[完結]転生したのは死が間近の女王様!? ~超可愛い弟が王になれるよう平凡な女王が抗う奮闘記~

秋刀魚妹子

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第216話 マリ反撃開始

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 マリは歯を食いしばりながら、窓から見えるルミニスの視点を見ていた。

 「好き勝手してくれるわね……ルミニス」

 ルミニスが鎖に囚われ、ヨハネに未来を見る力を奪われた所で窓から見える景色は突如として消えた。

 「流石ヨハネ! ルミニスにあの力を使わせたらどうにもならないもんね。 あれ? 真っ暗になった……なんで?」

 マリは窓を開け覗き込んだが、凄まじい倦怠感に襲われ直ぐに離れる。

 「うおっ?! うわぁ……何これ。 しんど~い……」

 マリは意識を保てずにベットへと倒れてしまう。

 「あ~……ごめんねもう1人の私。 少し、ベット使わせ……て」

 抗えない眠気に襲われたマリはそのまま意識を断った。

 ◆◇◆

 「お!? あれ? そっか……此処はもう1人の私の部屋だ」

 飛び起きたマリは周囲を確認し、何があったのか思い出した。

 「もしかして、話し掛けてくれた後に音沙汰が無かったりしたのってあの倦怠感のせいだったのかな……」

 身体を起こし、窓へと向かう。

 「窓は開けたらダメなんだ。 多分……開けて声を出せばルミニスに聞こえちゃう」

 マリは慎重に窓を覗き込んだ。

 見えたルミニスの視点は、何やら動く乗り物の上に立っている所だった。

 「何これ……? まさか、エントン王国に攻め入ってる所!? 嘘でしょ? 私、何日寝てたの?!」

 マリは焦るも、今はまだルミニスの視点から情報を得る事に集中するしか無い。

 暫く見ていると、遂にエントン王国側の大砦が見えてきた。 夥しい数の精霊人形達が砦を襲っているのを確認出来る。

 「酷い……ルミニス、帝国の兵士や民達を精霊人形に変えたのね。 自業自得と云えるけど……気の毒ね」

 ◆◇◆

 それからも、マリは窓を開けない様に注意しながらルミニスの視点を見続けた。

 ルニアが殺される寸前、超巨大新幹線が猛スピードで接近しルミニスをそのまま吹き飛ばしたのを見ていたマリは叫ぶ。

 「よっしゃぁぁあ! 多分、アレ運転してるのアテスだよね。 ナイスだよアテスー!」

 それと同時に超巨大新幹線に轢かれたルミニスの視点は凄まじい速度で移り酔った。

 「うえ~……気持ち悪い。 ちょっと休憩しよ。 ふふ、ざまぁみろルミニス! あの馬鹿でかい新幹線のアイデア、多分酔ってた私が書いたヤツだから! うっぷ……」

 窓からの視点は消え、真っ暗な闇となったのでマリは再度ベットで休む事にした。

 ◆◇◆

 次に、窓にルミニスの視点が映った時には帝国側の大砦に超巨大新幹線が突っ込み大破している所だった。

 「えぇ!? 何があったの? ……ん?」

 ルミニスの視点に小さな妖精が映る。 頬まで裂けた口で笑うのは妖精ルミニスだ。 2人のルミニスが大破した車両を見ながら笑っている。

 「そんな……中に誰が乗ってたんだろ。 大丈夫かな……あぁ、もどかしい! もう1人の私もこんな気持ちだったのかな」

 何も出来ず、見ている事しか出来ない現状にマリは頭を掻きむしる。

 どうすれば身体のコントロールを奪えるのか、日記からマリは既に予測していた。 しかし、それができるのは一度だけだろう。 本当に必要なタイミングを今は待つしか無いのだ。

 「チャンスを待たないと……」

 もう1人のマリに託された言葉を胸に、窓から見える視点を睨み続けた。

 ◆◇◆

 車両から飛び出したヨハネ達に向けて2人のルミニスが触手を尖らせ攻撃する。

 「危ない皆!!」

 思わず窓を開けそうになるのをギリギリ耐えたマリは、ヨハネが防ぐのを見て喜んだ。

 「ヨハネ! 凄いよ! きっと闇の精霊の力を借りれたんだね……流石だよ、ヨハネ」

 次の瞬間には魔王ダイが妖精ルミニスを殴り飛ばしそのまま追い掛ける。 後ろをメリーが追っているのを確認でき、マリは親友の無事を喜んだ。

 「ダイさんつっっっよ! 流石、乙女小説の本編で世界を滅ぼしかけた魔王様! それにメリーさん……良かった助かったんだね」

 2人の後ろを追おうとするヨハネが立ち止まり、此方を見つめる。

 「ごめんねヨハネ……ルミニスを止めれるのは貴方だけなの、私の事はもういい。 お願い、ルミニスを止めて」

 最愛の恋人に別れを告げるようにマリは呟く。

 きっと、ヨハネの姿を見れるのはこれで最後になるのだと覚悟して。

 ヨハネが去った後、ルミニスはマリの身体でジャック達と対峙する。

 恐らく、ヨハネ達が本体である妖精ルミニスを倒すまでの時間稼ぎをする為にジャック達は残ったのだ。

 「ヨハネが言ってた、ルミニスを倒すのには闇の精霊の力が必要だって。 ジャック……お願い、死なないでよ」

 見守っていると、何故か直ぐに襲わなかったルミニスが突如としてジャック達を殺そうとした事に気付いたマリは躊躇う事無く窓を開けた。

 「お酒飲みたい!! お酒飲みたーーーーい!!」

 目的は時間稼ぎなのだ。

 ならば、出来る妨害はこれぐらいだろう。

 案の定、ルミニスは自身の口から飛び出た言葉に固まった。

 「しゃっ! いきなり変な発言したら固まるよね~、分かるよ。 ぐぇ……倦怠感がヤバい。 でも、今は嫌がらせに集中だ! お酒飲みたい! 飲みたい飲みたい飲みたい飲みたい飲みたい飲みたい飲みたい飲みたい飲みたい飲みたい飲みたい飲みたい飲みたい! 本当に飲みたくなっちゃった」

 ルミニスの行動を妨害出来たが、勘違いをしたジャックがルミニスに近付いてしまう。

 「ちょっ?! ジャック!? ダメだよ、ソレは私じゃない! しまった、裏目に出たかも!!」

 ルミニスに首を掴まれたジャックが苦しむ。

 「ヤバいヤバいヤバい! 本当にジャックが殺されちゃう! あれ? っていうか、やるなら今しか無いよね? いつやるの? 今でしょーーー! とりゃーーー!」

 マリは全開に開けた窓に乗り上げ、そのまま下に見える闇へと飛び降りた。

 ◆◇◆

 (……はっ?! どうなった? おろ? これは……うん、黒い触手が動かせるじゃん! それと……少しだけ身体のコントロールも効くね。 おっしゃぁぁぁ!)

 初めての触手だが、気合で無理矢理動かし足下から這い出てから、思いっきりルミニスの頬をぶん殴った。

 「私の男に何さらしとんじゃぁぁぁぁぁ!! 『ぶげよぉぉぉぉぉぉ?!』」

 マリ、最後の反撃開始である。
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