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第214話 水竜狩りへ
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「ふーん、なら私も行くよ。 あ、コレキュウベイの分ね」
キュウベイとモロは最初の集落に戻り、両手で持ち上げれる大きさのジャイアントシャーク焼きを丸かじりしているネルに事情を話していた。
「姉御、ありがとうございやす! ん?! コレは初めて食べる味ですが、美味しいですね!!」
そして、何故か自分だけは貰えなかったモロが首を傾げる。
「クゥン? あれ……ネル? 私のは無いのかい?」
すると、ネルの冷たい視線がモロに突き刺さった。
「さっき、族長のオログさんから聞いたけど……キュウベイを女の子ばかりの集落に連れて行ったんだって?」
「キャゥンッ?! いや、アレは雌だけどそもそも種族が違うし。 キュウベイが好きなのはネルじゃないか!」
「モロ殿おぉぉぉ?!」
突然モロに売られたキュウベイは目を見開き、ネルは瞬時に顔を真っ赤に染める。
「ぁ……ぅん、そ、そうよね。 なら……いっか。 えへへ……モロにもあげるね」
ネルは照れながら巨大鮫の身を裂きモロに差し出す。
「ワク! ありがとう、友よ。 おぉ?! コレは美味しいね!」
「あ、姉御! 俺は確かに姉御をお慕いしておりますが、その……ですね」
否定するのも違うとキュウベイはしどろもどろになるが、モロの冗談だと分かっているネルは微笑む。
「ちゃんと分かってるよ、キュウベイ。 でも……やっぱり気になるんだけど、トロールの女の子に一目惚れとかしなかったよね?!」
しかし、やはり嫉妬の感情が押さえられなくなりネルはキュウベイを問い詰めた。
「えぇ!? ……居ませんでしたね」
「そっか、だよね! うんうん……良かった。 えへへ……」
キュウベイも真剣に悩み、直ぐに皆無だった事を思い出す。 そして、キュウベイの返答を聞いたネルは嬉しそうにしながら朝食の巨大鮫を齧るのであった。
◆◇◆
「さて、じゃあキュウベイの試練を達成させに行こー!」
上機嫌のネルはハルバード片手に立ち上がり、キュウベイとモロを肩に乗せる。
「ワフ! 大集落跡地の場所は私が分かるからね、道案内は任せてくれ」
「ん! モロ、よろしくね。 キュウベイも準備は良い?」
「へい! 矢が残り2本なのが心配ですが……」
ネル達が準備をしていると、話しを聞いた族長のオログがやって来た。
「おぉ~い! までまで! 話すは魔力弓の狩人から聞いただ。 無謀過ぎるべや、オラ達が総力を上げて水竜達とぶつかっても勝てなかったんだべ。 1体だけと聞けば狩れそうだべが、奴等は群れで来よる」
族長オログからの話しを聞いたネル達は顔を見合わせ相談し始める。
「えぇ~……群れでいるの? なら1体だけって厳しいよね。 あ、でもキュウベイの大弓で狙撃して仕留めたのを私がさっさと回収したら行けるんじゃないかな」
「ガウッ! いや、危険過ぎる。 キュウベイ、諦めよう」
ネルの提案にモロは難色を示し、キュウベイを諭そうとした。 しかし、キュウベイは何やら悩んでおり話しを聞いていない。
「……姉御。 姉御は、トロール族の皆さんを見てどうしようと思っていますか?」
キュウベイに突然聞かれたネルは首を傾げる。
(どうしよう……?? どういう意味? キュウベイは何かを考えてるって事よね)
«――推測。 トロール族達は現在厳しい状況にあります。 海に現れた水竜の群れにより、半数近くかそれ以上のトロールが死んだと推測。 漁を主流とする雄のトロール達と狩りを主流とする雌のトロールに集落を分けているのは子供を増やさない為でしょう。 半数まで減っても川と森からの恵みでは食料が不足しているのです。 海の支配を取り戻せなければ……トロール族達が生きていくのは厳しいかもしれません»
悩むネルの頭の中に鑑定からの声が響き、キュウベイが何を言いたいのかをネルは理解した。
(つまり……キュウベイは私に水竜達を倒してトロール達を助けましょうって言いたいのか。 でも、主である私が判断すべき事だと……)
«――正解。 ですが、リスクが高過ぎます。 飛竜や地竜とは違い、水竜は海に住む魔物です。 本来は深い沖に住んでいる為、浅い岸側の海に群れで現れるのは異常。 これは、ゴブリン王国が精神操作を受けた魔物達に襲われた件に似たものを感じます。 キュウベイの為に1体だけを狩るのは賛成ですが、殲滅は反対です。 最悪、地竜王神の様な規格外の存在が居るかもしれません»
ネルは何時も以上に饒舌な鑑定の説明に、それほどの危険があるのだと理解した。
(でも、あくまでも鑑定の推測何だよね? う~ん……でも、キュウベイにあんな期待された眼差しを向けられると困っちゃうよ)
«――提案。 先ずは大集落跡地に向かい、状況を確認しましょう。 それから決めても良いかと。 先程、食料が不足していると言いましたがネル達の狩った飛竜達の肉がまだまだある筈です。 当分は大丈夫でしょう»
(……わかった。 ありがとうね、鑑定)
ネルは方針を決め、肩で返答を待っているキュウベイの方を見た。
「キュウベイは……トロール達を助けたいんだよね。 でも、私は海に住む魔物とは戦ったことが無いのと実際に状況を見ないと決められない。 今は……ソレでもいい?」
「姉御……ちゃんと考えて下さってありがとうございやす。 充分でさぁ!」
キュウベイの安心したような笑みを見て、ネルは胸を撫で下ろす。 どうやら、キュウベイに失望されずに済んだようだ。
「ん、決まり! オログさん、様子だけとりあえず見てくる。 もし、1体だけ倒せそうならやってみるけど全部は無理かも」
「ゴッゴッゴ! 全く、身体も心もでっけぇんだべ。 んだ、わがった! 場所は森狼王が知っちょる。 無事の帰還を祈ってるべ!」
トロール達に見送られ、ネル達は巨大な川を沿いながら歩き出した。
キュウベイとモロは最初の集落に戻り、両手で持ち上げれる大きさのジャイアントシャーク焼きを丸かじりしているネルに事情を話していた。
「姉御、ありがとうございやす! ん?! コレは初めて食べる味ですが、美味しいですね!!」
そして、何故か自分だけは貰えなかったモロが首を傾げる。
「クゥン? あれ……ネル? 私のは無いのかい?」
すると、ネルの冷たい視線がモロに突き刺さった。
「さっき、族長のオログさんから聞いたけど……キュウベイを女の子ばかりの集落に連れて行ったんだって?」
「キャゥンッ?! いや、アレは雌だけどそもそも種族が違うし。 キュウベイが好きなのはネルじゃないか!」
「モロ殿おぉぉぉ?!」
突然モロに売られたキュウベイは目を見開き、ネルは瞬時に顔を真っ赤に染める。
「ぁ……ぅん、そ、そうよね。 なら……いっか。 えへへ……モロにもあげるね」
ネルは照れながら巨大鮫の身を裂きモロに差し出す。
「ワク! ありがとう、友よ。 おぉ?! コレは美味しいね!」
「あ、姉御! 俺は確かに姉御をお慕いしておりますが、その……ですね」
否定するのも違うとキュウベイはしどろもどろになるが、モロの冗談だと分かっているネルは微笑む。
「ちゃんと分かってるよ、キュウベイ。 でも……やっぱり気になるんだけど、トロールの女の子に一目惚れとかしなかったよね?!」
しかし、やはり嫉妬の感情が押さえられなくなりネルはキュウベイを問い詰めた。
「えぇ!? ……居ませんでしたね」
「そっか、だよね! うんうん……良かった。 えへへ……」
キュウベイも真剣に悩み、直ぐに皆無だった事を思い出す。 そして、キュウベイの返答を聞いたネルは嬉しそうにしながら朝食の巨大鮫を齧るのであった。
◆◇◆
「さて、じゃあキュウベイの試練を達成させに行こー!」
上機嫌のネルはハルバード片手に立ち上がり、キュウベイとモロを肩に乗せる。
「ワフ! 大集落跡地の場所は私が分かるからね、道案内は任せてくれ」
「ん! モロ、よろしくね。 キュウベイも準備は良い?」
「へい! 矢が残り2本なのが心配ですが……」
ネル達が準備をしていると、話しを聞いた族長のオログがやって来た。
「おぉ~い! までまで! 話すは魔力弓の狩人から聞いただ。 無謀過ぎるべや、オラ達が総力を上げて水竜達とぶつかっても勝てなかったんだべ。 1体だけと聞けば狩れそうだべが、奴等は群れで来よる」
族長オログからの話しを聞いたネル達は顔を見合わせ相談し始める。
「えぇ~……群れでいるの? なら1体だけって厳しいよね。 あ、でもキュウベイの大弓で狙撃して仕留めたのを私がさっさと回収したら行けるんじゃないかな」
「ガウッ! いや、危険過ぎる。 キュウベイ、諦めよう」
ネルの提案にモロは難色を示し、キュウベイを諭そうとした。 しかし、キュウベイは何やら悩んでおり話しを聞いていない。
「……姉御。 姉御は、トロール族の皆さんを見てどうしようと思っていますか?」
キュウベイに突然聞かれたネルは首を傾げる。
(どうしよう……?? どういう意味? キュウベイは何かを考えてるって事よね)
«――推測。 トロール族達は現在厳しい状況にあります。 海に現れた水竜の群れにより、半数近くかそれ以上のトロールが死んだと推測。 漁を主流とする雄のトロール達と狩りを主流とする雌のトロールに集落を分けているのは子供を増やさない為でしょう。 半数まで減っても川と森からの恵みでは食料が不足しているのです。 海の支配を取り戻せなければ……トロール族達が生きていくのは厳しいかもしれません»
悩むネルの頭の中に鑑定からの声が響き、キュウベイが何を言いたいのかをネルは理解した。
(つまり……キュウベイは私に水竜達を倒してトロール達を助けましょうって言いたいのか。 でも、主である私が判断すべき事だと……)
«――正解。 ですが、リスクが高過ぎます。 飛竜や地竜とは違い、水竜は海に住む魔物です。 本来は深い沖に住んでいる為、浅い岸側の海に群れで現れるのは異常。 これは、ゴブリン王国が精神操作を受けた魔物達に襲われた件に似たものを感じます。 キュウベイの為に1体だけを狩るのは賛成ですが、殲滅は反対です。 最悪、地竜王神の様な規格外の存在が居るかもしれません»
ネルは何時も以上に饒舌な鑑定の説明に、それほどの危険があるのだと理解した。
(でも、あくまでも鑑定の推測何だよね? う~ん……でも、キュウベイにあんな期待された眼差しを向けられると困っちゃうよ)
«――提案。 先ずは大集落跡地に向かい、状況を確認しましょう。 それから決めても良いかと。 先程、食料が不足していると言いましたがネル達の狩った飛竜達の肉がまだまだある筈です。 当分は大丈夫でしょう»
(……わかった。 ありがとうね、鑑定)
ネルは方針を決め、肩で返答を待っているキュウベイの方を見た。
「キュウベイは……トロール達を助けたいんだよね。 でも、私は海に住む魔物とは戦ったことが無いのと実際に状況を見ないと決められない。 今は……ソレでもいい?」
「姉御……ちゃんと考えて下さってありがとうございやす。 充分でさぁ!」
キュウベイの安心したような笑みを見て、ネルは胸を撫で下ろす。 どうやら、キュウベイに失望されずに済んだようだ。
「ん、決まり! オログさん、様子だけとりあえず見てくる。 もし、1体だけ倒せそうならやってみるけど全部は無理かも」
「ゴッゴッゴ! 全く、身体も心もでっけぇんだべ。 んだ、わがった! 場所は森狼王が知っちょる。 無事の帰還を祈ってるべ!」
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