異世界美貌の騎士様は、キスで魔力をもっていく

琉希

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第3章 王都への道②『宿場町』

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 早朝にリンデの街を出立し、陽が暮れる前に一つ目の宿場町に着いた。

 辺境にあるリンデの街から王都に行くには、いくつか立ち寄る町があるらしい。
 リンデほど大きな街であれば、馬でも街中を歩けるが、この町は小さかった。

 海人たち三人は町の入口で馬を預けた。旅人のためにどの町にも馬を預ける場所があるそうだ。
 
 シモンが馬屋で宿の場所と食事のできる店を訊いてきた。

 彼は早速、宿の手配に行き、海人とイリアスは食事ができる店へと足を運んだ。

 店内に入ると新しく来た客である自分たちを見て、ざわめいた。
 海人は旅装だったが、イリアスは辺境警備隊の隊服、見るからに騎士とわかる格好かっこうをしていた。

 駐屯地では外している深紅のマントを羽織り、腰には剣を下げている。
 にわかに注目されたので、海人は騎士が珍しいのか、物騒な客が来たと煙たがれたのかのどちらかだと思った。

 食事時でもあり、店内はにぎやかだ。
 窓際と壁際の席は埋まっていた。

 イリアスは好奇の目を物ともせず、空いている中央の席に座る。
 海人はイリアスの向かいに座った。
 すぐに注文を取りに若い女の子がやってきた。イリアスにメニュー表を渡す。

「あ、あの、いまは、ノースリー地方の麦酒ビールが、おすすめです」

 給仕は慣れていないのか、たどたどしい。

「では、それをもらおう。カイトはどうする」

 メニューを見ても字が読めない海人は、自分より若干年下に見える給仕の子に訊いた。

「お酒以外で何かありますか」
「それなら、朱林檎あかりんごの果汁がおすすめです」

 食事に甘い飲み物かと思いはしたが、せっかくのおすすめなので、頼むことにした。

「あの、ほかには……」
 
 ちらちらとイリアスの顔を見ている。 
 店内に目を向けると、こちらを見ている客がほぼ女性だということに気がついた。

「もう一人、連れが来る。そのときに」

 イリアスがメニューを返すと、給仕の子はパタパタと戻っていった。

 飲み物はすぐにやって来た。
 時を置かずして、シモンが店に入ってきた。すぐさま二人を見つけ、海人の隣に座った。

「相変わらず目立ってますねえ、隊長。隊服で来たのはまずかったんじゃないですか?」
 そういうシモンも隊服である。ただ、イリアスと違うのはマントをつけていなかった。

「騎士の恰好はよくないの?」

 海人が素朴そぼくな疑問を口にすると、

「隊長が五割り増しでかっこよくて、うっとりしちゃうだろ」

と、即座に返された。

 真剣そのもので答えたシモンに、海人はちょっとあわれみの目を向ける。

(そんなこと言うから、変態扱いされるんだよ……)

 だが、言わない。シモンにはこのままでいて欲しい。
 
 さっきと同じ給仕の子が飲み物の注文を取りに来た。やはり酒をすすめてくる。

「あー、酒はいいや。カイトは果汁? じゃ、同じもので。それから、メニュー表ある?」

 給仕の子は持ってくるのを忘れたのか、慌てたように取りに戻った。シモンは渡されたメニュー表を見て、適当に注文する。

「カイトは飲まねえの?」

 この『飲む』は酒のことだと思い、海人は自然に答えた。

「だってまだ十八だし」
「なにが悪いんだよ」
「悪いだろ」

 海人は当然のことのように言ったが、シモンもシモンで当然のことのように言う。

 嚙み合わない。そこにイリアスが口を挟んだ。

「カイトの国ではいつから飲めるんだ」

 そういうことか、と二人は納得した。

「俺の国だと二十歳から」
「二十歳か。けっこう遅いんだな」

 シモンは続け様に、

「二十歳まで酒が飲めないなんてかわいそうに~」

と、大げさに首を振った。

 ルテアニア王国の成人年齢は十五歳である。酒も十五歳から解禁されるらしい。
 イリアスの屋敷でも自分の年齢を知っているグレンが、たまに酒をすすめてくる理由は、そういうことかと思った。
 
 飲み物と一緒に出された木の実を口に入れながら、

「シモンこそ、なんで飲まないの」

と、海人が訊くと、

「そりゃ、酔ったらまずいからな」

と、シモンは運ばれてきた大皿にフォークを突き刺した。

「これでもおまえの護衛なんだから」

 ゴロっとした根菜を口に入れながら、隊長は飲んでますけどー、とちょっと恨めしそうに付け加えた。
 イリアスは一杯くらいじゃ酔わないのかもしれない。
 
 二人がいれば大丈夫だろうと思っていた海人だったが、酔ったところを狙われるかもしれないとは考えなかった。
 旅行気分でいたが、シモンは任務であり、自分のために飲みたい酒を我慢しているのかと思ったら、申し訳ない気がした。

 すると心中を察したシモンが海人の頭をぐりぐりした。
 気にするなと言いたいらしい。

 店内は酔った客の笑い声が響き始めた。
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