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初練習とデザイナー
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それから皆が集まった。
いつもどう練習しているのかを聞くと、個人練習が中心とのこと。
マリと立花と西川、ギターとベース組は楽器と機材を持って広い渡り廊下の隅で、
佐伯さん、動かすのが手間なドラムは部室で練習する。
合わせるのは最後に一、二回。昨日は特別だったらしい。
そうだよね。昨日みたいな練習だったら全然上手くならないと思っていた。
だからこそ、皆も昨日は楽しかったようだ。
キーボードも動かすのが手間なので、佐伯さんと部室を交替で使うことになった。
佐伯さんは衣装デザインを、私はノートパソコンで作曲を、お互い練習しない時間でもやることはあった。
先に佐伯さんが部室を使うことになったので、私は部室のノートパソコンを持って自分の教室に向かった。
誰もいなくなった静かな教室。教室真ん中あたりの自分の席に座ってノートパソコンを立ち上げる。
このパソコンに入っているのはしょぼいDAWだけど、作曲やMIDI入力ならこれでも出来る。
今ならこれまでよりもっといい曲が出来るような気がしていた。
楽しかった昨日の演奏を思い出し、期待感を持ってDAWを起動した。
作曲を進め、ふと時計を見ると交替の時間に近づいていた。
いいフレーズもいくつか掴めたことに満足してパソコンを落とし、部室に向かった。
ドラムが響く部室に入ると佐伯さんはドラムを止めた。
「時間か。じゃあ交代な」
「キリのいい感じになるまで待ってもいいですよ」
「いや大丈夫。家にエレドラあるからしたくなったらそっちでも出来る」
佐伯さんはあっさりドラムのイスから立ち上がった。
エレドラは気になる。今度見せてもらおうかな。
でもなんとなく佐伯さんの家に一人で行くのは怖い。マリについてきてもらおうかな。
などと考えながら練習の準備をする。
昨日は思ったより指は動いたけど、やっぱり違和感はあった。
出来る限りこの違和感を無くせるように頑張ろう。
それから三十分ほど練習をして、集中力が切れてきた。疲れる。
バンドのキーボードは立って弾くべきだ。という謎の先入観があったけど、座って演奏しようかな……
練習なら疲れたら座った方が効率いいかな……なんて雑念がちらつき始めたので休憩することにした。
佐伯さんはコタツの指定席のお誕生日席に座って大きなスケッチブックを広げ、そこになにやら描いていた。
私が演奏をしていてもしていなくても表情は変わらず真っすぐにスケッチブックに向かっていた。
アンプの音量はそこまで大きくしていないけど、よく集中出来るなぁ。と感心した。
そしてスケッチブックに興味が湧いた。
見てみたい。
でも黙って見るのは失礼。集中している作業中に声を掛けるのも悪い気がしたけど、許可を取るべきだと思った。
スケッチブックに視線を向けながら言った。
「見てもいいですか?」
「ん? あぁ、いいよ」
佐伯さんはスケッチブックに視線を向けたまま答えてくれた。
上履きを脱ぎ、コタツに入ってスケッチブックを覗き込む。
スケッチブックには無数の女性の絵が描かれていた。
顔は描き込まず、衣装は詳細に描いているのが分かる。
衣装としての良し悪しはよく分からないけど、絵は凄く上手だった。
少しだけ笑いながら佐伯さんが言った。
「見ても面白いもんじゃねーだろ」
「いえ、面白いです。すっごい上手ですね」
「まぁな! 未来のスーパーデザイナーだしな!」
佐伯さんはガハハと笑った。
「デザイナー目指してるんですか?」
「あぁ」
「いつから?」
「中一。雑誌見てて『なんだよこの服! 私にデザインさせろ!』 って思うことあんじゃん?」
「いや無いっす」
「ちっ! つまんねー奴だな」
舌打ちされたけど、視線はスケッチブックに向けたままだった。
明確な目標、夢があるのにここにいてもいいのか気になった。
「軽音部に入って良かったんですか?」
「あぁ、実は最近スランプ気味でさ。どーもいいデザインが浮かばないんだよな。だから気分転換に丁度いい。それに生ドラムいつでも叩けるし」
「意外と色々考えてるんですね」
「意外ってなんだよ」
ジロリと睨みつけられた。いけね。失言だった。
佐伯さんは続ける。
「でもバンドもやるからにはマジだから勘違いすんなよ」
マリに言われたことと被る。
そこは別に不安に思ってはいない。佐伯さんが上手いことは分かっている。
ドラフト一位も「私に見合うか」という発言も今なら納得できる。
「はい。練習戻ります」
「うむ」
コタツから出て練習を再開した。
いつもどう練習しているのかを聞くと、個人練習が中心とのこと。
マリと立花と西川、ギターとベース組は楽器と機材を持って広い渡り廊下の隅で、
佐伯さん、動かすのが手間なドラムは部室で練習する。
合わせるのは最後に一、二回。昨日は特別だったらしい。
そうだよね。昨日みたいな練習だったら全然上手くならないと思っていた。
だからこそ、皆も昨日は楽しかったようだ。
キーボードも動かすのが手間なので、佐伯さんと部室を交替で使うことになった。
佐伯さんは衣装デザインを、私はノートパソコンで作曲を、お互い練習しない時間でもやることはあった。
先に佐伯さんが部室を使うことになったので、私は部室のノートパソコンを持って自分の教室に向かった。
誰もいなくなった静かな教室。教室真ん中あたりの自分の席に座ってノートパソコンを立ち上げる。
このパソコンに入っているのはしょぼいDAWだけど、作曲やMIDI入力ならこれでも出来る。
今ならこれまでよりもっといい曲が出来るような気がしていた。
楽しかった昨日の演奏を思い出し、期待感を持ってDAWを起動した。
作曲を進め、ふと時計を見ると交替の時間に近づいていた。
いいフレーズもいくつか掴めたことに満足してパソコンを落とし、部室に向かった。
ドラムが響く部室に入ると佐伯さんはドラムを止めた。
「時間か。じゃあ交代な」
「キリのいい感じになるまで待ってもいいですよ」
「いや大丈夫。家にエレドラあるからしたくなったらそっちでも出来る」
佐伯さんはあっさりドラムのイスから立ち上がった。
エレドラは気になる。今度見せてもらおうかな。
でもなんとなく佐伯さんの家に一人で行くのは怖い。マリについてきてもらおうかな。
などと考えながら練習の準備をする。
昨日は思ったより指は動いたけど、やっぱり違和感はあった。
出来る限りこの違和感を無くせるように頑張ろう。
それから三十分ほど練習をして、集中力が切れてきた。疲れる。
バンドのキーボードは立って弾くべきだ。という謎の先入観があったけど、座って演奏しようかな……
練習なら疲れたら座った方が効率いいかな……なんて雑念がちらつき始めたので休憩することにした。
佐伯さんはコタツの指定席のお誕生日席に座って大きなスケッチブックを広げ、そこになにやら描いていた。
私が演奏をしていてもしていなくても表情は変わらず真っすぐにスケッチブックに向かっていた。
アンプの音量はそこまで大きくしていないけど、よく集中出来るなぁ。と感心した。
そしてスケッチブックに興味が湧いた。
見てみたい。
でも黙って見るのは失礼。集中している作業中に声を掛けるのも悪い気がしたけど、許可を取るべきだと思った。
スケッチブックに視線を向けながら言った。
「見てもいいですか?」
「ん? あぁ、いいよ」
佐伯さんはスケッチブックに視線を向けたまま答えてくれた。
上履きを脱ぎ、コタツに入ってスケッチブックを覗き込む。
スケッチブックには無数の女性の絵が描かれていた。
顔は描き込まず、衣装は詳細に描いているのが分かる。
衣装としての良し悪しはよく分からないけど、絵は凄く上手だった。
少しだけ笑いながら佐伯さんが言った。
「見ても面白いもんじゃねーだろ」
「いえ、面白いです。すっごい上手ですね」
「まぁな! 未来のスーパーデザイナーだしな!」
佐伯さんはガハハと笑った。
「デザイナー目指してるんですか?」
「あぁ」
「いつから?」
「中一。雑誌見てて『なんだよこの服! 私にデザインさせろ!』 って思うことあんじゃん?」
「いや無いっす」
「ちっ! つまんねー奴だな」
舌打ちされたけど、視線はスケッチブックに向けたままだった。
明確な目標、夢があるのにここにいてもいいのか気になった。
「軽音部に入って良かったんですか?」
「あぁ、実は最近スランプ気味でさ。どーもいいデザインが浮かばないんだよな。だから気分転換に丁度いい。それに生ドラムいつでも叩けるし」
「意外と色々考えてるんですね」
「意外ってなんだよ」
ジロリと睨みつけられた。いけね。失言だった。
佐伯さんは続ける。
「でもバンドもやるからにはマジだから勘違いすんなよ」
マリに言われたことと被る。
そこは別に不安に思ってはいない。佐伯さんが上手いことは分かっている。
ドラフト一位も「私に見合うか」という発言も今なら納得できる。
「はい。練習戻ります」
「うむ」
コタツから出て練習を再開した。
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