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第220話 黒本直人の走馬灯
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クロモトは自身の首もとに剣が吸い込まれる瞬間、世界が全て遅く感じ、はるか大昔の記憶を走馬灯で見ていた。
◆◇◆
「黒本博士! 研究は順調ですかな?」
「お、これはこれは将軍閣下。 中々ですよ。 これならもうすぐ念願の人形兵器が完成します」
私は満面の笑みで答えた。 軍服姿の将軍も満足そうに、頷く。
「ふふ。 ならば貴殿の娘も、もうじきよな」
「えぇ、えぇ、もうじきです」
この日本帝国において、禁忌とされる人形兵器に着手して5年。 私がいる地下研究施設の上では未だに世界大戦が行われているらしい。
本当に人間とは愚かだ。
何故、1度目の世界大戦で懲りないのか。
だが、そのおかげで私の宿願を果たせるのならば歓迎すべきだろう。
私の答えに満足した将軍が出てゆくのを見送り、1つのカプセルの前へと歩む。
「美優、もうすぐだからね。 もうすぐ、自由に歩ける身体をあげるからね」
カプセルの中では様々なコードに繋げられた美優の脳が浮かんでいる。
そして、私は人形兵器の開発へと戻った。
『これは……儂の記憶? 美優……そう、儂の娘』
◆◇◆
地下研究施設が突如として揺れた。
「こ、これはいったい何事だ?! おい、君!」
「黒本博士! この研究施設を知った国民が暴徒と化し、襲って来ました!」
「何だと!? 何故だ、私達の研究はそもそも戦争で苦しむ国民達の為にされているのだぞ!」
地上へと繋がる階段で射撃音が響く。
「そんな、後……後少しなのに! 君、コレを持って早く逃げるんだ!」
「そんな博士! ……く、分かりました!」
私は研究成果を必死に集め、機密資料を同僚へと託した。
「黒本博士、此処は危険です! 博士も避難通路から早く退避を!」
兵士が私を助けに来てくれたが、私は行く訳にはいかなかった。
「娘を置いてはいけん! 美優は此処から動けないんだ!」
他の同僚達が逃げ延びるなか、私は最後まで研究施設に残った。
「ごめんよ美優、ごめんよ」
私はカプセルの中で浮かぶ美優に謝る。
美優は産まれたと同時に身体が弱く、死にかけた所を私が脳を摘出し助けた。
いや、本当に助けたのか私には分からない。
妻も身体が弱く、出産に耐えられずに息絶えた。
私には、私には美優しか残されていないのだ。
「居たぞ! 此奴が非道な研究をしている奴だ!」
通路を守っていた兵士達は殺られたのだろう、怒れる愚かな国民達が研究施設へと雪崩込んできた。
「君達……なんと愚かな! 私達の研究で、どれだけの兵士達が、国民が助かると思っているんだ!」
「黙れこの外道!」 「おい、見ろあのカプセルを!」
「何て酷い!」 「早く解放してあげよう」 「救ってあげないと!」
「あんな姿で生かされているなんて、きっと苦しいわ」
愚かな国民達が私を取り押さえ、カプセルを割ろうと銃を発砲した。
「やめろ! やめてくれ! 私の娘に何をする!!」
泣き叫ぶ私に、国民達は冷酷な瞳で見下す。
「自分の娘を?!」 「外道! 悪魔!」 「殺せ! 此奴を殺せ!」
『外道? 悪魔だと? ふざけるな! 儂が美優の為にどれだけの地獄を見てきたか!』
私は国民達に殴られ、蹴られ、吹き飛ばされた。
そして、目の前でカプセルは割られ美優の脳が落ちるのを見て私の何かがキレる音がした。
「美優、美優……私の可愛い美優。 大丈夫、大丈夫だよ。 お父さんが、お父さんがずっと隣で一緒に居るからね。 がはっ! ふふ、大丈夫……一緒に眠ろう。 ふふふふふ、きっとお母さんも待ってるからな」
美優を優しく抱き上げ、モニターの前へと進む。
「なんだコイツ……笑ってやがる」 「気持ち悪い! 早く殺して!」 「殺せ! この極悪人を殺せ!」
私は笑いながら、研究施設の自爆スイッチに手をかけた。
「ずっと一緒だよ……美優」
そして研究施設は眩い光に覆われ、全てが無と化した。
その筈だった。
◆◇◆
「……はっ!? 此処は? 何処……だ?」
気が付くと、私は知らない場所に横たわっていた。
近くではまるで地面が落盤しかの様な酷い有り様だ。
「美優?! 美優! 此処は……天国なのか? なら、美優は、美優はどこだ」
ふらふらと彷徨う様に歩いていると、目の前に小さな羽の生えた何かが現れた。
「あはぁ……お前がティナが言ってたイレギュラーねぇ? 未来を変えられる、別世界の人間。 ねぇ……人間。 お前、私の物になりなさい」
その羽の生えた妖精の様な何かは、頬まで裂けた口で笑う。
『あれは……ダメじゃ! 儂よ、逃げるんじゃ! 早く、早くぅぅぅぅ!!』
走馬灯を見ているクロモトが叫ぶが届く事は無い。
これはもう、過ぎた過去なのだから……。
「わ、私は娘の美優を探さないと、娘の側で眠らないと……ぐっ?!」
突如として頭がぐらつく。
「あら? 貴方……その手に持っているのはなぁに?」
いつの間に掴んだのか、人形兵器の略式設計図を私は握っておりそれを開く。
「これは……」
「あはははは! 良いねぇ、これ良いわねぇ。 取り引きしましょうよぉ。 コレを作るのを協力してくれたら、私が貴方の願いを叶えてあげるわぁ」
頭がどんどん靄がかる。
まるで、黒い霧が頭の中に入り込んだ様だ。
「美優と眠れる……。 はい……分かりました。 貴女様の為に、私の研究を捧げます」
『ダメじゃあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』
◆◇◆
(すまん……美優。 愚かなのは父さんだった……)
そして、現実に引き戻されたクロモトは首を斬られる直前。 騙したルミニスへの最後の抵抗としてある命令を精霊兵器に送りそのまま事切れた。
◆◇◆
「黒本博士! 研究は順調ですかな?」
「お、これはこれは将軍閣下。 中々ですよ。 これならもうすぐ念願の人形兵器が完成します」
私は満面の笑みで答えた。 軍服姿の将軍も満足そうに、頷く。
「ふふ。 ならば貴殿の娘も、もうじきよな」
「えぇ、えぇ、もうじきです」
この日本帝国において、禁忌とされる人形兵器に着手して5年。 私がいる地下研究施設の上では未だに世界大戦が行われているらしい。
本当に人間とは愚かだ。
何故、1度目の世界大戦で懲りないのか。
だが、そのおかげで私の宿願を果たせるのならば歓迎すべきだろう。
私の答えに満足した将軍が出てゆくのを見送り、1つのカプセルの前へと歩む。
「美優、もうすぐだからね。 もうすぐ、自由に歩ける身体をあげるからね」
カプセルの中では様々なコードに繋げられた美優の脳が浮かんでいる。
そして、私は人形兵器の開発へと戻った。
『これは……儂の記憶? 美優……そう、儂の娘』
◆◇◆
地下研究施設が突如として揺れた。
「こ、これはいったい何事だ?! おい、君!」
「黒本博士! この研究施設を知った国民が暴徒と化し、襲って来ました!」
「何だと!? 何故だ、私達の研究はそもそも戦争で苦しむ国民達の為にされているのだぞ!」
地上へと繋がる階段で射撃音が響く。
「そんな、後……後少しなのに! 君、コレを持って早く逃げるんだ!」
「そんな博士! ……く、分かりました!」
私は研究成果を必死に集め、機密資料を同僚へと託した。
「黒本博士、此処は危険です! 博士も避難通路から早く退避を!」
兵士が私を助けに来てくれたが、私は行く訳にはいかなかった。
「娘を置いてはいけん! 美優は此処から動けないんだ!」
他の同僚達が逃げ延びるなか、私は最後まで研究施設に残った。
「ごめんよ美優、ごめんよ」
私はカプセルの中で浮かぶ美優に謝る。
美優は産まれたと同時に身体が弱く、死にかけた所を私が脳を摘出し助けた。
いや、本当に助けたのか私には分からない。
妻も身体が弱く、出産に耐えられずに息絶えた。
私には、私には美優しか残されていないのだ。
「居たぞ! 此奴が非道な研究をしている奴だ!」
通路を守っていた兵士達は殺られたのだろう、怒れる愚かな国民達が研究施設へと雪崩込んできた。
「君達……なんと愚かな! 私達の研究で、どれだけの兵士達が、国民が助かると思っているんだ!」
「黙れこの外道!」 「おい、見ろあのカプセルを!」
「何て酷い!」 「早く解放してあげよう」 「救ってあげないと!」
「あんな姿で生かされているなんて、きっと苦しいわ」
愚かな国民達が私を取り押さえ、カプセルを割ろうと銃を発砲した。
「やめろ! やめてくれ! 私の娘に何をする!!」
泣き叫ぶ私に、国民達は冷酷な瞳で見下す。
「自分の娘を?!」 「外道! 悪魔!」 「殺せ! 此奴を殺せ!」
『外道? 悪魔だと? ふざけるな! 儂が美優の為にどれだけの地獄を見てきたか!』
私は国民達に殴られ、蹴られ、吹き飛ばされた。
そして、目の前でカプセルは割られ美優の脳が落ちるのを見て私の何かがキレる音がした。
「美優、美優……私の可愛い美優。 大丈夫、大丈夫だよ。 お父さんが、お父さんがずっと隣で一緒に居るからね。 がはっ! ふふ、大丈夫……一緒に眠ろう。 ふふふふふ、きっとお母さんも待ってるからな」
美優を優しく抱き上げ、モニターの前へと進む。
「なんだコイツ……笑ってやがる」 「気持ち悪い! 早く殺して!」 「殺せ! この極悪人を殺せ!」
私は笑いながら、研究施設の自爆スイッチに手をかけた。
「ずっと一緒だよ……美優」
そして研究施設は眩い光に覆われ、全てが無と化した。
その筈だった。
◆◇◆
「……はっ!? 此処は? 何処……だ?」
気が付くと、私は知らない場所に横たわっていた。
近くではまるで地面が落盤しかの様な酷い有り様だ。
「美優?! 美優! 此処は……天国なのか? なら、美優は、美優はどこだ」
ふらふらと彷徨う様に歩いていると、目の前に小さな羽の生えた何かが現れた。
「あはぁ……お前がティナが言ってたイレギュラーねぇ? 未来を変えられる、別世界の人間。 ねぇ……人間。 お前、私の物になりなさい」
その羽の生えた妖精の様な何かは、頬まで裂けた口で笑う。
『あれは……ダメじゃ! 儂よ、逃げるんじゃ! 早く、早くぅぅぅぅ!!』
走馬灯を見ているクロモトが叫ぶが届く事は無い。
これはもう、過ぎた過去なのだから……。
「わ、私は娘の美優を探さないと、娘の側で眠らないと……ぐっ?!」
突如として頭がぐらつく。
「あら? 貴方……その手に持っているのはなぁに?」
いつの間に掴んだのか、人形兵器の略式設計図を私は握っておりそれを開く。
「これは……」
「あはははは! 良いねぇ、これ良いわねぇ。 取り引きしましょうよぉ。 コレを作るのを協力してくれたら、私が貴方の願いを叶えてあげるわぁ」
頭がどんどん靄がかる。
まるで、黒い霧が頭の中に入り込んだ様だ。
「美優と眠れる……。 はい……分かりました。 貴女様の為に、私の研究を捧げます」
『ダメじゃあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』
◆◇◆
(すまん……美優。 愚かなのは父さんだった……)
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