82 / 132
File.7
イヴ
しおりを挟む
─
カルラがお仕事に出てから、イヴはシャルとお留守番中。
この町に来たときに行った、ユーギジョーにまた行きたいって言ったけど、ダメっていわれた。
「暇だねーイヴー」
「うん。ひま。おやつも、もう無い」
「はぁ~……ご主人様、早く帰ってこないかなぁ♡」
「うー」
イヴはベッドでゴロゴロしながら、ぼーっとしてる。シャルは、カルラの事をお喋りするとき、すごく可愛い顔になる。
顔がコロコロ変わって面白い。
「シャル、また可愛い顔した」
「そうかなぁ?えへへ、ありがと♡」
「お腹すいた」
頭を撫でられると、お腹が鳴った。もうすぐおやすみの時間だけど、今日はなんだか眠くならない。きっと、おやつが足りなかったんだ。
「イヴは食いしんぼだねぇ。ん~、ご飯行くくらいならいいのかなぁ?」
「いい。カルラもたぶん許可する」
「だよねー♡どっか食べにいこ♪」
「やった!ごはん!」
ベッドから起きると、シャルは髪を直してくれた。
なんか、お姉ちゃんみたいだと思った。イヴにはお姉ちゃんが居たのかわからないけど。たまにこういうこと考えると、頭がズキッとする。
「髪長いねぇイヴ。顔にかかって見辛くない?」
「だいじょうぶ」
「そっか。じゃ、とりあえずご飯食べに行こー!」
「おー」
靴を履いて部屋を出ると、町に行く。
お昼よりもキラキラの光が一杯で、人も沢山いて、とっても綺麗。
シャルと手を繋いで歩くと、今度はお母さんみたいと思った。また頭がズキッとした。
「おっ、ここ美味しそう♡食べ放題だって!」
「食べほーだい……?!」
「沢山食べても払うお金は一緒なんだって!ここにしよ♡」
「相手にとってフソクなし」
お肉の絵が書かれた看板を見て、またお腹が鳴った。イヴはお肉も大好きなので、沢山食べれると嬉しい。
シャルに手を引かれてお店に入ろうとしたとき、甘い香りがした。シャルもそれに気が付いて止まったから、背中に顔がぶつかって痛かった。
「シャルちゃん見~つけた♡」
「まさか……その声……?!」
一緒に振り返ると、ピンクの長い髪をしたシャルに似てる女の人が立ってた。こっちを見て、ニコニコしてる。
「誰?」
「その子のお姉ちゃんです♡仲良くしてくれてるのね、勇者ちゃん?」
「なんで……?なんでお姉ちゃんが?!」
「こんなとこでお喋りしたら目立っちゃうからぁ、場所変えよっか♡ほいっと」
シャルのお姉ちゃんが指を振ると、お肉の店が無いところに飛んできた。おなか空いてたのに、邪魔された……。
「何のつもり?!シャルは戻らないよ!」
「こらこら、わがまま言っちゃダーメ♡シャルちゃんはお姉ちゃんの大事な妹なんだから♡」
「何が……ッ、大事なの……?あんなことしといて……!!」
お姉ちゃんとケンカを始めたシャルの手は、さっきまでぽかぽかだったのに今は冷たくなってきた。凄く強く、ぎゅってしてきて震えてる。
かわいそう。
「あっはっはっはっはっ!だからぁ、今度はもっと良くしてあげるってば。たくさんたくさん可愛がって上げるよ?ふふっ♡」
「い、いや……もう、やだ……!」
シャルのお姉ちゃんが、こっちに来る。ニコニコしてるけど、目は怖いまま。変な顔。
イヴが助けなきゃ。
「シャルのこと、いじめないで」
シャルの前に立って、イヴは手を広げた。
カルラが言ってた、『大事なひとは全力で守る』をやらなきゃいけない。
イヴが前に出ると、シャルのお姉ちゃんは怒ったような顔をする。
「君には興味ないんだけどぉ……どいてくれる?」
「だめ。シャルが、嫌がってる」
「イヴ……」
首を振って言い返すと、シャルのお姉ちゃんはハァっと息を吐いてイヴの顔に近付いてきた。とっても怖い顔をして。
「あのね勇者ちゃん。この子はアタシの妹なの。家族は一緒に居なきゃいけないの。わかるかなぁ?」
「家族……じゃない。だって、シャルがこわがってる。シャルの家族は、イヴたちだよ!」
イヴには、お父さんもお母さんもいない。
だけど、はかせがいて、カルラもカノンもシャルも、ターニャとか皆がいて、毎日が楽しい。
いっしょに居て楽しいのが家族。だから、守る。
「あっそ……言っても分かんないなら、力尽くで連れて帰るしかないかぁ」
「シャル、カルラを呼んできて……イヴ、頑張るから」
「でも、イヴ……!」
「大丈夫。イヴ、つよい」
シャルはきっとお姉ちゃんとは戦えないんだと思ったから、カルラを呼んでもらった。いまは、このひとから逃げたほうがいい。
「あーあ、行っちゃった……まぁ、勇者は倒せって言われてるから、先にコッチから片付ければいっか」
「どんとこい」
シャルと話してるときみたいな、楽しそうな喋り方じゃなくなったお姉ちゃんは、槍を出してイヴに向けてきた。
前に森で戦ったときから、イヴのからだには皆と同じように魔力があるのがわかった。それを使って、戦えばなんとかなる。
「すばしっこーい♪ネズミみたいね」
「ねずみ、かわいい」
槍を避けて、両手に集めた魔力をシャルのお姉ちゃんに向かって投げる。
「魔力の塊……?魔法は使えないみたいだねぇ♡」
「うん」
何回も突き出される槍でたまに傷付けられながら、イヴも魔力を投げてやり返す。少しの傷はすぐ治るから、気にしないけど。
するとシャルのお姉ちゃんは、何か思い付いたみたいにイヴを見てニヤッとすると、槍をしまった。
「ねぇ、イヴちゃんだっけ?シャルのこと渡したくないんだよね」
「うん。だって、シャルはお姉ちゃんを怖がって嫌がってるから」
「優しいんだねぇ。そうだ、それならさ、キミが代わりになってくれないかな?ふふっ♡」
お話しながら、シャルのお姉ちゃんが歩いてきた。とっても嫌な感じがする。
「アタシはね、昔からあの子を可愛がってあげてたんだけどぉ……それが凄く嫌だったみたいなの」
「何……したの?」
「えー?聞いちゃう?それはね……」
楽しそうなのに、悪い顔に見えた。背中がゾワゾワする。三日月みたいに笑う口が怖かった。
「拷問♡」
「ごう……もん」
足が下がった。どんどん近付いてくる。
「そう。最初は出来心だったの♡でもヤリ始めたらもう止まんなくてっ!シャルちゃんがボロボロになる度に綺麗に治してあげて、また最初から♡
生まれたときからお姉ちゃんお姉ちゃんって慕ってくれた子が、絶望したみたいな顔して泣き叫ぶの見るともう……っ、あはは!!」
「ひどい……」
こんなの、やっぱり家族じゃない。おかしいと思った。
頭がズキズキする。
「もう許してー!から、殺してー!に変わる瞬間がホントに堪んなくてさ♡
……でも、逃げられちゃったの。魔王軍になんか入れて外に出すからいけないんだよね。
今は代わりに人間を攫って遊んでるけど、あいつらすぐダメになっちゃうからさ……だから、イヴちゃんみたいにすぐ怪我が治る子ならあの子の代わりになれると思うの!どうかな?」
「やだ……それから、そんな事……しちゃだめ」
シャルのお姉ちゃんのお話を聴くと、頭が痛くなって、イヴの知らない思い出が頭の中にたくさん浮かんできた。
『君に過去はない。この瞬間、目の前の光景が初めての景色だよ、イヴ』
はかせが言った。
イヴは水の中から出されてそう言われた。なのに、
『#∆%§が生まれてきてくれて、本当に嬉しいよ』
『大事な娘#∆%§』
男の人と女の人がイヴを抱きしめてくれた。
『どうか生きてくれ』
『なんでこの子がこんな目に……』
また別の人たち。男の人と女の人。
『π℉\№が好きだよ』
『¶§£€は大事な』
わからない。覚えてないのに、胸のところがぎゅうっとなって、苦しくなって目と鼻が温かくなって、頭がぼーっとして。
シャルのお姉ちゃんの声も聴こえたけど、うまく喋れなくて。
「あれー?大丈夫?」
「パパと……ママと、オトモダチと……」
何もわからなくなった。目を閉じるまえ、悲しそうな顔をした男の人と女の人、血が付いた女の子、背中を向けてる人達が見えた。
「何……?様子が変だねぇ」
「お薬、のまなきゃ」
イヴは、はかせから貰ったお薬を噛む。
すぐ体が熱くなって、苦しいのが無くなった。体の中から魔力がどんどん溢れてくるのがわかる。
今はシャルのお姉ちゃんを、倒さなきゃ。守らなきゃ。
──ドゴォッ!!
「なっ?!」
「シャル……わたさない……」
手に集まった魔力を、シャルのお姉ちゃんに向けて撃った。お腹に当たって弾けて、飛んでいく。
「あは、ははッ」
「くっ……!!さっきのとは段違い……っ!何が起きてっ」
──バゴッ!!
今度は走ってお姉ちゃんのところへ行くと、手を翳して魔力と一緒に叩き付ける。
「シャルの、お姉ちゃん……ははっ」
「ヤバいかもコレ……っ!しかもこの魔力の質は……きゃあっ!!」
溢れてくる魔力が、イヴの体を包んでいく。シャルを助けて、皆で一緒にお花見するから、早く終わらせなきゃ。
「ばいばい、シャルのお姉ちゃん」
たくさん魔力の玉を作って、全部をぶつけた。
──ドガガガガガァッ!!!!
「あああああああああッ!! 」
シャルのお姉ちゃんが悲鳴を上げながら、地面を跳ねて飛んでいく。イヴは、この人を倒さなきゃいけない。
また新しく玉を作ったとき、遠くからカルラの声が聞こえた。
「イヴっちぃいいいいwwwwww」
「カ、ルラ……」
「あ?そこに倒れてんのリリスさんじゃねwwwww服がボロボロでエチチwwwwww」
カルラの声を、姿を見て、凄く安心した。なのに、魔力が止まらなくて。
「カルラ……シャルのお姉ちゃん……倒さなきゃ……連れていかれちゃう」
「もうダウンしてるのではwwwwww」
「だめ、かぞく……まもる……」
安心したのに、魔力がどんどん溢れてきて、風船みたいに大きくなっていく気がした。
「どうしたイヴっち!なんか変だぞ?!」
「わ、わから……ない……魔力、溢れてる……。ミンナを、たすけな……きゃ」
そこから、何も分からなくなった。
カルラがお仕事に出てから、イヴはシャルとお留守番中。
この町に来たときに行った、ユーギジョーにまた行きたいって言ったけど、ダメっていわれた。
「暇だねーイヴー」
「うん。ひま。おやつも、もう無い」
「はぁ~……ご主人様、早く帰ってこないかなぁ♡」
「うー」
イヴはベッドでゴロゴロしながら、ぼーっとしてる。シャルは、カルラの事をお喋りするとき、すごく可愛い顔になる。
顔がコロコロ変わって面白い。
「シャル、また可愛い顔した」
「そうかなぁ?えへへ、ありがと♡」
「お腹すいた」
頭を撫でられると、お腹が鳴った。もうすぐおやすみの時間だけど、今日はなんだか眠くならない。きっと、おやつが足りなかったんだ。
「イヴは食いしんぼだねぇ。ん~、ご飯行くくらいならいいのかなぁ?」
「いい。カルラもたぶん許可する」
「だよねー♡どっか食べにいこ♪」
「やった!ごはん!」
ベッドから起きると、シャルは髪を直してくれた。
なんか、お姉ちゃんみたいだと思った。イヴにはお姉ちゃんが居たのかわからないけど。たまにこういうこと考えると、頭がズキッとする。
「髪長いねぇイヴ。顔にかかって見辛くない?」
「だいじょうぶ」
「そっか。じゃ、とりあえずご飯食べに行こー!」
「おー」
靴を履いて部屋を出ると、町に行く。
お昼よりもキラキラの光が一杯で、人も沢山いて、とっても綺麗。
シャルと手を繋いで歩くと、今度はお母さんみたいと思った。また頭がズキッとした。
「おっ、ここ美味しそう♡食べ放題だって!」
「食べほーだい……?!」
「沢山食べても払うお金は一緒なんだって!ここにしよ♡」
「相手にとってフソクなし」
お肉の絵が書かれた看板を見て、またお腹が鳴った。イヴはお肉も大好きなので、沢山食べれると嬉しい。
シャルに手を引かれてお店に入ろうとしたとき、甘い香りがした。シャルもそれに気が付いて止まったから、背中に顔がぶつかって痛かった。
「シャルちゃん見~つけた♡」
「まさか……その声……?!」
一緒に振り返ると、ピンクの長い髪をしたシャルに似てる女の人が立ってた。こっちを見て、ニコニコしてる。
「誰?」
「その子のお姉ちゃんです♡仲良くしてくれてるのね、勇者ちゃん?」
「なんで……?なんでお姉ちゃんが?!」
「こんなとこでお喋りしたら目立っちゃうからぁ、場所変えよっか♡ほいっと」
シャルのお姉ちゃんが指を振ると、お肉の店が無いところに飛んできた。おなか空いてたのに、邪魔された……。
「何のつもり?!シャルは戻らないよ!」
「こらこら、わがまま言っちゃダーメ♡シャルちゃんはお姉ちゃんの大事な妹なんだから♡」
「何が……ッ、大事なの……?あんなことしといて……!!」
お姉ちゃんとケンカを始めたシャルの手は、さっきまでぽかぽかだったのに今は冷たくなってきた。凄く強く、ぎゅってしてきて震えてる。
かわいそう。
「あっはっはっはっはっ!だからぁ、今度はもっと良くしてあげるってば。たくさんたくさん可愛がって上げるよ?ふふっ♡」
「い、いや……もう、やだ……!」
シャルのお姉ちゃんが、こっちに来る。ニコニコしてるけど、目は怖いまま。変な顔。
イヴが助けなきゃ。
「シャルのこと、いじめないで」
シャルの前に立って、イヴは手を広げた。
カルラが言ってた、『大事なひとは全力で守る』をやらなきゃいけない。
イヴが前に出ると、シャルのお姉ちゃんは怒ったような顔をする。
「君には興味ないんだけどぉ……どいてくれる?」
「だめ。シャルが、嫌がってる」
「イヴ……」
首を振って言い返すと、シャルのお姉ちゃんはハァっと息を吐いてイヴの顔に近付いてきた。とっても怖い顔をして。
「あのね勇者ちゃん。この子はアタシの妹なの。家族は一緒に居なきゃいけないの。わかるかなぁ?」
「家族……じゃない。だって、シャルがこわがってる。シャルの家族は、イヴたちだよ!」
イヴには、お父さんもお母さんもいない。
だけど、はかせがいて、カルラもカノンもシャルも、ターニャとか皆がいて、毎日が楽しい。
いっしょに居て楽しいのが家族。だから、守る。
「あっそ……言っても分かんないなら、力尽くで連れて帰るしかないかぁ」
「シャル、カルラを呼んできて……イヴ、頑張るから」
「でも、イヴ……!」
「大丈夫。イヴ、つよい」
シャルはきっとお姉ちゃんとは戦えないんだと思ったから、カルラを呼んでもらった。いまは、このひとから逃げたほうがいい。
「あーあ、行っちゃった……まぁ、勇者は倒せって言われてるから、先にコッチから片付ければいっか」
「どんとこい」
シャルと話してるときみたいな、楽しそうな喋り方じゃなくなったお姉ちゃんは、槍を出してイヴに向けてきた。
前に森で戦ったときから、イヴのからだには皆と同じように魔力があるのがわかった。それを使って、戦えばなんとかなる。
「すばしっこーい♪ネズミみたいね」
「ねずみ、かわいい」
槍を避けて、両手に集めた魔力をシャルのお姉ちゃんに向かって投げる。
「魔力の塊……?魔法は使えないみたいだねぇ♡」
「うん」
何回も突き出される槍でたまに傷付けられながら、イヴも魔力を投げてやり返す。少しの傷はすぐ治るから、気にしないけど。
するとシャルのお姉ちゃんは、何か思い付いたみたいにイヴを見てニヤッとすると、槍をしまった。
「ねぇ、イヴちゃんだっけ?シャルのこと渡したくないんだよね」
「うん。だって、シャルはお姉ちゃんを怖がって嫌がってるから」
「優しいんだねぇ。そうだ、それならさ、キミが代わりになってくれないかな?ふふっ♡」
お話しながら、シャルのお姉ちゃんが歩いてきた。とっても嫌な感じがする。
「アタシはね、昔からあの子を可愛がってあげてたんだけどぉ……それが凄く嫌だったみたいなの」
「何……したの?」
「えー?聞いちゃう?それはね……」
楽しそうなのに、悪い顔に見えた。背中がゾワゾワする。三日月みたいに笑う口が怖かった。
「拷問♡」
「ごう……もん」
足が下がった。どんどん近付いてくる。
「そう。最初は出来心だったの♡でもヤリ始めたらもう止まんなくてっ!シャルちゃんがボロボロになる度に綺麗に治してあげて、また最初から♡
生まれたときからお姉ちゃんお姉ちゃんって慕ってくれた子が、絶望したみたいな顔して泣き叫ぶの見るともう……っ、あはは!!」
「ひどい……」
こんなの、やっぱり家族じゃない。おかしいと思った。
頭がズキズキする。
「もう許してー!から、殺してー!に変わる瞬間がホントに堪んなくてさ♡
……でも、逃げられちゃったの。魔王軍になんか入れて外に出すからいけないんだよね。
今は代わりに人間を攫って遊んでるけど、あいつらすぐダメになっちゃうからさ……だから、イヴちゃんみたいにすぐ怪我が治る子ならあの子の代わりになれると思うの!どうかな?」
「やだ……それから、そんな事……しちゃだめ」
シャルのお姉ちゃんのお話を聴くと、頭が痛くなって、イヴの知らない思い出が頭の中にたくさん浮かんできた。
『君に過去はない。この瞬間、目の前の光景が初めての景色だよ、イヴ』
はかせが言った。
イヴは水の中から出されてそう言われた。なのに、
『#∆%§が生まれてきてくれて、本当に嬉しいよ』
『大事な娘#∆%§』
男の人と女の人がイヴを抱きしめてくれた。
『どうか生きてくれ』
『なんでこの子がこんな目に……』
また別の人たち。男の人と女の人。
『π℉\№が好きだよ』
『¶§£€は大事な』
わからない。覚えてないのに、胸のところがぎゅうっとなって、苦しくなって目と鼻が温かくなって、頭がぼーっとして。
シャルのお姉ちゃんの声も聴こえたけど、うまく喋れなくて。
「あれー?大丈夫?」
「パパと……ママと、オトモダチと……」
何もわからなくなった。目を閉じるまえ、悲しそうな顔をした男の人と女の人、血が付いた女の子、背中を向けてる人達が見えた。
「何……?様子が変だねぇ」
「お薬、のまなきゃ」
イヴは、はかせから貰ったお薬を噛む。
すぐ体が熱くなって、苦しいのが無くなった。体の中から魔力がどんどん溢れてくるのがわかる。
今はシャルのお姉ちゃんを、倒さなきゃ。守らなきゃ。
──ドゴォッ!!
「なっ?!」
「シャル……わたさない……」
手に集まった魔力を、シャルのお姉ちゃんに向けて撃った。お腹に当たって弾けて、飛んでいく。
「あは、ははッ」
「くっ……!!さっきのとは段違い……っ!何が起きてっ」
──バゴッ!!
今度は走ってお姉ちゃんのところへ行くと、手を翳して魔力と一緒に叩き付ける。
「シャルの、お姉ちゃん……ははっ」
「ヤバいかもコレ……っ!しかもこの魔力の質は……きゃあっ!!」
溢れてくる魔力が、イヴの体を包んでいく。シャルを助けて、皆で一緒にお花見するから、早く終わらせなきゃ。
「ばいばい、シャルのお姉ちゃん」
たくさん魔力の玉を作って、全部をぶつけた。
──ドガガガガガァッ!!!!
「あああああああああッ!! 」
シャルのお姉ちゃんが悲鳴を上げながら、地面を跳ねて飛んでいく。イヴは、この人を倒さなきゃいけない。
また新しく玉を作ったとき、遠くからカルラの声が聞こえた。
「イヴっちぃいいいいwwwwww」
「カ、ルラ……」
「あ?そこに倒れてんのリリスさんじゃねwwwww服がボロボロでエチチwwwwww」
カルラの声を、姿を見て、凄く安心した。なのに、魔力が止まらなくて。
「カルラ……シャルのお姉ちゃん……倒さなきゃ……連れていかれちゃう」
「もうダウンしてるのではwwwwww」
「だめ、かぞく……まもる……」
安心したのに、魔力がどんどん溢れてきて、風船みたいに大きくなっていく気がした。
「どうしたイヴっち!なんか変だぞ?!」
「わ、わから……ない……魔力、溢れてる……。ミンナを、たすけな……きゃ」
そこから、何も分からなくなった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました
髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」
気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。
しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。
「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。
だが……一人きりになったとき、俺は気づく。
唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。
出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。
雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。
これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。
裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか――
運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。
毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります!
期間限定で10時と17時と21時も投稿予定
※表紙のイラストはAIによるイメージです
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる