[完結]転生したのは死が間近の女王様!? ~超可愛い弟が王になれるよう平凡な女王が抗う奮闘記~

秋刀魚妹子

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第129話 一矢

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 「……ファースト、エントン王国側の森から人形達が来てるっす」

 物見台で見張りを続けていたフィフスが接近する存在に気いた。

 「了解よ。 セカンド、ルニア侯爵殿に知らせて。 フィフス、来てるのは人形だけ? 妖精の気配は無い?」

 少しだけ角を生やしたフィフスが周囲を見渡す。

 「あるっすね。 敵の陣地からポッカリと空いた気配が近付いて来てるっす。 多分、人形達は陽動っすね」

 フィフスが弓を構え、矢を番える。 
 狙う先は当然ルミニスだ。

 「まだ待って、フィフス。 精霊人形達はルニア侯爵殿が相手してくれる。 妖精は引き付けてから一斉に叩くわよ」

 「……了解っす」

 ファーストに止められ、渋々フィフスは弓を下ろす。
 それでも怒りが抑えられないフィフスの頭からは角が生えたままだ。
 
 「ありがとう……サードの事で怒り狂ってるのは貴女だけじゃない。 必ず思い知らせてやる」

 そんなフィフスを見るファースト達の頭にも怒りを表す様に角が生えていた。

 ◆◇◆

 『よし、これで兵士達は精霊人形達に釘付けになる筈ね。 さっさと中に入ってマリを見つけたら直ぐ様縊り殺してやるぅ! 駄目でも、呪いが確実にマリを蝕む。 あはははは、馬鹿な奴等。 大砦を落としたからって良い気になってこんな所に残るなんてぇ』

 ルミニスは微笑みながら大砦へと潜入する。

 しかし、直ぐに異変に気付いた。

 『何よ、コレェ……案山子? あは! 敵が沢山居るとか言ってたけど、偽物の案山子だらけじゃない。 戻ったらブラックはお仕置きねぇ。 きっと、この大砦に居た帝国の兵士達も小細工で逃げ出させたのねぇ……役立たずのゴミばかり』

 大砦から頭を出していた兵士達は全て案山子なのを見たルミニスは笑う。

 マリ達は運良く大砦を手にし、案山子の張りぼてで籠城していたと勘違いしたルミニスは何の警戒もせずに大砦の中に入った。

 『全然居ないじゃなぁい。 あれ? そういえば此処に放置してた旧式の精霊人形達ってどうなったのかしらぁ? 起動したなら、大砦が落ちる訳無いのに……あぁ、やっぱり失敗作はダメねぇ』

 ルミニスの盛大な勘違いは進む。

 実際には旧式の精霊人形達は起動していた。
 ただ、何故か大砦に居た2万ものゴルメディア帝国の兵士達を殺戮しルニアに全て破壊されただけだ。

 当然、遺体も精霊人形達の残骸も燃やしルミニスの目に映る事は無かった。

 やがて無人の大砦を見て回ったルミニスは姿を消したまま広間へと入る。

 其処で、玉座に座るマリを見てルミニスは頬まで裂けた口で嗤った。

 『みぃつけたぁ~! あれれ~? エルフや魔族には逃げられたのかなぁ? そうよねぇ、あいつ等の仲間を1人殺してやったんだもぉん! 卑怯者の魔族らしく尻尾を巻いて逃げたんだねぇぇ! 可哀想なマリぃぃぃ。 でも安心して、直ぐに後を追わせて上げるぅぅぅ』

 背中から黒い棘を出したルミニスはマリ目掛けて突撃した。

 玉座に座るマリは反応する暇も無く、ルミニスの黒い棘が全身を貫く。

 『あはははははは! 死んだ死んだ、やっと死んだ! 目障りな小娘! ほら、苦痛に歪んだその顔を見せ……なっ?!』

 ルミニスが上機嫌でマリの死に顔を見ようとしたその時、確かに殺した筈のマリが煙のように消えた。

 直後、姿を消してる筈のルミニスの背後にファーストとセカンドが影から現れルミニス羽を掴んだ。

 「我等の同胞を殺した罪、償って頂きます!」

 「そうね、倒せなくても苦痛を与えて上げますわ!」

 「「魔隠密術魔人斬り!」」

 2人は魔人化しない程度の本気で角を生やし、全力でルミニスの羽を手刀で切り落とした。 ルミニスの背中からは血の代わりに黒い液体がとび散り、足下に羽が落ち溶けるように消える。

 痛みからか、ルミニスは姿を現し怒り狂う。

 『ぎゃぁぁぁぁぁっ?! お前等ぁぁ! 良くも騙したなぁっ!!』

 しかし、直ぐに背中からは羽が生え変わり黒い手が2人を襲う。 2人の首を掴もうと凄まじい速度で放たれた。

 「うらぁっ! 魔格闘術地獄踵落とし! どしたぁ? クソゴミ羽虫!隙だらけだぜぇぇぇ!!」

 黒い手が2人を掴む前に、天井から落ちてきたフォースが角を生やし魔力を極限まで硬めた踵落としをルミニスの頭部に食らわし爆ぜた。

 だが、その傷も瞬時に癒やしたルミニスは怒りの咆哮を上げる。

 『うぎょっ!? がぁぁぁぁ!! 私を貴様等如きが倒せると思ってるのぉぉ?! 無駄たよ馬鹿共がぁぁぁ!』

 ルミニスの全身から黒い槍が飛び出し、3人を襲う。

 「思ってないっすよ? でも、一矢報いる事は出来たっす。 喰らえ……魔弓術影縫い」

 完璧なタイミングでフィフスが紅い矢じりの付いた矢を無数に放ち、ルミニスの全身を貫いた。

 『あがぁっ?! クソっ! こんな傷、私に効くわけ……はぁ!? 動けない! クソ! クソクソクソ!』

 ルミニスは身体を動かそうとするが全く動かない。
 傷なら回復したのに動けない事にルミニスは苛立った。

 「無駄っす。 それは攻撃じゃないっすから、効果がきれるまで動けないっすよ。 ……準備に時間が掛かるのがたまに、傷っすけど」

 フィフスの表情は暗い。

 もし、あの時サードの代わりに行っていたら。
 もし、あの時ヨハネ達の判断に反対していたら。

 もし、もし、もし、後になれば幾らでも考えてしまう。

 それでも時は戻せない。

 「サード大先輩……今はこれで許して欲しいっす」

 1番サードを怖がり尊敬していたフィフスの呟きをファースト達は黙って聞いていた。

 「さ、行きますよ。 私達の任務は完了です! それでは、さようなら醜い化け物」

 ファースト達は動けないルミニスを放置して去っていった。

 『クソぉぉぉぉ! 魔族共! マリ! エルフぅぅぅ! 必ず殺してやるからな! 必ず殺してやるぅぅぅぅ!』

 広間には足掻くルミニスの怒声が響き渡るばかりであった。
  
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