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第3章 王都への道⑬『すまなかった』
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ベッドで倒れ込むように寝ていたイリアスは、部屋に二人がいないことを知り、一階に見に来たようだった。
緩慢な動作で海人の横に座り、片肘をつく。気怠そうにしているのを初めて見た。顔色が少し悪い。
シモンが給仕係を呼び、水を注文した。
何か食べますか、とシモンが問うと、軽いものにしてくれと返事をしている。
「イリアス、大丈夫?」
あまり大丈夫そうではない感じだが、訊かずにはおられない。
「ああ。まだ力半分だが、問題ない。カイトの方こそ、体は大丈夫か」
どきっとした。
「お、おれは大丈夫」
若干、動揺しながら答える。
昼間のあれを意識するなという方に無理があった。
目を泳がせている海人を、シモンは不思議そうに見ていた。
不意に、すまなかったな、とイリアスが言った。海人は首を振る。
彼の「すまない」には口づけのことも含まれているのだと思った。
胸がちりっとして、海人は目を伏せた。
「状況は」
イリアスが額を押さえて短く問うと、シモンはすっと姿勢を正した。
「死者、怪我人ともにありません。家屋の損傷もなし。里に入った魔獣はドーター四頭。その後、現在まで魔獣の出現はありません」
引き締まった顔で答える。
普段は上官をからかうような口を叩くシモンだが、やるべきことはやる人間だった。日中、イリアスが去った後、民家を一軒一軒回り、被害状況を確認していた。
海人もシモンについて回り、最後の一軒が終わったところで人的被害がなかったことに安堵した。
イリアスが部下の報告にうなずいたとき、ラダがやってきた。
「みなさん、おそろいでよかった」
「おー、ラダ、おつかれ……あれ、その子は」
ラダの後ろに見覚えのある若い女の人がいた。里に入ったとき、花をくれた子だ。
「俺の幼馴染のユナです。みなさんのところに挨拶に行くっていったら、ついて来ちゃって」
ユナと呼ばれた彼女は下ろしていた髪を結い上げ、花をモチーフにした簪をつけていた。
昼間より可愛いくなっている。祭りの始まりに合わせて、おしゃれをしたようだ。
海人はイリアスの顔を盗み見たが、彼はユナを一瞥しただけだった。
興味はなさそうで、なぜかホッとした。
「サラディール隊長。里を守ってくださり、ありがとうございました。シモンもありがとう。みなさんが偶然ここに来ていなかったら、どうなっていたことか……」
ラダとユナは深々と頭を下げると、海人の頬がわずかに引きつった。
里が襲われたのは偶然ではない。
自分が来なければ、魔獣が襲って来ることもなかった。
海人は罪悪感で、頭を下げる二人を見ることができずに目を伏せた。
ラダは海人には気を向けず、イリアスに目をやった。
「王都に行かれるとのことでしたが、里を出るのはいつ頃ですか」
ラダが訊くと、
「明朝発つ」
青い顔をして答えたイリアスに、海人は予定通りか、と思った。
緩慢な動作で海人の横に座り、片肘をつく。気怠そうにしているのを初めて見た。顔色が少し悪い。
シモンが給仕係を呼び、水を注文した。
何か食べますか、とシモンが問うと、軽いものにしてくれと返事をしている。
「イリアス、大丈夫?」
あまり大丈夫そうではない感じだが、訊かずにはおられない。
「ああ。まだ力半分だが、問題ない。カイトの方こそ、体は大丈夫か」
どきっとした。
「お、おれは大丈夫」
若干、動揺しながら答える。
昼間のあれを意識するなという方に無理があった。
目を泳がせている海人を、シモンは不思議そうに見ていた。
不意に、すまなかったな、とイリアスが言った。海人は首を振る。
彼の「すまない」には口づけのことも含まれているのだと思った。
胸がちりっとして、海人は目を伏せた。
「状況は」
イリアスが額を押さえて短く問うと、シモンはすっと姿勢を正した。
「死者、怪我人ともにありません。家屋の損傷もなし。里に入った魔獣はドーター四頭。その後、現在まで魔獣の出現はありません」
引き締まった顔で答える。
普段は上官をからかうような口を叩くシモンだが、やるべきことはやる人間だった。日中、イリアスが去った後、民家を一軒一軒回り、被害状況を確認していた。
海人もシモンについて回り、最後の一軒が終わったところで人的被害がなかったことに安堵した。
イリアスが部下の報告にうなずいたとき、ラダがやってきた。
「みなさん、おそろいでよかった」
「おー、ラダ、おつかれ……あれ、その子は」
ラダの後ろに見覚えのある若い女の人がいた。里に入ったとき、花をくれた子だ。
「俺の幼馴染のユナです。みなさんのところに挨拶に行くっていったら、ついて来ちゃって」
ユナと呼ばれた彼女は下ろしていた髪を結い上げ、花をモチーフにした簪をつけていた。
昼間より可愛いくなっている。祭りの始まりに合わせて、おしゃれをしたようだ。
海人はイリアスの顔を盗み見たが、彼はユナを一瞥しただけだった。
興味はなさそうで、なぜかホッとした。
「サラディール隊長。里を守ってくださり、ありがとうございました。シモンもありがとう。みなさんが偶然ここに来ていなかったら、どうなっていたことか……」
ラダとユナは深々と頭を下げると、海人の頬がわずかに引きつった。
里が襲われたのは偶然ではない。
自分が来なければ、魔獣が襲って来ることもなかった。
海人は罪悪感で、頭を下げる二人を見ることができずに目を伏せた。
ラダは海人には気を向けず、イリアスに目をやった。
「王都に行かれるとのことでしたが、里を出るのはいつ頃ですか」
ラダが訊くと、
「明朝発つ」
青い顔をして答えたイリアスに、海人は予定通りか、と思った。
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