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第2章 街での暮らし⑧『断末魔』
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海人は麻袋の中で音だけが頼りだった。
さらった男達の断末魔に恐怖で震えていた。
一度目に現れた魔獣は退治したようだった。
だが、再び現れた魔獣には敵わなかったようだ。
馬が暴れて荷台が傾き、麻袋に入れられた海人は地面に転がり落ちた。
叩きつけられるが痛みは感じなかった。
馬の最期の嘶きがする。
辺りを漂う血の匂いと生々しい食事の音に、気が狂いそうになった。
しばらくすると、魔獣が近づいてくるのがわかった。
袋の中にいても、はっきりと魔獣の息遣いを感じた。
(もうだめだ)
海人は猿ぐつわを噛み、死を覚悟した。
刹那―
瞬間的な暴風を受けた。
近くにいた魔獣の気配が飛び去った。
馬の蹄の音がする。魔獣の唸り声と高い悲鳴とが交互に聞こえた。
海人は何が起こっているのかわからず、麻袋の中で動けなかった。
束の間、静寂が訪れ、誰かが駆け寄ってきたのがわかった。
麻袋が開けられる。
「カイト! 無事か!」
そこで海人はイリアスの顔を見た。
灰色の瞳が揺らぐ。
普段はまったくといっていいほど表情のないイリアスが、心底安堵した顔をしていた。
猿ぐつわを外してもらい、拘束していた縄を切ってもらう。
海人は自分が助かったことをまだ実感できずに、ぼうっとしていた。
起き上がろうと腕に力を入れたとき、ズキっと痛みが走った。
顔をしかめ、痛んだ腕を見た。
「切られたのか」
腕から流れる血を見て、イリアスが持っていたハンカチを包帯代わりにした。
止血のためか、きつく縛られ、うめき声が出た。
海人はぼんやりとイリアスの顔を見ていた。そのとき、
「隊長、他はダメです」
シモンの声がした。
そこで初めて、海人はその惨状を目にした。
魔獣が倒れている。そしてかつて人だったものの残骸がある。
見てはいけない―
海人は本能的に目を反らし、イリアスにしがみついた。
急に震えが沸き起こり、それと同時に涙が溢れだした。
「こわ……かった」
絞りだした声に、イリアスは背中をさすってくれた。
「もう大丈夫だ」
人のぬくもりと助かった実感が沸き起こり、涙が止まらなかった。
そして―
ずっと、ずっと我慢していた言葉が零れ出た。
「……日本に、帰りたい……」
泣き続ける海人の頭を、イリアスは黙って抱いていた。
さらった男達の断末魔に恐怖で震えていた。
一度目に現れた魔獣は退治したようだった。
だが、再び現れた魔獣には敵わなかったようだ。
馬が暴れて荷台が傾き、麻袋に入れられた海人は地面に転がり落ちた。
叩きつけられるが痛みは感じなかった。
馬の最期の嘶きがする。
辺りを漂う血の匂いと生々しい食事の音に、気が狂いそうになった。
しばらくすると、魔獣が近づいてくるのがわかった。
袋の中にいても、はっきりと魔獣の息遣いを感じた。
(もうだめだ)
海人は猿ぐつわを噛み、死を覚悟した。
刹那―
瞬間的な暴風を受けた。
近くにいた魔獣の気配が飛び去った。
馬の蹄の音がする。魔獣の唸り声と高い悲鳴とが交互に聞こえた。
海人は何が起こっているのかわからず、麻袋の中で動けなかった。
束の間、静寂が訪れ、誰かが駆け寄ってきたのがわかった。
麻袋が開けられる。
「カイト! 無事か!」
そこで海人はイリアスの顔を見た。
灰色の瞳が揺らぐ。
普段はまったくといっていいほど表情のないイリアスが、心底安堵した顔をしていた。
猿ぐつわを外してもらい、拘束していた縄を切ってもらう。
海人は自分が助かったことをまだ実感できずに、ぼうっとしていた。
起き上がろうと腕に力を入れたとき、ズキっと痛みが走った。
顔をしかめ、痛んだ腕を見た。
「切られたのか」
腕から流れる血を見て、イリアスが持っていたハンカチを包帯代わりにした。
止血のためか、きつく縛られ、うめき声が出た。
海人はぼんやりとイリアスの顔を見ていた。そのとき、
「隊長、他はダメです」
シモンの声がした。
そこで初めて、海人はその惨状を目にした。
魔獣が倒れている。そしてかつて人だったものの残骸がある。
見てはいけない―
海人は本能的に目を反らし、イリアスにしがみついた。
急に震えが沸き起こり、それと同時に涙が溢れだした。
「こわ……かった」
絞りだした声に、イリアスは背中をさすってくれた。
「もう大丈夫だ」
人のぬくもりと助かった実感が沸き起こり、涙が止まらなかった。
そして―
ずっと、ずっと我慢していた言葉が零れ出た。
「……日本に、帰りたい……」
泣き続ける海人の頭を、イリアスは黙って抱いていた。
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