真巨人転生~腹ペコ娘は美味しい物が食べたい~

秋刀魚妹子

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第191話 クウの過去話 その3

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 ◆黒髪のクウSide◆

 ――って事が転生する時に有ったんだけど、その胡散臭い爺もオリジンって名乗ってたんだ」

 クウは母に先程現れた女と、転生した際に遭遇した胡散臭い爺の名前が同じである事を説明していた。

 「あの世界がオリジンっていう名前なら、胡散臭い爺は創造神って事だよね?」

 クウの質問に母は眉をひそめながら答える。

 「う~ん、そうねぇ。 さっき来たのは最下級神だけど、確かにかなりの神力を持ってたのは事実ね。 それに、厳密に言うと神に性別は無いから見た目や性別を変えるのは簡単だけど……」

 「だけど?」

 「いくら神力を持っていても、創造神にはなれないわね~。 あの程度の神力だと、80億年は創造神育成学校で学ばないと無理ね♪」

 「80億年か……うん、想像つかないや」

 「う~ん、異世界はそれこそ星の数あるから偶然じゃないかしら? きっとそうよ! クウちゃんの勘違いかもしれないしね」

 母が微笑みながらクウの頭を撫でると、何故か不安な気持ちが溶けるように消え去りクウは気の所為だったと思えてきた。

 「そっか、そうだよね。 流石に私の勘違いかな?」

 「うふふ♪ 解決したなら良かった。 じゃあ、次の場面に移動するわよ~?」

 「ん、おなしゃす」

 母が見えないパネルを操作している間、赤ん坊のクウと祖父を見つめる。

 祖父はミルクを飲んだクウを抱っこして背中を叩いており、恐らくげっぷをさせているのだろう。

 何とも微笑ましい光景だが、まだ祖父の顔は険しい。

 「私の知ってるお祖父ちゃんはいつも笑ってたんだけどな」

 クウは寂しげに呟く。

 「お祖父ちゃん……本当は私の事大切な孫じゃなかったの?」

 返事が返ってこない事は分かっている。

 これは既に過ぎた過去の幻なのだから。

 「これから記憶をもっと見ていけば分かるかな……」

 「クウちゃん、準備できたわよー? 」

 「ん、はーい」

 母の隣に立つと、又もや闇に包まれる。

 移動するというよりは闇の中に落ちる感覚が身を包み、謎の気持ち悪さがクウを襲う。

 「うっぷ……お母さん、次はどこの記憶?」

 「もうすぐ着くわよ」

 「え? 早くな――眩し!!」

 突如現れた光がクウの目を焼いた。

 ◆◇◆

 「うぉぉ?! フラッシュバン!?」

 「大丈夫、直ぐに慣れるわ」

 暫し待つと、母の言う通り目が慣れ始める。

 「え……ここは、森?」

 出たのは森の中で、獣道が見えた。

 「私とお祖父ちゃんは何処だ?」

 「あそこ、来たわよ。 クウちゃん、おっきくなったわね~♪」

 母が指差した方向を見ると、森の獣道を祖父が成長した少女のクウを肩車して歩いて向かって来た。

 かなり大きくなっており、恐らく5歳ぐらいだろうか。

 『ふ~ん♪ ふふ~ん♪ じーじ、どこいくのー?』

 『うぅん? 何処じゃろうなぁ、喰は賢いから直ぐに分かるじゃろぉ』

 祖父は頭をペチペチと叩くクウに優しく微笑み、声色にもクウに対する凄まじい愛情が窺えた。

 「肩車されてる私の可愛さがヤバいのは当然なんだけど、お祖父ちゃんのデレデレっぷりがヤバい! ヤバ過ぎる! 5年間で何があった?! もう、孫を肩車して幸せですって顔に書いてある! 書いてあるよ! 私にとっては、ついさっきまでは「アヤツめ、面倒事を」 とか言ってたのに!」

 目の前の光景が信じ難いクウが叫んでいると、母がクウの肩に手を置き微笑みながら頷く。

 「クウちゃん、アレが感情暴走パワーよ」

 「感情暴走パワー!? どゆこと、お母さん」

 聞いたことのない言葉にクウは首を傾げる。

 「神は元々感情が薄いの、だから冷静な判断が出来る。 でも、一度愛情が芽生えると……ああなるの」

 クウはデッレデレな祖父を改めて見る。

 「……感情暴走パワー、恐ろしいね」

 「ふふ♪ お母さんとお父さんの恋も衝撃的だったわ~♪」

 「やめて! 流石に両親の恋話は遠慮します!」

 「ふふ♪ 照れない照れない♪ あ、森を抜けたわよ」

 クウは耳を塞ぎながら祖父を追い掛けた。

 ◆◇◆

 森を抜けると、見えたのは小さな町だった。
 
 「そうだ、思い出した。 さっき歩いて来た道は、私が小学校に通うのに使ってた獣道だね」

 『ほれクウ、着いたぞ。 向こうに見える大きな建物が1年後通う小学校じゃ』

 『ほぇ? じーじ、小学校ってなぁに??』

 『がははは、また教えちゃる。 それより、じーじはこの先で買い物せねばならん。 公園があるから、遊んどるか?』

 『うん! こうえんって、遊べるところなんだよね? でも、大丈夫? クマいない?』

 『大丈夫じゃ、じーじはクウになにか有れば直ぐに分かるからの。 安心して遊んでおればええ』

 質素な公園に着き、祖父は小さなクウを置いて側のスーパーに行ってしまった。

 「おいおい、お祖父ちゃん5歳の孫を公園に置き去りは不味いよ。 大丈夫なの? って……マジで行ったよあの爺」

 置いていかれた子供のクウはスキップしながら公園に突撃して行った。

 「おぉ……強いな子供の私」

 クウが過去の自分を観察している間、母は見えない何かを忙しく操作している。

 クウは仕方無く引き続き、過去の自分に付いて行くことにした。

 『あ? お前見ない顔だな。 最近引っ越して来たのか? 親は?』

 公園には先客が居り、小学生らしき男の子が小さなクウに話し掛けてきた。

 「あ~……思い出した。 初めて会った時の記憶だ」

 クウは何かを思い出しながら、目の前の少年を懐かしそうに見つめた。

 『んーん、あの山の中に住んでるよ? じーじはあそこで買い物してるよ??』

 『はぁ? 公園にこんなガキを置いていったのか? おいおい、やべぇなお前のじーじ』

 『んー? わかんない、それより遊ぼ。 私は喰だよ』

 『お、おん。 置いてかれてんのに、強いなお前。 俺は遥樹はるきだ、よろしくな』

 黒髪、黒目の少年は小さなクウと握手し、一緒に遊び始めた。

 「私が引っ越しで居なくなるまで、いつもこの公園で遊んでもらってたっけ。 ……久し振りだね、ハル兄。 今も地球で元気にしてるのかなぁ……」

 至近距離でハルキの顔を見つめていると、後ろから母がやって来た。

 「あら? もしかして、クウちゃんの初恋の相手かしら?」

 「止めてよ。 もし、そうだとしても……もう会えないんだから」

 「ごめんなさいね……無神経だったわね。 これ以上は辛くなっちゃうかもだし……もう少し様子見たら次に行きましょっか」

 「うん、そうする……」

 小さなクウとハルキが遊んでいるのをクウは遠目に見つめていた。 そして、何故かこの記憶を直ぐに思い出せなかった事を疑問に思う。

 「この公園でハル兄に出会ったの、なんで忘れてたんだろ。 大切な記憶だったのに」

 「あら? アースが戻って来たわよ」

 ようやく祖父が買い物袋を下げながら走って帰って来た。

 「あれ? お祖父ちゃん、何かめちゃくちゃキレてる時の顔してない?」

 『ごぉりゃぁぁぁぁぁ!! 儂の大切な孫にちょっかい掛けるとは、いい度胸しとるなぁ?! ぉぉぉぉん!?』

 『あぁぁぁん!? てめぇか、こんな小さな子を公園に放置して買い物に行ったって糞爺は!!』

 互いに初対面の印象は最悪の為、爺と少年の白熱した喧嘩が勃発したのだ。

 「おぉ!? お祖父ちゃんとハル兄が殴り合い始めたよ?! ちょっ、止めて子供の私!」

 『じーじ、お腹へった』

 「流石私!! マイペーーーース!!」
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