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第223話 囮になるのは当然私と荒療治な修行開始
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「ちょっとちょっとちょっとー! 何で水竜って名前なのに陸地来るのよー!」
ネルはトロール達が避難している家を落とさないように注意しながら走り続けていた。
「ガウッ! ネル、狙いは私達で間違い無いみたいだね! 曲がっても付いてきてるよ!」
ネルの背後には団子状になりながら向かってくる水竜達の群れが迫っており、逃走経路を変えても無駄な事にモロは吠える。
「姉御、家の中にいるトロール達が心配です! これ以上の速度は出さないでくだせい!」
「分かってるー!」
ネルが全速力で走れば陸地を無理矢理進む水竜達を撒くことは可能だが、その場合家の中に居るトロール達は無事では済まないだろう。
(鑑定! かんてーい! ちょっと、お願いだから帰って来てよ! ピンチなのよー!)
必死に内心で鑑定を呼んでいると、ようやく返答が返ってきた。
«――帰還。 ネル、現在地の情報を獲得出来ました。 現在地は――»
(聞いてられないわよー! 後ろの気配をさっさと確認して! それでどうしたら良いか言ってー!)
現在地を知りたいのは当然だが、残念ながら今はそれどころでは無いのだ。
«――確認。 迫っている水竜達は粘膜液で互いを守りながら陸地を進んでいます。 対策を思案――決定。 ネル、この先に草原が有ります。 その草原を火炎で燃やして下さい»
(そっか! パニックになってたから忘れてたけど、水竜の弱点って炎なのよね。 でも、燃やしてる間に追い付かれない?!)
ネルは必死に家を揺らさない様に走り、水竜達は大口を開けながら迫っている。
草原に到着してからゆっくりと火炎を吐く暇は無さそうだ。
«――囮。 キュウベイかモロを囮に時間を稼いで下さい»
(はぁ!? 絶対にダメ! 嫌よ!)
«――囮。 ネルは抱えている家の中で震えるトロール達を助けたいのでしょう? ならば選択すべきです»
無情にも思える鑑定からの提案にネルは歯軋りをした。
「そうしないと追い付かれるって事ね。 ふん、分かったわよ……キュウベイ! モロ! 私が囮になるから、トロール達を連れてトロールの集落まで逃げて!」
«――ネル!?»
ネルは草原に到着するや否や、家を滑らせるようにして手を離し2匹を掴んで同じ様に投げる。
「姉御!? 待ってくだせい! 囮なら俺が!!」
「キャイン?! ネル、危険だよ!」
「お願い! キュウベイやモロに危険な役目をやらせたくないの! 行って!!」
投げられたキュウベイとモロは草原を滑り無事に着地し、直ぐ様ネルの方へと引き返そうとしたがネルからの言葉に躊躇った。
既に、ネルの直ぐ背後に水竜達は迫りこのままではトロールやキュウベイ達も危険だろう。
「……直ぐに戻りやすから!」
「ガルルル……キュウベイ、殿は私がしよう。 トロール達を引き連れて走るんだ!」
残りの矢が1本しか無いキュウベイに出来る事は無く、歯を食いしばりながら家に向かって走り出した。 その後ろを守るようにモロも向かい、その様子を見てネルは安堵のため息を吐く。
「良かった……。 よし、やるわよ!」
«――危険。 ネル、こうなったら出来る事は1つです。 火炎を吐きながら水竜達の粘膜を剥がし、ハルバードで首を狙って下さい»
「言われなくても当然! それと……鑑定!」
ネルはハルバードを構え、襲い来る団子状に絡みつく水竜達と対峙した。
◆◇◆
ネルが自身を囮にしている頃、クウは摩訶不思議化空間に母と居た。
「あの……お母さん? 此処が暴食の胃袋の中なの?」
「ふふ、そうよ~?♪ 正確にはクウちゃんの創り出した異空間みたいなモノね。 時間の経過は無いに等しく、この空間にいる間は外の世界は止まってるのと同じよ」
強くなる為に焦っていたクウは、突然母から提案され暴食の胃袋に自分達を収納したのだ。
暴食の胃袋の中は明るく、凄まじく広い空間が何処までも続いている。 何か食べ物や物を収納していればこの空間に有るのだろうが、残念ながらクウは出された食事は瞬時に食べるので今は何も無い空間だ。
「つまり……それって! 精神○時の部屋って事!?」
「……ごめんなさい、ソレが何か分からないわぁ~♪」
クウは瞬時にこの空間が何かを理解し、興奮気味に叫んだが漫画を読まない母には通用しなかった。
「こほんっ! つ、つまり……この空間にいる間は幾らでも修行が出来るって事だね!」
「ふふ♪ クウちゃんは本当に賢いわね~。 そうよ~、此処ならいくら暴れても……平気だから♪」
夢にまで見たオタク心をくすぐる部屋に小躍りするクウとは違い、母は静かに戦闘準備を始める。
「えっと~、クウちゃんにはね。 まだ教えてない暴食の権能が幾つか有るのよ。 でも、外の世界でやるとちょっと困った事になる権能も有るから此処でやりましょうね~♪」
「よし! オラワクワクすっぞ! お母さん、よろしく……ね? えっと……母上? いつも以上に多い黒い触手が背後に蠢いていらっしゃいますが?」
クウが振り向くと母は数千本の触手を背後から出現させており、母はニッコリと笑った。
「ふふ♪ 先ずは……暴食の舌からね。 何度も見せたけど、実はコレが本当の使い方なの。 触手の一本一本が手足の様に操れて、色んな事に使えて便利なのよね~♪ お料理も手が足りていいのよ~」
「あ、あはは……それは良いですねー……。 母上~? 何か、殺気が出てませんか?」
「ほら、クウちゃんは早く強くなりたいのよね? ふふ、なら……少し荒療治しないと。 死んじゃダメよー?」
言い終えると同時に数千本の触手がクウへと襲い掛かる。
「ぎゃぁぁぁぁぁ?! 暴食の食卓! 暴食の口ー! やばいやばいやばいやばい! にぎゃーーー!」
暴食の胃袋の中で、クウの悲鳴が木霊するのであった。
ネルはトロール達が避難している家を落とさないように注意しながら走り続けていた。
「ガウッ! ネル、狙いは私達で間違い無いみたいだね! 曲がっても付いてきてるよ!」
ネルの背後には団子状になりながら向かってくる水竜達の群れが迫っており、逃走経路を変えても無駄な事にモロは吠える。
「姉御、家の中にいるトロール達が心配です! これ以上の速度は出さないでくだせい!」
「分かってるー!」
ネルが全速力で走れば陸地を無理矢理進む水竜達を撒くことは可能だが、その場合家の中に居るトロール達は無事では済まないだろう。
(鑑定! かんてーい! ちょっと、お願いだから帰って来てよ! ピンチなのよー!)
必死に内心で鑑定を呼んでいると、ようやく返答が返ってきた。
«――帰還。 ネル、現在地の情報を獲得出来ました。 現在地は――»
(聞いてられないわよー! 後ろの気配をさっさと確認して! それでどうしたら良いか言ってー!)
現在地を知りたいのは当然だが、残念ながら今はそれどころでは無いのだ。
«――確認。 迫っている水竜達は粘膜液で互いを守りながら陸地を進んでいます。 対策を思案――決定。 ネル、この先に草原が有ります。 その草原を火炎で燃やして下さい»
(そっか! パニックになってたから忘れてたけど、水竜の弱点って炎なのよね。 でも、燃やしてる間に追い付かれない?!)
ネルは必死に家を揺らさない様に走り、水竜達は大口を開けながら迫っている。
草原に到着してからゆっくりと火炎を吐く暇は無さそうだ。
«――囮。 キュウベイかモロを囮に時間を稼いで下さい»
(はぁ!? 絶対にダメ! 嫌よ!)
«――囮。 ネルは抱えている家の中で震えるトロール達を助けたいのでしょう? ならば選択すべきです»
無情にも思える鑑定からの提案にネルは歯軋りをした。
「そうしないと追い付かれるって事ね。 ふん、分かったわよ……キュウベイ! モロ! 私が囮になるから、トロール達を連れてトロールの集落まで逃げて!」
«――ネル!?»
ネルは草原に到着するや否や、家を滑らせるようにして手を離し2匹を掴んで同じ様に投げる。
「姉御!? 待ってくだせい! 囮なら俺が!!」
「キャイン?! ネル、危険だよ!」
「お願い! キュウベイやモロに危険な役目をやらせたくないの! 行って!!」
投げられたキュウベイとモロは草原を滑り無事に着地し、直ぐ様ネルの方へと引き返そうとしたがネルからの言葉に躊躇った。
既に、ネルの直ぐ背後に水竜達は迫りこのままではトロールやキュウベイ達も危険だろう。
「……直ぐに戻りやすから!」
「ガルルル……キュウベイ、殿は私がしよう。 トロール達を引き連れて走るんだ!」
残りの矢が1本しか無いキュウベイに出来る事は無く、歯を食いしばりながら家に向かって走り出した。 その後ろを守るようにモロも向かい、その様子を見てネルは安堵のため息を吐く。
「良かった……。 よし、やるわよ!」
«――危険。 ネル、こうなったら出来る事は1つです。 火炎を吐きながら水竜達の粘膜を剥がし、ハルバードで首を狙って下さい»
「言われなくても当然! それと……鑑定!」
ネルはハルバードを構え、襲い来る団子状に絡みつく水竜達と対峙した。
◆◇◆
ネルが自身を囮にしている頃、クウは摩訶不思議化空間に母と居た。
「あの……お母さん? 此処が暴食の胃袋の中なの?」
「ふふ、そうよ~?♪ 正確にはクウちゃんの創り出した異空間みたいなモノね。 時間の経過は無いに等しく、この空間にいる間は外の世界は止まってるのと同じよ」
強くなる為に焦っていたクウは、突然母から提案され暴食の胃袋に自分達を収納したのだ。
暴食の胃袋の中は明るく、凄まじく広い空間が何処までも続いている。 何か食べ物や物を収納していればこの空間に有るのだろうが、残念ながらクウは出された食事は瞬時に食べるので今は何も無い空間だ。
「つまり……それって! 精神○時の部屋って事!?」
「……ごめんなさい、ソレが何か分からないわぁ~♪」
クウは瞬時にこの空間が何かを理解し、興奮気味に叫んだが漫画を読まない母には通用しなかった。
「こほんっ! つ、つまり……この空間にいる間は幾らでも修行が出来るって事だね!」
「ふふ♪ クウちゃんは本当に賢いわね~。 そうよ~、此処ならいくら暴れても……平気だから♪」
夢にまで見たオタク心をくすぐる部屋に小躍りするクウとは違い、母は静かに戦闘準備を始める。
「えっと~、クウちゃんにはね。 まだ教えてない暴食の権能が幾つか有るのよ。 でも、外の世界でやるとちょっと困った事になる権能も有るから此処でやりましょうね~♪」
「よし! オラワクワクすっぞ! お母さん、よろしく……ね? えっと……母上? いつも以上に多い黒い触手が背後に蠢いていらっしゃいますが?」
クウが振り向くと母は数千本の触手を背後から出現させており、母はニッコリと笑った。
「ふふ♪ 先ずは……暴食の舌からね。 何度も見せたけど、実はコレが本当の使い方なの。 触手の一本一本が手足の様に操れて、色んな事に使えて便利なのよね~♪ お料理も手が足りていいのよ~」
「あ、あはは……それは良いですねー……。 母上~? 何か、殺気が出てませんか?」
「ほら、クウちゃんは早く強くなりたいのよね? ふふ、なら……少し荒療治しないと。 死んじゃダメよー?」
言い終えると同時に数千本の触手がクウへと襲い掛かる。
「ぎゃぁぁぁぁぁ?! 暴食の食卓! 暴食の口ー! やばいやばいやばいやばい! にぎゃーーー!」
暴食の胃袋の中で、クウの悲鳴が木霊するのであった。
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