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第213話 ネルの漁とキュウベイの試練
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「け、結構深いわね……」
宴の翌朝、ネルはトロール達と共に巨大な川で漁をしていた。 今はトロール族の族長オログに漁の仕方を教わっている所だ。
と言っても、ネルの役目は膝まで川に浸かり見ているだけなのだが。
「ゴッガァ、だからでっけぇ魚が居るんだべぇ。 んでも、魔物も居るからの注意すんだべ」
トロール達は手製の大きな船に乗っており、手には銛が握られている。
ネルも当初は船に乗りたかったが、残念ながら小さ過ぎて片足も乗せれなかったのは御愛嬌だ。
「……ん? 何か大きな気配来てる!」
気配察知には多くの反応が有り、その中で特に大きな気配がネル達へと迫った。
「ゴガガガ、銛を構えるべ!」
「「「「「「「「おうっ!!」」」」」」」」
遠くの水面に巨大なヒレが現れ、猛スピードでネルの方へと向かう。
ネルを囲む船の上ではトロール達が直ぐ様銛を構えた。
「ほ、本当に大丈夫なのよね?! 今、私武器持ってないからね!」
オログに生き餌の変わりにされているネルは不安でいっぱいだが、トロール達は真剣な表情で獲物を待つ。
遂に巨大なヒレはネルの直ぐ近くまで迫り、水面が盛り上がった。
「ゴガァァ! 今だべ! 放てぇぇぇぇぇ!!」
合図と共にオログが太く巨大な黒い銛を放ち、他のトロール達も続く。
「ジョォォォォ?!」
何十本もの銛が放たれ、ネルに食い付かんと顔を出した巨大鮫の額へと突き刺さった。
「うわぁ! すっごーーい!!」
«――巨大鮫。 海と川の接合部分に生息するジャイアントシャーク。 主にジャイアントサーモン等の大きな獲物を好み、岸辺に近寄った魔物や動物も標的にする魔物です。 身は燻製や塩漬けに向いており、獲って直ぐなら直火焼きもオススメです»
(鑑定? なんか説明してくれてるけど……また勝手に鑑定したわね?)
ステータス画面
種族 ジャイアントシャーク
年齢 11
レベル 42
HP 600/3200
FP 100/100
攻撃力 3500
防御力 4000
知力 150
速力 1000
スキル 魔物食らい. 魔物殺し. 捕食者. 鮫肌
魔法 なし
戦技 噛み付きLv2
状態異常 重傷
«――鑑定結果。 対象の個体はまだ成体になったばかりのようですね。 トロール族達の敵では無いでしょう»
何処か楽しげな鑑定の声にネルは苦笑いを浮かべながら表示されたステータスを見る。
(うん、だから求めてないってば!! もう、可哀想になるステータスじゃんか! いや、昔の私に比べたら強いけども)
ネルが頭の中で鑑定とやり取りしている間も、ジャイアントシャークは飛び掛かられたトロール達によって無残にも息絶えてしまってた。
今は船に繋がれ、岸へと向かっている所だ。
「凄いね……本当に一瞬で終わっちゃった」
「ゴッゴッゴ! んだべぇ? コレがオラ達の漁だべ。 このジャイアントシャークは直ぐに食べねぇと臭くなっぺが、丸焼きにしたら美味んだべさぁ!」
トロール達はネルに褒められ嬉しそうに笑う。
「鮫か……食べたことないけど、確かに私でも食べ応えありそう! えへへ、食べるのが楽しみ!」
ネルは船に引きずられ、水面に浮くジャイアントシャークを見てよだれを垂らすのであった。
◆◇◆
ネル達が巨大な川で漁をしている頃、モロとキュウベイは隣の部族の集落を訪れていた。
「ギガン、話すは分かった。 だけども、ワテよりも小さい雄にはやれねぇな」
隣の部族の集落には雌のトロール達が住んでおり、漁をする雄ばかりの集落とは違い此処では狩りを重んじる。
オログの紹介で2匹は訪れたのだが、案内された小屋で顔に大きな傷のある雌トロールに拒否されていた。
「クゥン……トロールの英雄、魔力弓の狩人よ。 既に2足型戦争は終わり、君が使っていた得物はもう使っていないのだろう? このキュウベイは弓の腕前も確かで、仕える主の為にどうしても君の筒が欲しいんだ」
「お願いしやす! 魔力弓の狩人殿!! 主であるネルの姉御の役に立ちたいんでさぁ! ですが……今のままじゃ、直ぐに矢を切らして足手まといになってしまんです。 どうか、どうかお願いしやす!!」
モロは頭を下げ、キュウベイも床に額を擦り付けながら懇願する。
小屋の外では、珍しい客が来たと雌トロール達が集まり様子を見守っていた。
「ンギギ……もし、おめさがワテよりも大きければ旦那にしたいぐらいのイケメンだべ。 んでも、さっき言った通りだ! ワテよりも小さい雄にはやれん!」
モロとキュウベイがいくら懇願しても、魔力弓の狩人は頑なに拒み話しは平行線だ。
ずっとこんな調子であり、キュウベイはどうすべきかと悩んでいた。
(何か、何か無いか? この英雄殿に認めてもらえる何かが……)
キュウベイは小屋の中を見渡し、壁に飛竜の骨が飾ってあるのが見えソレが狩人たる雌トロール達の自慢なのだと気付く。
ならば、同じ弓を扱う者として腕前を示すのみとキュウベイは口を開いた。
「……もし、俺が貴女の指定する獲物を狩れたら筒を頂戴する事は出来ませんか? どんな獲物でも狩ってみせやす!!」
キュウベイの言葉に、初めて魔力弓の狩人は笑みを浮かべる。
「キゴゴゴ! 本当に良い雄だべな。 わがっだ! ならば、おめさに試練を与えっぺ。 今、族長のオログさ達でも勝てなかった水竜が海を荒らしてるんだべさ。 その水竜を1体でも狩って戻れたら、ワテの筒をおめさにやる。 ただし、既に多くのトロール達が水竜達に食われた。 おめさも水竜達に囲まれ食われるかもしれんべ」
魔力弓の狩人が提示した試練は本来なら無謀な内容だ。 そもそも竜に勝てる可能性がある2足型種族等、大柄で腕力の強いトロールぐらいなのだ。 ゴブリンやオークでは、竜の数によっては瞬く間に滅びてしまうだろう。
しかし、キュウベイは既にゴブリンでは無い。
「クフクフ……キュウベイ、どうするんだい?」
モロからの問に、キュウベイは立ち上がり答えた。
「勿論やりやす!! やらせてくだせい!!」
こうして、キュウベイの試練が始まった。
宴の翌朝、ネルはトロール達と共に巨大な川で漁をしていた。 今はトロール族の族長オログに漁の仕方を教わっている所だ。
と言っても、ネルの役目は膝まで川に浸かり見ているだけなのだが。
「ゴッガァ、だからでっけぇ魚が居るんだべぇ。 んでも、魔物も居るからの注意すんだべ」
トロール達は手製の大きな船に乗っており、手には銛が握られている。
ネルも当初は船に乗りたかったが、残念ながら小さ過ぎて片足も乗せれなかったのは御愛嬌だ。
「……ん? 何か大きな気配来てる!」
気配察知には多くの反応が有り、その中で特に大きな気配がネル達へと迫った。
「ゴガガガ、銛を構えるべ!」
「「「「「「「「おうっ!!」」」」」」」」
遠くの水面に巨大なヒレが現れ、猛スピードでネルの方へと向かう。
ネルを囲む船の上ではトロール達が直ぐ様銛を構えた。
「ほ、本当に大丈夫なのよね?! 今、私武器持ってないからね!」
オログに生き餌の変わりにされているネルは不安でいっぱいだが、トロール達は真剣な表情で獲物を待つ。
遂に巨大なヒレはネルの直ぐ近くまで迫り、水面が盛り上がった。
「ゴガァァ! 今だべ! 放てぇぇぇぇぇ!!」
合図と共にオログが太く巨大な黒い銛を放ち、他のトロール達も続く。
「ジョォォォォ?!」
何十本もの銛が放たれ、ネルに食い付かんと顔を出した巨大鮫の額へと突き刺さった。
「うわぁ! すっごーーい!!」
«――巨大鮫。 海と川の接合部分に生息するジャイアントシャーク。 主にジャイアントサーモン等の大きな獲物を好み、岸辺に近寄った魔物や動物も標的にする魔物です。 身は燻製や塩漬けに向いており、獲って直ぐなら直火焼きもオススメです»
(鑑定? なんか説明してくれてるけど……また勝手に鑑定したわね?)
ステータス画面
種族 ジャイアントシャーク
年齢 11
レベル 42
HP 600/3200
FP 100/100
攻撃力 3500
防御力 4000
知力 150
速力 1000
スキル 魔物食らい. 魔物殺し. 捕食者. 鮫肌
魔法 なし
戦技 噛み付きLv2
状態異常 重傷
«――鑑定結果。 対象の個体はまだ成体になったばかりのようですね。 トロール族達の敵では無いでしょう»
何処か楽しげな鑑定の声にネルは苦笑いを浮かべながら表示されたステータスを見る。
(うん、だから求めてないってば!! もう、可哀想になるステータスじゃんか! いや、昔の私に比べたら強いけども)
ネルが頭の中で鑑定とやり取りしている間も、ジャイアントシャークは飛び掛かられたトロール達によって無残にも息絶えてしまってた。
今は船に繋がれ、岸へと向かっている所だ。
「凄いね……本当に一瞬で終わっちゃった」
「ゴッゴッゴ! んだべぇ? コレがオラ達の漁だべ。 このジャイアントシャークは直ぐに食べねぇと臭くなっぺが、丸焼きにしたら美味んだべさぁ!」
トロール達はネルに褒められ嬉しそうに笑う。
「鮫か……食べたことないけど、確かに私でも食べ応えありそう! えへへ、食べるのが楽しみ!」
ネルは船に引きずられ、水面に浮くジャイアントシャークを見てよだれを垂らすのであった。
◆◇◆
ネル達が巨大な川で漁をしている頃、モロとキュウベイは隣の部族の集落を訪れていた。
「ギガン、話すは分かった。 だけども、ワテよりも小さい雄にはやれねぇな」
隣の部族の集落には雌のトロール達が住んでおり、漁をする雄ばかりの集落とは違い此処では狩りを重んじる。
オログの紹介で2匹は訪れたのだが、案内された小屋で顔に大きな傷のある雌トロールに拒否されていた。
「クゥン……トロールの英雄、魔力弓の狩人よ。 既に2足型戦争は終わり、君が使っていた得物はもう使っていないのだろう? このキュウベイは弓の腕前も確かで、仕える主の為にどうしても君の筒が欲しいんだ」
「お願いしやす! 魔力弓の狩人殿!! 主であるネルの姉御の役に立ちたいんでさぁ! ですが……今のままじゃ、直ぐに矢を切らして足手まといになってしまんです。 どうか、どうかお願いしやす!!」
モロは頭を下げ、キュウベイも床に額を擦り付けながら懇願する。
小屋の外では、珍しい客が来たと雌トロール達が集まり様子を見守っていた。
「ンギギ……もし、おめさがワテよりも大きければ旦那にしたいぐらいのイケメンだべ。 んでも、さっき言った通りだ! ワテよりも小さい雄にはやれん!」
モロとキュウベイがいくら懇願しても、魔力弓の狩人は頑なに拒み話しは平行線だ。
ずっとこんな調子であり、キュウベイはどうすべきかと悩んでいた。
(何か、何か無いか? この英雄殿に認めてもらえる何かが……)
キュウベイは小屋の中を見渡し、壁に飛竜の骨が飾ってあるのが見えソレが狩人たる雌トロール達の自慢なのだと気付く。
ならば、同じ弓を扱う者として腕前を示すのみとキュウベイは口を開いた。
「……もし、俺が貴女の指定する獲物を狩れたら筒を頂戴する事は出来ませんか? どんな獲物でも狩ってみせやす!!」
キュウベイの言葉に、初めて魔力弓の狩人は笑みを浮かべる。
「キゴゴゴ! 本当に良い雄だべな。 わがっだ! ならば、おめさに試練を与えっぺ。 今、族長のオログさ達でも勝てなかった水竜が海を荒らしてるんだべさ。 その水竜を1体でも狩って戻れたら、ワテの筒をおめさにやる。 ただし、既に多くのトロール達が水竜達に食われた。 おめさも水竜達に囲まれ食われるかもしれんべ」
魔力弓の狩人が提示した試練は本来なら無謀な内容だ。 そもそも竜に勝てる可能性がある2足型種族等、大柄で腕力の強いトロールぐらいなのだ。 ゴブリンやオークでは、竜の数によっては瞬く間に滅びてしまうだろう。
しかし、キュウベイは既にゴブリンでは無い。
「クフクフ……キュウベイ、どうするんだい?」
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