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第207話 旅の醍醐味はグルメでしょ?
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「ふわぁ~……美味しそうだねぇ~」
ネル達の旅はあれから順調に進み、今は海へと繋がる大きな川の側まで来ていた。
水はネルの水魔法で無限に飲めるが、食料は乏しく。 此処に来るまでに食べたのは、ポイズンスネーク達が荒らした縄張りを越えた先で取れた小さな魔物や果物ばかりであり巨人のネルからすると豆を食べているようなものだった。
「そうですねぇネルの姉御~」
しかし、大きな川に到着した際にモロが巨大魚を風魔法で仕留めてくれたのだ。
今は川の側で巨大魚を焼いている真っ最中であり、ようやくまともな食事にありつけるネルはダラダラと涎を垂らしていた。
既に夜となり、真っ暗な世界に大きな焚き火の光が照らしている。
「クフクフ、ネルもキュウベイも涎が垂れてるよ? お、そろそろ良いんじゃないかい?」
「「いただきまーす!」」
鮭に似た巨大魚にネルは齧り付き、骨ごと咀嚼する。
「あむっ!! あむあむ……むーー!? おいひーー!!」
«――鑑定。 おや? 何故でしょう。 ネルの命令が無くとも鑑定出来る様になっています。 ジャイアントサーモン、主に巨大な川に生息する巨大魚。 生息数は比較的多く、食すと美味であるが川の捕食者としては強く、川に入って来た魔物や動物を丸呑みで食べる魔物です。 ふふ、ネルは中々に鑑定してくれないのでこれからは私の判断で鑑定できますね»
頭の中で何やら鑑定が説明しているが、ネルは聞く耳を持たない。 折角の食事が台無しになる様な説明だと直ぐに察したからである。
「へへ、美味しいですね! ネルの姉御!!」
「ごくんっ! うん、美味しいねぇキュウベイ!」
キュウベイは切り身を頬張り、久し振りの食事を楽しむ。
「クフクフ……やれやれ、主がまともに食べれないからと自分まで飢える必要は無いだろうにね。 ふふ、まぁキュウベイらしいけど」
モロは切り身に齧り付きながら笑う。
この川に到着するまでの数日間、キュウベイは狩った角兎や果物類の殆どをネルに食べさせ自らは空腹を堪えていた。
それはひとえに、主であるネルが腹の虫を鳴らしているのに眷属たる自分が満腹になるのは許せないという忠誠心の表れであった。
「モロの言う通りだよ、キュウベイ。 何度もちゃんと食べてって言ったのに……あち」
「良いんです。 俺は姉御が飢えるのが嫌なだけですから」
キュウベイの恥ずかしそうにしながら切り身を食べる姿にネルはトキメキが止まらない。
(はぁぁぁぁ!? ちょっと、今のはにかみイケメンスマイルはダメだよ! そんなのされたらもう何も言えないじゃん! もぉー! 全く、本当に!)
キュウベイの優しさを摂取し、ニヤニヤが止まらないネルだったが気配察知の反応に眉をひそめた。
(……鑑定?)
«――不明。 魔物にしては統率がとれた動きをしています。 どうやら光源になっているこの焚き火を目指して接近している様です。 数は5体。 警戒して下さい、敵の可能性があります»
ネルは立ち上がり、ハルバードを手に持つ。
「キュウベイ、モロ、何か来てる。 数は5体。 敵かも」
ネルが動いたと同時にキュウベイは直ぐ様弓を構え、モロも変身する。
「了解です!」
「ガウッ! 全く、大切な食事の時間を奪うとは……。 敵なら喉笛を噛みちぎってやるさ!」
ネル達は戦闘態勢に移り、接近する何かが来るのを待った。
暫く待っていると、河原の砂利を踏む音が闇夜に響き何かの接近を知らせる。
「ねぇ! ちょっと止まってくれる? もし、言葉が分からないなら敵だと判断して此方から攻撃するよ!!」
ネルはハルバードを構えながら警告し、相手の様子を窺う。
すると、接近していた何かは立ち止まり2足型言語が伝わる相手だと分かった。
「言葉が分かるんだね? 分かった、敵意が無いならゆっくり近づいて来て」
ネルはハルバードの切っ先を下げ、此方も敵意が無い事を示す。
キュウベイも弓を下げ、様子を見守る。
そして、焚き火の明かりが届く所まで来た何かは驚きの声を上げた。
「ゴォォ?! あんれまぁ、えらく大きな娘っ子が焚き火に当たってるのが見えたけん。 危ねえと言いに来たが、本当に大きいべなぁ」
現れたのは茶黒い肌に、筋骨隆々な巨人だった。
巨人と言っても、ネルに比べたら小人だがそれでも3メートル程の巨体を誇りボサボサの茶髪に銛の様な武器を持っている。
身体には何かの皮を加工した服を身に着けており、ぱっと見では原始人の様な格好だ。
そして、現れた5体ともお世辞にもイケメンとは言えずゴブリンに似た顔付きをしていた。
「ガウッ! おぉ、トロール達じゃないか! 大集落まではまだ距離があると思っていたんだが、まさかこんな所まで漁に来たのかい?」
モロは接近して来た者達の正体を知っており、トロール達もモロを見て顔が綻ぶ。
「あんれまぁ?! 森狼王殿でねぇか!? どげんしたんですかぃ、こげな辺鄙な所まで来て。 2足型戦争が終わってから、とんと顔を見なくなったもんで族長様も会いてぇ会いてぇ言うとったでな」
先頭のトロールは満面の笑顔でモロと会話し、ネルとキュウベイはようやく完全に警戒を解いた。
「ふぅ~……先手必勝で攻撃しなくて良かった~」
「そうですね、姉御。 あ、今のうちに食べやしょう!」
「うん、そうね。 話しはモロに任せて食べよう! えへへ、折角のご馳走だもん。 旅の醍醐味はやっぱりグルメだよね~」
ネルとキュウベイはモロに全てを任せ、黙々とジャイアントサーモンを食べるのであった。
ネル達の旅はあれから順調に進み、今は海へと繋がる大きな川の側まで来ていた。
水はネルの水魔法で無限に飲めるが、食料は乏しく。 此処に来るまでに食べたのは、ポイズンスネーク達が荒らした縄張りを越えた先で取れた小さな魔物や果物ばかりであり巨人のネルからすると豆を食べているようなものだった。
「そうですねぇネルの姉御~」
しかし、大きな川に到着した際にモロが巨大魚を風魔法で仕留めてくれたのだ。
今は川の側で巨大魚を焼いている真っ最中であり、ようやくまともな食事にありつけるネルはダラダラと涎を垂らしていた。
既に夜となり、真っ暗な世界に大きな焚き火の光が照らしている。
「クフクフ、ネルもキュウベイも涎が垂れてるよ? お、そろそろ良いんじゃないかい?」
「「いただきまーす!」」
鮭に似た巨大魚にネルは齧り付き、骨ごと咀嚼する。
「あむっ!! あむあむ……むーー!? おいひーー!!」
«――鑑定。 おや? 何故でしょう。 ネルの命令が無くとも鑑定出来る様になっています。 ジャイアントサーモン、主に巨大な川に生息する巨大魚。 生息数は比較的多く、食すと美味であるが川の捕食者としては強く、川に入って来た魔物や動物を丸呑みで食べる魔物です。 ふふ、ネルは中々に鑑定してくれないのでこれからは私の判断で鑑定できますね»
頭の中で何やら鑑定が説明しているが、ネルは聞く耳を持たない。 折角の食事が台無しになる様な説明だと直ぐに察したからである。
「へへ、美味しいですね! ネルの姉御!!」
「ごくんっ! うん、美味しいねぇキュウベイ!」
キュウベイは切り身を頬張り、久し振りの食事を楽しむ。
「クフクフ……やれやれ、主がまともに食べれないからと自分まで飢える必要は無いだろうにね。 ふふ、まぁキュウベイらしいけど」
モロは切り身に齧り付きながら笑う。
この川に到着するまでの数日間、キュウベイは狩った角兎や果物類の殆どをネルに食べさせ自らは空腹を堪えていた。
それはひとえに、主であるネルが腹の虫を鳴らしているのに眷属たる自分が満腹になるのは許せないという忠誠心の表れであった。
「モロの言う通りだよ、キュウベイ。 何度もちゃんと食べてって言ったのに……あち」
「良いんです。 俺は姉御が飢えるのが嫌なだけですから」
キュウベイの恥ずかしそうにしながら切り身を食べる姿にネルはトキメキが止まらない。
(はぁぁぁぁ!? ちょっと、今のはにかみイケメンスマイルはダメだよ! そんなのされたらもう何も言えないじゃん! もぉー! 全く、本当に!)
キュウベイの優しさを摂取し、ニヤニヤが止まらないネルだったが気配察知の反応に眉をひそめた。
(……鑑定?)
«――不明。 魔物にしては統率がとれた動きをしています。 どうやら光源になっているこの焚き火を目指して接近している様です。 数は5体。 警戒して下さい、敵の可能性があります»
ネルは立ち上がり、ハルバードを手に持つ。
「キュウベイ、モロ、何か来てる。 数は5体。 敵かも」
ネルが動いたと同時にキュウベイは直ぐ様弓を構え、モロも変身する。
「了解です!」
「ガウッ! 全く、大切な食事の時間を奪うとは……。 敵なら喉笛を噛みちぎってやるさ!」
ネル達は戦闘態勢に移り、接近する何かが来るのを待った。
暫く待っていると、河原の砂利を踏む音が闇夜に響き何かの接近を知らせる。
「ねぇ! ちょっと止まってくれる? もし、言葉が分からないなら敵だと判断して此方から攻撃するよ!!」
ネルはハルバードを構えながら警告し、相手の様子を窺う。
すると、接近していた何かは立ち止まり2足型言語が伝わる相手だと分かった。
「言葉が分かるんだね? 分かった、敵意が無いならゆっくり近づいて来て」
ネルはハルバードの切っ先を下げ、此方も敵意が無い事を示す。
キュウベイも弓を下げ、様子を見守る。
そして、焚き火の明かりが届く所まで来た何かは驚きの声を上げた。
「ゴォォ?! あんれまぁ、えらく大きな娘っ子が焚き火に当たってるのが見えたけん。 危ねえと言いに来たが、本当に大きいべなぁ」
現れたのは茶黒い肌に、筋骨隆々な巨人だった。
巨人と言っても、ネルに比べたら小人だがそれでも3メートル程の巨体を誇りボサボサの茶髪に銛の様な武器を持っている。
身体には何かの皮を加工した服を身に着けており、ぱっと見では原始人の様な格好だ。
そして、現れた5体ともお世辞にもイケメンとは言えずゴブリンに似た顔付きをしていた。
「ガウッ! おぉ、トロール達じゃないか! 大集落まではまだ距離があると思っていたんだが、まさかこんな所まで漁に来たのかい?」
モロは接近して来た者達の正体を知っており、トロール達もモロを見て顔が綻ぶ。
「あんれまぁ?! 森狼王殿でねぇか!? どげんしたんですかぃ、こげな辺鄙な所まで来て。 2足型戦争が終わってから、とんと顔を見なくなったもんで族長様も会いてぇ会いてぇ言うとったでな」
先頭のトロールは満面の笑顔でモロと会話し、ネルとキュウベイはようやく完全に警戒を解いた。
「ふぅ~……先手必勝で攻撃しなくて良かった~」
「そうですね、姉御。 あ、今のうちに食べやしょう!」
「うん、そうね。 話しはモロに任せて食べよう! えへへ、折角のご馳走だもん。 旅の醍醐味はやっぱりグルメだよね~」
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