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第1章 跳躍と出会い⑦『イリアスの仕事』
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気を取り直したグレンが次に教えてくれたのは、身分制度のことだった。
階級社会の頂点は王族、次に貴族。貴族の中でも序列があり、それを爵位という。
公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵と五つあった。
ちなみにこの国の四つの領地を治めている貴族の爵位はそれぞれ違う。
海人のいるサウスリー領主の爵位は伯爵、家名をサラディールといった。
「イリアス様のお父上です。イリアス様は次代の領主になられる御方なんですよ」
誇らしげに言うグレンに、海人は頭を抱えたくなった。
ペン先を洋紙に押し付けてしまい、黒いインクが滲んだ。
思っていたよりすごい人だった。
その後も講義は続いた。
まったく未知の世界の話を海人は面白く、熱心に聞いていた。
時を忘れて集中していると、メイド服のマーシャが紅茶のセットを持ってきてくれた。
それを機に休憩に入る。
机の上に広げられた洋紙に書いたのは、漢字、ひらがな、カタカナ、である。
お茶の準備が始まったので、海人が背伸びをしていると、マーシャは珍しそうにその紙を見ていた。
おれの国の文字ですよ、と言うと、のぞき見したことを恥じたかのように、マーシャは失礼しました、とそそくさと出ていった。
(別に怒ったりしないのに)
海人はなんとなく寂しい気持ちになりながら、紅茶を口にした。
グレンはこの国のことを教えくれているが、やはり気になるのはイリアスのことだった。
「グレンさん、イリアスの仕事ってなんですか? やっぱり領主様のお手伝いとかですか」
今日は仕事に出かけたというが、何をやっているのだろうか。
海人が訊くと、グレンは飲みかけた紅茶のカップを置いた。
「旦那様の補佐をすることもありますが、お仕事は辺境警備をしている騎士様ですよ」
海人は目を見開いた。
騎士。だから庭で剣を振っていたのか。
開けた窓から風が入ってきて、海人の頬を撫でた。
それにしても意外な仕事だ。領主の息子ともなれば、執務仕事をしていそうである。
海人は続けて訊いた。
「領主の跡継ぎがそんな危ないことをしていて大丈夫なんですか?」
身分の高い人は安全な場所にいるという海人の偏見に、
「確かに騎士様のお仕事は危険なこともあります。ですがイリアス様は大丈夫ですよ。とてもお強いですから」
と、にこやかに言われた。
いや、強いとか強くないとかそういうことではなくて、と言いかけたが、自分が仕える人のことをとても誇らしげに語るので、海人も追及するのはやめた。
休憩が終わった後、またこの国についての話を聞いた。
いちばん驚いたのは魔獣についてだった。
この魔獣というのは、人を襲って食べる獰猛な動物だというのだ。
魔獣は普段、森や山など人が足を踏み入れにくい場所に生息しているが、活動が活発になったり、飢えたりすると、人里を襲ってくるのだそうだ。
森の熊みたいなものかな、と海人は軽く考えたが、野生動物との違いは魔法を使ってくることなのだとグレンは言った。
「これがまた、厄介でして……」
グレンが続けようとしたところを、海人は遮った。
「魔法⁉ いま、魔法って言いましたか⁉」
海人が急に声を大きくしたので、グレンは驚いたようだった。
海人は想像の世界にしか存在しない魔法がこの世界にあることを知り、身を乗り出した。
興味津々の海人に、しかしグレンは、
「魔法についてはイリアス様にお尋ねください」
その一言で済ました。
答えてやりたいが、グレンは魔法が使えない。原理などよくわからないのだという。
そして別の話題に移られてしまった。
窓から入る陽射しの位置が机から床にずれていった頃、ついに海人の頭が飽和した。
疲れを見て取ったグレンは、
「お話はこれくらいにして、庭を案内しましょう」
と、講義を終わらせてくれた。
階級社会の頂点は王族、次に貴族。貴族の中でも序列があり、それを爵位という。
公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵と五つあった。
ちなみにこの国の四つの領地を治めている貴族の爵位はそれぞれ違う。
海人のいるサウスリー領主の爵位は伯爵、家名をサラディールといった。
「イリアス様のお父上です。イリアス様は次代の領主になられる御方なんですよ」
誇らしげに言うグレンに、海人は頭を抱えたくなった。
ペン先を洋紙に押し付けてしまい、黒いインクが滲んだ。
思っていたよりすごい人だった。
その後も講義は続いた。
まったく未知の世界の話を海人は面白く、熱心に聞いていた。
時を忘れて集中していると、メイド服のマーシャが紅茶のセットを持ってきてくれた。
それを機に休憩に入る。
机の上に広げられた洋紙に書いたのは、漢字、ひらがな、カタカナ、である。
お茶の準備が始まったので、海人が背伸びをしていると、マーシャは珍しそうにその紙を見ていた。
おれの国の文字ですよ、と言うと、のぞき見したことを恥じたかのように、マーシャは失礼しました、とそそくさと出ていった。
(別に怒ったりしないのに)
海人はなんとなく寂しい気持ちになりながら、紅茶を口にした。
グレンはこの国のことを教えくれているが、やはり気になるのはイリアスのことだった。
「グレンさん、イリアスの仕事ってなんですか? やっぱり領主様のお手伝いとかですか」
今日は仕事に出かけたというが、何をやっているのだろうか。
海人が訊くと、グレンは飲みかけた紅茶のカップを置いた。
「旦那様の補佐をすることもありますが、お仕事は辺境警備をしている騎士様ですよ」
海人は目を見開いた。
騎士。だから庭で剣を振っていたのか。
開けた窓から風が入ってきて、海人の頬を撫でた。
それにしても意外な仕事だ。領主の息子ともなれば、執務仕事をしていそうである。
海人は続けて訊いた。
「領主の跡継ぎがそんな危ないことをしていて大丈夫なんですか?」
身分の高い人は安全な場所にいるという海人の偏見に、
「確かに騎士様のお仕事は危険なこともあります。ですがイリアス様は大丈夫ですよ。とてもお強いですから」
と、にこやかに言われた。
いや、強いとか強くないとかそういうことではなくて、と言いかけたが、自分が仕える人のことをとても誇らしげに語るので、海人も追及するのはやめた。
休憩が終わった後、またこの国についての話を聞いた。
いちばん驚いたのは魔獣についてだった。
この魔獣というのは、人を襲って食べる獰猛な動物だというのだ。
魔獣は普段、森や山など人が足を踏み入れにくい場所に生息しているが、活動が活発になったり、飢えたりすると、人里を襲ってくるのだそうだ。
森の熊みたいなものかな、と海人は軽く考えたが、野生動物との違いは魔法を使ってくることなのだとグレンは言った。
「これがまた、厄介でして……」
グレンが続けようとしたところを、海人は遮った。
「魔法⁉ いま、魔法って言いましたか⁉」
海人が急に声を大きくしたので、グレンは驚いたようだった。
海人は想像の世界にしか存在しない魔法がこの世界にあることを知り、身を乗り出した。
興味津々の海人に、しかしグレンは、
「魔法についてはイリアス様にお尋ねください」
その一言で済ました。
答えてやりたいが、グレンは魔法が使えない。原理などよくわからないのだという。
そして別の話題に移られてしまった。
窓から入る陽射しの位置が机から床にずれていった頃、ついに海人の頭が飽和した。
疲れを見て取ったグレンは、
「お話はこれくらいにして、庭を案内しましょう」
と、講義を終わらせてくれた。
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