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第26話 散々な昔話と一大事
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「えぇ? 小さい時の私って、そんなに暴君だったっけ!?」
メリーに昔話を聞きながら馬車に揺られること数時間。
既に昔話は堪えられない内容となっていた為、マリの驚きは止まらない。
「はい、その……ジャック以外の執事では務まらず、皆心と身体に傷を負って辞めていきましたから」
どうやら、転生前のマリは真の暴君だったようだ。
幼少の頃から執事やメイドを奴隷のように扱い、欲しいと思った物や人は無理矢理手に入れていた。
「ですが、まだ少年のジャックが専属の執事となってからは多少お淑やかになられましたよ?」
「な、なんで?」
「ふふ……ジャックだけでしたから。 幼きマリ様を本気で叱り、まるで鬼の様に厳しく仕えた執事は。ふふふ、 長年共に仕えたウォンバットですらマリ様には強く言えなかったんですけどね~」
クスクスと笑うメリーを見ながらマリの脳内で、少年のジャックが幼いマリをガミガミと叱る光景が浮かんだ。
「ジャック……少年の頃から気苦労が絶えなかったんだね」
「ふふ、陛下? それ、本人に言ったら怒られますからね?」
「ちゃんと分かってるよ! 流石に言わないよ……あはは」
苦笑いするマリを、メリーは何処か寂しげに見つめていた。
それからも暫く昔話に花が咲いたが、マリがある事に気付く。
「ん? あれ? そういえば……メリーさんって、今幾つ? 聞いた事無かったよね」
「!? 」
明らかに動揺するメリーを他所に、マリの疑問は止まらない。
「私が産まれた時を知ってるし、少年のジャックも知ってるのおかしくない?? だって、メリーさん凄く綺麗で若いしジャックとそんなに年離れてないよ……ね? それに……さっき執事長のーーコンコンコン!
顔色がどんどん悪くなるメリーに助け船が来た。 マリにとってはタイミングの悪い事に、馬車が止まりドアがノックされたのだ。
「陛下、すみませんが昔話はとりあえず此処までという事で。 はい、用件を」
(ん……? メリーさん、なんか誤魔化した? あぁ、そりゃそっか。 女性に年齢を聞くのは同性でもマナー違反だよね)
捲し立てる様に話すメリーをマリは不審に思うが、内心で納得するのであった。
「はっ! 護衛隊長であります! 時刻が昼時となりました、近くの広場で昼食等いかがでしょうか」
「陛下、いかがなさいますか?」
「お腹空いてるかも! 兵士達にも無理させたくないし、休憩にしよう!」
「ふふ、畏まりました。 では隊長、広場の安全確保をお願い致します」
「はっっ! 直ちに!」
馬車からガチャガチャという足音が離れてから、メリーはポツリと口を開いた。
「昼食の準備がございますので、私は1度席を外します。 この後は、どなたかと話されますか?」
「え? ん~……ルカとも話すことあるし、ヨ……キサラギさんとも話したいか……な?」
「畏まりました、ではこの後はルカ殿をお呼び致しますので昼食が出来るまではごゆっくりなさって下さい」
「あ……はい」
暗に、恋人のキサラギとは2人っきりに出来ませんと言われたマリは少し落ち込む。 しかし、メリーが悪戯が成功した子供のように微笑んでいるのを見て嵌められた事に気付いた。
「ふふ、陛下……夜はキサラギと共に過ごしても宜しいですよ?」
「もーーー! メリーさーーーん!?」
怒るマリを無視してメリーは昼食の準備に立ち去る。
「はぁ……でも、また普通に話せて良かったなぁ。 ギスギスなのは嫌いだよ」
馬車の窓から立ち去るメリーを見ながら、マリはポツリと呟いた。
◆◇◆
ーーーーで、今回亜人の皆を解放しに来たんだよ~」
あれからルカが馬車を訪れ、これまでの経緯を詳しく聞かれたのでマリは思い出しながら話した。
「なるほど……詳しくお話し下さりありがとうございます陛下。 詳細は考えを纏めてからになりますが、進言しても宜しいですか?」
真剣に話を聞いていたルカは、眉をひそめ何やら難しい顔をしている。
「おー、流石だねルカ。 もう、何か思い付いたの?」
「はい、今すぐ不眠不休で急ぎ王城に戻りましょう」
ノリの軽いマリとは違い、ルカは重く至極真面目にとんでもない事を言い出した。
「……えぇ!?」
コンコンコン
「陛下大丈夫でございますか? 昼食の準備が出来ましたが……」
マリが驚きの声を上げると同時に扉が開き、メリーが目を丸くして立っていた。
「メリーさん、ありがとうございます。陛下、進言の理由はとりあえず昼食を食べながらに致しましょう」
「う、うん」
嫌な予感を胸に、マリは馬車を降りる。
◆◇◆
「さて、昼食も食べ終えましたし……皆さんも聞いて下さい。この後、王城まで不眠不休で急ぎ戻ります」
広場で昼食を終え、突然のルカの発言にざわめきがおきる。
「皆待って、落ち着いて。 ルカ、説明してくれる? 何故、そんなに急ぐの?」
「はい、まずは……現在のエントン王国の状況ですが、限りなく悪い状況です。 最悪……隣国とゴルメディア帝国の三国が同時に攻めてきます」
「「「「なっっ!?」」」」
ルカの発言は正に青天の霹靂だ。
メリーやジャックも目を見開き、護衛の兵士達には緊張が走る。
「皆、静かに! ルカ……それは何故?」
しかし、落ち着いたマリの声が皆を冷静にさせる。
「流石ですね陛下……。 先程のお話しから察するに、陛下は改革をやり過ぎました」
「え? エントン王国の改革をやり過ぎたからなの!?」
「はい、そうです。 陛下は、処刑した貴族達の血筋は調べられましたか?」
「ん~……メリーさん?」
ルカの質問にマリは首を傾げ、そのままメリーに助けを求めた。
問われたメリーは、メイド服のスカートから羊皮紙の束を取り出し凄まじい速度で確認する。
「少々お待ちを……はい、確かに何名かの配偶者が隣国出身ではありますね」
「まさか、出身っていう理由で戦争に?! でも、不正しまくってた犯罪者だよ? 」
「陛下、残念ですが……口実としては充分かと。 私の予想ですが、既に隣国であるキャット王国とドック王国はゴルメディア帝国に飼われてます」
ルカの予想にジャックが反論する。
「いや、ルカ殿。 それはあり得ません! ドック王国は、陛下の叔父上様が婿として王になった際に秘密同盟を結んでる筈です! キャット王国はまだしも、ドック王国は……」
「ジャック殿、期待すれば滅ぶのはエントン王国ですよ? 以前より騎士団長の父から送られてきていた羊皮紙によると……ゴルメディア帝国と二国の間での貿易が異常な程に高くなっています。 そして、エントン王国の更なる改革で経済力として必要な亜人の奴隷が断たれました」
ルカの話しに、周囲のメイドや兵士達はどんどん青ざめていく。 どうやら、ルカの話が戯れ言では無いと理解し始めたようだ。
皆が女王であるマリに注目する。
「うん、その叔父上が誰かは知らないけど……つまり、ルカはゴルメディア帝国が亜人の奴隷を売らなくなった意趣返しに隷属させた二国に攻めさせるかもって事?」
「陛下残念ですが、かもではなく……ほぼ確実です」
「すまない、ずっと聞いていたんだが……何故そんな事が分かるんだい? 君は魔法使いじゃないだろ?」
前に出てきたキサラギの質問に、ルカは自信を持って答える。
「もし、私でしたら陛下不在の今を狙うからです。 他の小国を刺激しないように、同じ小国の二国を使い攻め滅ぼします。 二国は建前上、陛下を差し出せと要求するでしょうが……狙いは亜人の代わりにエントン王国の民を奴隷にする事と考えます。 だから、差し出す陛下の居ないこのタイミングなのです」
「だから、不眠不休で戻ると? 仮にルカ殿の推測が正しいとしましょう……エントン王国に勝ち目はあるのですか?」
メリーの鋭い視線がルカを射貫いた。 マリや皆がルカに注目する中、ルカは自信満々で言い放つ。
「勿論……ありません!!!!」
「「「「「えぇぇぇぇぇ!?」」」」」
広場に驚愕の悲鳴が響き渡った。
メリーに昔話を聞きながら馬車に揺られること数時間。
既に昔話は堪えられない内容となっていた為、マリの驚きは止まらない。
「はい、その……ジャック以外の執事では務まらず、皆心と身体に傷を負って辞めていきましたから」
どうやら、転生前のマリは真の暴君だったようだ。
幼少の頃から執事やメイドを奴隷のように扱い、欲しいと思った物や人は無理矢理手に入れていた。
「ですが、まだ少年のジャックが専属の執事となってからは多少お淑やかになられましたよ?」
「な、なんで?」
「ふふ……ジャックだけでしたから。 幼きマリ様を本気で叱り、まるで鬼の様に厳しく仕えた執事は。ふふふ、 長年共に仕えたウォンバットですらマリ様には強く言えなかったんですけどね~」
クスクスと笑うメリーを見ながらマリの脳内で、少年のジャックが幼いマリをガミガミと叱る光景が浮かんだ。
「ジャック……少年の頃から気苦労が絶えなかったんだね」
「ふふ、陛下? それ、本人に言ったら怒られますからね?」
「ちゃんと分かってるよ! 流石に言わないよ……あはは」
苦笑いするマリを、メリーは何処か寂しげに見つめていた。
それからも暫く昔話に花が咲いたが、マリがある事に気付く。
「ん? あれ? そういえば……メリーさんって、今幾つ? 聞いた事無かったよね」
「!? 」
明らかに動揺するメリーを他所に、マリの疑問は止まらない。
「私が産まれた時を知ってるし、少年のジャックも知ってるのおかしくない?? だって、メリーさん凄く綺麗で若いしジャックとそんなに年離れてないよ……ね? それに……さっき執事長のーーコンコンコン!
顔色がどんどん悪くなるメリーに助け船が来た。 マリにとってはタイミングの悪い事に、馬車が止まりドアがノックされたのだ。
「陛下、すみませんが昔話はとりあえず此処までという事で。 はい、用件を」
(ん……? メリーさん、なんか誤魔化した? あぁ、そりゃそっか。 女性に年齢を聞くのは同性でもマナー違反だよね)
捲し立てる様に話すメリーをマリは不審に思うが、内心で納得するのであった。
「はっ! 護衛隊長であります! 時刻が昼時となりました、近くの広場で昼食等いかがでしょうか」
「陛下、いかがなさいますか?」
「お腹空いてるかも! 兵士達にも無理させたくないし、休憩にしよう!」
「ふふ、畏まりました。 では隊長、広場の安全確保をお願い致します」
「はっっ! 直ちに!」
馬車からガチャガチャという足音が離れてから、メリーはポツリと口を開いた。
「昼食の準備がございますので、私は1度席を外します。 この後は、どなたかと話されますか?」
「え? ん~……ルカとも話すことあるし、ヨ……キサラギさんとも話したいか……な?」
「畏まりました、ではこの後はルカ殿をお呼び致しますので昼食が出来るまではごゆっくりなさって下さい」
「あ……はい」
暗に、恋人のキサラギとは2人っきりに出来ませんと言われたマリは少し落ち込む。 しかし、メリーが悪戯が成功した子供のように微笑んでいるのを見て嵌められた事に気付いた。
「ふふ、陛下……夜はキサラギと共に過ごしても宜しいですよ?」
「もーーー! メリーさーーーん!?」
怒るマリを無視してメリーは昼食の準備に立ち去る。
「はぁ……でも、また普通に話せて良かったなぁ。 ギスギスなのは嫌いだよ」
馬車の窓から立ち去るメリーを見ながら、マリはポツリと呟いた。
◆◇◆
ーーーーで、今回亜人の皆を解放しに来たんだよ~」
あれからルカが馬車を訪れ、これまでの経緯を詳しく聞かれたのでマリは思い出しながら話した。
「なるほど……詳しくお話し下さりありがとうございます陛下。 詳細は考えを纏めてからになりますが、進言しても宜しいですか?」
真剣に話を聞いていたルカは、眉をひそめ何やら難しい顔をしている。
「おー、流石だねルカ。 もう、何か思い付いたの?」
「はい、今すぐ不眠不休で急ぎ王城に戻りましょう」
ノリの軽いマリとは違い、ルカは重く至極真面目にとんでもない事を言い出した。
「……えぇ!?」
コンコンコン
「陛下大丈夫でございますか? 昼食の準備が出来ましたが……」
マリが驚きの声を上げると同時に扉が開き、メリーが目を丸くして立っていた。
「メリーさん、ありがとうございます。陛下、進言の理由はとりあえず昼食を食べながらに致しましょう」
「う、うん」
嫌な予感を胸に、マリは馬車を降りる。
◆◇◆
「さて、昼食も食べ終えましたし……皆さんも聞いて下さい。この後、王城まで不眠不休で急ぎ戻ります」
広場で昼食を終え、突然のルカの発言にざわめきがおきる。
「皆待って、落ち着いて。 ルカ、説明してくれる? 何故、そんなに急ぐの?」
「はい、まずは……現在のエントン王国の状況ですが、限りなく悪い状況です。 最悪……隣国とゴルメディア帝国の三国が同時に攻めてきます」
「「「「なっっ!?」」」」
ルカの発言は正に青天の霹靂だ。
メリーやジャックも目を見開き、護衛の兵士達には緊張が走る。
「皆、静かに! ルカ……それは何故?」
しかし、落ち着いたマリの声が皆を冷静にさせる。
「流石ですね陛下……。 先程のお話しから察するに、陛下は改革をやり過ぎました」
「え? エントン王国の改革をやり過ぎたからなの!?」
「はい、そうです。 陛下は、処刑した貴族達の血筋は調べられましたか?」
「ん~……メリーさん?」
ルカの質問にマリは首を傾げ、そのままメリーに助けを求めた。
問われたメリーは、メイド服のスカートから羊皮紙の束を取り出し凄まじい速度で確認する。
「少々お待ちを……はい、確かに何名かの配偶者が隣国出身ではありますね」
「まさか、出身っていう理由で戦争に?! でも、不正しまくってた犯罪者だよ? 」
「陛下、残念ですが……口実としては充分かと。 私の予想ですが、既に隣国であるキャット王国とドック王国はゴルメディア帝国に飼われてます」
ルカの予想にジャックが反論する。
「いや、ルカ殿。 それはあり得ません! ドック王国は、陛下の叔父上様が婿として王になった際に秘密同盟を結んでる筈です! キャット王国はまだしも、ドック王国は……」
「ジャック殿、期待すれば滅ぶのはエントン王国ですよ? 以前より騎士団長の父から送られてきていた羊皮紙によると……ゴルメディア帝国と二国の間での貿易が異常な程に高くなっています。 そして、エントン王国の更なる改革で経済力として必要な亜人の奴隷が断たれました」
ルカの話しに、周囲のメイドや兵士達はどんどん青ざめていく。 どうやら、ルカの話が戯れ言では無いと理解し始めたようだ。
皆が女王であるマリに注目する。
「うん、その叔父上が誰かは知らないけど……つまり、ルカはゴルメディア帝国が亜人の奴隷を売らなくなった意趣返しに隷属させた二国に攻めさせるかもって事?」
「陛下残念ですが、かもではなく……ほぼ確実です」
「すまない、ずっと聞いていたんだが……何故そんな事が分かるんだい? 君は魔法使いじゃないだろ?」
前に出てきたキサラギの質問に、ルカは自信を持って答える。
「もし、私でしたら陛下不在の今を狙うからです。 他の小国を刺激しないように、同じ小国の二国を使い攻め滅ぼします。 二国は建前上、陛下を差し出せと要求するでしょうが……狙いは亜人の代わりにエントン王国の民を奴隷にする事と考えます。 だから、差し出す陛下の居ないこのタイミングなのです」
「だから、不眠不休で戻ると? 仮にルカ殿の推測が正しいとしましょう……エントン王国に勝ち目はあるのですか?」
メリーの鋭い視線がルカを射貫いた。 マリや皆がルカに注目する中、ルカは自信満々で言い放つ。
「勿論……ありません!!!!」
「「「「「えぇぇぇぇぇ!?」」」」」
広場に驚愕の悲鳴が響き渡った。
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