[完結]転生したのは死が間近の女王様!? ~超可愛い弟が王になれるよう平凡な女王が抗う奮闘記~

秋刀魚妹子

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第24話 視察と発見

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 「んー! この辺はポカポカして気持ちいいね、ルカ」

 マリは広大な畑を前にし、大きく伸びをする。今日の機嫌は上々だ。

 何故なら、先日の一夜の過ち事件の真相が判明したからだ。  昨晩恋人であるヨハネに恐る恐る問うと、酔ったマリがヨハネの上着を脱がせバキバキの腹筋を肴に酒を潰れるまで飲んでいたと聞かされマリは膝から崩れ落ちた。

 (一夜の過ちじゃなくて本当に良かったー! ん? 恋人の腹筋を肴にするのは良かったっけ? まぁ……OKでしょー!)

 ちなみに何故上機嫌のマリが畑に居るかと云うと、亜人解放の為にルニア辺境伯爵の領地を訪れて2日が経ち、今日が最終日だからと女王自ら領地の視察をしている真っ最中だからである。
 
 周囲を護衛するのはルニア辺境伯爵と精鋭の兵士達、それと将来の公爵候補であり大臣のルカがマリの隣で領地の案内をしている。 

 「ふふ、そうですね陛下。 ここが領地で一番広大な畑ですから日照りも良い場所となってます」

 「へ~、ちなみに植えてあるのは何?」

 畑からは大根の様な葉が多く生えている。 恐らくは野菜か何かだろう。

 「薬の原料になるナンダロウゴラです」

 しかしマリの予想と反し、返ってきた返答は聞き覚えの無い名前だった。

 「んん? ナン……何て?」

 「おや、陛下は御存知無いですか? 兵士が使用する傷薬の原料、ナンダロウゴラですよ。 土から抜く際にとても面倒ですが、効果の高い傷薬が出来る為に高値で売れるんです」

 (ん?? それって……マンドラゴラじゃなくて?)

 マリは前世のファンタジー知識を思い出す。

 「ちなみに、それを抜いたら凄まじい鳴き声を出して聞いた人が死ぬとかじゃないよね?」

 マリの言葉にルカはきょとんとし、直ぐにクスクスと笑い始めた。

 「ふふ……あはは! す、すみません陛下、でも……ふふ。 それは、何かの本で読んだのですか? ご安心を、その様な作物ではございません」

 ルカは必死に笑いを堪えるが全く隠せていない。 あまりに荒唐無稽の質問だったからだろう。

 「もー! ルカー?!」

 「ふふ、すみません陛下。 では、試しに抜いた状態を見ていただきましょうか。 この辺境の特産品ですから。 あ、畑長ー! 1本収穫してみてくださーい!」

 ルカは頬を膨らますマリに謝りながら、遠くの畑長をしている年配の恰幅がいい女性に指示を飛ばす。 すると、鎌を持った畑長が足早にやって来る。

 「はいよルカ様! 女王陛下もようこそおいで下さいました」

 「あ、いえお仕事中にすみません」

 明らかに自分よりも身分が圧倒的に低い畑長にも丁寧に接するをマリを見て、遠目に見ているルニア伯爵の頬も緩む。

 「あっはっはっ!新しい女王陛下は、こんな私にも優しくしてくれるのかい? 嬉しいねぇ」

 「畑長、失礼ですよ」

 大笑いする畑長にルカが短く注意すると、マリが慌てて止める。

 「す、すみません女王陛下」

 畑長は深く頭を下げて謝罪するが、マリはその行為を許さない。

 畑長の肩に触れ、優しく諭す。

 「いいのよ! 大丈夫、私は普通に接してもらえるのが一番楽だから。 ね? ルカも、私は堅苦しいの公じゃないなら嫌いだから覚えておいて」

 「はっ! 失礼致しました」

 「寛大なお言葉……感謝します陛下。 では、早速ですがナンダロウゴラを収穫しますね。 抜いた際に……いえ、これは見てもらった方が早いかね」

 畑長がナンダロウゴラを選別し、大きめな1本を引き抜いた。

 「……えっ!? やっぱりこれマンドラゴラじゃない?」

 畑長が引き抜いたソレは、大根の様な葉っぱの下に人の形をした異様な作物だった。 顔があり、空洞の目に口が付いている。 その見た目は、やはり前世の映画や漫画で見たマンドラゴラそっくりであった。

 「えぇ? いえ、陛下。 これはナンダロウゴラですよ? ほら、抜いたから喋り始めます」

 「ナ……ナンダロウ、イキナリヌクノヤメテモラッテイイデスカ?」

 抜かれたナンダロウゴラは流暢に言葉を話し始めた。

 「……え?」

 余りの衝撃にマリは固まる。

 「ナンダロウ……イキナリコトワリモナクヌクノッテ、スゴクアタマガワルイトオモウンデスヨ」

 (あれ? 待って、知ってる! この喋り方知ってるよ!?)

 「ナンダ……ギピッ!?」

 危ない言葉を連呼するナンダロウゴラは、何の前触れも無く鎌で首を落とされてしまった。

 「あはは! なんか腹立つでしょ? まぁ、私は好きなんですがね」

 畑長は笑いながら、背中に背負った籠にナンダロウゴラを入れる。

 「発見した僕が言うのは何ですが……高値で売れないなら大量に育てたくは無いですね」

 「う……うん、そうだね。 あはは……」

 (お、乙姫先生ーー?! いくら創作した小説といえど、ギリギリですよ!? ギリギリ!!)

 マリは心中でこの世界の原作者に叫ぶが、そのクレームが届くことは無かった。

 ◆◇◆

 それから広大な畑を案内される事暫し、森近くの畑から荒れた土の畑へとやって来た。
 
 「あれ? ルカ、この辺はさっきの畑とは大分違うね」

 「はい、先程までのナンダロウゴラは亜人の領域側の森近くでしか栽培できないのです。 ですが、此方の畑は荒れた土でも栽培可能な食用の作物を育てる用で運営しています。 それにより、領民の食料事情が安定しました」

 これまた見渡す限りの畑には、何かしらの作物が多く植えられているのが見える。

 「ほぇー、もしかして全部ルカが?」

 「ええ……少しだけですが。 僕が領地経営に参入するまでは酷い状態でしたから……。 漸く、高価な薬の原料と食料の安定した栽培にこぎ付けました」

 何処か誇らしげに畑を見渡すルカを後方で優しく見つめるのはルニア伯爵だ。

 「陛下、僭越ながら先程のナンダロウゴラを亜人の森で見つけたのも荒れた土で育てれる作物を見つけたのも全てはルカです。 もし、ルカが居なければこの辺境は貧しく酷い環境のままだったでしょう」

 実の母からの絶賛にルカは耳を赤くする。

 「母上……その辺で」

 「んふふ、照れてる照れてる。 でも、本当に凄いよルカ。 城に戻ったらこの調子でお願いね?」

 「へ、陛下まで……精一杯努力致します」

 赤面したまま俯くルカ見ながら、ふとマリは気付く。

 (ん……そういえば、荒れた土でも栽培可能……あ!! もしかして!)

 「ねぇルカ! この作物って美味しい? ちなみに、もっと荒れ果てた土地でも栽培可能かな?」

 「は、はい……味は焼いたり煮ればそれなりに美味しいですよ。 荒れ果てた土地でも可能とは思いますが……」

 ルカの言葉を皮切りに、マリは畑へと急ぐ。

 「陛下!? お待ちを!」

 ルニア伯爵とルカが止めるのも無視し、作物を間近で見る。

 「や、やった! やったよ! これがあるなら、何とかなる! 最大の難関がクリア出来るよー!」

 跳び跳ねて喜ぶマリを、親子は不思議な顔で見合っていた。 
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