ニートの俺がサイボーグに改造されたと思ったら異世界転移させられたンゴwwwwwwwww

刺狼(しろ)

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僕は今、オルガお姉ちゃんと一緒に王都で魔族から逃げながら走っています。
東の門から入ってきた魔族達がその反対側の西まで侵攻するのも時間の問題で、一箇所に留まるのはむしろ危ないっていう、お姉ちゃんの判断です。

「ルキ、この辺なら少し休めるだろう。すまない、走り疲れたか?」

隠れるように駆け込んだ場所は料理屋さんみたいなところ。
僕に話しかけながら、カウンターの中で水を一杯汲んで持ってきてくれた。

「ふぅ……ううん、大丈夫だよ。平気」

「そうか。強いな、お前は」

そう言って、お姉ちゃんは僕の頭を優しく撫でてくれた。
皆がパニックになって離れ離れになった時も、お姉ちゃんは真っ先に僕の手を取って一緒にいてくれた。
本当に優しくて、良いひとで、それから、いつも綺麗なお姉さんだと思います。

「なんだ?私の顔に、何か付いてるか?」

「あ……なんでもないよ!お姉ちゃんも座ったら?」

「ああ、そうだな。少ししたら、一度外の様子を見てくるよ」

思わず見惚れちゃうこともある。そのくらい、お姉ちゃんは綺麗です。変なお兄ちゃんがデレデレしちゃうのも、仕方ないのかもしれません。
このお店は暑くって、身体を冷ますみたいに水を一気に飲み干した。

「っはぁ。変なお兄ちゃん達、大丈夫かな?」

「まぁ、カルラ達は心配ないだろう。むしろ一番心配されているのはルキだと思うが」

「あはは、そっか。でも、オルガお姉ちゃんが一緒にいてくれるから、僕も心配いらないよ!」

お店とその周りは静かだけど、遠くからはたまに大きな音がこっちまで聴こえてくる。
誰かが戦ってるんだと思うと、やっぱり少しだけ怖かった。僕一人だったら、きっとすぐ魔族に見つかって死んでたかもしれない。

「ふぅ……さて。私は少し周辺の状況を見てくるよ。ルキはカウンターの下に隠れておいてくれ」

「わ、わかった。気をつけてね、お姉ちゃん 」

「ああ。すぐ戻るよ」

お姉ちゃんが立ち上がってお店のドアに近付いたのを見て、僕も言われた通りカウンターの下にしゃがむ。
そのすぐ後だった。

「な、なんだお前達……!」

「おっ邪魔しまーす。お?こんな非常事態にお姉さん一人で何してんの?」

「つーかエルフ族じゃね?マジで耳長いじゃん」

「それなー。あと美人!やべぇ~」

三人くらいの男の人の声が聞こえた。お姉ちゃんの声を聞いた感じ、魔族ではなさそうだけど。
わざと大きな音を立ててお店の中に入って、テーブルに座ったみたい。

「おい、何をして……!」

「ナニってウケる!避難っしょ!外マジで魔物と魔族だらけだっつーの!」

「ギャハハ!俺ら必死に逃げてきたっての!」

「マジそれ!息切れたわマジで!お姉さん水!」

騒がしい人達だけど、一応敵じゃないみたい。でも、お姉ちゃんは少しイライラしてるみたい。カウンターに来て水を用意してるときに見えたのは、怒ってる顔だったから。

仕方なく3人分の水を用意したお姉ちゃんだったけど、乱暴にコップを置いた後何も言わずに僕の所へ戻ってきた。

「ルキ、そろそろ場所を変えよう。人が集まってきては目立ってしまう」

「わ、わかった」

お姉ちゃんは大銅貨をカウンターの内側に置くと、僕の手を引いてお店の出口に向かう。若い男の人達が一斉に僕を見た。

「あれ?!子供なんかいたの?!」

「子持ちじゃん!若ママじゃんウケる!!」

「でも耳長くねぇから、なんか訳アリなんじゃね?」

「煩くすると襲われるぞ、お前達。戦いの心得はあるのか?」

うんざりしたようにお姉ちゃんがそう言うと、男の人達は笑い始めた。

「はははっ!まぁいざとなりゃ俺達だって!なぁ?!」

「そそ!心配してくれてありがとな、ママ~!」

「ギャハハ!魔物くらいならいけるっしょ!」

なんかよくわかんないけど、少しだけこの人達が心配になった。何ていうんだっけこういうの、変なお兄ちゃんが言ってた……し、し、しぼーふらぐ?みたいなの。

──ドガァァァァアアア!!

僕がそんな事を思ったその直後、お店の壁がいきなり吹き飛んだ。

「しぼーふらぐのお兄ちゃん達が……!!」

「ルキ、隠れていろ!」

お姉ちゃんが急いで僕を物陰に押し退けると、壁に空いた穴の方から、男の人の怒鳴り声みたいなのが聴こえた。

「お~、雑魚共が群がって避難中かぁ?!残念だったなぁ!!」

「う、ぐ……いってぇ……」

「な、何が……起こって……」

一人は気を失ったみたいで、とにかくお店の中はさっきのでぐちゃぐちゃになっちゃった。僕は恐いのと同じくらい、お姉ちゃんが心配だった。

「なんだ、まだ残ってる奴いんのかよ。しかも、エルフ族か」

「貴様……!人間、じゃないな……?何者だ」

そっと物陰から顔を出して見てみると、水色っぽい白くて短い髪の若い男がお姉ちゃんを睨みつけていた。顔の真ん中に横に傷跡があって、笑ってるようにみえて目だけはギラギラしてる。

「俺は魔王軍の魔改造兵、製造No.010【レパード】だ。とにかくヒトをぶっ殺したくてなぁ」

「ふざけた事を……!」

お姉ちゃんが魔法陣を掌に広げると、レパードと名乗った男がゆっくりとお店の中を見てから僕の方を睨みつける。見つかってしまった。怖くて身体が動かなかった。

「ハハハッ!あ~決めた。そこで転がってるゴミ野郎三匹と、隠れて縮こまってるクソガキから先に殺して、最後にアンタも殺してやる」

「させるわけ無いだろう!」

お姉ちゃんが怒ったような声で掌をレパードに翳す。
だけど、陣から飛び出したたくさんの矢は当たらなくて、一瞬でお姉ちゃんの眼の前に立って首を鷲掴みにしていた。

「おいおい!魔法と長生きなのが取り柄のエルフ族が、その程度かぁ?!」

「が、は……ぁっ?!」

お姉ちゃんの体はそのままゆっくりと持ち上げられて、苦しそうな声が小さく漏れた。

今すぐに、助けに行きたいのに。足が震えて上手く立てない。

「これじゃあ長生きも出来ねぇなぁ?!ははははっ!!
……それにしても、イイ身体してんじゃねぇかオイ」

お姉ちゃんの服が、乱暴に引き裂かれる。舌なめずりしながらそこを見るレパードの目は、さっきまでの威圧的なものだけじゃなくなっていた。

「くっ……!や、め……!!」

「おねぇ、ちゃん……」

心臓が、痛いくらいにバクバクしてる。息をしてるはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。眼の前が水の中にいるみたいに、ボヤけてる。

「や、めろ……!」

「おい、エルフ族の女ぁ。お前のツレが助けに来てくれたぞ?!はははっ!!」

気が付いたら僕は隠れるのをやめていて、レパードに向かって立ち上がっていた。足が重たくて震えてるけど、止まらない。

「ル……キ……く、るな……っ」

「いやだ……!」

「ほぉ……。女ぁ、先にお前から殺すのも悪くねぇな」

レパードは僕を見ながらお姉ちゃんを苦しめている。お姉ちゃんの足はもう床に付かなくなってた。このままじゃ、本当にお姉ちゃんが殺されちゃう……!
恐いのよりも、お姉ちゃんが居なくなる方が嫌だ。

「お姉ちゃんを……離せ……っ」

「いい度胸だ、クソガキッ」

僕をギロリと睨みつけて笑うレパードは、お姉ちゃんをカウンターの方に乱暴に投げた。

──ドガァアッ!!

「ぐぁあっ!!」

「お姉ちゃん!!」

慌てて駆け寄って見ると、首にはくっきりとあいつの手形が付いていた。
もう許さない。僕はこいつから、お姉ちゃんを守らなきゃいけないと思った。

「ガキが。女の前だからイキッちまったか?震えやがってよぉ」

「うるさい!お、お前なんか僕が……!」

「げほっ!無茶だ、やめろ……ルキ……!」

上手く動かない体で僕を引き止めるお姉ちゃんの手をゆっくり押し返すと、僕は目を閉じた。
僕の心の中には、キンちゃんがいる。その力を借りれば、レパードとも戦えると思った。

『キンちゃん。力を貸して欲しいんだ』

『主よ、我と共に戦うというのか。あの女を守るために』

『うん。僕だけじゃ、お姉ちゃんは守れないから……だから、お願い!』

『承知したッ!!』

目を開けた瞬間、体の中から力が湧いてくる。それが僕を包んで、黒い虎模様が全身に現れた。

「なんだソレ。魔改造兵俺らとは違うみてぇだが」

「僕は、お前を許さない。絶対にっ!」

禁呪から生まれたキンちゃんの力が、僕の体を強くしてくれた。身体はピリピリするけど、普段は出せない力が湧いてくる。

「面白ぇことになってきたなぁ!!!!」

「はぁあっ!!」

駆け出して拳を握ると、レパードの腹にそれを叩き込んだ。

──ドゴォオッ!!

硬い腹をものともせず、思い切り振り抜く。まるで石を殴ってるみたいな感覚だった。

「ぐぉおっ?!」

「効いてる……!よしっ」

『主よ。我が力を貸せる時間には限度がある。それまでに決着を付けよ。さもなくば、我の意思とは関係なく、その体を蝕んでしまう』

キンちゃんの忠告を聞くと、レパードの反撃を躱しながら小さく頷いた。
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