[完結]転生したのは死が間近の女王様!? ~超可愛い弟が王になれるよう平凡な女王が抗う奮闘記~

秋刀魚妹子

文字の大きさ
45 / 231

第43話 援軍の到着

しおりを挟む
 エントン王国の王都、南の城壁で最後の決戦が開始された頃。

 近くの平原まで800程の騎馬隊が迫っていた。

 「おい、お前達! もっと早く駆けろ! 私の訓練を忘れたのか?!」

 激を飛ばしながら先頭を駆けるのは、エントン王国最強の騎士ルニア辺境伯だ。

 フルプレートの分厚い鎧を身に纏い、背中には大人程の大きさの大剣を背負っている。

 「「「「「「はい!」」」」」」

 その後ろを同じ鎧を身に纏い、槍や大斧にルニア辺境伯程では無い大きさの大剣を担いだ6名の女貴族達が必死に馬を走らせていた。

 この6名は、王都で燻っていた女爵達だ。 マリの改革の一環で、ルニア辺境伯の元に付き地獄の特訓を受けていた。だが、この6名は元々好戦的な貴族だった為地獄の特訓を喜んで受けている。

 貴族達の後ろを、ルニア辺境伯の精鋭軍が追従していた。

 「はははは! 見えたぞ! まだ王都は陥落していない! ルカの想定通りだな、流石私の息子だ。 お前達! このまま城門前の敵を蹴散らすぞ! 皆殺しにしろぉぉぉぉぉ!」

 ルニア辺境伯が大剣を掲げ、城門に群がる敵へと突っ込む。

 「「「「「「敵を殺せぇぇ!皆殺しだぁぁぁぁ!!」」」」」」

 女貴族達もそれぞれの武器を構え、獰猛な笑みを浮かべる。怯えは一切無く、あるのは鍛えられた自分の力を敵にぶつけたいという殺意だけだ。
 
 まるで、水を得た魚の様な主と女爵達に配下の騎馬兵達は苦笑いを浮かべていた。

 ◆◇◆

 援軍として到着したルニア辺境伯達は直ぐ様南の城門前を掃討し、味方へと合流を果たしていた。

 それでも敵は攻勢の手を止めない。城壁に群がり、何度梯子を落とされても攻め寄せている。 

 「おや、また男前が上がりましたね。 我が夫」

 ルニア辺境伯が馬上で大剣に付着した血を振って落としながら、城門から出てきた傷だらけの騎士団長ボルガスを見て微笑む。

 「がははは! 戦傷は男の誉れよ! しかし我が美しき妻は、やはり戦場が良く似合うな。待っていたぞ……ルニア」

 ボルガスが漆黒の鎧の胸を叩き、敬愛を示す。

 「ふふっ、貴方が世辞とは……本当にギリギリだったかしら?」

 「いや? お前が来るまで暇を潰しておっただけだ」  

 軽口を叩きながら2人は馬を並べる。

 「さて、我が夫。 久しぶりにデートに行かないか?」

 「ほう……たまには良いのう。 何処に行く?」

 ボルガスがニヤリと笑う。

 「当然……」

 ルニアも笑い、周囲で近寄る敵を斬り殺している女爵達や配下の兵士達も笑顔だった。

 「敵の本陣へ!! さぁ、皆! 手柄が欲しいか? 敵を殺したいか? 仲間を守りたいか? ならこの赤い死神に付いて来い! 全てくれてやる! 行くぞぉぉぉぉ!」

 ルニアが大剣を高々と掲げ、敵本陣に向けて突撃を開始する。 隣には同じく大剣を構えた騎士団長ボルガスが続く。

 「騎士団! 最後の意地を見せよ! 辺境伯の精鋭に負けぬ力を見せよ! 我等こそエントン王国の守護者なり! 続けぇぇぇ!」

 「「「「うぉぉぉぉっ!」」」」

 残存する騎士団200名の騎馬兵と辺境伯軍の騎馬兵800名が鋭い槍の様に敵を貫く。

 「「「「「「ひゃっはぁぁぁぁ!」」」」」」

 まだまだ元気な6名の女爵達も、意気揚々と敵の本陣へと突っ込む。

 その様は、敵からすると狂暴な化け物達の様に写った事だろう。

 ◆◇◆

 ルニア辺境伯達が敵本陣に突撃を開始した時、城壁上での戦闘も激しくなっていた。 敵が最後の力を振り絞り猛攻撃を仕掛けてきたのだ。

 「援軍が騎士団と合流! 敵本陣へと突撃して行きました!」

 城門からの伝令に兵士達から歓声が上がる。

 「気を抜くな! まだ敵は攻めて来ておる! おい、近衛兵達は騎士団が抜けた城門を守れぇ!」

 「はっ! おい、行くぞ!」

 敵の頭を蹴り砕きながらウォンバットが指示を飛ばすと、生き残っている近衛兵達が城門へと走る。

 「おい坊主! 後輩達じゃ頼りねぇ! 儂等も行ってくるわい!」

 その後ろを元重近衛兵の老人達が追う。しかし、城壁上もかなり劣勢だ。 敵は本陣が攻撃されるのも構わず此方を攻めてきている。 このままだと、敵本陣が落ちる前に城壁が取られるだろう。 その場合、また広場まで押し込まれてしまう。

 「執事長!  税務管殿が大精霊魔法で敵を押し出すから一旦下がって欲しいとの事だ!」

 嫌な予感にウォンバットが冷や汗をかいていると孫のジャックが駆けてきた。

 「爺ちゃんと呼べジャック! ほぉ、大精霊魔法か。 お前達! 一旦下がるぞぉ!」

 ウォンバットの指示に従い、城壁の縁から味方が急ぎ離れる。

 「殿下もお早く!」
 
 「は、はい!」

 ジャックに連れられたルーデウスが避難したのを確認し、ヨハネが魔法を唱え始めた。

 「風の大精霊、気難しい大精霊、古き友の私が願う。私の仲間を救っておくれ、同じ精霊を苦しめた悪俗達を退けておくれ、大旋風!」

 ヨハネの周囲に突風が吹き荒れ、城壁の上をまるで大きな手が凪払ったかの様な衝撃が走る。

 「な、なんだ?! 風が、風が俺の足を掴んだ?! ぎゃぁぁぁぁ!」

 敵兵士だけを掴んだ風が城壁の外へと向かって吹き荒れた。

 「「「「「助けてくれぇ! ぎゃぁぁぁぁ!」」」」」

 敵兵達と掛けられた梯子も全てが吹き飛ぶ。

 「よし、今だ! 仕切り直しじゃ! 梯子をもう掛けさせるな!! 耐えれば勝つぞ!」

 「「「「うぉぉぉぉっ!」」」」

 ヨハネの精霊魔法で士気が回復した味方の兵士達が城壁の防衛に戻っていく。

 「ありがとうキサラギさん! おかげで……キサラギさん?!」

 ルーデウスがその様子を見ながらヨハネに感謝を伝えるが、ヨハネは膝を付き息を荒げていた。 顔も真っ青で大粒の汗が滴る。

 「税務管殿?! おい、ヨハネ! しっかりしろ!」

 ルーデウスの異変に気付いたジャックもヨハネを支えるが、ヨハネの身体からは完全に力が抜けていた。

 「ふふ……すまない。 こんなに短時間で精霊魔法を使うのなんて随分久しぶりだったからね。 暫く動けそうもないかな」

 ジャックに支えられたまま気絶したヨハネは味方の兵士に後方へと運ばれて行く。

 昨日から精霊魔法を使い続けたヨハネの身体は既に限界を迎えていた。 通常の魔法使いであるエルフ達の中でも最強の魔力を有するヨハネだからこそ可能だった事だ。

 普通のエルフだったら、数回精霊魔法を使用すれば休息が必要となる。
 
 ヨハネのお陰で立て直せたエントン王国側は再度奮起し、徹底的に城壁から敵を落とし続けた。

 それから数十分後。

 「ルーデウス殿下に伝令! 伝令ー!」

 城門に味方の騎馬が駆け寄り、大声で叫んだ。

 「ルニア辺境伯夫妻、精鋭の騎馬隊により敵本陣陥落! 敵総大将のキャット女王とドック女王の首を落としました!」 

 赤い死神が到着後……僅か1時間で敵本陣が陥落したという報告が届いた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

虐げられていた次期公爵の四歳児の契約母になります!~幼子を幸せにしたいのに、未来の旦那様である王太子が私を溺愛してきます~

八重
恋愛
伯爵令嬢フローラは、公爵令息ディーターの婚約者。 しかし、そんな日々の裏で心を痛めていることが一つあった。 それはディーターの異母弟、四歳のルイトが兄に虐げられていること。 幼い彼を救いたいと思った彼女は、「ある計画」の準備を進めることにする。 それは、ルイトを救い出すための唯一の方法──。 そんな時、フローラはディーターから突然婚約破棄される。 婚約破棄宣言を受けた彼女は「今しかない」と計画を実行した。 彼女の計画、それは自らが代理母となること。 だが、この代理母には国との間で結ばれた「ある契約」が存在して……。 こうして始まったフローラの代理母としての生活。 しかし、ルイトの無邪気な笑顔と可愛さが、フローラの苦労を温かい喜びに変えていく。 さらに、見目麗しいながら策士として有名な第一王子ヴィルが、フローラに興味を持ち始めて……。 ほのぼの心温まる、子育て溺愛ストーリーです。 ※ヒロインが序盤くじけがちな部分ありますが、それをバネに強くなります ※「小説家になろう」が先行公開です(第二章開始しました)

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ 

さら
恋愛
 会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。  ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。  けれど、測定された“能力値”は最低。  「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。  そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。  優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。  彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。  人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。  やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。  不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。 人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。 転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。 せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。 少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

枯れ専令嬢、喜び勇んで老紳士に後妻として嫁いだら、待っていたのは二十歳の青年でした。なんでだ~⁉

狭山ひびき
恋愛
ある日、イアナ・アントネッラは父親に言われた。 「来月、フェルナンド・ステファーニ公爵に嫁いでもらう」と。 フェルナンド・ステファーニ公爵は御年六十二歳。息子が一人いるが三十年ほど前に妻を亡くしてからは独り身だ。 対してイアナは二十歳。さすがに年齢が離れすぎているが、父はもっともらしい顔で続けた。 「ジョルジアナが慰謝料を請求された。ステファーニ公爵に嫁げば支度金としてまとまった金が入る。これは当主である私の決定だ」 聞けば、妹のジョルジアナは既婚者と不倫して相手の妻から巨額の慰謝料を請求されたらしい。 「お前のような年頃の娘らしくない人間にはちょうどいい縁談だろう。向こうはどうやらステファーニ公爵の介護要員が欲しいようだからな。お前にはぴったりだ」 そう言って父はステファーニ公爵の肖像画を差し出した。この縁談は公爵自身ではなく息子が持ちかけてきたものらしい。 イオナはその肖像画を見た瞬間、ぴしゃーんと雷に打たれたような衝撃を受けた。 ロマンスグレーの老紳士。なんて素敵なのかしら‼ そう、前世で六十歳まで生きたイオナにとって、若い男は眼中にない。イオナは枯れ専なのだ! イオナは傷つくと思っていた両親たちの思惑とは裏腹に、喜び勇んでステファーニ公爵家に向かった。 しかし……。 「え? ロマンスグレーの紳士はどこ⁉」 そこでイオナを待ち受けていたのは、どこからどう見ても二十歳くらいにしか見えない年若い紳士だったのだ。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】

iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。 小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

処理中です...