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第1章 跳躍と出会い⑧『すごいかっこいい』
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グレンに連れ出された庭は、上品に剪定された木が並び、花が植えられていた。
部屋の中から見えていた林は、なんと敷地内だった。どれだけ広い庭なのかと呆れてしまう。
グレンと一緒に散歩していたが、使用人と思しき人に呼び止められ、二人が話しを始めた。
海人はひとりで周ることグレンに伝えると、門の外には出ないように注意を受けた。
返事をし、広大な敷地を気ままに歩く。
門へと続くと思われる整備された道を進む。
木立を抜けると屋敷と外を隔てる門にたどり着いた。
この先には街があるらしい。にぎやかで活気のある街だとグレンが言っていた。
中世を想起させる屋敷。そして魔法があり、魔獣がいる世界。開門しているので、自由に門外に行くこともできるが、海人は言いつけを守った。
この世界にやって来て、まだ二日目の海人に危険を冒すような度胸はなかった。
領主の館は小高い丘の上にあるようだ。
しばらく門のそばでなだらかな下り坂を眺めていたら、揺れる人影が見えた。
馬に人が乗っている。目を凝らすと、金色の髪が陽光を反射して光って見えた。
イリアスだ。
グレンがイリアスは騎士だと言っていたが、赤と白を基調にした服に帯剣している。マントを羽織り馬に乗った姿は、想像の世界の騎士そのものの姿だった。
(すごいかっこいい……)
イリアスも海人に気づいていたようで、門を通って敷地に入ると馬から降りた。
深紅のマントが翻る。
見惚れながら、海人はたどたどしく声をかけた。
「あの、おかえり、なさい」
「ひとりか」
イリアスは馬の首筋を撫でてから、手綱を取った。馬が、ブル、と鼻を鳴らした。
「グレンさんが向こうにいます。仕事の話してたんで、散歩してました」
言いながら、海人は馬を凝視した。焦げ茶色の優しそうな眼をしている。
まじまじと馬を見つめている海人にイリアスが言った。
「馬が珍しいのか」
手綱を引き、屋敷に向かって歩き出す。
「はい。こんなに近くで見たのは初めてです」
乗馬などしたことはないし、動物園で見たこともない。傍で見ると思っていたより大きかった。
馬を連れたイリアスに海人もついて歩いていると、グレンと先ほどの使用人の男がこちらに気づいた。
二人は軽く礼をした。
「おかえりなさいませ」
イリアスは手綱を使用人に渡すと、彼は馬を連れて屋敷の外れに向かった。
どうやら馬の世話人だったらしい。尻尾を揺らしながら去っていく馬を見て、海人は後で厩舎に行ってみようと思った。
その横でイリアスがグレンに変わったことはなかったか訊いた。
特にないようなことをグレンは答えていたが、
「イリアス様、カイト様は街に行ってみたいそうですよ」
急に自分の名前が出たので驚いた。
しかもグレンから街の話を聞いていたときに、ぽろっと言ったことを偉い人に伝えられてしまい、海人は慌てた。
「いや、あの! ちょっと思っただけで、別にすごく行きたいってわけじゃ……」
しどろもどろになった海人に、グレンはにっこり笑う。
昨日、もうひとりの異世界人、ここでいう『跳躍者』に会いたいとお願いしたばかりだ。
イリアスは了承してくれたが、あまりいい顔はしていなかった。
これ以上何かをお願いして心証を悪くしたくない。
(グレンさん、恨むよ……)
海人は下唇を巻いた。
しかしイリアスは顔色ひとつ変えずにうなずいた。
「わかった。明日、案内しよう」
言って、イリアスはマントを揺らしながら屋敷に入っていった。
そんなあっさり了承されるとは思っていなかったので、海人は呆気にとられた。
よかったですね、とグレンが言った。
内心複雑ではあったが、街を見たかったのは本当だ。もしかしたらグレンは自分が言い出しにくいことを見越して言ってくれたのかもしれない。
グレンもイリアスの後を追うように、屋敷に戻っていった。
こうして海人の異世界生活二日目は何事もなく終わったのだった。
部屋の中から見えていた林は、なんと敷地内だった。どれだけ広い庭なのかと呆れてしまう。
グレンと一緒に散歩していたが、使用人と思しき人に呼び止められ、二人が話しを始めた。
海人はひとりで周ることグレンに伝えると、門の外には出ないように注意を受けた。
返事をし、広大な敷地を気ままに歩く。
門へと続くと思われる整備された道を進む。
木立を抜けると屋敷と外を隔てる門にたどり着いた。
この先には街があるらしい。にぎやかで活気のある街だとグレンが言っていた。
中世を想起させる屋敷。そして魔法があり、魔獣がいる世界。開門しているので、自由に門外に行くこともできるが、海人は言いつけを守った。
この世界にやって来て、まだ二日目の海人に危険を冒すような度胸はなかった。
領主の館は小高い丘の上にあるようだ。
しばらく門のそばでなだらかな下り坂を眺めていたら、揺れる人影が見えた。
馬に人が乗っている。目を凝らすと、金色の髪が陽光を反射して光って見えた。
イリアスだ。
グレンがイリアスは騎士だと言っていたが、赤と白を基調にした服に帯剣している。マントを羽織り馬に乗った姿は、想像の世界の騎士そのものの姿だった。
(すごいかっこいい……)
イリアスも海人に気づいていたようで、門を通って敷地に入ると馬から降りた。
深紅のマントが翻る。
見惚れながら、海人はたどたどしく声をかけた。
「あの、おかえり、なさい」
「ひとりか」
イリアスは馬の首筋を撫でてから、手綱を取った。馬が、ブル、と鼻を鳴らした。
「グレンさんが向こうにいます。仕事の話してたんで、散歩してました」
言いながら、海人は馬を凝視した。焦げ茶色の優しそうな眼をしている。
まじまじと馬を見つめている海人にイリアスが言った。
「馬が珍しいのか」
手綱を引き、屋敷に向かって歩き出す。
「はい。こんなに近くで見たのは初めてです」
乗馬などしたことはないし、動物園で見たこともない。傍で見ると思っていたより大きかった。
馬を連れたイリアスに海人もついて歩いていると、グレンと先ほどの使用人の男がこちらに気づいた。
二人は軽く礼をした。
「おかえりなさいませ」
イリアスは手綱を使用人に渡すと、彼は馬を連れて屋敷の外れに向かった。
どうやら馬の世話人だったらしい。尻尾を揺らしながら去っていく馬を見て、海人は後で厩舎に行ってみようと思った。
その横でイリアスがグレンに変わったことはなかったか訊いた。
特にないようなことをグレンは答えていたが、
「イリアス様、カイト様は街に行ってみたいそうですよ」
急に自分の名前が出たので驚いた。
しかもグレンから街の話を聞いていたときに、ぽろっと言ったことを偉い人に伝えられてしまい、海人は慌てた。
「いや、あの! ちょっと思っただけで、別にすごく行きたいってわけじゃ……」
しどろもどろになった海人に、グレンはにっこり笑う。
昨日、もうひとりの異世界人、ここでいう『跳躍者』に会いたいとお願いしたばかりだ。
イリアスは了承してくれたが、あまりいい顔はしていなかった。
これ以上何かをお願いして心証を悪くしたくない。
(グレンさん、恨むよ……)
海人は下唇を巻いた。
しかしイリアスは顔色ひとつ変えずにうなずいた。
「わかった。明日、案内しよう」
言って、イリアスはマントを揺らしながら屋敷に入っていった。
そんなあっさり了承されるとは思っていなかったので、海人は呆気にとられた。
よかったですね、とグレンが言った。
内心複雑ではあったが、街を見たかったのは本当だ。もしかしたらグレンは自分が言い出しにくいことを見越して言ってくれたのかもしれない。
グレンもイリアスの後を追うように、屋敷に戻っていった。
こうして海人の異世界生活二日目は何事もなく終わったのだった。
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