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第128話 襲来
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大砦防衛戦が始まって4日目の夜。
「皆聞いてくれ、此処で防衛を始めて4日目が過ぎようとしている。 そんな皆に朗報だ。 陛下より伝令が到着した」
大砦の広間に集まったデランや黒騎士団の隊長各である兵士達は、ルニアからの知らせに喜びの声を上げた。
「陛下は無事に国境に到着、伝令として来てくれたメイドのファーストによると本隊は亡命中の民達の保護を開始したとの事。 よって、我等はこれより……大砦から撤退する!」
遂にエントン王国に亡命する時が来た黒騎士団達は歓声を上げる。
「皆、ルニア侯爵殿の知らせに浮足立つのは分かる。 だが、敵の数は増えるばかりだ。 撤退するのを悟られれば、直ぐ様攻め寄せて来るだろう決して油断するな」
浮足立つ黒騎士団の兵士達にデランが活を入れる。
「ははは、デラン殿の言う通りだ。 数は敵が上回った。 明日の朝には10万程の敵が大砦に攻め寄せるだろうな」
「ふんっ! 殿はこの新重近衛団が請け負う。 さっさと帰るぞ」
既に帝都側の道には敵が集まりつつあり見渡す限りの夜営が見える。 森を何万人にも及ぶ兵士達が切り開き巨大な陣地を形成したのだ。
昼間には大砦の物見台から兵器らしき部品を運び込んでいるとの報告もあった。
ドワーフ達が居ない上に、帝都にあった精霊兵器は全て破壊した為組み立てに時間が掛かるのだろう。
つまり、逃げるなら今の内なのだ。
「デラン殿、例の案山子は準備出来そうか?」
「勿論です。 全員で取り掛かるますので、1時間後には出発できるでしょう」
「助かる。 よろしく頼む」
ルニアは囮の準備をデランに任せ、物見台へと向かう。
其処にはファーストを始め、フィフスまでのメイド暗部部隊が完全武装で待機していた。
「ファースト、皆はどうだ?」
「これは、ルニア侯爵殿。 我等の準備は完了です。 フィフスが見張っておりますので、奴等が接近すれば直ぐに分かるでしょう。 ただ……」
「姿を消せる妖精か……」
「はい。 ヨハネ様でも勝てない相手です。 ですが……もし相見えましたら一矢報いるつもりで我等は残っていますので」
既にメリーからメイド暗部部隊の全員が魔族という存在である事はルニアだけは聞いていた。
聞かされた時の反応は「で?」の一言だったそうだ。
「メリー殿や陛下の命令は忘れるなよ」
「勿論です。 必ず生きて全員帰還します。サードの為にも」
ファーストの言葉に他のメンバーも各々頷く。
「ならばいい、出発は1時間後だ。 奴等が来たら知らせてくれ」
「はい、必ず」
ルニアが去った後、メイド暗部部隊の戦闘員達は静かに殺気を研ぎ澄まさせていた。
◆◇◆
場面はゴルメディア帝国側に移る。
夜営地の指揮官テントではブラックとクロモトが頭を地面に擦らせ必死に許しを請うていた。
『それで? 本当にマリはまだ大砦にいるのね?』
2人が頭を下げる先には指揮官が座る立派な椅子に降り立つルミニスの姿があった。
その姿の後ろには怒りと、荒立ちを表す様にどす黒い靄が蠢いている。
「ひ、ひぃぃ! た、確かですじゃ! 確かに、予想よりも早く大砦を落としたのは予想外でしたが直ぐに儂の可愛い人形ちゃん達で元エントン王国側の森を見張らせております。 もし、マリ達が出れば分かる筈ですじゃ」
「さ、左様でございます。 既に集めれる兵士は全て到着致しました、報告通りに黒騎士達が裏切っていたとしても明日には必ず大砦を奪い返せます!」
2人の部下の言い訳をルミニスは眉をひそめながら聞いていた。
『さっき目覚めた時に、私聞いたよね? もう、マリは殺せた?って。 ねぇ、私の計画がどれ程狂ってるか分かってるの? 馬鹿ばかり、使えると思ったのに。 使えない使えない使えない使えない使えない』
怒れるルミニスの背後のどす黒い靄が手の形になり、クロモトとブラックの首を絞め上げた。
「ぐえっ!? ががぎご!」
「ぎぐっ?! お、お許しをがぎぎ!」
暫く2人を絞め上げたルミニスは満足したのか解放する。
呼吸できる喜びにのたうち回る2人をルミニスは笑う。
『あはははは! 本当に殺す訳ないじゃない。 2人は大切な配下だもん。 でも、一応様子見に行こっかなぁ~、もし殺せそうならそのままマリとエルフをぶち殺せば良いんだからぁ!』
良いことを思いついたルミニスは姿を消し、大砦へと向かった。
まさか、とっくの昔にマリ達が脱出している等と知らずに。
「皆聞いてくれ、此処で防衛を始めて4日目が過ぎようとしている。 そんな皆に朗報だ。 陛下より伝令が到着した」
大砦の広間に集まったデランや黒騎士団の隊長各である兵士達は、ルニアからの知らせに喜びの声を上げた。
「陛下は無事に国境に到着、伝令として来てくれたメイドのファーストによると本隊は亡命中の民達の保護を開始したとの事。 よって、我等はこれより……大砦から撤退する!」
遂にエントン王国に亡命する時が来た黒騎士団達は歓声を上げる。
「皆、ルニア侯爵殿の知らせに浮足立つのは分かる。 だが、敵の数は増えるばかりだ。 撤退するのを悟られれば、直ぐ様攻め寄せて来るだろう決して油断するな」
浮足立つ黒騎士団の兵士達にデランが活を入れる。
「ははは、デラン殿の言う通りだ。 数は敵が上回った。 明日の朝には10万程の敵が大砦に攻め寄せるだろうな」
「ふんっ! 殿はこの新重近衛団が請け負う。 さっさと帰るぞ」
既に帝都側の道には敵が集まりつつあり見渡す限りの夜営が見える。 森を何万人にも及ぶ兵士達が切り開き巨大な陣地を形成したのだ。
昼間には大砦の物見台から兵器らしき部品を運び込んでいるとの報告もあった。
ドワーフ達が居ない上に、帝都にあった精霊兵器は全て破壊した為組み立てに時間が掛かるのだろう。
つまり、逃げるなら今の内なのだ。
「デラン殿、例の案山子は準備出来そうか?」
「勿論です。 全員で取り掛かるますので、1時間後には出発できるでしょう」
「助かる。 よろしく頼む」
ルニアは囮の準備をデランに任せ、物見台へと向かう。
其処にはファーストを始め、フィフスまでのメイド暗部部隊が完全武装で待機していた。
「ファースト、皆はどうだ?」
「これは、ルニア侯爵殿。 我等の準備は完了です。 フィフスが見張っておりますので、奴等が接近すれば直ぐに分かるでしょう。 ただ……」
「姿を消せる妖精か……」
「はい。 ヨハネ様でも勝てない相手です。 ですが……もし相見えましたら一矢報いるつもりで我等は残っていますので」
既にメリーからメイド暗部部隊の全員が魔族という存在である事はルニアだけは聞いていた。
聞かされた時の反応は「で?」の一言だったそうだ。
「メリー殿や陛下の命令は忘れるなよ」
「勿論です。 必ず生きて全員帰還します。サードの為にも」
ファーストの言葉に他のメンバーも各々頷く。
「ならばいい、出発は1時間後だ。 奴等が来たら知らせてくれ」
「はい、必ず」
ルニアが去った後、メイド暗部部隊の戦闘員達は静かに殺気を研ぎ澄まさせていた。
◆◇◆
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夜営地の指揮官テントではブラックとクロモトが頭を地面に擦らせ必死に許しを請うていた。
『それで? 本当にマリはまだ大砦にいるのね?』
2人が頭を下げる先には指揮官が座る立派な椅子に降り立つルミニスの姿があった。
その姿の後ろには怒りと、荒立ちを表す様にどす黒い靄が蠢いている。
「ひ、ひぃぃ! た、確かですじゃ! 確かに、予想よりも早く大砦を落としたのは予想外でしたが直ぐに儂の可愛い人形ちゃん達で元エントン王国側の森を見張らせております。 もし、マリ達が出れば分かる筈ですじゃ」
「さ、左様でございます。 既に集めれる兵士は全て到着致しました、報告通りに黒騎士達が裏切っていたとしても明日には必ず大砦を奪い返せます!」
2人の部下の言い訳をルミニスは眉をひそめながら聞いていた。
『さっき目覚めた時に、私聞いたよね? もう、マリは殺せた?って。 ねぇ、私の計画がどれ程狂ってるか分かってるの? 馬鹿ばかり、使えると思ったのに。 使えない使えない使えない使えない使えない』
怒れるルミニスの背後のどす黒い靄が手の形になり、クロモトとブラックの首を絞め上げた。
「ぐえっ!? ががぎご!」
「ぎぐっ?! お、お許しをがぎぎ!」
暫く2人を絞め上げたルミニスは満足したのか解放する。
呼吸できる喜びにのたうち回る2人をルミニスは笑う。
『あはははは! 本当に殺す訳ないじゃない。 2人は大切な配下だもん。 でも、一応様子見に行こっかなぁ~、もし殺せそうならそのままマリとエルフをぶち殺せば良いんだからぁ!』
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