せんでな』
『いえ……これも偉大なる地球神の任です』
祖父と何やら会話した後、オリジンは家を出て行く。
祖父が吹き飛ばされ際に突き破った壁は何時の間にか元通りとなり、家には祖父と2本目のミルクを飲み干してまた祖父に投げ付ける赤ん坊のクウだけとなった。
その光景を黙って見ていたクウは呟く。
「オリジン……知ってる名前だ。 でもおかしい、私の知ってるオリジンは胡散臭い爺の筈。 そう、私が巨人に転生した切っ掛けのあの創造神の名前も……オリジンだ」
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