[完結]転生したのは死が間近の女王様！？ ~超可愛い弟が王になれるよう平凡な女王が抗う奮闘記~

第122話 予知か悪夢か

　デラン達が地下牢に到着した時には全てが終わっていた。

　見知った地下牢の壁には謎の扉が開き、其処から出てきたであろう精霊人形達を全て破壊したルニアが立っていた。

　「ルニア侯爵殿、遅くなり申し訳ない」

　「ふっ、ルニアよ。　終わったか？　……どうした」

　デランとラリーが話しかけるが、ルニアは浮かない顔をしている。

　「ラリー師匠、ヨハネ殿の言う通りこの者達はもう破壊する以外に救いは無いのですよね……」

　「そうじゃな……。　精霊魔法使いの達人であるヨハネ殿の言葉じゃ……そうなのじゃろう」

　ラリーにもルニアの気持ちは痛い程に分かる。
　戦闘中は相手を殺すことだけを考えるように心を無慈悲にする。　しかし、その反動で終われば敵の事情等を考えてしまうものだ。

　並の兵士達では、尋常じゃない強さを持つ精霊人形に一瞬で殺されるだろう。　エントン王国最強のルニアやラリー達が対処するしかないのだ。

　「ルニア侯爵殿、この蛮行は全てゴルメディア帝国の兵器開発責任者であるクロモト　フォル　ナオトという老人の仕業だと私は考えております。　もし、機会があれば人形にされた少女達の仇を必ずや討ちましょう」

　「デラン殿……そうだな、必ず報いを受けさせてやろう」

　ルニアは巨大な大剣を片手に上の階へと上がる。

　「さぁ、死体を片付けて味方を入れてやろう。　陛下は無事なのだろ？」

　連れ立って階段を上がるデランはメリーが慌てていたのを思い出す。

　「そういえば、メリー殿が慌てていたのを思い出しました。　直ぐにお呼びしましょう！」

　「分かった、綺麗な部屋を探しておこう。　ラリー師匠もお願いします」

　「勿論じゃ、早く休んでいただこう」

　デランは大砦の外へと走る。

　大砦の外には既にメリー達が到着しており、後方から向かって来ていた民達も目と鼻の先に来ていた。

　「デラン殿、ここです！　状況はどうですか？」

　「大砦は既に落ちております。　早く陛下を中に」

　「流石です。　無茶をさせてしまい申し訳ありません」

　「いえ、ルニア侯爵殿達のお陰で黒騎士団に被害は皆無でした。　私達が出来た事など、残党の処理ぐらいです」

　メリー達は苦しむマリを急ぎ大砦に運び込む。

　「他の皆も中に入ってくれ！　メリー殿、中にルニア侯爵殿が居られます。　話しは其処で」

　「分かりました！　ジャック、陛下を中に！」

　メリーとジャック達は大砦の中を進む。

　大勢の黒騎士達が遺体を運び処理しているが、まだ中は凄惨な有り様だ。

　「メリー殿！　こちらへ！！」

　「ルニア侯爵殿！　感謝致します」

　「この部屋ならまだマシだろう……陛下！？　一体何があったのだメリー殿」

　小綺麗な部屋にマリを運び入れ、ベットに寝かした。
　まだマリの意識は戻らず、目からは黒い靄が出続けている。

　「ゴルメディア帝国で出会った妖精に呪いを掛けられました。　今はキサラギが食い止めていますが、容態が良くならなければもっと離れないと……」

　「ん？　んん？　妖精？　待ってくれメリー殿、何の話をしているのだ？」

　ルニアは全く話に付いていけない。
　一般的に精霊は知っていても、妖精を知る者は居ないからだ。

　「だが、此処まで無理をし過ぎてる。　それに、ヨハネも助けないと危険なんだろ？」

　「それは既に手をうっています。　サードとフォースが隙を見てキサラギを連れて飛んでくる手筈です」

　「分かった、ならキサラギ達が飛んで来てから考えよう」

　「ルニア侯爵殿、どういう状況か説明しますので他の皆さんの所へ案内を。　ジャック、陛下をお願い」

　「任せてくれ。　何かあれば直ぐに呼ぶ」

　ジャックはマリの汗を拭き、メリーはルニア達に何が起きているのかを説明に出ていった。

　「ん……ぅう……ヨハネ」

　マリは意識が無いまま、苦しみながらヨハネの名を呼ぶ。
　それは寝言なのか、何かを感じているのかマリにしか分からない。