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第3章 王都への道⑪『口づけ』
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店の扉を開けると、奥の壁際にいたカイトが真っ先に駆け寄ってきた。
「カイト、力を借りたい」
イリアスの頼みに、カイトは大きくうなずいた。
外に連れ出し、シモンとラダに言った。
「二人とも中に入っていろ」
ラダは躊躇したが、シモンが、
「いいから」
と、店の中に連れて入った。
今、この里で外にいるのはイリアスとカイトの二人だけだった。
カイトは空を見上げた。
上空ではフロータービーストが魔法を放っては弾かれている。その音はいつ破れるかわからない不安を誘う音だった。
海人は顔を戻し、イリアスを見つめた。
「どうすればいい?」
真剣なまなざしに、イリアスはゆっくり瞬きをした。
「これから伝える言葉を詠唱してほしい」
「わかった」
古来から伝わる詠唱文をカイトに伝える。
意味がわからなかったのか、首を捻ったが、その言葉通り、口にした。
―よよの みおやの ちのめいやくをもって
かのものに うけしちからを あたえん―
唱え終わった瞬間、カイトの体が輝いて見えた。
強い魔力が生じ、光っている。
イリアスは両手で海人の顔を上に向けた。
自らの体の変化を感じるのだろうか、黒い瞳は戸惑っている。
イリアスはさらに戸惑わせることを、心で詫びながら、カイトに口づけた。
カイトの黒い瞳が大きく見開かれ、体が固まった。だが今は構っていられない。
第五の霊脈から生じた魔力を吸い上げる。
カイトに生じた魔力をすべて引き取ると、イリアスはゆっくりと口を離した。
再び黒い瞳を見ると、
「イリアス、目が……!」
カイトが驚いたように言った。
瞳が変わっているのか。
たしかに、金の糸が流れるように、四属性の霊脈がいつもよりはっきり視える。
だが今はカイトに構っていられなかった。結界を張り直すことが最優先だ。
受け取った魔力は身に余る膨大なものだった。
カイトから体を離したイリアスは、再び結界を発現させるため、目を閉じた。
大きすぎる魔力を制御しながら、緻密な結界を編んでいく。
時間は要したが、破れかかっていた結界を再び張り直した。
完成させたときには、額から汗が伝っていた。
カイトの力を使った結界の威力は先に張ったものと比べ物にならなかった。
結界の強度は魔力の量に比例する。それだけでなく、フロータービーストの風の魔法を跳ね返すという、おまけ付きだ。魔獣は自ら放った魔法で傷を負った。
ギャアアアッと醜い悲鳴を上げ、さすがに命の危険を感じたのか、山に向かって飛び去って行く。
仕留めることはできなかったが、去ってくれただけで十分だ。
自分で張っておいてなんだが、どれほど魔獣が来たとしても里には入れないと言い切れる堅牢なものができた。
これで里は安全だ。
魔獣の姿が山の奥に消えるのを確認して、イリアスは振り返り、店の扉を開けた。
店の中にいたシモンに目をやり、終わった、と短く告げる。
「後は頼む」
シモンはうなずき、
「さあ、みなさん、もう大丈夫ですよ!」
と、明るく言った。ラダも、里の人に伝えてくる、と言っていた。
イリアスが店を出て、宿屋に足を向けるとカイトが追いかけてきた。
「イリアス、大丈夫?」
心配そうにのぞき込んできたカイトの顔は、見ることができなかった。
「少し休む」
一言だけ残し、イリアスはカイトを振り返ることなく宿屋に入った。
唇に彼に触れた感触が残っていた。
「カイト、力を借りたい」
イリアスの頼みに、カイトは大きくうなずいた。
外に連れ出し、シモンとラダに言った。
「二人とも中に入っていろ」
ラダは躊躇したが、シモンが、
「いいから」
と、店の中に連れて入った。
今、この里で外にいるのはイリアスとカイトの二人だけだった。
カイトは空を見上げた。
上空ではフロータービーストが魔法を放っては弾かれている。その音はいつ破れるかわからない不安を誘う音だった。
海人は顔を戻し、イリアスを見つめた。
「どうすればいい?」
真剣なまなざしに、イリアスはゆっくり瞬きをした。
「これから伝える言葉を詠唱してほしい」
「わかった」
古来から伝わる詠唱文をカイトに伝える。
意味がわからなかったのか、首を捻ったが、その言葉通り、口にした。
―よよの みおやの ちのめいやくをもって
かのものに うけしちからを あたえん―
唱え終わった瞬間、カイトの体が輝いて見えた。
強い魔力が生じ、光っている。
イリアスは両手で海人の顔を上に向けた。
自らの体の変化を感じるのだろうか、黒い瞳は戸惑っている。
イリアスはさらに戸惑わせることを、心で詫びながら、カイトに口づけた。
カイトの黒い瞳が大きく見開かれ、体が固まった。だが今は構っていられない。
第五の霊脈から生じた魔力を吸い上げる。
カイトに生じた魔力をすべて引き取ると、イリアスはゆっくりと口を離した。
再び黒い瞳を見ると、
「イリアス、目が……!」
カイトが驚いたように言った。
瞳が変わっているのか。
たしかに、金の糸が流れるように、四属性の霊脈がいつもよりはっきり視える。
だが今はカイトに構っていられなかった。結界を張り直すことが最優先だ。
受け取った魔力は身に余る膨大なものだった。
カイトから体を離したイリアスは、再び結界を発現させるため、目を閉じた。
大きすぎる魔力を制御しながら、緻密な結界を編んでいく。
時間は要したが、破れかかっていた結界を再び張り直した。
完成させたときには、額から汗が伝っていた。
カイトの力を使った結界の威力は先に張ったものと比べ物にならなかった。
結界の強度は魔力の量に比例する。それだけでなく、フロータービーストの風の魔法を跳ね返すという、おまけ付きだ。魔獣は自ら放った魔法で傷を負った。
ギャアアアッと醜い悲鳴を上げ、さすがに命の危険を感じたのか、山に向かって飛び去って行く。
仕留めることはできなかったが、去ってくれただけで十分だ。
自分で張っておいてなんだが、どれほど魔獣が来たとしても里には入れないと言い切れる堅牢なものができた。
これで里は安全だ。
魔獣の姿が山の奥に消えるのを確認して、イリアスは振り返り、店の扉を開けた。
店の中にいたシモンに目をやり、終わった、と短く告げる。
「後は頼む」
シモンはうなずき、
「さあ、みなさん、もう大丈夫ですよ!」
と、明るく言った。ラダも、里の人に伝えてくる、と言っていた。
イリアスが店を出て、宿屋に足を向けるとカイトが追いかけてきた。
「イリアス、大丈夫?」
心配そうにのぞき込んできたカイトの顔は、見ることができなかった。
「少し休む」
一言だけ残し、イリアスはカイトを振り返ることなく宿屋に入った。
唇に彼に触れた感触が残っていた。
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