[完結]転生したのは死が間近の女王様!? ~超可愛い弟が王になれるよう平凡な女王が抗う奮闘記~

秋刀魚妹子

文字の大きさ
28 / 231

第26話 散々な昔話と一大事

しおりを挟む
 「えぇ? 小さい時の私って、そんなに暴君だったっけ!?」

 メリーに昔話を聞きながら馬車に揺られること数時間。

 既に昔話は堪えられない内容となっていた為、マリの驚きは止まらない。

 「はい、その……ジャック以外の執事では務まらず、皆心と身体に傷を負って辞めていきましたから」

 どうやら、転生前のマリは真の暴君だったようだ。

 幼少の頃から執事やメイドを奴隷のように扱い、欲しいと思った物や人は無理矢理手に入れていた。

 「ですが、まだ少年のジャックが専属の執事となってからは多少お淑やかになられましたよ?」

 「な、なんで?」

 「ふふ……ジャックだけでしたから。 幼きマリ様を本気で叱り、まるで鬼の様に厳しく仕えた執事は。ふふふ、 長年共に仕えたウォンバットですらマリ様には強く言えなかったんですけどね~」

 クスクスと笑うメリーを見ながらマリの脳内で、少年のジャックが幼いマリをガミガミと叱る光景が浮かんだ。

 「ジャック……少年の頃から気苦労が絶えなかったんだね」

 「ふふ、陛下? それ、本人に言ったら怒られますからね?」

 「ちゃんと分かってるよ! 流石に言わないよ……あはは」

 苦笑いするマリを、メリーは何処か寂しげに見つめていた。

 それからも暫く昔話に花が咲いたが、マリがある事に気付く。

 「ん? あれ? そういえば……メリーさんって、今幾つ? 聞いた事無かったよね」

 「!? 」

 明らかに動揺するメリーを他所に、マリの疑問は止まらない。

 「私が産まれた時を知ってるし、少年のジャックも知ってるのおかしくない?? だって、メリーさん凄く綺麗で若いしジャックとそんなに年離れてないよ……ね? それに……さっき執事長のーーコンコンコン!

 顔色がどんどん悪くなるメリーに助け船が来た。 マリにとってはタイミングの悪い事に、馬車が止まりドアがノックされたのだ。

 「陛下、すみませんが昔話はとりあえず此処までという事で。 はい、用件を」

 (ん……? メリーさん、なんか誤魔化した? あぁ、そりゃそっか。 女性に年齢を聞くのは同性でもマナー違反だよね)

 捲し立てる様に話すメリーをマリは不審に思うが、内心で納得するのであった。

 「はっ! 護衛隊長であります! 時刻が昼時となりました、近くの広場で昼食等いかがでしょうか」

 「陛下、いかがなさいますか?」

 「お腹空いてるかも! 兵士達にも無理させたくないし、休憩にしよう!」

 「ふふ、畏まりました。 では隊長、広場の安全確保をお願い致します」

 「はっっ! 直ちに!」

 馬車からガチャガチャという足音が離れてから、メリーはポツリと口を開いた。

 「昼食の準備がございますので、私は1度席を外します。 この後は、どなたかと話されますか?」

 「え? ん~……ルカとも話すことあるし、ヨ……キサラギさんとも話したいか……な?」

 「畏まりました、ではこの後はルカ殿をお呼び致しますので昼食が出来るまではごゆっくりなさって下さい」

 「あ……はい」

 暗に、恋人のキサラギとは2人っきりに出来ませんと言われたマリは少し落ち込む。 しかし、メリーが悪戯が成功した子供のように微笑んでいるのを見て嵌められた事に気付いた。

 「ふふ、陛下……夜はキサラギと共に過ごしても宜しいですよ?」

 「もーーー! メリーさーーーん!?」

 怒るマリを無視してメリーは昼食の準備に立ち去る。

 「はぁ……でも、また普通に話せて良かったなぁ。 ギスギスなのは嫌いだよ」

 馬車の窓から立ち去るメリーを見ながら、マリはポツリと呟いた。

 ◆◇◆

 ーーーーで、今回亜人の皆を解放しに来たんだよ~」

 あれからルカが馬車を訪れ、これまでの経緯を詳しく聞かれたのでマリは思い出しながら話した。

 「なるほど……詳しくお話し下さりありがとうございます陛下。 詳細は考えを纏めてからになりますが、進言しても宜しいですか?」

 真剣に話を聞いていたルカは、眉をひそめ何やら難しい顔をしている。

 「おー、流石だねルカ。 もう、何か思い付いたの?」

 「はい、今すぐ不眠不休で急ぎ王城に戻りましょう」

 ノリの軽いマリとは違い、ルカは重く至極真面目にとんでもない事を言い出した。

 「……えぇ!?」

 コンコンコン

 「陛下大丈夫でございますか? 昼食の準備が出来ましたが……」

 マリが驚きの声を上げると同時に扉が開き、メリーが目を丸くして立っていた。

 「メリーさん、ありがとうございます。陛下、進言の理由はとりあえず昼食を食べながらに致しましょう」

 「う、うん」

 嫌な予感を胸に、マリは馬車を降りる。

 ◆◇◆

 「さて、昼食も食べ終えましたし……皆さんも聞いて下さい。この後、王城まで不眠不休で急ぎ戻ります」

 広場で昼食を終え、突然のルカの発言にざわめきがおきる。

 「皆待って、落ち着いて。 ルカ、説明してくれる? 何故、そんなに急ぐの?」

 「はい、まずは……現在のエントン王国の状況ですが、限りなく悪い状況です。 最悪……隣国とゴルメディア帝国の三国が同時に攻めてきます」

 「「「「なっっ!?」」」」

 ルカの発言は正に青天の霹靂だ。

 メリーやジャックも目を見開き、護衛の兵士達には緊張が走る。

 「皆、静かに! ルカ……それは何故?」

 しかし、落ち着いたマリの声が皆を冷静にさせる。

 「流石ですね陛下……。 先程のお話しから察するに、陛下は改革をやり過ぎました」

 「え? エントン王国の改革をやり過ぎたからなの!?」

 「はい、そうです。 陛下は、処刑した貴族達の血筋は調べられましたか?」

 「ん~……メリーさん?」

 ルカの質問にマリは首を傾げ、そのままメリーに助けを求めた。

 問われたメリーは、メイド服のスカートから羊皮紙の束を取り出し凄まじい速度で確認する。

 「少々お待ちを……はい、確かに何名かの配偶者が隣国出身ではありますね」

 「まさか、出身っていう理由で戦争に?! でも、不正しまくってた犯罪者だよ? 」

 「陛下、残念ですが……口実としては充分かと。 私の予想ですが、既に隣国であるキャット王国とドック王国はゴルメディア帝国に飼われてます」

 ルカの予想にジャックが反論する。

 「いや、ルカ殿。 それはあり得ません! ドック王国は、陛下の叔父上様が婿として王になった際に秘密同盟を結んでる筈です! キャット王国はまだしも、ドック王国は……」

 「ジャック殿、期待すれば滅ぶのはエントン王国ですよ? 以前より騎士団長の父から送られてきていた羊皮紙によると……ゴルメディア帝国と二国の間での貿易が異常な程に高くなっています。 そして、エントン王国の更なる改革で経済力として必要な亜人の奴隷が断たれました」

 ルカの話しに、周囲のメイドや兵士達はどんどん青ざめていく。 どうやら、ルカの話が戯れ言では無いと理解し始めたようだ。

 皆が女王であるマリに注目する。

 「うん、その叔父上が誰かは知らないけど……つまり、ルカはゴルメディア帝国が亜人の奴隷を売らなくなった意趣返しに隷属させた二国に攻めさせるかもって事?」

 「陛下残念ですが、かもではなく……ほぼ確実です」

 「すまない、ずっと聞いていたんだが……何故そんな事が分かるんだい? 君は魔法使いじゃないだろ?」
 
 前に出てきたキサラギの質問に、ルカは自信を持って答える。

 「もし、私でしたら陛下不在の今を狙うからです。 他の小国を刺激しないように、同じ小国の二国を使い攻め滅ぼします。 二国は建前上、陛下を差し出せと要求するでしょうが……狙いは亜人の代わりにエントン王国の民を奴隷にする事と考えます。 だから、差し出す陛下の居ないこのタイミングなのです」

 「だから、不眠不休で戻ると? 仮にルカ殿の推測が正しいとしましょう……エントン王国に勝ち目はあるのですか?」

 メリーの鋭い視線がルカを射貫いた。 マリや皆がルカに注目する中、ルカは自信満々で言い放つ。

 「勿論……ありません!!!!」

 「「「「「えぇぇぇぇぇ!?」」」」」

 広場に驚愕の悲鳴が響き渡った。 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

悪役令嬢に転生するも魔法に夢中でいたら王子に溺愛されました

黒木 楓
恋愛
旧題:悪役令嬢に転生するも魔法を使えることの方が嬉しかったから自由に楽しんでいると、王子に溺愛されました  乙女ゲームの悪役令嬢リリアンに転生していた私は、転生もそうだけどゲームが始まる数年前で子供の姿となっていることに驚いていた。  これから頑張れば悪役令嬢と呼ばれなくなるのかもしれないけど、それよりもイメージすることで体内に宿る魔力を消費して様々なことができる魔法が使えることの方が嬉しい。  もうゲーム通りになるのなら仕方がないと考えた私は、レックス王子から婚約破棄を受けて没落するまで自由に楽しく生きようとしていた。  魔法ばかり使っていると魔力を使い過ぎて何度か倒れてしまい、そのたびにレックス王子が心配して数年後、ようやくヒロインのカレンが登場する。  私は公爵令嬢も今年までかと考えていたのに、レックス殿下はカレンに興味がなさそうで、常に私に構う日々が続いていた。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?

はくら(仮名)
恋愛
 ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。 ※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。

処理中です...